注意、かなりアンチが入ります。設定も理屈もオリジナルです。
ホークス事務所は九州、移動だけでもかなり時間がかかりますね。
とはいえ一日もかからないで新幹線で行けるのだからこっちの世界は便利です。大半が海で気象も摩訶不思議な前世ではありえなかった快適さです。
同じ職場体験先を選んだ常闇君と一緒に新幹線に乗り込み、飯田君のことが気にかかりながらも座席につきました。
「しかし意外だな」
新幹線が動きだしてからしばらくして、常闇君が口を開きました。
「緑谷は爆豪と同じ所に行くと思ったが」
学校では常に一緒だからそう思われて当然ですね。
「別行動自体はしますよ私達も。お互いに見聞を広めたかったですし」
二人いるのだからそれぞれ別の所を見るべきでしょうしね。
「そうか」
そう言って黙りこくる常闇君ですが、何か聞きたいことがある様子です。言うべきか葛藤しているみたいたいですね。
「どうしました?」
なので私から話をふれば常闇君は意を決したように言います。
「怖くなかったのか?ヴィラン襲撃事件の時。
お前はあんな大勢に躊躇わず突撃して戦った。
確かに俺も夜ならば確実に勝てたし、大半のヴィランには遅れを取らないだろう。だがあんな悍ましい悪意をぶつけられて、お前はなんで平然と戦えたんだ」
なるほど、それが彼の悩みですが。
これは他の皆も思っていることかもですね。
ヒーローを志す立場でありながら足が竦んでしまった事実が彼の口を重くしてしまったのでしょう。
まあ仮にですがクラス内でも気にせず戦えたのは少数でしょうね、勝ち気なボスや漢気優先な切島君、あとはヴィランより恐ろしい存在(父親)を知っている轟君なんかは。
しかしコレなんと答えたものか。私が悪意を気にならないのは前世の記憶によるものですが、その中でも最たる理由が。
「悪意なんかよりもさらに恐ろしい感情を知っているからですかね」
「悪意よりもか?」
自然と頭に思い浮かんだのは例の如くあの存在と一部の者達。
「権力者の無邪気な欲望と、悪党達による子供のような夢と野望」
そう、いつだってそれが一番恐ろしかった。
正式な法の元に振るわれる自由、無法の元に振るわれる自由。
そんなものが数え切れない悲劇を生み出してきたのだから。
まあ前世の私が言ってよいことではありませんけどね、何も考えず命令のまま動いていた私も大差ないですから。
「悪いもののようには聞こえないがな」
「お金が欲しい、個性が使いたい、暴れたい、不満がある、程度の悪意なんかは満たしてやれば解決しますけどそれらはそうそう満たされはしませんからね」
だからこそ天竜人に泣く人は尽きないし、ロックスは世界を震撼させた。
きっとあの世界はいまでも欲望と夢と野望で荒れていることだろう。
そしてこの世界でも最悪のヴィラン達はそんな衝動で世界を乱しているのではないかと思う。
「そうか」
完全に納得はしてないようですが、常闇君も見れば分かると思いますよ。兄さんなんかもヒーローになりたいという夢であそこまでできているわけですから。
移動時間をこんな会話で潰しながら九州のホークス事務所へと向かいました。
「やあよく来てくれたね」
爽やかに言う速すぎる男こと、ナンバー3ヒーローホークス。
「今回俺が体育祭指名したの初なんだけど緊張したわ、なにせ雄英高校出身じゃないしね」
現トップヒーローの中じゃ珍しいですね、なにせオールマイトにエンデヴァーにベストジーニストにエッジショットは雄英高校出身ですから。
「それでなんで俺達を」
「雄英高校からの勧めもあったし、鳥仲間だから」
私は違いますけど。
「お巫山戯で?」
「いーや2割本音、半分は1年A組の人から話を聞きたくて君らを襲った敵連合とかいうチンピラのね」
「ならば単独で殲滅した緑谷を呼ぶのは納得ですね」
私の行動は物間君の想定にボスの命令があったからですけどね。
「そ、んでどうせなら俺について来れそうな優秀な人ってことで上位から良さ気な鳥人を。ついでに緑谷君は飛べれるしね」
理屈は通りますね。
それだけではないようですが。
まあ私として経験したいのはヒーローとしての実務の方です。ついて来れそうだから呼んだのならついていって上げましょう。
