クヴェル使いのイヴァリース戦記   作:雑種犬

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第3話

「在イグーロス、ベストラルダ公子への通信の任より帰還致しました。

 つきましては返答の書簡を預かっております。」

石造りの城の一室で、ギュスターヴは主君であるラーグ公爵に任務の完了を報告し封書を差し出す。

ラーグ公が今居るこの場所は彼の居城であるイグーロス城ではなく、現在遠征軍の拠点となっているゼラモニアのピアフォンド城だ。

城内に設けられたラーグ公の執務室に、ラーグ公とギュスターヴ、それから数名の近衛騎士が居る。

 

このような場において、通信とは主に使者を通じての遣り取りを指す。

この世界の文明は、地球上での時代に例えるなら近世と同等のレベルだろうか。

いかにもファンタジーというような剣と魔法の世界で、銃砲のような火薬技術も多少は存在する。

古代文明の時代には電信のような技術もあったのかもしれないが、現代ではそのような便利なものは無いし、在ったとしても公開されていない。

通常は郵便屋、特定の都市間で急ぎの場合などは伝書鳥、そして今回のような貴族間などでの通常の遣り取りは使者を立てるという具合だ。

 

ラーグ公は書簡を読みながら問う。

「様子はどうだった?」

「ベストラルダ様もルーヴェリア様もお変わり無く。

 家老殿の働きもあって政務の方も滞りないようでした。」

ルーヴェリアはベストラルダと同じく現ラーグ公の子、つまり公女という立場だ。

ベストラルダとルーヴェリアの歳は10も離れているが、この世界では珍しくはなかった。

公爵がイグーロスを離れている現在、公子であるベストラルダがその代理として領地を治めている。

 

一息ついてから、ギュスターヴは話を続ける。

「それとは別件となりますが、やはり西部で野盗が増えているようです。

 討伐が難しいのであれば、いっそ奴らを雇ってオルダリーアにぶつけては如何でしょう。

 奴らが道を踏み外す所以が飢餓たれば、食料の供給さえ保証してやれば動かすのは容易いかと。」

「む。賊を使うのか。」

ラーグ公は眉を顰める。

前例が無いわけではないが、免罪など簡単に行って良いものではない。

「使うか使わないかは別としても、賊に襲われた者が職を失い新たな賊にならぬとも限りません故、内患は早急に取り除くべきかと愚考致しします。

 その一案として賊を使うことを考慮頂ければ。」

「……一理あるか。

 だが、何にしても戦況が落ち着いてからだ。

 敵に動きがある。近いうちにぶつかることになるだろう。

 その時には一働きしてもらうぞ。」

「はッ。承知しました。」

 

「しかし貴様、そのような提言をすることがよくあるが、参謀職にでも転向した方が良いのではないか?」

「公は私の武を腐らせるおつもりで?」

冗談めかして言うラーグ公に、ギュスターヴも同じように答える。

本心としても、他領を直接見たり他の貴族と接触したりする機会の多い現在の職分を気に入っている。

自身の任務遂行能力は決して低くないものと自負しているが、その力を使わないつもりかと訊き返した。

ラーグ公の返答はシンプルだ。

「まさか。2人分働けばよかろう。」

ギュスターヴは肩をすくめた。

 

 

 

 

 

「ギュス!」

「ダイスダーグか。久しぶり。」

ラーグ公の執務室からの帰り道、宿舎へ向かうギュスターヴに声をかけたのは士官アカデミー時代からの友人であるダイスダーグだ。

アカデミー卒業後に二人はラーグ近衛騎士団と北天騎士団に別れたが、それ以降も交友関係は続いている。

北天騎士団はラーグ公爵家に近しい組織であり行動を共にすることも少なくないため、会う機会はそれなりにあった。

「さっき窓から黒チョコボが見えてな。」

大型の鳥であるチョコボは遠目にもわかりやすい目印となる。

また、黒チョコボは多くないため黒チョコボを見かけたらそれがフリンである可能性は低くない。

特に単騎で行動する黒チョコボであれば、それはほぼフリンだ。

ある程度人に慣れて尚飛行能力を持つ黒チョコボはラーグ公の配下にはフリンのみであり、それはつまりフリンに付いて行ける能力を持つチョコボを用意できないということだ。

そういった理由でフリンとギュスターヴは単独行動をとることが少なくなかった。

ダイスダーグに待ち伏せられることはたまにあるが、それは毎回フリンを見てのことだった。

「今時間あるか?」

「ああ。報告も済んだし、今日はもうやることは無い。

 そっちは大丈夫なのか?」

「今日はちょうど非番だ。」

 

