独自設定ありです。
「うらあっ!!」
武装色の覇気の右手に纏いながら振りかぶる。
襲いかかる現最強の攻撃力を誇る個性ヘルフレイムの業火を散らし、ナンバー2ヒーローエンデヴァーに突っ込む。
「生意気な小僧だっ!!」
鼻っ柱をへし折るために呼ばれた職場体験。
実力を測るためという名目の元、国内トップの規模と設備のエンデヴァー事務所のその地下にある耐炎設備の整った訓練場にてエンデヴァーとぶつかり合っていた。俺の個性は炎相手ではそれほど意味はない。ゆえに先日の雄英体育祭にて感覚を掴んだ武装色の覇気を主軸に最強のヒーローが一角に挑む。
強者との戦闘は自ら望む所だ、自分がどこまでできるか知れるし、何より覇気を高めるために必要なことらしいからだ(来久は戦闘より暗殺ばかりでイマイチ実感できなかったそうだが)。
「こんなもんかよナンバー2っ!!銀メダリストの実力を見せてみろっ!!」
「貴様ァ!! 出る杭は打たれるという現実をその身に叩き込んでやるっ!!」
「打たれて負けてんのは杭じゃなく地面だろうがっ!!」
出る杭は打たれるという言葉がある。だが杭自体が折れず曲がらず己を貫き通しているのならばそれは敗北ではない。
「それは現実を知らぬ戯言だっ!! ヒーローになれば嫌でも思い知らされるっ!!どれだけ実力があろうとも功績を上げようと、平和の象徴という大槌に打たれ、その他大勢のヒーローに落とし込まれるとなぁっ!!」
ランキング上位ヒーローとて平和の象徴オールマイトの前には霞む、それが今のこの国の現状だ。
だが、
「俺が折れる理由にはならねえんだよっ!!」
ぶつかり合う拳、武装色の覇気を纏う拳に劣らないとは流石はエンデヴァー。凡百の増強系個性を上回る鍛え抜かれた肉体(武装色の覇気が視認できる程発現しなくともある程度影響してるらしいが)、だからこそナンバー2なのだと拳を交わしたからこそ実感できる。
職場体験初日は簡単な業務説明後こぶっ倒れるまで鍛錬して終了した。
二日目、今日も鍛錬かと思ったら轟が俺は経営や運営の仕方を知りたがっているとエンデヴァーに言ってくれたため事務作業を学ぶことができた。見たところ学べばできなくはないようだがやはり手間がかかるな、ヒーローとして表に立つ以上は事務員を雇うべきか。今のうちに経営科と繋ぎを作る手もあるが、それは自分でできるようになってからだな。事務資格など雄英高校在学中に取得する資格を見直す必要がありそうだ。
エンデヴァーの話によると明日は遠出するようなので鍛錬は軽くボコられる程度ですんだ。
三日目、本日の目的地は保須市。
目的はヒーロー殺しの捕縛だ。
思想犯とされるヒーロー殺しはその行動に一定のルールがある。多くのヒーローがその分析に基づいて保須市に集結しているらしく、そのヒーロー達の行動も治安向上に繋がっているいるらしい。
丁度よいな、と思う。
来久の感覚によると飯田が返り討ちに合う復讐者みたいな気配だったとのことだから同じ市内に居るのは好都合だ。
一応その予測をエンデヴァーに告げれば、轟は無表情ながらに心配そうな反応をし、エンデヴァーはそんな奴を職場体験さすなよと露骨に顔に出ていたが。
「用意しておいて正解だったな」
そして駅に着いた時点でエンデヴァーから免許証のような物を渡される。
「一時的な個性戦闘許可証だ。貴様らはそこらのヒーローより戦えるからな」
基本はエンデヴァーの後ろにつくだけの予定だが、ヒーロー殺しが手段を選ばない手合だった場合は戦えた方が良い、そのために用意したとのことだ。すぐに国から許可が出るのは俺がエンデヴァーであるからだと、息子に見せつけるように胸を張ったが息子は当たり前のように無反応。
「そしてダイナゴッド、現場は組手とは違うことを教えてやろう」
「そいつはどうも」
こちらには威圧してくるが現場での立ち回りは見てみたいとこだ。
準備も整い、いざパトロールを開始しようとした所で遠くから爆音が響いた。
事件発生、ならば駆けつけるべきだと走り出そうとした所で携帯からメールの着信。こんなときに来久の食レポだったら後でしばくと思い開けば、デクから位置情報のみの一括送信。
「エンデヴァーッ!!」
「どうしたダイナゴッドッ!!」
「ヒーロー殺しの可能性ありの位置情報っ!場所は路地裏、恐らくヒーローと学生二人が交戦中っ!!」
