アニメ未放送原作知識有りです。
アニメ視聴のみの方は閲覧注意。
そこはとあるバー。
裏路地にひっそりと佇むその場所は、オールマイトに破れたオールフォーワンの所有物件にしてヴィラン連合と名乗る予定だった者達の拠点。
泥のようなナニカからゴロリと転がり出た白髪手男こと死柄木弔はモニターの先の闇の帝王にして自身に全てを与えてくれた人物に対し、息も絶え絶えに言葉を吐き出す。
「話が違うぞ先生」
『ああすまなかったね。まさかあそこまでやれる生徒がいるとは私も思わなかった』
『ワシと先生の共作 脳無までやられるとはのう』
『いや、ただ吹き飛ばされたことは負けとはいわないだろうドクター』
「こっちの作戦は読まれていた、こっちの戦力は一人のガキに潰された、オールマイトに会うことすら出来なかったぜ、アンタの言ってたことは全てデタラメじゃないのか?」
『疑う気持ちは分かるけど、それは誤解だよ』
『うむ、そもそもワープ個性がいる前提の対策なんて普通は考えんわい』
『まあ運が悪かった、いるんだよああいった才能に溢れたまさに時代の寵児としか言えない存在はね』
『じゃが所詮は子供、今頃はまぐれ勝ちに浮かれとるじゃろうよ』
「どうするんだこれから?」
モニターの向こうの二人の明らかに取るに足らない然とした態度に実際に相対した白髪手男こと死柄木弔は不満と疑問を思う。オールマイトより強いと気負いなく当たり前のように言ったアレは果たして舐めてよい存在なのかと。だが同時に、あの不可思議な体術を使い、未来のナンバー1ヒーローの忠実なサイドキックと名乗るガキは自身の嫌うヒーローの反応がまるで無かったなとも思う。むしろ同類意識、手を差し伸べた相手が違うだけの自分自身ですらないかとも。目が似ていたのだ、毎朝顔を洗う時に鏡に映る自分自身と(基本糸目だが戦闘中は開いていた)
『我々は自由に動けない! だから君のようなシンボルが必要なんだ。死柄木 弔!! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!』
いささか不満気な死柄木弔をモヤ男こと特別性脳無である黒霧がベッドルームを運んだ後も、何処とも知れぬ地下深くにて闇の帝王オールフォーワンと盟友たるドクターこと殻木球大は語り合う。
「予定外の結果に終わったね」
「うむ、じゃがテスト上脳無の性能に間違いはない筈なんじゃがのう」
「なに所詮は試作品、失敗はあるさ」
「時代の寵児か、またしても現れるとは」
「気にする必要はないさ、いつだって現れるソレをねじ伏せて私は君臨してきた、始末しそこねたのはオールマイトだけだよ」
「ま、良い個性の提供者でもあるから有り難い存在じゃわい。今回はどんなレア個性かのう♪」
雄英高校襲撃が一学生の手によって失敗に終わってもこの反応。世代を跨ぐ程に裏社会に君臨してきた巨悪にとっていかに才能と実力ある金の卵と言ってもたかが学生など自分の平らげる目玉焼きの材料に過ぎない。そうかつて目をつけられてしまった若き日の相澤消太と白雲朧のように。
「それよりも彼だよ、青山優雅君。今回は良い仕事をしてくれた。打ち捨てた百円ライターに過ぎなかったのにね」
「そう言ってやるな、入学しろの一言で最難関校に受かってくれたがんばり屋な子じゃろう。入試に落ちて脳無の素材になってくれとる子達も良い子達じゃがな」
「死柄木弔が捕まったら自分のことがバレるとでも思ったのだろうね、良い掩護だったよ。きちんとお礼の言葉を伝えたからまた期待できるね」
「何もしないでお礼を言っただけでえらく怯えていたのう。裏切る心配はなさそうじゃわい」
「裏切って困ることもさせないけどね、あくまでお遊びのついでのおまけだからね」
「「クハハハハ」」
闇の底にて巨悪らは笑う。
ただ楽しげに笑う。
オールマイト殺害、社会の混乱のどちらも、所詮は本命のための余興に過ぎない。
死柄木弔の成長による器の完成、それこそが彼らの目的なのだから。
ヒーローのように守る存在などないやりたい放題のヴィラン達はさて次はどうしようかと愉しげに笑い合うのであった。
所かわって雄英高校会議室、そこでは先日の襲撃事件の会議が行われていた。