サイドキックの方を含め自己紹介を済ませ、泊まる部屋と仕事の説明を受ける。
とりあえず事件起きたら飛ぶからついてきてとホークスから告げられたのでその通りにしましょう。
なるほど流石はナンバー3ヒーロー。
速すぎる男の異名は伊達ではなく事務所を構えている都市であれば瞬時に到達し捕縛する。個性である剛翼も練度が高く自由自在だ。振動を羽でとらえる感知力も高く、近場であれば連絡より先に駆けつけていた。
弱点は近接戦闘ですかね?急所を正確に狙い撃っているので苦戦はないですが、硬い装甲持ち相手では厳しいかもしれません。
いや捕縛ならそれも問題ないですね。
「いや確かについて来てと言ったけど」
「?」
「常に真後ろにピッタリついて来られるとは思わなかったよ。というか怖い」
六式が一つ剃が応用、女李参。
私メリーさん今貴方の後ろに居るの、という怪談で思いついた技で、剃で常に相手の背後を取り続け視界に入らないようにします。気配と声はするけど姿をとらえることができない、そんな状態にする技です。
一度ボスにもやって怒られましたね。
「うん、舐めてたよ。俺も公安も」
ホークスの実力は高く、そのスタイルに方式は参考になる。なるので職場体験はこの調子でピッタリと背後に付こうと決めました。
そんな職場体験を続けてはや二日。
時折常闇君を抱えながら女李参をしてホークスのヒーロー活動を学び続けました。
ホークスが何故かゲッソリとしてきましたが、仕事が終わったら夕飯に九州名物鳥の水炊きをご馳走してくれて今日の活動は終了です。
同室で寝泊まりする常闇君の黒影という個性ならではの睡眠時の苦労を聞いたりして過ごし、常闇君が就寝したところで唐突に一枚の羽がフワリと私の前に現れました。その羽は私の目の前に有り進路を指すように傾きました、なんとなく要件が分かった私はその羽の指示に従い屋上まで行きます。
「ゴメンねこんな遅くに」
そしてやはりそこにいたのは職場体験先のウイングヒーローホークス。
屋上の端に立ち翼を広げながら私を迎えます。
「何か御用ですか?」
ホークスのヒーロー活動時とは違う気配。
それはひどく覚えのあるものです。
「危険なんだよ君は」
告げられた言葉と共に放たれる剛翼。
幾百の軌道を描きながら襲いかかる羽の乱舞はそれでも一枚も当たることなく私が居た場所にぶち当たる。そうその場所に私はいない。
「それで何の御用ですか」
私はホークスの後ろに居て、人差し指を後頭部に突きつけているから。
「降参」
ヤレヤレと両手を上げながら職場体験時の気の抜けた顔に戻るホークス。
「やっぱり貴方がヒーロー業界の裏方ですか」
多分いるだろうなと思った存在。
ヒーローというブランドとこの国の治安を守る、ヒーローにしてヒーローではない存在。
かつての私のような権力者の駒。
「ま、君の前世なら推察できるよね。
うん予想通りの存在だよ。主な仕事は後ろ黒い、表沙汰にできないことだよ」
「罪を犯したヒーローの処分などですか?」
「ま、そんなトコ。ヒーローという存在は治安の要、国民からの信頼が揺らいじゃいけないからね」
でしょうね。
政治家や警察官の不祥事が取り沙汰にされる中、ヒーローがそうなることはあまりない。
それはそういった件を相手ごと物理的にもみ消しているからか。
「君への要件は、実力の調査に勧誘ともう一つなんだけど。うん俺じゃ勝てないや」
パワー押しには割と無力。
職場体験時に自分で言ってた言葉通り、ホークスは私には勝てない。
まあ年齢的にまだまだ伸び代はありそうですけどね、この人も。
「実力は分かった、じゃあ緑谷来久君。
俺と一緒にヒーロー公安委員会でこの国を守らないかい?」
「裏方で手を汚すなんて一度やればたくさんです」
うんざりした気分でそう返します。
何よりボスとトップヒーローになるのにそんなことやってられません。
「だよね、上司もそう言うだろって予想してた」
予想してたにも関わらず勧誘したのはそれだけ人材が欲しいからですかね。
「それでもう一つは?」
随分あっさり引きましたが、取引や脅迫で食い下がらないのは意外ですね。そうされたらこちらも手段は選ばないつもりですが。
「こっちは取引なんだけど、六式と覇気を広めないんで欲しいんだ」
