転生したら転剣の世界でした 作:氷月ユキナ
アレッサを出る前の、最後の夜。
僕はフランと師匠に、アマンダに師匠が
「……で、どう? 命も助けられてるし、信用できる相手には話しておいた方がいいと思ったんだけど……」
『なるほどな……だが、バレたとか誤魔化せないって状況じゃないんだし、わざわざ教えなくてもいいんじゃないか?』
「それは……そうかもしれないけどさ」
……それでも、アマンダには伝えておきたいんだけどなぁ。
「ん。アマンダは信用できるけど……」
「……そっか。それじゃ、秘密にしておこっか」
僕たちはアマンダに師匠のことを言わない。そうすることにした。
もし、この選択でヤバい状況になったら僕が何とかすればいい。
だって、それは元々、僕が居なければ全部上手くいってることなんだし……。
「……責任は取らなきゃね」
『ん、なんか言ったか?』
「いーや、何も。それより、そろそろ寝よ? 明日はいよいよ出発の日だしね」
「ん、楽しみ」
「だねー」
大丈夫。大丈夫だ。絶対に何とかなる。
……けど、もし。僕がいたせいで原作にもない何かがフランにあったら。
僕は、何をすれば許されるんだろうね……。
◇◆◇
……いよいよ、出発の日になった。
旅経つ前の門にはアレッサであった様々な人が見送りに来てくれていた。
「ずっと受付してるから! もどったら顔見せてね! 絶対よ!」
「ん」
「了解です、ネル」
初めて冒険者ギルドに来た時に会ったネル。
「困ったときは“冒険者の心得百か条”を思い出してだな……」
「むり」
「あんな量、覚えられないんですけど……」
試験を担当していたドナドロンドさん。
「寂しくなるなぁ……」
「泣かないなかない」
「おじさんの日々の楽しみが……」
「がはは! 元気にやって行けよ!」
他の冒険者たちも。優しい人たちだったなぁ。
そして最後に──
「アマンダ」
……ランクA冒険者のアマンダさん。
「もっと強くなって帰ってくる」
「フランの言うとおり、もっと強くなりますね」
「楽しみだわ」
「だから──」
僕は一歩近づいて。
「──次は勝たせてもらいます」
宣戦布告をした。
「ふふっ──いつでも受けて立つわ、ルビーちゃん」
アマンダもにやりと笑い、好戦的な笑みを浮かべる。
「けれど、ピンチになったら助けに行くから呼んでね!」
「ん、ありがと」
アマンダはさっきの好戦的な笑みとは違う、安心できるような穏やかな笑みを見せた。
「……フランちゃん。一人ぼっちになっちゃ駄目よ」
「ん、いつでもルビーと一緒」
「ふふ、羨ましいけど……でも、本当に良かった」
「……?」
「……」
アマンダさん……。
「じゃ、行ってきます」
僕たちはウルシの背中にふわりと乗った。
フランが前で僕が後ろ。一応ウルシは師匠の眷属だから、師匠を背負っているフランが前の方がいいと思ったからだ。
ウルシが走り始めて、アレッサから遠ざかっていく。
『ふふ』
「ん? どしたの?」
『いやぁ、ついにアマンダは二人をママと呼ばせられなかったなと思っただけだ』
「……お母さんとアマンダは全然違う」
『まあ、そうだけど』
お母さんか……少し思い出してみよう(前世の方)。
……ヤバい。勉強しないでスマホばっかやってたら、スマホを素手で真っ二つにおられた記憶が蘇ってきた。
「思い出すな紅葉、今はシリアスな空気だぞ」
『急に震えてどうした!? それと紅葉って誰だ!?』
「僕の前世の名前」
『こんなギャグみたいな感じで判明していいものかそれ!?』
……そういえば、前世の名前言ったの初だな。
いや、今はそんなのどうでもいいよね!?
「フラン、一回くらいはアマンダのことママって呼んであげない?」
必死に話題を戻した。
「……ん、一度だけ」
『そうか』
「……同時に言うよ、フラン」
「ん」
僕たちは後ろを向いて、言った。
「「─────ママンダ~! またね!」」
「……えぇ、行ってらっしゃい……!」