転生したら転剣の世界でした   作:氷月ユキナ

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フラン「……ルビー、この感じ……」
ルビー「うん、前に直接感じた僕にはわかるよ。……これ、転移しちゃうタイプの魔法陣だ」
剣(ほほう、これが転移する時の感覚か……なんだか不思議な感じだな)


83 死霊の王(リッチ)とバトルが始まりました

くかか……侵入者諸君……迷宮核部屋(コアルーム)へようこそ

 

 その時、フランは違和感を感じた。

 

吾輩が迷宮管理者(ダンジョンマスター)

 

 堂々と立っている死霊の王(リッチ)

 

 だが、その姿が、フランには何処か悲しそうに見え──

 

「ごフっ……」

 

 次の瞬間、そんな思考はフランの中から吹き飛んでいた。

 

「あぁぁぁァ……る、ルビ……ししょ……ウル……ッ、あぁぁぁッ!」

 

 それは、《恐怖》と《恐慌》による精神攻撃。

 

「うあぁああああッッ!」

『フラン……!? フランっ!』

 

 焦る師匠の隣で、ルビーも頭を抱えていた。

 

「あ、な、なんで……なんでなんでなんでなんでなんでッ! あ…………あぁぁあああああ──ッ!?」

「ぐっ……精神のスキマを突かれたな」

 

 唯一まともな精神を保っているジャンが、冷静に状況を分析する。

 

『大丈夫だ! 大丈夫だからな!』

 

 師匠は素早く正気回復(サニティ)をその場にいる全員に掛ける。

 

「師しょ……!」

「っ”……やってくれたね!」

 

 

名称:死霊の王(リッチ)

種族:死霊・魔獣 Lv23

生命:863 魔力:2467 腕力:134 敏捷:366

スキル

詠唱短縮7、恐慌4、恐怖4、再生6、死霊支配10、死霊魔術10、冥府魔術4、魔力操作

装備

ボロのローブ

 

 それが、師匠の《鑑定》したステータスだった。

 

 だが、師匠は()()()()()()()()()

 

 こんなものじゃない。目の前の存在は、この程度の強さじゃない。

 

「はぁ……はぁ……《鑑定偽装》だよ、師匠。多分だけどね」

 

 《恐怖》と《恐慌》による精神的な疲労で肩で息をしているルビーが、困惑している師匠に告げた。

 

『……なるほどな、そういうことか。それはあり得るな。なら、『転移の羽』で!』

「ん!」

「師匠君! 待ち……ッ!」

 

 ジャンが師匠を止める前に、すでに『転移の羽』は発動していた。

 

 だが……すぐに羽から光が失われ、何も起こらない。

 

「……ちッ」

くかか……この部屋は『転移封じ』の魔術的仕掛けが施されておる。逃げること能わぬぞ。観念して、吾輩と殺し合おうぞ! くかかか!

 

 背筋が凍るような声で恐ろしい事実を告げると、死霊の王(リッチ)は無詠唱で何体もの死霊魔獣(アンデッド)を召喚してくる。

 

「オオオオオォォォ」

「ウァァァ」

「グルオォ!」

「────」

「──」

「──」

 

 それらは全てレベル20台。

 

「絶望的だね……どうする?」

「ん、決まってる。みんなと一緒なら、きりぬけられる!」

『フラン……!』

「……なら、僕も頑張らないと」

 

 フランの言葉に師匠、ルビーが応えようとしたとき、その前に踏み出た男がいた。

 

 それは、ジャンだった。

 

「ふむ、ここは我に任せてもらおう」

 

 その手には、あの不気味な杖を持っていて。

 

「────『冥王の祝福』……起動……!」

む……?

 

 

 ──オオオォォオオオオォォォオォォオォ

 

『うわっ!』

「う?」

「うっわ、怖……」

「オン……」

 

 それは、声だった。

 

 それは、歌だった。

 

 それは呻き声のようでもあり、讃美歌のようでも、怨嗟の叫びの様でもあった。

 

 ──オオオォォ

 

「怨嗟と恩讐に囚われし、救われぬ魂に安らかなる眠りを」

 

 杖から光が溢れ出し、その場の全てを包み込む。

 

「冥王の祝福よ、あれ」

く、ぁぁあぁあ!?

 

 魔杖「冥王の祝福」……それは術者の生命力と引き換えに起動し、魔術抵抗なんて関係なく広範囲全ての死霊を昇天させる、凄まじい魔杖だった。

 

『……高位死霊魔獣(アンデッド)複数体が……体も残さず一瞬で消滅。すげえ杖だな……これは』

「そうだね。でも……」

 

 ルビーが細めた眼で死霊の王(リッチ)がいた場所を見ると。

 

……く……くかか……素晴らしい……我が高位の僕が一瞬で全滅……今のは驚いたぞ

『な……!!』

「何……故……死霊の王(リッチ)……死霊魔獣(アンデッド)である君が健在なのだ……」

くかかかか。強力な道具であったが、吾輩には効かぬようだな

「そんなはずは……ぐふッ」

『ジャン!』

「休んでて」

 

 「冥王の祝福」の代償によって生命力を削られたジャンが膝をつき、その前にフランとルビーが守るように立っていた。

 

 二人は疲労回復薬(スタミナ・ポーション)をジャンに渡すと死霊の王(リッチ)に向けて剣を構えた。

 

「くっ……大丈夫かね、ルビー君」

「──もちろん。心配なんて要らないよ、ジャンさん」

 

 ジャンを見たルビーの顔は。

 

 自信に満ちた顔をしているのに、ジャンにはどこか歪んでいるように見えた。

 

 

■□■

 

 

 大丈夫じゃないといけない、油断なんてできる相手じゃない。

 

 ──彼の正体を、知ってるのに?

 

 躊躇いなんて、しちゃだめなんだ。

 

 ──彼も、あの国の被害者の一人なのに?

 

 救う方法なんて思いつかなかった。情報の伝達が阻害されて、相談もできなかった。

 

 ──本当は、一つだけ思いついてるくせに。

 

 だから。

 

 

 僕は、彼を殺すしかないんだ。

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