「ならば貴様らが行けっ!!基本は保護後退避っ!!俺は先ずあちらを優先するっ!!」
「交戦はっ?!」
「俺とあれだけやれて、ヒーロー殺しなんぞに遅れをとるなよ。刃物使いの可能性が高いため特殊警棒の使用も許可するっ!!」
「了解っ!!」
エンデヴァーの許可を得て既に走り出していた轟に並ぶ。
「凄えな爆豪」
「何がだ?」
「あれだけの情報でこんなに動けて」
「お前もできたろ、俺が先にやっただけだ。状況はヤバいぞ、ヒーローは動けねえか死体、飯田と何故かデクまでいやがる」
「一号ならなんとか出来るか?」
「来久がどこまで仕込んだかにもよるが、発動型個性の身体能力に劣るヤツよりはマシだ」
ちょくちょく来久による無理難題をこなしているようだが、六式などは一度挫折したから敬遠してた筈だ。あの発現した制御不安な謎個性でどこまでやれるか。
「急ぐぞ」
「ああ」
不慣れな見聞色の覇気を発動させつつ轟と共に現場へと走り出した。
最悪だ。
いやまだマシではあるな。
ヒーローも飯田も倒れ伏しはしていても意識はあり、デクも四つん這いな態勢で動けない。負傷しているが生きているなら最悪じゃない。
「次から次へと、今日はよく邪魔が入る」
「テメエの存在そのものが日常生活の最大の邪魔だろうが」
轟の炎に反応し、動けない飯田から飛び退く男。マフラーが特徴的な怪しい風体の刃物使い、コイツがヒーロー殺しか。
「轟は動けない連中を逃がせ、足止めは俺がやる」
柄頭に手榴弾を取り付けた特殊警棒を構える。
結局発目に任せる破目になったコレの性能はサポート科担当であるパワーローダーのお墨付き。
「轟君、かっちゃん、そいつに血ィ見せちゃ駄目だ!多分経口摂取で相手の自由を奪う!」
「それで刃物か、俺なら距離保ったまま」
「ボケ」
迂闊な発言をする轟の言葉を、投げナイフを特殊警棒で弾きながら遮る。
「そんなことが有利に働く相手がここまで被害をだせるかよ」
投げナイフと同時に接近、振られる刃こぼれのひどい刀を鍔迫りで防ぐ。
「貴様はこの中で一番やるな」
「個性頼りじゃないヴィランは少数って話だったんだがな」
身のこなしが尋常じゃないな。
刀の腕から轟の氷じゃ壁にならんし、投げナイフを防げる装備の奴もいない。
俺以外頭を狙われたら終わりなら、刀の間合いでの近接戦闘が最善だ。
「何故だ、三人ともやめてくれよ。兄さんの名を継いだんだ、僕がやらなきゃ、そいつはボクが」
「だったら迷子の手を引けよ」
やっぱり復讐目的か。
身内やられたら仕方ないが、それでもよ。
「お前が尊敬するインゲニウムはそんなヒーローなんだろう?」
自慢げに誇らしげに語った自慢の兄。
それをお前自身が歪めちゃ駄目なんだよ。
「お前も良いな」
「テメエが駄目だろ」
元凶が戯言ほざくな。
「貴様は雄英体育祭で魅せた学生だったな。ならば問おう、何を持ってヒーローとなりナンバー1になろうとする」
刀と警棒を打ち合いながらの会話、援護として放たれる轟の氷は捕らえることが出来ずヒーロー殺しと俺の足場となる。
「そうじゃないと救えない奴がいるからだ。俺が前にいないと途方にくれるポンコツがな」
だから俺は走り続ける。
あの日手を伸ばしたその時から。
「お前は良い、その二人も合格だ。
だがそのヒーローとインゲニウムは私欲を優先させる贋物でしかない、英雄を歪ませる社会のガンだ。誰かが正さねばならないんだ」
「時代錯誤の原理主義だ、人殺しの理屈に耳貸すな」
「端から聞く気なんざねえよ。コイツは好みでヒーローを選別する人殺しに過ぎねえ」
ヒーロー殺しについては流れてる限りの情報は調べた。確かに犯罪率の低下という結果、殺害されたヒーローの中には問題行動をとっていた奴もいた。
けどな、
「まだ道半ばだったんだ」
そんなヒーロー達だってまだこれからだったんだ。これからどんな風になるかなんて誰にもわかりはしないのだから。
「その場の印象で、未来を奪うなクソ野郎」
「社会は今正さねばならない」
通じねえよなコイツにはよ。
人は変われると知る俺に、ヒーロー殺しは許容できない存在だった。
後ろで動けそうなデクを確認しながら、俺は再度警棒を構えた。
爆豪君新装備 バーンロッド。
基本刃物類対策の武器。
折りたたみ式で爆破できる機構あり。
柄頭に爆破剤を補充するための手榴弾が付いている。