転生したら転剣の世界でした 作:氷月ユキナ
フラン(斬っていい?)
ルビー(死ねばいいのに)
僕達は、師匠に経験を積むためと言われて冒険者ギルドに依頼を受けに来ていた。
……よくよく考えると、僕が受けた依頼って、ヒール草を取ってくるやつだけだったな。
『さて、Dランクのフランが受けられるのは、C、D、Eの依頼だけか。採取依頼、護衛依頼、街道の巡察に、魔法を使った建築補助?』
「フランは何がいい?」
「討伐依頼がいい」
「……討伐依頼、無いんだけど」
『ネルさんに聞いてみるか? ちょうど、受付も空いているし』
「ん」
受付に行って聞いてみよう。
「ネル」
「あら、フランちゃん。ルビーちゃんも、こんにちは」
「こんにちは」
「こんにちはです」
「こないだのゴブリン討伐じゃ、大活躍だったみたいじゃない?」
「まあ」
「あはは…」
「悪魔まで倒しちゃうなんて、すごいわね~。可愛くって強くって、素敵だわ」
「ありがと」
「あ…ありがとうございます……?」
「きゃーん。照れてる顔も可愛いわ!」
??? な、なんでこんなに僕に対する好感度が上がってるんだ?
「討伐依頼はない?」
「あー、今はないわね~。そもそも、この間のゴブリンスタンピードが異常なのよ? 普段、そう簡単に魔獣が湧いて出ることはないし」
「あー、そうですか」
「分かった」
「あ、ちょっと待って。討伐依頼じゃないけど、魔獣に遭遇する確率のある依頼はあるわよ?」
「どれ?」
「えーとね……これよ」
『何々? 毒沼の生態調査? 枯渇の森の手前にある沼に、魔獣が住み着いた可能性がある。埋め立て計画の前に、その有無を調査してほしい?』
「時おり毒ガスを発生させる厄介な沼でね、行商人が毒被害にあったりしてるの。その毒沼を埋めて被害を減らそうという計画もあるけど、工夫を送り込む前に、危険がないかを調査する必要があるの。特に、魔獣が住んでいるという噂があって、その調査が最優先。本来であれば、その調査をもとに討伐隊を送り込むんだけど……」
「倒してしまっても良いの?」
……聞き覚えのあるセリフが出てきた。元ネタ何だっけ?
『フラン。それはダメだ!』
「? 倒さない?」
『いや、そういう訳じゃないんだが……』
「倒してしまって構わないわよ。その方が手間も省けるし」
「ん」
『……仕方ないな。ルビー、死亡フラグに負けないように、細心の注意を払うぞ』
「はーい」
この世界は現実だし、死亡フラグなんてないでしょ。
……ないよね?
「ついでに、この依頼も一緒に受けない?」
「薬草の採取?」
「そう。新月草という薬草なんだけど、珍しい薬草でね。町の周辺には生えていないの。毒沼のそばでなら採取できると思うわ」
「分かった。それも受ける」
「ありがとう。健闘を祈るわね。またお風呂で会いましょ?」
「ん」
僕はお風呂、一人で入りたいんだけどなぁ……。
『地図だと……ランデルに出会った場所より、少し先だな』
「ん」
『今から出て、明後日、戻る感じか?』
「師匠、準備はOK?」
『寝袋や毛布、調理器具は買ってあるし、大丈夫だ』
「よし! じゃあ出発しよう!!」
「ん!!」
◇◆◇
「あれ?」
『そうみたいだな』
「長い旅だったね」
『まだ1日程度だぞ……?』
はい。沼地に着きました。
魔獣との戦闘とかは一切なかったので、《簒奪》も使わずに着いた。
「毒の臭い……」
『状態異常耐性をセットしてあるし、毒呼吸、毒吸収もある。問題はないさ』
「僕も、ゴブリンから奪った毒耐性があるから平気だよ」
「魔獣の気配はない?」
『だな。ただ、沼の中に潜んでいたら、感知出来ていない可能性もあるぞ』
「あ! じゃあ、《火炎魔術》で毒沼を蒸発させちゃえばよくない?」
『まてまて、下手に吹き飛ばしたら、毒がばらまかれちまうぞ。最終目標は毒沼の被害をなくすことなのに、被害を拡大させてどうする』
「ご、ごめん……」
な、何かほかに方法ないかなぁ……?
『周辺被害が少ない方法は……』
「土魔術で埋める」
『沼がでかすぎる。土壌汚染も心配だし。うーん。一回、俺だけで近づいてみるか?』
「沼を収納する」
『?』
「収納? あ、そっか!」
「ん。《次元収納》で、沼の水を全部吸う。そうすれば、魔獣をすぐに見つけられる」
『て、天才か? なるほど、それはいい。じゃあ、俺が収納して、沼の水をなくすぞ』
「ん」
「……ちょっと待って。この量を収納するの? この沼、結構大きいけど入るの?」
『分からん。ま、良い実験にもなるしな。今のところ、俺の次《次元収納》に限界は見えないし。よし、収納開始!』
ずずずずず――。
師匠の《次元収納》に、沼の水がどんどん収納されていく。
『と、止まらん。あれー?』
「し、師匠? もうすでに沼が半分に減ってるけど大丈夫?」
『あ、ああ……まだまだいけるぞ』
「えぇ……」
そして。
『全部収納できてしまった』
「まだ行ける?」
『おう。多分、半分も埋まってないと思う』
「……便利すぎてなんか怖いね」
『25メートルプールなら、5杯分は吸い込んだと思うが。次元収納恐るべし』
「……それは置いておこうか。フラン」
「ん。魔獣、沢山いた」
『あれか』
「魚」
「大きいナマズ……ってところかな? 《鑑定》」
名称:マッドネス・フィッシュ
種族:魔魚・魔獣 Lv7
生命:100 魔力:32 腕力:33 敏捷:38
スキル
隠密3、気配察知3、毒分泌4、毒耐性7、土中潜行3、水魔術2、毒牙
沼に潜んでたら厄介だったけど、師匠がいる僕たちにとっては簡単だったな。
5匹いた。殺した。以上!
〈簒奪が発動します。ステータスに敏捷+38が加算されます〉
『身は美味しいらしいし、骨は良い出汁が取れそうだ。料理のバリエーションに魚料理が追加できるぞ』
「ホント!?」
スキル《料理》を持ってる師匠の料理にバリエーションが!? 前に作ってもらったカレーもおいしかったし、夢が広がるなぁ!
『依頼は完了だな。後は、薬草採取して、とっとと帰ろう』
「はーい! フラン、行こ!」
「ん!」