爆豪勝己のサイドキックは元CP0   作:規律式足

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第13話

 

 放課後マックのない絶望を超えた翌日。

 早朝一番に学校に来てボスと私は夏の仮免試験のために勉強を始めました。

 その設備と機密の関係から無人になるということの無い雄英高校。さらに最新の警備システムにより学生証さえあれば問題無く登校することができます。

 家でも勉強をしてはいるが学校の方が気合が入るような気分になりますよね。

 そして徐々に登校してくるクラスメートからマスコミが校門前に張り付いていたと聞かされ、早めに登校したおかげで私達は遭遇せずにすんだようです。未だにヘドロヴィランの件で騒がれることがあるので、煩わしいことが嫌なボスが今後もこの時間帯に登校するぞと告げ、私もそれに頷きました。

 朝のホームルーム、相澤先生から戦闘訓練の成績を見せてもらったと言われ評価をされます。どうやら戦闘訓練などは先生方で見られるようになっているみたいですね、評価は良かったようです。皆初日にしてはよくやれたそうですね(私も特に言われませんでした)

 そんな話の後でわざとらしくゴオッと気合を込めて言われたやるべきこと、それは学級委員長を決めることでした。今までから無駄に警戒してたみんなも学校っぽいことにホッとしてました。

 しかし、

 

「どうしますボス?」

 

「興味ねえ」

 

 一部(私、ボス、轟君)を除いて皆がやるやると手を挙げる中、私はボスに尋ねます。ボスは右手に広げた『最新版救急救命指南』を読みながら素っ気なく返してきました。普通なら雑務扱いな学級委員長も集団を導く素地を鍛えられる役、けれど鍛える必要があるということは出来ないから。充分に熟せる自信があるならわざわざやる必要はないと判断したのでしょう。

 しかし女性と話すとキョドる兄さんまでやりたがるとは意外でした。集団を導く能力が足りないからでしょうか?次の課題は牧場で羊飼いでもやってもらうことにしましょう、言葉の通じない動物を導けるなら人間相手でも出来るようになる筈です。

 そんな私の思考を察知したのかブルリと兄さんが震えて、飯田君が投票を提案しました。いやそれ入学してからの印象オンリーで決定されません?まあ雄英高校ヒーロー科に入れる実力者だから誰だろうと問題はないでしょうが。

 露骨に面倒そうなボスが辞退を皆に告げ、私もそれに追従。その結果私とボスが飯田君に投票したのもあって飯田君が学級委員長に決定しました。

 

 

「旨し」

 

「しかし良かったのか君たちは?」

 

 昼飯、それは学校生活の幸せの6割を担う素晴らしき時間。昔からボスのお供をしていたその時間に今回は飯田君、兄さん、麗日さんも参加しています。

 

「学級委員長か?中学の時やってたから良いわ」

 

 ボスは中学校在学時の3年間生徒会長にも就任されてましたしね。

 

「それは俺もだが。君たちが辞退しなければ投票していたぞ」

 

 飯田君の言葉に嫌そうな顔をするボス。クラス内でもそんな空気だったからわざわざ辞退したんですよね。

 

「ところで兄さん。羊と魚と鳥、どれが良いですか?」

 

 導くなら羊以外にも魚や鳥もありですよね、虫は難易度高いから次回です。

 

「嫌な予感しかしないよっ!!今度は僕に何をさせる気なのっ!!」

 

 オールマイトの後継者である兄さんには必要なことですから。

 さらに麗日さんの発言から飯田君の実家のことなどを話していると、

 

「おや、君たちもかい?というか来久君は何を食べているのさ?」

 

 そこにはB組の物間君がいました、彼もお昼は食堂ですか。

 ちなみに私が今日食べているのは、カツおひつ、天ぷらおひつ、牛おひつです。

 丼だと何十杯も食べて食堂に迷惑でしょうからおひつに具をのせてもらいました、たっぷりの具が贅沢で味も染み込んで旨し。

 

「彼は?」

 

 飯田君達の質問に、B組を短期間でまとめ上げた傑物ですと答えます。求心力というよりは扇動力ですが、凄い手腕ですよね。

 

「あ、物間君。兄さんの個性は身体能力の一時的な強化ですが出力が半端ないので、下手にコピーしたら体が耐えきれずに爆散しますよ」

 

「双子揃って爆弾かなにかなのかいっ?!!」

 

 念の為注意したらそう叫ばれました。

 彼からしたらそうですよね、双子揃って個性発動が命に関わりますし。

 中にはコピーできない個性もあるらしいですが、下手にコピーしたら危ない個性もありますよね。

 

「それが彼の個性なのか?」

 

