木々に囲まれた山路を駆ける一騎の騎兵。
黒チョコボを駆るのは金髪の男。
軽装で足元まである長いローブを身に纏ったその姿は一見したところ魔道士のように見える。
ローブは魔道士が着用することが多い衣服だ。
魔道士だけではなく騎士が着ることもあるが、その場合も大抵は鎧を併用する。
それではこの男は魔道士かというと、腰に佩いた剣がそれを否定していた。
魔法を使える者であっても、前衛として戦えるのならば魔道士ではなく戦士に分類される。
その姿からは恐らく剣と魔法を併用する遊撃騎士であろうと予想できた。
その騎兵、ギュスターヴとフリンはしばらく何事も無く走り続けていたが、ある時唐突に防御魔法を発動させた。
ガードビーストと呼ばれるその魔法は、中空に障壁を展開して攻撃を遮断するものだ。
直後、障壁に衝突したのは矢弾。
前方から飛来したそれは障壁に弾かれて地に落ちる。
射手は道の傍にある大岩の上に居た。
周囲から武装した者達が現れ、射手は次段を構える。
「山賊か。多いな。」
対してギュスターヴは自らの腰に手をやり、剣の柄を掴む。
抜き放たれる長剣。
滑らかな石でできたその刀身は鋼の剣ほど鋭いものではないが、分厚く重みのある刃には鋼とはまた違った威力があることが見て取れる。
手に触れている柄から、唾、鋒まで赤く染まっていく。
それはクヴェルの一種、炎の魔剣ファイアブランドだ。
再び矢が飛来するが、それを今度は剣で打ち払った。
同時に剣から炎の魔力を引き出し反撃の魔法を放つ。
「フレイムナーガ!」
放たれたのは当然炎の魔法だ。
射手の足元から猛炎が吹き上がる。
それはまるで足場であった岩から赤い龍が現れて、射手を飲み込み天へ昇っていくかのようだ。
数瞬の後、炎が消え去った後に残ったのはもはや人間というよりも人型の炭と言った方が納得できるような物だった。
真っ黒に焦げた射手は、倒れて岩から転がり落ちた。
近くに居た者が何人か射手に駆け寄るのが見えた。
それを見て驚き動きを止めた者も多いが、その中でただ一人、剣士が側方からギュスターヴに詰め寄る。
剣士が上段から振り下ろした剣をファイアブランドが受ける。
受け流すのではなく、膂力を以て弾き返す剛の剣。
弾かれた剣は振り下ろしを逆再生するかのように頭上へと上がった。
直後にフリンは剣士の方へと大きく踏み込み、その身を剣士へと打ち当てる。
騎兵と歩兵では慣性力の差は圧倒的だ。
剣士がその威力に耐えかねて仰け反ったところに、ギュスターヴは赤い刃を閃かせる。
先の打ち込みで剣ごと跳ね上げられていた両腕をファイアブランドの鋒が切り裂いた。
次の瞬間、切り口から炎が吹き上がる。
瞬く間に腕が焼け崩れ、胴へ頭へと燃え移る。
剣士の体内の魔力がファイアブランドの強い感応性によって暴走して炎へと変える。
斬る必要すらなく、触れただけでさえ発火する。
小さい魔力しか持たない子供では暴走しても少々発熱する程度だが、並の大人程度の魔力を持つ者であれば持つことさえ難しい。
大人でこれを扱える者は、幼少の頃からファイアブランドの扱いに慣れて制御できるようになった者か、よほど魔力が乏しい者だけだ。
それはまるで剣に意思があって正当な所有者以外に触れられることを拒んでいるような、まさに魔剣と呼ぶにふさわしい性質だった。
ギュスターヴは先程までの炎の術とは一転して水の魔力を隆起させる。
「アクアバイパー!」
中空に水塊が発生し、それは炎に包まれながら苦悶の声を上げている剣士へと叩きつけられた。
水撃を受けた剣士はそのまま倒れこんで動かなくなる。
剣士はもはや戦えるような状態ではなかったが、これは攻撃よりも消火という意味合いが強い。
大規模な自然破壊は領主の許可無く行えないため、山火事になる可能性を放置するわけにはいかなかった。
「やっぱりこの剣使うのやめたほうがいいかもな。」
ギュスターヴは小さく呟いた。
剣士に対処する間にも他の敵は周囲から迫っている。
残る敵の中に弓使いや魔道士のような遠隔攻撃ができる者は居ないらしい。
ひとまず瞬時に対処すべきものは片付けたが、それでも数秒の時間ができただけだ。
騎兵対歩兵とはいえ、囲まれば対処は難しい。
囲まれないためには今すぐ行動を始める必要がある。
「フリン、飛ぶぞ。」
(わかった!飛ぶ!飛ぶ!)
