転生したら転剣の世界でした 作:氷月ユキナ
ルビー「うん、前に直接感じた僕にはわかるよ。……これ、転移しちゃうタイプの魔法陣だ」
剣(ほほう、これが転移する時の感覚か……なんだか不思議な感じだな)
「くかか……侵入者諸君……
その時、フランは違和感を感じた。
「吾輩が
堂々と立っている
だが、その姿が、フランには何処か悲しそうに見え──
「ごフっ……」
次の瞬間、そんな思考はフランの中から吹き飛んでいた。
「あぁぁぁァ……る、ルビ……ししょ……ウル……ッ、あぁぁぁッ!」
それは、《恐怖》と《恐慌》による精神攻撃。
「うあぁああああッッ!」
『フラン……!? フランっ!』
焦る師匠の隣で、ルビーも頭を抱えていた。
「あ、な、なんで……なんでなんでなんでなんでなんでッ! あ…………あぁぁあああああ──ッ!?」
「ぐっ……精神のスキマを突かれたな」
唯一まともな精神を保っているジャンが、冷静に状況を分析する。
『大丈夫だ! 大丈夫だからな!』
師匠は素早く
「師しょ……!」
「っ”……やってくれたね!」
名称:
種族:死霊・魔獣 Lv23
生命:863 魔力:2467 腕力:134 敏捷:366
スキル
詠唱短縮7、恐慌4、恐怖4、再生6、死霊支配10、死霊魔術10、冥府魔術4、魔力操作
装備
ボロのローブ
それが、師匠の《鑑定》したステータスだった。
だが、師匠は
こんなものじゃない。目の前の存在は、この程度の強さじゃない。
「はぁ……はぁ……《鑑定偽装》だよ、師匠。多分だけどね」
《恐怖》と《恐慌》による精神的な疲労で肩で息をしているルビーが、困惑している師匠に告げた。
『……なるほどな、そういうことか。それはあり得るな。なら、『転移の羽』で!』
「ん!」
「師匠君! 待ち……ッ!」
ジャンが師匠を止める前に、すでに『転移の羽』は発動していた。
だが……すぐに羽から光が失われ、何も起こらない。
「……ちッ」
「くかか……この部屋は『転移封じ』の魔術的仕掛けが施されておる。逃げること能わぬぞ。観念して、吾輩と殺し合おうぞ! くかかか!」
背筋が凍るような声で恐ろしい事実を告げると、
「オオオオオォォォ」
「ウァァァ」
「グルオォ!」
「────」
「──」
「──」
それらは全てレベル20台。
「絶望的だね……どうする?」
「ん、決まってる。みんなと一緒なら、きりぬけられる!」
『フラン……!』
「……なら、僕も頑張らないと」
フランの言葉に師匠、ルビーが応えようとしたとき、その前に踏み出た男がいた。
それは、ジャンだった。
「ふむ、ここは我に任せてもらおう」
その手には、あの不気味な杖を持っていて。
「────『冥王の祝福』……起動……!」
「む……?」
──オオオォォオオオオォォォオォォオォ
『うわっ!』
「う?」
「うっわ、怖……」
「オン……」
それは、声だった。
それは、歌だった。
それは呻き声のようでもあり、讃美歌のようでも、怨嗟の叫びの様でもあった。
──オオオォォ
「怨嗟と恩讐に囚われし、救われぬ魂に安らかなる眠りを」
杖から光が溢れ出し、その場の全てを包み込む。
「冥王の祝福よ、あれ」
「く、ぁぁあぁあ!?」
魔杖「冥王の祝福」……それは術者の生命力と引き換えに起動し、魔術抵抗なんて関係なく広範囲全ての死霊を昇天させる、凄まじい魔杖だった。
『……高位
「そうだね。でも……」
ルビーが細めた眼で
「……く……くかか……素晴らしい……我が高位の僕が一瞬で全滅……今のは驚いたぞ」
『な……!!』
「何……故……
「くかかかか。強力な道具であったが、吾輩には効かぬようだな」
「そんなはずは……ぐふッ」
『ジャン!』
「休んでて」
「冥王の祝福」の代償によって生命力を削られたジャンが膝をつき、その前にフランとルビーが守るように立っていた。
二人は
「くっ……大丈夫かね、ルビー君」
「──もちろん。心配なんて要らないよ、ジャンさん」
ジャンを見たルビーの顔は。
自信に満ちた顔をしているのに、ジャンにはどこか歪んでいるように見えた。
■□■
大丈夫じゃないといけない、油断なんてできる相手じゃない。
──彼の正体を、知ってるのに?
躊躇いなんて、しちゃだめなんだ。
──彼も、あの国の被害者の一人なのに?
救う方法なんて思いつかなかった。情報の伝達が阻害されて、相談もできなかった。
──本当は、一つだけ思いついてるくせに。
だから。
僕は、彼を殺すしかないんだ。