何かある。
そんな予感を抱えてから数日後。
本日のヒーロー基礎学はレスキュー訓練。
それぞれコスチュームを着るか選択し、距離の離れた施設にて行う実習です。
徒歩ではなくバスの移動が必要とは流石雄英高校というべきですね。
着任したての学級委員長である飯田君はとこからだしたのか笛を吹いて先導しますが、バスのタイプで見事に滑りましたね。
座席についてすぐに指南書を開くボスを見ているとクラスメート達が雑談をはじめてました。
蛙吹さんが兄さんの個性がオールマイトに似ていると発言し、事実が事実ゆえにキョドる兄さん。切島君が硬化の個性は対人には強いが地味だと言えば、私の鉄塊を知っているため顔を引き攣らせながらフォローをしています。ヒーローは人気商売だから派手であり目立つことも重要だという話題になったところで、
「爆豪ちゃんはワイルドで人気でそうね」
と蛙吹さんが言いました。
「人気より実績で上に行きてえがな。それに人気なら蛙吹のほうだろ、カエルはカワイイ両生類の代表だしな」
「ケロ、梅雨ちゃんと呼んで。あとありがとう」
うむ。
異性の言葉に謙遜しかつさり気なく褒める、女性の扱いすら心得てるとは流石ボス。ならば、
「兄さん、ボスを見習って女性に甘い言葉を言ってください。相手は麗日さんで」
「突然なんでっ!!」
いつもの課題です。
「ヒーローは異性との接し方が重要です。オールマイトも街ゆけば女性からキスマークをもらう程異性の扱いに長けてますし」
「いやソレ外国でのことっ!!いつもそうじゃないからっ!!」
「オイラもナンバー1ヒーローになりてえっ!!キスマークが欲しいっ!!」
峰田君もまた叫びました。まあ男の夢ですからね。
「そして麗日さんは兄さんが人生で初めて親しくなった異性、彼女ならやらかしても大丈夫です」
(((酷い情報を暴露したぞ弟)))
(((やらかすの確定か兄)))
「いや、いくらヒーローに必要だからといっても」
まごまごしていても容赦はしません。
「そして判定は砂藤君です」
「なぜ俺っ?!」
「彼の個性はシュガードープ、甘さでパワーアップする個性ゆえ、甘い言葉への反応も一目瞭然」
「そんな個性じゃねえよっ!!」
個性は思い込めば進化するみたいだからやれると思いますけどね、悪魔の実もそうでしたし。
「さあレッツ、スウィートトーク(巻き舌)」
「「「無視っ?!」」」
時間は有限、思いついた課題は打ち込まねばならないのです。
「えっと、麗日さんはその、」
(((いや、やるんかい兄っ!!)))
今までの課題も全て突然はじめてやらせきりましたからね。
「麗日さんは、麗らかで可愛らしいですっ!!」
(ダメだな)(ダメか)(ダメだよ)(ダメですわ)(ダメダメだ)(を用いた緊急時の救助活動は未検証での応用は危険であり状況を悪化さ)(爆豪ってバスで本読んで酔わないのかな?)
「いやあ、照れるわあ」
言われた麗日さんの反応は悪くないですね。
褒められ慣れてないのでしょうか?
では判定の砂藤君は。
「う、うおーっ。ち、力が漲るぜえー」
セリフは棒読むですが、腕を上げてアピールしていますね。
(((気遣いの漢だぜ砂藤力道)))
彼の肉体を見ても個性が発動してるようには見えませんが、
「まあ良しとしましょう。次回はキョドらないようにしましょうね」
「良かった、終わった。え、次回?」
私の言葉に安堵した後に焦りだす兄さん。
やりますよ次回も(無慈悲)オールマイトの後継ならキスマークを付けながら平然と笑えるようにならないといけませんから。
と、そんなやり取りをしていたらいよいよ目的地に到着しました。
ついた先はあらゆる事故や災害を想定し体験できる演習場。どこかテーマパークみたいな作りなのはなぜなんでしょう。
そして説明してくれたのはスペースヒーロー『13号』災害救助でめざましい活躍をしている紳士的ヒーローにしてこの施設を作った人です。
どうやらオールマイトも参加予定らしかったですが、またやらかしてしまって来れないみたいですね、それで良いのか新人教師と思ってしまいますね。近隣のヒーロー達も現場にいてもオールマイトが解決したら収入にならないのですが大丈夫ですかね?
13号先生が語りだしたのは自身の個性と危険性について、聞くほどにブラックホールとは恐ろしい個性ですね。むしろその力で人々を救う使い方のほうが個性を応用しているかのように感じてしまいます。
超人社会とは個性使用を資格制にし厳しく規制する社会。原則公の場で使わないことで成り立っている社会。まあ母の個性みたいに使いみちの無い力が大半だから使う必要がないですよね、今までの機械の方が大抵便利なわけですし。
体力テストにて、自身の力の可能性。
対人戦闘にて、人に向ける危うさ。
今回のレスキュー訓練では、救うための個性の活用を学ぶ、というのが目的とのことです。
なるほど、これが力を人助けのために使うヒーローの在り方ですか。とても眩しくて尊いものですね。
けれど、
私達の想定通りにソレは起こってしまいました。
そんな予想は外れれば良い。
できれば取り越し苦労であれば良いと思っていた事が。
だがソレは起こってしまったのです。
敵の襲撃は。
なるほど、奪われたのはカリキュラムでしたか。
それならば確かに警戒はされにくいし、マスコミの対処で職員室は空きますね、
そして目的は、オールマイトとは。
ですが、
それでも先日の騒動は起こすべきではありませんでしたね敵共。
貴方達は時間を与えてしまった。
ヒーロー科において屈指のキレ者二人に思考させる時間を、最悪に備えて準備する時間を。
奇襲とは最初の一手で畳み掛けてこそ効果を発揮する戦法です。
突然の出来事で状況の理解と情報の整理に相手の思考が奪われているからこそ優位に立てるのです。
だが来る分かっている以上、そう想定されている以上、そんな優位はもはや無い。
「命令だ、来久」
マスコミ騒動後、襲撃があると想定し、襲撃があると仮定して、どうすれば良いか、どうされたら最悪か、どうすれば最善なのか二人で議論していたのです。
ボスと物間君は自らの手札を確認し、打てる手段を模索し、打つ覚悟を決めていたのです。
「敵共を叩き潰せ」
誰も傷つけさせない、誰も死なせない。
そんな最良の一手を。
「イエス、マイヒーロー」
たとえそれが、血が滲む程に拳を握りしめてしまうほどに葛藤する決断であっても。
自らも戦場に飛び込みたいという思いを噛み砕いて飲み干してでも。
我が主、爆豪勝己は宣戦布告するかのように告げるのです。
「あんな連中に誰も傷つけさせるな」
これが後に世界に名を轟かすヒーロー。
『最前線の