敵とはまだ距離があるが、ギュスターヴはその場でファイアブランドを振るう。
剣自体から炎の魔力を引き出しておらず、代わりに頭身は風を纏っていた。
剣風は渦を巻き強力な旋風に変わる。
木々がざわざわと大きく揺れ、中には風で折れる枝もある。
吹き荒れる突風に山賊達のうちある者は転倒し、ある者は転ばず踏み止まるが真っすぐ前進するのは難しいらしくその場で立ち止まる。
収束した風はその中心で上昇気流へと変わり、広げられたフリンの翼を押し上げる。
ギュスターヴを乗せたままフリンの体はすぐに浮き上がり、そのまま地を蹴ると一気に木々よりも高くまで上昇する。
道の周囲は木が少なくなってるおかげで、枝が飛翔を妨げることはなかった。
鎌風の渦で広範囲を切り刻む烈風剣という技を応用したものだが、自らを巻き込むために鎌風は発生させずにただの突風で代用している。
他にもより高い求心力で風を集めて強い上昇気流を発生させているなど、差異が大きい。
上昇気流で飛行を補助しながら旋風で敵の接近を妨害するこの戦術は、ギュスターヴとフリンにとっては何年も研鑽してきたものであり、もはや常套手段と呼んでも過言ではないものだった。
地上に取り残された山賊達の怒号を聞き流しながら、フリンは大きくはばたいて飛び去った。
「最近野盗とか多いよなー。」
(多い。危ない。)
地上に降りたギュスターヴとフリンが話す。
逃げずに戦っても勝つ自信はそれなりにあるが、敵数を鑑みれば手傷を負わされてもおかしくなかった。
無傷で乗り切れた理由としては運によるところも大きいだろう。
戦闘自体による危険もあるが、今回のような戦場ではファイアブランドを抜剣すれば火事にも注意せねばならないので面倒だ。
他の武器も携行しているが、咄嗟の際には使い慣れたファイアブランドを持ち出してしまうことが多い。
ギュスターヴが行う戦闘の内、賊との遭遇戦の比率が最近上がってきている。
賊の方から仕掛けるのであれば障害物に隠れての奇襲が常道だが、使われる障害物には木々や深い草叢のような燃えるものも少なくない。
それは火を使いにくい戦いが増えているということでもあった。
「やっぱりロマンダにやられた影響か……」
賊はロマンダ軍による攻撃を受けた地域に多い。
フォボハム領主バリンテン大公の居城であるリオファネス城を占拠されるなど、イヴァリース西部では大きい被害を受けている。
盗賊に身をやつすのは、その際に財を失った者や失業した者が中心だろう。
ふと、原作では五十年戦争中に義勇兵を集めて骸騎士団が創設されたことを思い出す。
細かいタイミングは不明だが、今のところは骸騎士団は存在していない。
盗賊への処置なんて退治するか足を洗わせるかの二択だろうし、後者の具体策は為政者が傭兵か何かとして真っ当な職を与えるぐらいしか無い。
まあ傭兵が真っ当な職かは疑問だが、少なくとも違法ではない。
そう考えると、骸騎士団創設は賊の再雇用を目的としたものなのかもしれない。
イヴァリースが劣勢になれば兵を募るだろうとは思うが、不利に原作通りに骸騎士団が創設される保証は無い。
「創設して困ることもあんまり無いだろうし、ラーグ公に進言してみるか。」
(なに?)
「なんでもない、独り言だ。」
戦う必要が無ければ躊躇せず逃げるタイプです。
……必要なら戦いますよ?
使用している技や術はサガフロ2のものですね。
主人公にはFFTの技術はあんまり使わせない予定です。
サガフロ2で「術」と呼ばれるものは本文中では「魔法」と表記してます。
同じく「アニマ」は「魔力」と表記。
「術」とは、大雑把に言えば道具等に宿る「アニマ」を扱う技術のことです。
「術」を使うには対応する属性の装備品が必要ですが、装備制限はゲーム中より緩い感じで解釈してるので全属性装備余裕です。
使用技術
・ガードビースト
魔法盾を形成します。
回避バフみたいなものですね。
戦闘終了または解呪されるまで何度でも、一定確率で攻撃を防ぎます。
ゲーム中でもこの術にはとてもお世話になりました。
・フレイムナーガ
蛇の形の炎が敵の足元から出現して上空へ吹き上がります。
他の攻撃術もありますしどれを使うか迷いましたが、ちょうど主人公の手元に炎のクヴェルがあったのでフレイムナーガを選択。
・炎の太刀
ファイアブランドの装備固有術です。
独自解釈によって、ゲーム中の効果よりも強くなってます。
ゲーム中ではこの技の効果はそれなりのダメージを与えるだけでした。
ファイアブランドはゲームシステム的にはただの炎術の媒体として使えるだけの剣で、別に強力というわけでもありませんでした。
触れるだけで燃えるなんていう演出はイベント中だけであって、戦闘中にそういうことは無かったですね。
・アクアバイパー
蛇の形をした水塊をぶつけます。
ターゲットの足元から出てくるフレイムナーガと違って、こちらは術者からターゲットに向かって一直線に進みます。
・烈風剣
本文中にもあるように、風による範囲攻撃ですね。