多様な世界だよな。
既に十年以上も生きているのにも関わらずそんな風に思う。
前世の自分は命令をこなすだけの存在であったのに命令をこなすために蓄えられたため知識だけは豊富。
そのためか中学二年生となった今でも前世の方の世界を基準に考えてしまうときがある。
超人系の悪魔の実の能力者が能力を発動している時のような姿が当たり前の人々が暮らす社会。
その様々な姿はかつて任務で訪れた魚人島を思わせるものだ。
この世界なら魚人や人魚達とて差別を受けないのだろうか?差別が悪いことという常識がようやく身についてきた自分は今更ながら魚人達の扱いが非道だったと知れた。向こうでは奴隷など当たり前だったのだから。
そんな思い返せば鬱になるだけの記憶をそっと閉じて聞き慣れた爆音の方を向く。
見れば幼馴染であり将来のボスである爆豪勝己が双子の兄である緑谷出久のヒーロー分析ノートを個性で爆破していた。
またやっているのか?
イジメなんて大分前にやめた筈なのにまた絡んでいるのだろうか。
先程の進路云々で兄の雄英志望はネタにされていたがその勢いだろうか。
何故かノートを持つ手が震え表情が引きつっていて鳥肌も立っているが。
「行くぞ来久」
「いやノート爆破はやり過ぎでしょうボス」
器物損壊の現行犯だこれ。
割と個性の暴発でスルーされるけどこの手の話。
「精神的苦痛でこっちが訴えてえよ(ボソッ)」
「?」
「テメエも双子の弟なら、無理なことは無理だと教えてやれよ」
「いや(あれだけヒーローのおっかけやっているのに関わらず)模試で合格圏内にいるのに否定はできませんて」
個性あっても大半は学力で無理だし。
「チッ、いいから行くぞ」
俯く兄の姿に後ろ髪を引かれるが、一応個性ある自分が何か言っても嫌味になる。
兄弟仲は悪くないのだが個性についてでギクシャクしてしまうのが最近の悩みだ。
ヒーローに成れるかどうかは、どうしてもそこが重要なのだから。
まして自分はヒーローではなく、爆豪勝己のサイドキックになることが目的であるから余計に。
「それでなんであそこまでやったんです?」
進路のプリントを渡された時に言ったように無個性が同じ土俵に立つことが気に入らないからではないでしょうに。
個性的に自分も無個性と大差ないのだから。
「身長、体重、座高、胸囲」
「?」
「好物に趣味に日課に反応から口癖に咄嗟の行動と靴下はどっちから履くかまで」
最初は首を傾げながら聞いていたが、ソレが何を指しているのか分かり先程の彼のように顔が引きつる。
「自分の個人情報がノートにビッチリ書いてあったらテメェはどう思うよ?」
ノートは山程あるのにピンポイントで自分の項目を引き当てたのか。
もしかしたらノートを読んでこれくらい書けるなら後は実践してみせろと発破をかけようとしたのかも知れない、ボスらしく。
しかし書いてあった内容がストーカー的なアレだったから反射的にやったのか。
とはいえ兄のフォローをしておくべきか。
「兄の愛ですねっ!」
「爆殺すんぞ」
笑顔とともに親指を突き立てた自分にドスの効いた声とともにマジな殺意が飛んできた。
「まあソレは冗談ですが、兄のあの分析力は大したモンでしょう、学力もあるしヒーロー事務所の事務員にはうってつけではないですか」
新人ヒーローはそこが大変だとよく聞く。
広報なども考えると兄の知識量とヒーローに対する情熱は有益だと思うが。
「アイツがそれを望んでねえから誘わねえ。
それに俺に勝つ気でいるのが気に入らねえ」
そう言ってさらに対して鍛えてもいねえ分際だから余計にな、と続ける。
確かにヒーローを目指すのに格闘技一つ学んでないのはどうかと思うが。
「自分のせいでしょうソレは」
兄が体を鍛えていないのは自分に原因がある。
自分が爆豪勝己のサイドキックなると決めてから前世でやっていた修業を片っぱしから試した。
兄はそれを見て一緒にやろうとしたがあまりの過酷さに体を壊して挫折してしまったのだ。
「自分の個性は記憶だけでは無く、肉体にも影響があるのかもしれません」
兄は挫折した訓練も自分には容易く熟せた。
兄が無個性だから出来なかったかとも思ったが、六式の体得は器用なボスですら無理だった。
個性の効果なのだろう。
兄もそう思い、訓練しようとしなくなった。
無個性だから無意味だと判断して。
元より超ヒーローオタクだったけど分析に力をいれるようになったのはそのせいだと思う。
「ケッ、強くなきゃなんにもならないだろうがヒーローはよお」
不満気なボスの反応にも納得できる。
分析することで個性の対処法は導きだせても、対処できる地力が無ければ意味はないのだから。
海兵みたく銃火器の装備をこの社会は認めていないのだし。
「強さだけが全てではないと言うには暴力の有り触れた世界ですからね此処も」
身につかないとはいえ自衛できるくらいは鍛えて欲しいのだが。
かつての世界でも一般人であっても海賊が来たら銃火器構えて応戦した。
「デクには教えないのかテメェの前世」
「R18G指定ですから18未満は閲覧禁止です」
いや子供に話して良い内容ではないでしょ。ボスにだって概要だけだったし(当時4歳の語彙力の関係で)
「政府お抱えの暗殺者とかフィクションかっての」
「こっちにもいそうですけどね、綺麗事だけでヒーローなんて制度が成り立つとは思えませんよ」
個人の正義と善意の暴力が許容できないから法で縛っている、ヒーローを公的に認め職業にしたのはそれが許されないからだ。
無法で成り立つ社会とは、法で規制する必要がない程に個人のモラルが高い社会という意味なのだろう。
「俺は軽くぶらつくがテメェはどうする?」
「新しいクレープ屋が開店したのでそちらに行こうと思ってます」
「何気に食い道楽だよなお前、前世の影響か?」
「それはありますね。食文化に関してはこちらは素晴らしいですよ、貴族が口にするレベルの代物が容易く手に入る」
何を食べても超美味い。
「ほどほどにしとけよ」
「三度の飯より間食が好きでして」
「子供かよ」
呆れた様子のボスと別れて駆け出す。
クレーープ!!
側を離れたのは爆豪勝己への信頼もあった。
いつ何時ヴィランに襲われるか分からないこの社会で複数行動が奨励されている。
けれど共に訓練していた爆豪勝己の実力はそこらのヒーローに劣るものではない。ヴィラン如き返り討ちにできるだろうと自分は思っていたのだ。
多様な個性の厄介さと、兄の我が身を顧みない勇気も見るのはこの後のこととなる。
主人公設定。
緑谷来久。
みどりや らいく。
Birthday 7/15
Height 185cm
好きなもの 食べ物全般
糸目黒髪長髪で兄とは似ても似つかない容姿。
生命帰還で武器として使用することも想定して髪は背中の中程まで伸ばして一纏めにしている。
容姿が狐みたいとも言われることもあるためヒーローコスチュームには狐面をつけようと思っている。