二人は城の前庭を歩きながら話す。

「で、今回の成果はどうだった?」

ダイスダーグに訊いたのは任務の話ではなく、その道中での個人的な用事のことだ。

仕事の都合で各地に移動することの多いギュスターヴは、薬学で使う材料の調達を依頼されている。

傷薬の材料などであれば軍の輜重部隊から調達できるが、ダイスダーグの場合は趣味のようなもので多種多様な素材を求めるためそちらにはあまり頼れない。

「特に目立った物は無いな。

 グローグの外れで薬草をいくつか調達しただけだ。

 ルザリアでティアマットの肝臓が売られてたけど、値段が高すぎて手が届かない。」

「あとはザーギドスで培養したモルボル菌を見つけたけど、必要無いよな?な?」

「モルボル菌だと?培養に成功したのかッ!何故確保しなかったッ!」

早口に捲し立てるダイスダーグ。

収集癖もあるらしく珍しい薬品にはすぐに食い付くが、ギュスターヴとしては危険で扱いが難しい物にまで手を出すのはやめてほしいところだった。

「いや要らないだろ。要るとしても面倒だし俺は関わらないぞ。

 この前のモスフングスの胞子もだけど、そういうの何に使うんだよ。」

「何に使うか、か。ふむ……いつか必要になるかも知れんだろう。」

「ふーん。」

収集癖を思わせる台詞を真面目な顔で言うダイスダーグに対し、ギュスターヴの返事はとても適当だった。

 

「まあそれは置いといてだ。

 暇なら今から手合わせしないか?」

ふと思いついたように、足を止めたギュスターヴは腰に佩いた剣を指して言った。

ダイスダーグもつられて止まる。

実戦ではないのでその剣、ファイアブランドを使うわけでは無いが、剣術の試合だと伝わればそれでいい。

「それは構わないが、走ってきたばっかりで疲れてるんじゃないのか?」

チョコボに乗って走るのは自身が走るよりはマシではあるが、それでも長時間となればかなり疲れるものだ。

ダイスダーグは心配するが、だからこそ今やろうとギュスターヴは言う。

「最近野盗が多くてな、走った後すぐ戦ったり走りながら戦ったりする機会が多いんだよ。

 疲れたままで訓練しときたい。

 しかし、近衛騎士の仕事がこれほど面倒になるとは思わなかったな。」

「あまり戦場に出ないんだから野盗退治ぐらいしっかりやれよ。鈍るぞ?」

「いやいや、退治どころじゃないよ。

 単騎で走ってたら急に矢が飛んできたり、気付いたら囲まれてたりするんだぞ。」

「ああ、奇襲なのか。考えてみれば、野盗だったら確かに奇襲だよな。

 で、全部斬ってきたのか?」

「無理無理。適当に何人か燃やしてから逃げたりする程度だよ。」

「昔から実戦になると燃やしてばっかりだよな。全部斬れよ。鈍るぞ?

 そういえば、そろそろ不動無明剣か強甲破点突きぐらい使えるようになったのか?」

「俺だって時間がある時は稽古してるんだけどな。剣技はできる気がしない。」

 

この世界では剣は特別な武器であり、剣技は特別な技術とされる。

剣を使い魔力を使わずに攻撃魔法のような現象を引き起こす技術が剣技と呼ばれる。

剣気による遠当てであり、一目見ただけで物理攻撃ではないとわかるような異様な攻撃だ。。

剣技にもいくつか流派のようなものがあり、ダイスダーグはそのうちの聖剣技と剛剣を扱う。

不動無明剣は聖剣技、強甲破点突きは剛剣に属する技だ。

騎士の中でも剣技を使える者は限られており、その者達は大騎士などと呼ばれて一般騎士とは区別される。

 

「この前剣技使ってただろ。たしか烈風剣と疾風剣だったか?

 あれができるんなら不動無明剣ぐらいはすぐに習得できそうだけどな。」

「あれは剣も使うけど半分魔法だよ。しっかり魔力を消費してるんだ。」

 

魔力を使うものも広義には剣技と呼ばれるが、限り有る魔力を消費する割には効果に大差は無い。

ただ、クヴェルによって魔力が増強されているギュスターヴにとって魔力消費自体は大して気になるものではない。

何故魔力無しでそのような現象を起こせるのかをギュスターヴは理解できないし、剣技を理不尽なな技だと思っている。

騎士を名乗るからにはステータスとして剣技の一つや二つは習得したいところだが、未だにその糸口さえ見いだせないままだ。

 

「ふーん。

 まあ、とりあえず練兵場に行こう。付き合ってやるよ。」

ダイスダーグが再び歩き始めると、ギュスターヴもそれを追った。

 




細かい公式設定は見当たらないので、いろいろと独自解釈とか独自設定とかが。
どんどんでっちあげていきましょうねー。

剛剣は一対一の対人戦に特化してて、聖剣技は大抵の場面で有効な剣技。
剣技の類は公式チートですね。
MPを消費しないくせに、長射程で、回避不能で、通常攻撃よりダメージ大きくて、状態異常とか装備破壊とかの追加効果まであって、技によっては範囲攻撃。
対して破壊魔剣や魔法剣のようなMP消費がある剣技はダメージオンリーだったり状態異常オンリーだったりで、まあ、なんていうか、MP使わない剣技より弱い。なんでや。
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