転生したら転剣の世界でした 作:氷月ユキナ
ルビー「……楽しいね」
剣『だな(なんかシリアスな空気なんだが!?)』
『結局、飲み会は皆がつぶれるまで続き、フランが部屋に帰ってきたのは日付も変わろうという時刻であった。ウルシはフランの影の中で眠ってしまったようだ……』
「師匠いきなり何言ってんの」
『ここに帰ってくるまでの事を整理してたんだ。それより、二人とも大丈夫か?』
「ん」
「えへへ……まぁまぁ疲れたけどね」
『少し酔ってるみたいだな……毒耐性は、アルコールを防いでくれないんだな、新しい発見だ』
「だいじょうぶ」
「僕も大丈夫だぜ、師匠」
『そうか』
「ん」
『今、腹は空いてるか?』
お腹かぁ……少し、かな?
言うほどではないな。
「空いてる。カレー?」
「え、カレーなの? 流石にちょっと重いかも……」
『安心しろ、カレーじゃない。ちょっと待てよ……。よし、日付変わったな』
時計を見ると、丁度3月18日0時0分だった。
『じゃあ、これをどうぞ』
「? 何? 甘い匂い」
「え……まさかパンケーキ? マジで?」
『正解だ。本当はデコレーションケーキを用意したかったけど、時間と材料とスキルの関係で無理だった。だから、せめてこいつをな』
「十分すぎない!?」
「何で? 何かのお祝い?」
『おう。今日は俺たちが出会ってちょうど1ヶ月だ。それで、何かできないかと思ってな。作ってみた』
一ヶ月、か。
僕とフランが奴隷という立場から解放されて、師匠と出会って。
……あれ? なんか、涙出てきた。
「これ、私たちのためのケーキ?」
『おう。サプライズ成功だぜ! ……あれ? ルビー、どうして泣いてるんだ?? あれ、俺なにかやらかしたか……?』
「……いや、なんか……嬉しくてさ。この世界で、こんな優しくしてくれた人、あんま居なかったから……」
『……そう、か』
「ん。いただきます」
「……いただきます、師匠」
『ああ、食べてくれ』
僕は生クリームとシロップが絡み合っているパンケーキをフォークで分断し、口に入れる。
甘い。
それもクドくなくて、ほんのり優しい味。
『どうだ?』
「おいしい。すごくおいしい」
「……うん、おいしいなぁ」
『……なら良かった』
それから、僕は無言で食べる。
温かい、パンケーキを。
そして。
「ごちそうさま」
「ご馳走さまでした」
『お粗末様でした』
完食した僕たちはフォークをお皿に載せて手を合わせた。
「ねえ、師匠?」
『なんだ?』
「ありがと」
「僕からも。ありがとう、師匠」
『おう。……その笑顔で、十分報われたよ』
■□■
「……また?」
『その言い方は酷いんじゃないかな?』
眠ったらまた自称神サマに白い空間に呼ばれました。
『自称神サマって言うのやめてくれるかい? 本当に神なんだけどね……』
「はいはい……で、何の用?」
『いや、
……胡散臭い。
『ボクへのあたりが強くないかい? ……ボクは君に不快なことはしてないと思うのだけれど……』
「慌ててるTSっ娘を見るのが好きな変態にどうやって好印象持てと?」
前に会った時のヤバさ忘れてないぞ。
『……さて、本題に入ろうか』
露骨に話そらしやがった……。
「で、ご褒美って何?」
『君のエクストラスキルの《簒奪》を、一回だけクールタイムなしで使えるようにしてあげるのさ』
つまり……一回だけ、わざわざ一時間待たずに済む!?
「そ、それは嬉しいけど……マジで、何が目的なの?」
『目的かい? そんなものは無いけど……“出来る”し、面白いから……まぁ、それが目的と言えるならそうなんだろうね』
「え、僕を転生させたのもそんな理由だったりする?」
面白いからって……前世のラノベでもそういう敵キャラ居たけどさ。
『いや、君を転生させた理由は他にもあるさ。まだ言う気は無いけどね』
「チッ」
『舌打ち……?』
本当になんなんだこいつ。
『さっきのご褒美、無かったことにしてもいいんだよ?』
「本当に申し訳ございませんでしたもう二度と言いませんので勘弁してください!!」
僕は勢いよくジャンピング土下座をする。
プライド? そんなもので生きられないって、
『……何故だろうか。君をボクが土下座させていると思うと、なんだか嬉しくなってきたよ』
性癖拗らせすぎじゃない神!?
『ふっふーん。それじゃ、また今度会おうか!』
……正直放っておいてほしいけど、やってくれることがすごいんだよなこの神。
これで性格まともだったらなぁ……。