転生したら転剣の世界でした   作:氷月ユキナ

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75 鑑定偽装は楽勝でした

 モンスター部屋の魔獣を倒し終わった僕たちは、フランとお昼ご飯(もちろんカレー)を食べた。

 

 途中でジャンさんにカレーを分けたらフランが不機嫌になったりしたが、まあ平和だった。

 

 そして……地下二層。

 

「この回廊で……あるな。『擬態霊』らしき死霊魔獣を見かけたのは」

『おお。この中のどれかがレア種の『偽装霊』である可能性があるってわけだな』

「《鑑定》で見えるステータスは《鑑定偽装》スキルで通常種と同じにしている可能性が高い。倒してみるしかないだろう」

『成程な。しかも俺の刃で魔石を破壊しなければスキル吸収出来ないから、フランと俺で頑張るしかないな』

「ん!」

『ルビーはどうする?』

「ん? 僕?」

 

 どうするって……。

 

「レア種の『偽装霊』を引き当てられる確率なんて低いし……再使用までの回復時間(クールタイム)もあるしね。《鑑定妨害》奪って休んでるよ」

『分かった。行くぞ、フラン!』

「ん」

『おりゃー!』

 

 師匠は属性剣・火を使い、『擬態霊』の集団に飛び込んだ。

 

 さて……僕も属性剣・火を幻輝石の魔剣で纏い、フランから漏れてきた一匹の『擬態霊』を斬る。

 

 これで《鑑定妨害》を──

 

〈簒奪が発動します。スキルに()()()()()()()()()()()

 

 え?

 

 

 “ボクもここで干渉するのはどうかと思ったけど、《鑑定偽装》は便利だしね”

 

 “サービスだよ”

 

 

 そんな声が、僕の頭に直接流れてきた。

 

 ……あの神様、何だかんだでありがたいことしてくれるんだよな。

 

「さて……我は暫く休息させてもらおう」

「あ、隣で寝て良いですか?」

「いいとも。膝枕でもするかね?」

「ふふっ、流石にやめておきます」

「それは残念であるな」

 

 僕はジャンさんの隣に座り、目を瞑る。

 

 そうしてゆっくりと、意識を落としていって──

 

 

■□■

 

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 そこで僕は、荒い呼吸を繰り返し走っていた。

 

 僕の周りには、僕の生まれた村()()()()()が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 さっきまで村人に暴力を振るわれて気絶したまま放置されたことによる疲労とは別の理由で呼吸がどんどん早くなり、心臓の鼓動が速度を上げる。

 

 燃えている家には、誰もいなかった。

 

 すべてすべて、もぬけの殻だった。

 

 この状況が全く理解できない。一体何が起こってるんだよ……ッ!

 

「……フィー」

 

 僕の親友というべき少女、マレフィーの呼び名を呟く。

 

 そもそも、フィーとこっそり遊んでいたのが村人にバレてしまったのが始まりだ。

 

 あの時僕は、腕を掴まれているフィーの姿を最後に村人に殴られて気絶してしまった。

 

 そして地面で目が覚めたらこの状況だ。まったく意味が分からない。

 

 その辺りは、僕以外を静寂が支配していた。

 

 走る。走る。走る。

 

 そして、村の中央地にたどり着いた時僕が見たものは。

 

 

 ──赤い紅い朱い、大量の血。

 

 角刈りの少年が、若い男女のカップルが、禿げた村の長である老人が、他の沢山の村人たちが、死体となって転がっていた。

 

 そしてその中心に、短剣を持ったマレフィーが立っていた。

 

「…………フィー?」

「……あ……ナナ、シ……?」

 

 フィーはこちらに顔を向ける。

 

「──ッ!」

 

 そして気付いた。フィーに、左腕がない……どころじゃない。

 

 全身に切り裂かれたような跡があり、出血もしまくっている。

 

 もともとボロかった服もあちこちが切り裂かれていた。

 

 何度も、何度も、何度も。フィーは傷付けられていた。

 

「フィーッ!」

 

 僕がフィーに駆け寄ったのと同時に、フィーは右手の短剣を地面に落としてこちらに倒れてくる。

 

 その身体を僕は優しく受け止め、その場にしゃがむが……僕の全身が凍り付く。

 

 ……フィーの身体は冷たくて、軽くて、生者のものとは思えなかった。

 

 なんで、こうなった……?

 

「……ねぇ、フィ──ぅ!?」

 

 僕はフィーに顔を寄せられ、一瞬で唇を奪われた。

 

「……フィー?」

 

 フィーの身体から、最後の血が零れていく。

 

「フィー……どうして、ちょっと、しっかりして…………置いていかないで」

 

 僕の口から、言葉が溢れ出す。

 

 しっかりして? この状態で出来るわけない。

 

 置いていかないで? フィーが僕を好き好んで置いていくとでも?

 

 こんな状況で無茶ぶりを言ってしまう自分自身に失望しながら、フィーの身体に負荷のかからないように強く抱きしめる。

 

「──ん」

「……フィー?」

 

 

 

…………ナ、ナシ……だぃ……す、き……だよ……

 

 

 

 …………フィーが、死んだ。

 

 僕の唇には、ファーストキスの血の味が残っていた。

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