「限度はあるらしいが頼れる良い個性だよな」

 

「副作用とかはどうなるんやろ?」

 

「なんという応用力のある個性チーム活動でのコンビネーションはもちろん替えの効かない個性の代理もこなせるし時間制限も触れ続ければ関係ないなら制限ですらないし遠距離放出系なら安全地帯からの制圧だってできるそれにワイルド・ワイルド・プッシーキャッツのピクシーボブやセメントス先生の個性が使えるなら崖崩れに山崩れに堤防の決壊などの災害時に大活躍できるしそれだけではなく」

 

「え、何コレ怖」

 

「見慣れてないと怖いですよね」

 

「見慣れていても怖いからな」

 

「見慣れることも怖いよね」

 

「つまり出久君は怖いのか?」

 

「「「大体そんな感じ」」」

 

「みんな酷くないっ!!」

 

 とコントのようなやり取りをしていると、突然校内に警報が響き渡る。セキュリティ3の突破により屋外への避難が指示されるが、

 

「何してんだアイツラ」

 

「雄英高校生ともあろう者達が無様だねえ」

 

 ボスと物間君は席についたまま呆れたように押し合いへし合いの生徒達を眺めていた。

 

「避難誘導に先導役が必須なわけだ」

 

「彼ら迅速な反応はしても避難経路すら頭にないじゃないか」

 

 勢いに呑まれて立ち上がった飯田君達もおしくらまんじゅうに混ざってしまいましたね。

 

「僕らはどうする?」

 

「指示には従うべきだが、とりあえずアイツラを落ち着かせるか。

 命令だ来久、やれ」

 

「イエス、マイヒーロー」

 

 久しぶりの命令に嬉しくなりますが、命令は速やかに遂行する。混乱する集団を冷静にするには、それ以上の衝撃をぶつけること。

 ソレの発動に予備動作らしきものはない。

 ただ感情を昂ぶらせ圧を放つ。

 前世ですら使い手の少ない覇王色の覇気、それを気絶させない程度、冷水をぶっかける程度の感覚で。

 シンッと場が静まり、避難しようとしていた集団はその場で足を止めていた。そこへボスが、

 

「緊急時の避難の仕方は習ったろ、先ずは落ち着け、そして周囲を見ろ、それから避難だ。

 安心して行動しろ、仮にヴィランがここに来たとしても俺達が潰してやる」

 

 堂々と座りつつも警戒を怠らず戦意を滾らすボスの姿に誰もが圧倒され、その勢いのまま言葉に従い避難を再開しました。

 しかし、

 

「妙だな」

 

「君もそう思うかい?」

 

 ええ、窓から侵入者がマスコミだと判明しましたがそれにしても。

 

「警報が鳴ったのは雄英バリアーが破壊されたからだろう」

 

「壁を個性で越えたりした程度じゃセキュリティ3判定にはならないからねえ」

 

「しかし破壊音など聞こえませんでしたよ」

 

 雄英バリアーの破壊自体は容易だ。一年のヒーロー科でも個性を使えば、よほど向いてないタイプじゃなければ可能だろう。けれど音も立てずに破壊するとなればそれが可能な者は限られる。

 

「俺やデクなら相応の破壊音がするな」

 

 爆破と超パワーですからね。

 

「B組でも破壊はできても無音となると、骨抜くらいかな?触れて物質を操れる個性、ピクシーボブやセメントスタイプの個性だからね」

 

「つまり侵入者の本命はそのタイプの個性だった可能性 が高いというわけですか」

 

「マスコミにそんな個性持ちがいなければな」

 

「居たとしたら器物損壊と無断侵入で実刑だね」 

 

 いかにオールマイトのニュース欲しさとはいえそこまでするものでしょうか?

 ただマスコミの中にその個性持ちがいないのなら。

 

「別の何か、まあヴィランだな。がマスコミに騒ぎを起こさせるために雄英バリアーを破壊した」

 

「基本目立ちたがりなヴィランが名乗りあげてないなら目的は陽動」

 

「避難行動のため生徒は集団行動するため目的は生徒ではなく」

 

「人気のない場所で何かする、ってトコか?」

 

「けど警報が鳴れば重要施設は閉鎖されるよ」

 

「設備も総点検される筈です」

 

「人でも物でも仕掛けでもねえなら目的は厳重に管理されてない情報ってトコか。今推察できんのは精々コレくらいだな」

 

「だね、下手な憶測で騒ぎを起こすべきじゃないし」

 

「騒動目的なら数日後にネットに動画が上げられる場合もありますからね」

 

 人気の無くなりだした食堂で私達は会話をやめて、その列に加わりました。

 近いうちに何かは起こる、ソレを確信しながら。

 


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