緑谷来久の始まりは、必死な彼の叫びからだ。
「うじうじ悩んで下向くくらいなら俺のためにその力を使いやがれっ!!」
前世の自分の行いに絶望し、生きる価値などないと俯いてばかりいた自分。
そんな自分に強引に手を引いて前を向かせたのはヒーローに憧れる双子の兄ではなく幼馴染の少年。
同年代の中でなんでもできて周囲の中心人物的な我の強い性格で、気の弱く自己主張が不得手な兄や周囲に無関心で感情の起伏乏しい自分を蹴飛ばしながらも引っ張っていた。
それが個性診断テストによって、無個性な兄を時に暴力的に見下すようになってしまったが。
自分は個性はあると診断されはしたが詳細な事は不明だった、身体的な特徴としてあるが外部に異能としてでないため、条件が必須なタイプか、精神に関わるタイプの可能性を提示された。
まあ結果として自身の個性は『前世』、前世の自分の記憶を完全に思い出す個性だった。
そしてその日から生きることが地獄になった。
前世の自分である誰かは今の自分が生きる世界とはまるで別物のいわゆる中世ファンタジーのような世界に生きていた。
いや、生きてなんていなかった。
生きているといえる程、そいつには何もなかった。
ただ政府の命令に従い、任務をこなす道具。
いかなる非道もいかなる所業も何も感じることなく実行する駒。
天竜人、そう呼ばれる醜悪な子供たちの望みを叶える手足。
三十年に満たない生涯の中で、どれだけ血に塗れ、悲鳴を響かさせ、涙を流させ、絶望を生み出してきたのだろう。
その人生の最後が、英雄ガープと海賊ゴール・D・ロジャーに破れたロックス海賊団の残党で筆頭格とされるエドワード・ニューゲートによるものだったのは救いだったのだろうか?
息子を殺された怒りに震える彼に討たれたことは。
最後の瞬間であるその一刹那だけでもとうに失った愛を感じることができたのは。
かつての自分の記憶に塗りつぶされた今の自分。
幸いなのはかつての自分に自我と言えるほどの自意識がなかったことか。
それでも記憶が、記憶にあるあまりにリアルな情報、匂い、感触、音が、今この場で自分がやったのだと錯覚するほどに伝えてきた。
そうしてただ僕は僕のまま、前世の所業と見てきた光景に打ちのめされた。
無個性であり、夢を絶たれた兄とともに。
そんなロクに食べもしないでやつれていく一方の僕にしつこいくらい構ったのが幼馴染の爆豪勝己だった。
兄はまだ立ち直ってなかったし、母は事情を話さない僕より兄の面倒を見ざるえなかったからだ。
何も話さない僕に絡み、時に暴力やら個性を奮ってまで追求した。
合間に、このままだと死んじまうぞと泣き叫んでいたような気がするけど。
そんな日々が続きいよいよ根負けした僕が訳を話したあと彼は言ったんだ。捨てるなら寄越せと、俺がお前を使ってやると。
多分、それで救われたんだ。
前世と在り方はそう変わらないけど、そんな形でないと僕は生きることを肯定できなかったから。
爆豪勝己はヒーローになる。
爆豪勝己はナンバーワンヒーローになる。
爆豪勝己はオールマイトを超える。
爆豪勝己はこの世界に名を馳せる。
僕はそんな彼のサイドキックだ。
彼の栄光を僕は支えるんだ。
そんな風に生きると僕は決めた。
横暴で勝手で暴力的で口も悪いけど、
差し伸ばされた手の熱さと、僕を助けようとする彼の行動は本物だったから。
さて体を鍛えよう、強くなる術は知っている。
まずは体を作り、六式を修め、覇気を極める。
爆豪勝己の野望が僕の導べなのだから。
強引で横暴だけど天竜人に比べたら彼は遥かにマシだしね。
主人公前世設定。
記号で呼ばれていたCP0の一人。
ワンピースの時期は大海賊時代以前のロジャーの若手時代。
当時政府の最強の道具だったが、全盛期かつ息子を殺されたガチ切れ白ひげと激闘の末死亡、死体は塵一つ残ってなかったとか。
白ひげが仲間の死を許さないという認識を定着させた一因。
自我がないレベルの完成された政府の駒だった。