爆豪勝己のサイドキックは元CP0   作:規律式足

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 第三者視点です。


第37話

 

 爆豪・緑谷チーム。

 

「戦闘は避けるべきだと?」

 

「そうだよ、いくらハンデがあってもかっちゃんがオールマイトに勝つなんて」

 

「そうかよ、ならお前はそうしろ」

 

 冷静に状況を判断しての意見。

 だがそれを爆豪勝己は苛立たしげに振り払う。

 今は多少ましになった間柄。

 だが昔からの両者の関係はこんなものだった。

 追い縋る緑谷と振り払う爆豪。

 まるでお前には期待してないと示す、そんな関係。

 

「試験に合格する為に、僕は言っているんだよ。

 聞いてって、かっちゃん」

 

「だからそうしろと言っている」

 

「そうやって突き放すから、いつも会話にならないんじゃないか!」

 

「さて脅威が行くぞ!」

 

 マトモに会話すら成り立たね両者に最強が迫る。

 平和の象徴へと至った暴力の頂点が。

 

「試験だなんだと考えていると痛い目みるぞ。

 私は敵だヒーローよ。真心込めてかかってこい」

 

 威圧感。

 奇跡的な巡り合わせで親しくなった緑谷出久が知らないオールマイトがそこにいた。

 

「正面戦闘はマズイ逃げよう」

 

「ボケ、実力が上の相手から逃げる方が難易度高いわ。特にオールマイトは逃げる敵を捕らえる専門家だぞ」

 

 気押された緑谷の提案を一蹴する爆豪。

 自身のサイドキックとの関わりが彼に逃亡の困難さを刻みこんでいた。

 サイドキック曰く、同じ島にいる自分より弱い相手を逃がすことはありえない。

 ましてや相手は平和の象徴。

 彼から逃げおおせた敵はただその事実だけで社会の脅威と認定される。

 ゆえに爆豪勝己は下がらない。

 逃亡の行為が無駄であると理解しているから。

 そしてそれ以外にも彼には下がらない理由がある。

 突っ込むオールマイトに出鼻をくじくための閃光弾をうつ。相手の勢いを殺してからの迎撃。だが百戦錬磨のオールマイトには視覚ごときでは影響はない。瞬時に立ち直り殴りかかる。

 

「やるね爆豪少年」

 

 武装色の覇気を纏いながら拳を振るう爆豪を見ながらさらにオールマイトは声をかける。

 

「君はどうするんだ緑谷少年?

 チームを置いて逃げるのかい?」

 

 咄嗟のフルカウルの発動。

 だが足は前をむいていない。

 ヒーロー殺しを威圧感から連想してしまった緑谷出久は前に踏み出すことができない。

 そのせいで逃げる動きが進む爆豪の邪魔をする。

 

「チッ」

 

 鬱陶しいと言わんばかり舌打ちは緑谷にも届く。悪態以上に向けられた邪魔なものを見る目。

 それが何よりも緑谷出久を打ちのめしていた。

 

「だから正面からぶつかって勝てるハズないだろ!」

 

「なら逃げろよ。逃げて試験とやらに合格しとけ」

 

 意識をこちらに向けようとする緑谷にそれでも爆豪は取り合わない。

 彼は悟っていた。

 コレを試験突破だけを目標にしているヤツと組んでも無意味だと。

 

「オールマイトレベルの敵がいんだぞ。

 俺が逃げたら、誰が立ち向かうんだ」

 

 コレを試験だと割り切るのは容易い。

 それを勝利の為と活かすのは賢い。

 だが現実ならばどうだ。

 眼前のオールマイト級の脅威を放置することがどれだけの悲劇に繋がるかなど今更語るまでもない。

 

「世界の敵全てが、今のオールマイト以下な訳ねえだろが」

 

 本来ならば、平和の象徴が当たり前の彼ら世代なら想像もしない強者の存在。

 それを誰よりも知る爆豪勝己はその可能性を否定できない。

 ゆえに、

 

「今のオールマイトをぶっ倒せねえヤツはナンバー1ヒーローになんかなれねえんだよっ!!」

 

 爆豪勝己は下がらない。

 渾身の覇気と爆破を込めてオールマイトを遠方へと殴り飛ばす。

 そしてその言葉に緑谷出久はようやく理解できた。

 自身の絶対、オールマイトが倒れる可能性を。

 そして思い出すヒーロー殺しとの後にオールマイトから知らされた宿敵たる巨悪の存在。オールマイトが半死半生になりながらも倒しきれなかった存在。それが今尚闇に潜み牙を研いでいる事実を。

 オールマイトに個性を託されることは、オールマイトの後継になることは、オールマイトの続きであればよいのではない。

 オールマイトの出来なかったことを成し遂げられる存在にならないといけないのだと。

 その重みをようやく緑谷出久は理解した。

 ワンフォーオールを託されずに頂きに至ろうとする幼馴染の姿を見て。

 

「行こうかっちゃん、いやダイナゴッド。

 オールマイトを倒しに」

 

 少年は今憧れに成るのではなく、憧れを超える覚悟を決めた。

 

「はっ、ようやくかよ。いくぞデク」

 

 それは呼びやすい渾名としてのデクではない、ヒーローとしてのデクだった。

 

「でもさ聞いてもいい?なんでそこまで下がることを嫌がったのさ」

 

 ヒーローとしてだけの理由ではないように思えたデクはそう尋ねた。戦略として有利な状況に持ち込むことはヒーローとしても間違いではないからだ。

 

「俺はヒーロー殺しを否定した、あの野郎の理想を否定した」

 

 既に世界的に有名なヒーロー殺しステインとダイナゴッドの対話。

 

「だから俺はあの野郎の理想、オールマイトだけには退けねえんだよ」

 

 否定したなら証明しなければならない。

 オールマイトに打ち勝つことで。

 だがタイムリミットは近い、それができない可能性はどうしてもある。

 だからこそ今は、それができる機会は逃せない。

 絶対に認められないヒーロー殺しの正しさを受け入れないためにも。

 

「差を感じるよ本当にね」

 

 その言葉にデクは感嘆したかのようにため息をついた。

 

「お前はヘドロヴィランに突っ込んだ時からぶれんな、アレがヒーローなんだよ」

 

 目的は定まった。

 意思は重なった。

 ならば後は倒すのみと、砂埃を上げて飛びかかってくる最強を二人は見据えた。

 

 その後の試験結果は語るまでもない。

 

 

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