「死柄木という名前、触れたモノを粉々にする個性。あくまで学生の予想に過ぎないにしても、20代〜30代の個性登録を洗ってみましたが該当なしです」
警察官である塚内直正がこの数日で調べ上げた調査内容を読み上げる。リーダー格である死柄木弔と黒霧と呼ばれたヴィランは公的機関に情報が無かったという結果に終わった。
だが本来推察される筈の死柄木弔達の人物像などはあまりにも迅速に緑谷来久がヴィラン達を撃退してしまったため行われることは無かった、ただその場にいたヒーローであるイレイザーヘッドと13号により幼児的万能感の抜けきらないいわゆる子ども大人であるように見えたと告げられた。
だが検挙されたヴィラン72名はそんな存在に賛同してことを起こした、それこそがヒーロー飽和社会により生まれた新たな問題なのだろう。
「ま、今回は生徒のお手柄だな」
「うむ、ウチの物間にも話を聞いたが随分と対策を練っていたようだ」
「何事も無く無駄に終わってもそういった話し合いは有益ですからね」
「ナゼ相談シテクレナカッタトモ思ウガナ」
一段落したところで話は別に、襲撃したヴィランを撃退した生徒達の件に移る。
特にマスコミ騒動からヴィラン襲撃を予想し対策を練っていた爆豪と物間は評価されていた。
「つっても相談されても答えられなかったろ?」
「本人達も考えた中で一番ありえない予想だったみたいですし」
「そうね、ヴィランにワープ個性があったら雄英高校に襲撃できますっ!!って相談されてもねぇ」
「「「そらそうだろ、としか言えん」」」
ワープ個性は希少、公的に登録されている者は世界で20人に満たず、その全員が国に囲われているか監視されている立場だ。
だからこそ仮にワープ個性がヴィラン側に存在したとしても、二人が考えていた対策はA組は緑谷来久による撃退、B組は足止めに逃亡を主眼に置かれていたのだ。
「あとはヴィランを撃退した緑谷弟についてたが、何なのコイツ?」
「得た情報からしても厄介なヴィランに圧勝してますよね彼」
「個性である前世、さらに前世についても一通り聞いたんだがなあ」
「ファンタジー的な大航海時代で世界を支配する組織の秘密工作員というか暗殺者ってお前」
「アンガイ我々モソンナ前世ダッタリシテナ」
「確かめたくもないわよ」
「まあなんだ、六式に生命帰還に覇気は使えたら便利なんだろうけどよ」
「六式と生命帰還はおかしな身体能力で、覇気は要するに気合いだろ?」
「右足が沈む前に左足を踏み出すことを続ければ水上を走れるを実現してますよね」
「いや、やってみたらできたよ私にも」
「オールマイトが出来る基準て」
「前世でどうやって体得したんだ?」
「出来なきゃ処分されるからみたいですよ」
「闇深いな本当」
緑谷来久については前世が前世だけにその強さを納得してしまう教師陣。ビルよりでかい巨人族なる種族が無法者として暴れまわり、それら以上の実力者があらゆる組織に存在する強さのブチ抜けた世界。その中で最上位の実力者だったのならああも強くて当たり前だろう。
「オールマイトより強いとか言ってたしなアイツ」
「HAHAHA、私から見てもそうだからね」
「ただ其れはオールマイトが今の自分と戦う場合ではだそうですよ」
「「「?」」」
「オールマイトみたいなヒーローが自分のような一般人には全力では戦えない。本気で戦うならヴィランになり悪逆無道を為す必要があるがその予定はない、だから勝てる」
「仮にヴィランになって戦ったとすれば、スペックでは勝っても戦いの末にその信念で限界を超えて逆転される可能性があるそうです」
「胸に抱いた一本の槍は、百の武器に勝るらしいですからね」
「なるほど」
強さを判定する経験が緑谷来久にはある。
だが信念と心が強さを超えることがあると緑谷来久は知っているのだ。
「さて最後に、とある疑念の出来た青山優雅君についてだけど」
根津校長による最後の議題とその対応によって会議は終了した。今回の襲撃事件、規模に反して被害はでなかったとはいえそれは頑張った生徒達がいたからだ。ヒーローとして教師として自らを恥じた者達は、これから予定されている行事に全力を尽くすことになる。
雄英高校に通う者達が新たなヒーローとして飛び立てるように、彼らの未来がより良くなるように。
おまけ とある方の一言
「慢心せずして何が闇の帝王かっ!!」