猛き竜には武装をさせよ。〜最強+最強、武装とロマン全開竜種で往くVRMMO譚〜   作:レヴァ剣竜

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駆け込み、堕ちる。

「印鑑、ここにお願いします」

 

配達員から少々過剰とも言えるくらいに大きいその箱を受け取って。

笑顔は貼り付けたまま、ドアを閉めて施錠をしたのち、階段を駆け上がる。

 

ハサミをとる勢いもそのまま。手が震えていることにはお構いなしに、たった一度走らせ、開封した梱包からただ一つ——ずっと待っていた、そのケースを取り出す。

 

——【Beyond World Online】。

 

青空と、天を貫く塔のみが映された簡素——いや、むしろシンプルな分、挑戦的にも見えるケースを開いて、取り出した一つのメモリカード。

それを、半ば強引に充電器から引き抜いたヘッドギアに差し込んで頭に被り、ベッドに体を投げ出す。

 

 

そのまま目を瞑り、ドクン、ドクンと高鳴る心臓の音のみをBGMに待つこと少し、駆動音が響くと共にようやく視界が照らされ、一瞬の断絶。

 

 

数瞬して全感覚が戻り、浮遊感が身を包む中、幾つにも連なったリングが視界を通り過ぎていき——俺は、恐らくアバター設定用のウィンドウであろうものしか存在しない空間へと降り立った。

 

見た感じ、項目は主だって三つ、名前と種族、初期のステータス振りのみのようだ。

どうやら容姿が選べないらしいことは、まあ今からやろうとしていることには関係しないため、置いておくとして……真っ先に種族一覧をスライドし、目的の文字列を探す。

 

かくて数秒、《ドラゴン》と、設定した種族名を眺めながら、思わずガッツポーズの一つでもとりたくなるのを堪えて。

名前欄にいつも通り《シグナ》と打ち込み、最後にステータス振りのステップへと移行して、俺は首を傾げた。

 

……何せ、MMOというジャンルにはもとよりあまり手を出したことがない上、そもそも今日サービスが開始するゲームである以上は、どのステータスが強いかはわからない。

暫し悩んだ末……脳筋プレイをするには必須であろう『STR(筋力値)』に、ポイントの大半を振り分けて。

限界まで振られたそれを見て少し悩んだのち、『VIT(防御力)』に、俺は残った少しのポイントを振り分けた。

 

そして、表示されたウィンドウに対して承諾した時、視界が光に包まれて。

 

直後にガクン、と。

 

独特の浮遊感と共に晴れた視界いっぱいに広がったのは、以前PVでも目にした青空と、天を貫く塔。

相も変わらず繊細、むしろ、更に磨かれたグラフィックに感心して……。

 

俺は、浮遊感の喪失と共に、自身の体が落下していることに気がついた。

 

風圧によって方向転換したために、下向きになった視界の先にあるのは広大な森林。

重力演算は十分なようで、しっかりと勢いづいていく。

 

……いや、感心している場合じゃないな。

 

明らかに、このままいけば落ちる!

 

とばかりに込み上げてくる焦りと共に、ジタバタと手足を動かす。

 

その時、視界に入ったのは、黒々と輝く鱗によって包まれたもの、だった。

一瞬の困惑ののち、思い当たって首を動かしてみれば、それは体も変わらない。

 

「グワッ!? グェッ!?」

 

——ちゃんとドラゴンしてる!?

 

衝撃と喜びが入り混じり、思わず発した声はきちんと出力されず、半ば吠え声になっていた。

いや、むしろそれすらも嬉しい。だってちゃんとドラゴンになってるって実感も湧くし。

 

と、上空で歓喜すること暫し、だったら、羽ばたけるのではないか、と。

 

背中にある、拡張された感覚……視界の端に映る小さな翼膜を見て、ふとそんなことを考えた。

 

操作方法はわからないが、現実で言う肩甲骨あたりを動かすようにしながら、意識を集中させると……確かに動くし、一瞬の浮遊感も得られる。

 

どうやらこれで正しいようだ。もっとスパンを縮めるように動かしていき、更に一瞬だけ、落ちていく景色は止まる。

 

成功したらしいホバリングに、もう一度歓喜の咆哮を上げた時だった。

 

《警告:スタミナ切れです》

 

突然、視界にそんな赤文字が表示され、瞬間、ガクンと全身から力が抜けて、再び落下は始まった。

 

「グワッ! グェェェェェッ!?」

 

——なんだよ! 結局飛べないじゃねぇかよっ!?

 

そんな悲鳴ですらも吠え声に変換されて。

 

いやに再現性の高い内臓の浮く感覚と共に、俺は地に落ちて行った。

 

◇ ◇ ◇

 

◇ ◇

 

 

墜落してから、若干の時間が経った。

その間、全身を走った痺れとスタミナ切れとやらで体制が起こせなかったために、メニューを開いてTipsを確認してみると、視界の端にスタミナやらHPといった数値は表示されていたらしい。

 

視線を移動させてみると、それらは確かに二段組みで表示されており、上段のHPは落下の衝撃により少し減少、下段のスタミナは空に近かったが、確かに回復しつつあった。

 

少しばかり息を吐きながら回復を待ち、ようやくそれが満杯になった時、俺は立ちあがろうとして……立ち上がれなかった。

 

いや、正確には転倒した。

 

何度か試してもそれは変わらず、ようやく辿り着いた結論は一つ。

 

……どうやら、二本足だとバランスが取れない以前にそもそも力が足りていないらしい。

 

四本足を地にしっかりとつけた際に、均等にかかった体重から察するに、恐らくそんなところのようだ。

 

だとしても、それは困る。

四つん這いは慣れていないし、できれば二足歩行で行動ができればな……。

 

……なんて、そこまで思索を巡らせていた時。

 

「グェッ、グワッグワァッ!?」

 

——これじゃあ、剣すら持てなくね!?

 

俺が気づいたのは、重大な事実だった。

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