爆豪勝己のサイドキックは元CP0   作:規律式足

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第4話

 

 あのヘドロヴィラン騒動から数日。

 解決の立役者である私達は学校内でより注目されるようになり、本気で雄英高校を目指しているのだと周知された。兄を無個性だと軽んじてたクラスメート達も同じ状況では自分は何もできないだろうからと、笑い者にする人はいなくなった。そこには助けられた隣のクラスの彼の口添えもあったからだろう。

 そんな学校環境が変化する中、兄はオールマイトの後継者となるべく早朝と放課後にオールマイト監修の体力作りの訓練に励んでいた。

 そんな日々の朝。

 

「なんか最近かっちゃんが優しくなってる気がするんだけど」

  

 ヘドロヴィラン騒動よりボスは兄を腫れ物を扱うように接していたりする。兄が気にするレベルで。

 

「ボスは元から優しいですよ」

 

「それは7割くらい来久の妄想だけど、どうしたんだろかっちゃん?」

 

「今真顔でエグい切り返ししませんでした?」

 

 一時疎遠に成りつつあった兄とは今やこんな会話をできるようになった。

 そしてボスの反応の理由にも心当たりはある。

 オールマイトの秘密を守るため要点をぼかしているのだが。ボスからしたら、兄は五十代の骨のような男性と朝晩密会している幼馴染なのだ(しかも喜々として)。いかに心臓に毛の生えた程に豪胆なボスであろうと反応に困り果てているのだろう。何せ私にも下手に反対したら状況が悪化するかも知れないと、見守るだけにしろと厳命しているのだ。

 どう解けば良いのだこの誤解。

 しかしボスとてオールマイトファン、兄がオールマイトに個性を託される予定で訓練をつけられているとなると劣等感に苛まれるやも知れん(何よりも口外できないし)、兄の身体が出来てきたらヒーローに訓練をつけられていたと説明するべきだろう。

 そして私だが、オールマイトに自らのことを明かし協力者として力を貸している。

 信頼できると兄に太鼓判を押されたことと、歳不相応の私の実力を悟ったからだとか、君って私より強いよねHA HA HAと言われて少々驚いた。私の実力を察する者に始めて会ったからだ。やはり前世とこの世界、文化はともかくとして戦闘能力では大分差があるようだ。

 結果として兄の訓練はオールマイトの『目指せ合格アメリカンドリームプラン』に並行して私から課題を出す形に落ち着いたのであった。

 入試までの十ヶ月さあ訓練だ。

 

 

「板です、割ってください」

 

「なんでっ!?」

 

「調べたら雄英高校の実技は市街地にてロボとの戦闘のようなので、モノを壊す感触に慣れてください」

 

 ネットに拡散してましたね、あんなん無理ゲーだったとか。

 嵐脚にて切り出した木の板の山。鉄板が前提だがまず慣れないと。徐々に厚くして身体が出来たら鉄板だ。

 

「手段は問いません、壊した際の反動や衝撃を知ることが重要なので。ただ道具を使うなら持ち込み可能な範囲かつ市街地にて入手できるモノにしてください」

 

 とはいえ評価形式なら過剰な武装は減点だろう、やはり無手が前提か。

 喧嘩とて一方的に殴られる側だった兄は、まず殴る感触に慣れる必要がある。殴ることで自身に還る反動に衝撃で痺れる感触、鉄パイプなどの棒状の道具類でもやってもらうべきだが市街地にそうそう落ちてはいないだろう。せいぜい石や瓦礫くらいが妥当だろうな、それだけで無手より容易くなる。

 

 またある日。

 

「ビルです、飛んでください」

 

「死ねとっ!?」

 

「高所の移動はヒーローに必須です、体力がまだ足りないのでとりあえず落ちる感覚だけでも慣れてください、今なら私やオールマイトが受け止めれますし」

 

 これなら立てないほど疲労していても出来ますし。

 

「いやでも無茶な」

 

「落としますよー、オールマイト」

 

「無視っ!?」

 

 ドゲシと屋上から兄を蹴り落とす。時間は有限、身体作りだけで十ヶ月は過ぎてしまいかねない。なら動けなくともできることはやるべきだ。 

 高所から落下する人の救助もヒーローの仕事の中では多いほうだ、なら助けられる側の感覚も知っておくべきなのだ。下にて悲鳴から受け止められて歓喜の声に変化した兄を見つつ訓練の日々は続く。

