転生したら転剣の世界でした   作:氷月ユキナ

84 / 88
剣(なんかルビー、暗い顔してるなぁ)


84 怨念炉を破壊しました

 魔剣・死の眼差(デス・ゲイズ)という新しい武器を使い、僕とフランは死霊の王(リッチ)に戦いを挑んだ。

 

 そして、僕は。

 

「──げほっ」

 

 死霊の王(リッチ)に、素手で腹を殴られていた。

 

「ぐ、ぅ……」

くかか……接近戦ならいけると思うたか……?

 

 なんだあれ……!? 攻撃すり抜けたんですが!?

 

大いなる癒し(グレーターヒール)ッ、大丈夫か!?』

「う、うん……幻影とかじゃないよね?」

『ああ、剣だがルビーに当たってるし……』

「そう、だよね……ケフッ」

 

 く……まだダメージ残ってるな。

 

「ジャンさん、この状況を挽回できる手とか無い?」

「……挽回できる、と断言はできないが時間を稼いでくれないか。奥の手がある……奴の気を引き付けてほしい」

「はいはーい、任せて! フラン……合わせられるよね?」

「ん、愚問」

 

 一緒に後ろに下がっていたフランと二人で構えて、再び死霊の王(リッチ)に目を向けた。

 

くかか……作戦会議はもういいのか……? では、ゆくぞ

 

 また死霊魔獣(アンデッド)を召喚してくる死霊の王(リッチ)に、僕は怖さを隠して笑った。

 

「──さ、踊ろっか」

 

 

■□■

 

 

「…………ねぇ、これ戦い始めてからどのくらい経った?」

『そうだな……一時間くらいじゃないか?』

「そんな経ってたんだ……通りで辛いわけだよ」

 

 最初の殴打以降はそんなに目立った負傷はしていないが、それでも動き続けていたら疲れる。

 

くかかっ……息が上がってきたようだな

「……うるせー」

さぁ、我が軍門に下るときだ。絶望せよ

 

 僕の言葉もさらりと流した死霊の王(リッチ)は、これで何度目か分からない死霊魔獣(アンデッド)の召喚をしてくる。

 

 ……だけど、それでも。

 

「ねぇ、死霊の王(リッチ)さん」

どうした……?

「僕は君の軍門に下る気なんて無いし、絶望だってしないよ。だって──僕は信じてるからね。()を」

彼だと……?

 

 ──ズン

 

 死霊の王(リッチ)が困惑の声を出したとき、何かが変わったような音がした。

 

 ──ゴゴゴゴゴゴゴ……!

 

 僕たちがいる迷宮(ダンジョン)が揺れるのを感じ、僕の後ろにいるジャンさんが笑った。

 

「……成功したようである、な」

な、何だと!? ぐゥッ……! こッ……この感覚……まさか……そんな……ッ!

「……ジャンさん、何したか聞いてもいいかな?」

「勿論だ、ルビー君。我が配下ステファンが、『怨念炉』を破壊したのだ」

「えっと……『怨念炉』ってなんですか? 初耳の言葉なんですけど」

「『怨念炉』は、おそらく奴の無限に近い魔力の源である。我の読んでいた『名無し』君の日記に、実験には多くのものの『怨念』を使用したとあった。この膨大な魔力仕掛けが施されている広大な迷宮(ダンジョン)で、そんな動力源があるなら再利用しない方が不自然であるからな。 だからこの迷宮(ダンジョン)を彷徨い続け知り尽くしているステファンに、「『怨念』を魔力に変えられるような動力炉施設があれば、それを破壊せよ」と密命を出したのだ」

 

 あの時点で『怨念炉』のことを予想して対策を立てるところとか、やっぱりジャンさん抜け目無いなー。

 

 頼もしい限りである。

 

「本来『怨念炉』を破壊してから挑むつもりであったが、転移罠(テレポーター)のせいで予定が狂ったのだ……なんとか帳尻を合わせたのである!」

ああァ……『怨念炉』の魔力が消えて……いく……ァ……ァ……あァァァ……ァ……吾輩の悲願がァァ……何年もかけて備えた……奴ら……王国……への、復讐の要がァァあ……ッ! 許さん……許さんぞ貴様らァ……ァ……

「…………クソ」

 

 あぁ……本当に、胸糞が悪い。

 

 レイドス王国……ラスボス眠ってるし、腐ってる連中は強くなったら潰してやろうかな?

 

「……おなじにおいをかんじる」

「…………え?」

『……? どうした? フラン』

「奴隷だったとき、先の見えない……ずっとつづくくらやみにいて。もしこの手に力があったらあいつらを殺せるのにって、そんなことをずっと考えてた日々……」

 

 そう……そうか、そうだね。

 

 やっぱり、フランは気づいちゃうよね。

 

「……もしかして、あなたが『名無し』?」

吾輩、が……何だと……?

 

 この無力感と罪悪感で押しつぶされそうな戦いで。

 

「…………僕は、どうしたらいいのかな。フィー」




どうしても、心のどこかで諦めきれないルビーさんです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。