「六式と覇気をですか?」
「うん、特に外国に」
「それは別にかまいませんが、雄英高校には留学生もいましたよね?」
麟君とか角取さんとか。
「ソレくらいなら平気。まあ要するに個性を跳ね上げるその技術を日本で独占したいのさ」
所属ヒーローの強さが軍事力なこの世界、他国に優位に立つための方針ですか。
「ですが覇気は教えて必ずできるモノではないですし、六式自体はある程度の実力あるヒーローなら多分再現できますよ」
特に六式はこの世界の科学技術ならサポートアイテムでも再現できそうなんですよね。
「それでも体得した利点は計り知れないだろ?」
まあそうですね。
悪魔の実と六式の組み合わせのように、個性と六式の組み合わせも強力でしょうし。
「ま、こっちは取引だから報酬もだすよ。
場合によっては別口で学びたいしね」
公安に所属しなくてもヒーローとしてこの国に所属していれば利益になる。
その判断からの対応ですね。
「承知しました。今後は覇気と六式を教える場合はきちんとそちらに伝えて許可をとります」
「取引成立♪」
報酬は後日に改めて決めますか。
ホークスのその言葉でこの場の張り詰めた空気は四散しました。降参と言っても警戒してましたしねこの人。
この国の暗部なんてものに触れはしましたが、利益ある取引ですんだから良しとしましょう。
「ところでコレは個人的な興味なんだけどさ」
「興味ですか?」
「マジモンの秘密工作員だった君からしてヒーロー公安委員会がやってるこんな事をどう思った?キャリアなら俺の先輩でしょ君」
前世の世界政府とこの国はそもそも規模に差があり過ぎなんですが。
けど思ったことと言えば。
「力が弱すぎて、やることが半端。って思います」
「俺が居るのに足りないかな?」
「貴方が裏切れば終わる程度の戦力でしょう?ぶっちゃけ雄英高校に襲撃してきた脳無を本部にブチ込んだら貴方が居ても壊滅しますよ」
ホークスは強い。
けどそれはどこまでいっても、人を救うヒーローとしての強さだ。
人の救い手になれる人材をなんで暴力の担い手にしようとするのかな?
「それは、」
「はっきり言って脳無の製作者にしてヴィラン達の黒幕がヒーロー公安委員会を放置しているのは、敵にもならなくて眼中に無いからでしょう。連中の脅威はオールマイトだけですよ」
「だから半端なんだね」
「戦力求めるなら最低でもエンデヴァーは囲うべきですね。ヒーローを裁くにしてもヒーローの監査組織に執行部隊を作るべきだ」
ヒーローのブランドを守るなら影でコソコソやらないで堂々とやれば良い。
実際に外国ではそこら辺シビアなのに。
「このやり方で上手くいってたんだけどね」
「オールマイトがいてヴィランに放置されてるからでしょう」
マスコミに情報流されるだけで終わる現状を積み重ねてるだけじゃないですか。
「島一つを不都合だからと消せる組織であっても揺らぐことがあった。そうじゃない貴方達はもっと真剣に考えて徹底すべきです」
「徹底か」
「世界を動かす黒幕気取るには脆弱過ぎなんですよ、ヒーロー公安委員会」
正直脳無なんてシロモノは国益のために国家主導で作るような存在なんですよ。個性研究に人体実験するのは当然でしょうに、個性婚なんて遺伝に喧嘩売ってるような無茶苦茶な理屈もあるし。
なんというか個性差別やらは多い癖に、変なトコでモラルが高いですよねこの世界。
オールマイトというヒーローという存在と、一度個性で社会が崩壊したからですかね?
「上司に伝えてもいいかな?正直思うトコある意見だったよ」
考えながらそう言うホークスに私は構わないと伝えます。雄英高校のヴィラン襲撃がオールマイトの宿敵によるものならヒーロー公安委員会も今のままでは危ういですからね。
「フー」
ホークスが去った後にため息をつく。
やはり頭を使うのは苦手だ。
今後こんな話をする時は物間君にも同席してもらいましょう。
そうして職場体験の日々は過ぎました。
なおホークスと対話した次の日に兄さん達がヒーロー殺しと相対し騒動があったと知るのはこの少し後のことになります。
オリジナル六式 女李参(メリーさん)
別名 相生拳法 背弄拳
説明 西尾維新作刀語を読もう