 

 私は私で勉強に、ボスとの組手、さらに間食立ち食い食べ歩きB級グルメ巡り(資金はネットでやりとりする父の仕事の手伝い、前世で見たデザインがウけているらしい)と多忙を極めていた。

 途中で兄がオーバーワーク気味になったりもしたが、持ち前の根性でやり遂げていた。

 

 そんな中、兄に相談を持ちかけられた。

 

「どうしました?」

 

 何やら思いつめた表情の兄に戸惑う、身体の完成ぐあいは予定以上、入試に間に合いかつ例年どおりの実技なら上位に食い込めるだろう。

 

「うん、あのさ」

 

 何でも後継者が自分で良いのかと思うようになったらしい。この訓練の日々で強くなったからこそ、オールマイトのワンフォーオールは相応しい、それこそ私やボスに託すべきではないのかという思いが拭えなくなってしまったとのことだ。

 しかし、

 

「そうは思いませんが?」

 

 私は賛同できない。

 その理屈なら現ナンバー2のエンデヴァーに託すべきだ、だがオールマイトはそうしない。強いヒーローは沢山いるべきという理由かもしれないがそうではないだろう。

 

「でも、」

 

 精神的、心根的理由も無論あるが何よりも、

 

「個性の複数所持は危険だと予想しています」

 

 悪魔の実という実例がある、かつて天竜人の道楽で複数の実を食べさせられた者のように爆散してしまうのではないかと私は懸念するのだ。

 

「さらにオールマイトが無個性だったという事実があります。ヒーローに詳しい兄がオールマイトより前の世代のヒーローで、継承者と思わしきヒーローの活躍を存じてないのなら、ワンフォーオールは無個性でないと力を引き出せない個性なのではないですか?」

 

 オールマイト以前のヒーローはそこまで強くない可能性、そして無個性ではないとあの出力を引き出せない可能性。まあオールマイト八木俊典が無個性にして飛び抜けた逸材だった可能性もまたあるが。

 そして同時に別の懸念もある。

 

「だから僕が」

 

「兄さん、もはや無個性は絶滅危惧種扱いです。

 そして無個性として生まれヒーローを志す者はより少ないでしょう」

 

 さらに力を得てその在り方が豹変しない者など最早兄ぐらいしかいないのではないだろうか。

 善人とて力を得たら変わる、恐らく無個性が個性を得たら、ましてやオールマイトの個性など得たら今までの鬱憤を晴らすかの如く好き放題することだろう。

 

「オールマイトと志を同じとするヒーローは多くいます。けどオールマイトが選んだ、ワンフォーオールの継承者は貴方だけなんです」

 

 とはいえ別の懸念、オールマイトと争ってきた巨悪についての問題もある。解決していれば良いが、そうでないのなら兄のヒーローとしての道は苦難どころではないだろう。

 

「誇りなさい緑谷出久、選ばれたのは貴方だ」

 

 全く、ボスをナンバー1ヒーローにするのは存外大変なのかもしれないな。

 

 兄を後押し、起こるかもしれない騒乱に備え、爆豪勝己を支える。

 私のサイドキックの道もラクじゃない。

 雄英高校の入試はもう目前だ。




オマケ バレンタイン

爆豪 勝己  甘いの苦手系モテ男子 かなりモテるため沢山貰うが、相手を気遣い我慢して完食。

緑谷 来久  食べ物大好き系モテ男子 バレンタインはチョコ食べ放題だから大好き。

緑谷 出久  バレンタイン無縁系男子 中学校で有名なったが女子にモテず、今年は母と爆豪母と隣クラス男子の友チョコの3つ。

オールマイト  バレンタインギネス系ヒーロー 人気のためバレンタインチョコのギネス記録持ち あらかじめ食べきれないから孤児院に配ると告知してある。

エンデヴァー  バレンタイン絶滅系ヒーロー 娘さんの気遣いをくだらんと言ってからチョコは零。

峰田 実  バレンタイン撲滅系男子 バレンタイン当日はバレンタイン廃止のデモ隊に参加した。
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