クヴェル使いのイヴァリース戦記   作:雑種犬

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だいぶ先の展開ばっかり妄想しながら、気づいたら前回の投稿から数ヶ月。
これはエタってると思われそうな期間ですね。すみません。


第4話

「ところで、今の戦況はどうなってる?

 数日以内にぶつかるとか聞いてるけど。」

ダイスダーグが振るう木剣に、ギュスターヴが同形の木剣をぶつけて跳ね上げる。

その隙にギュスターヴが後退しながら問いかけた。

「各地の敵軍が一斉に動いたんだ。

 昨日から立て続けにそういう報告が来ている。」

ダイスダーグはそれに答えながらも追撃する。

跳ね上げられるままに頭上へと持ち上がった剣はそのまま上段の構えとなる。

剣が直接届かない程度に距離は開いているが、ダイスダーグは構わず振り下ろした。

同時にギュスターヴは届かないはずの剣を避けるかのように、側方へと倒れるように跳ぶ。

ダイスダーグが得意とする不動無明剣は、敵の足元から刃を出現させて刺し貫く技だ。

剣技と呼ばれる技は大抵が刃の具現化であり、不動無明剣もその典型例の一つだ。

物質としての刃を作り出すわけではなく、魔力か何かで一時的に形成されたようなよくわからないものだ。

だが実体は無くても攻撃には充分な効果があり、むしろ通常の攻撃よりも威力が高いことさえあるのだから軽視はできない。

刃はギュスターヴの足を掠める。

それにより靴に傷ができてしまったが、足自体にまでは届いていない。

その一撃の回避には成功した。

だがそれだけで済むはずも無い。

ギュスターヴが体勢を立て直す前に、ダイスダーグは同じ技をもう一度放った。

対してギュスターヴは事前に用意していたガードビーストを下方に展開して防御する。

ダイスダーグは中距離で体勢を崩している相手には即座に剣技を打ち込むことを、ギュスターヴは経験則として知っていた。

「多方面を一斉に攻めるつもりか、一部を確実に攻略つもりってところか?」

直後にギュスターヴは再び問いかけ、同時に魔法で反撃する。

傍目には剣を振り下ろすだけに見える剣技ほど速くはないが、ギュスターヴの魔法の予備動作はとても短い。

他の多くの魔法と違い呪文詠唱を必要としないため、話しながらでも魔法を使える。

放った魔法はブッシュファイア。

敵の周囲に多数の火炎弾を旋回させながら、旋回径を狭めていく攻撃だ。

直撃しても死なないように威力こそ弱めているが、回避が困難であることには変わりはない。

「闇に生まれし精霊の吐息、ブリザド!」

ダイスダーグは冷属性の黒魔法で迎撃する。

周囲に冷気を撒き散らしながら炎の弾幕を走って突破したのだ。

数発の被弾はあったがそれも冷気によって減衰しており、手などの露出部に軽い火傷を負っただけで済んでいる。

元より威力こそ抑えていたが、それでもほぼ無傷で切り抜けられたことにギュスターヴは驚く。

最大の要因は、ブリザドの詠唱が不完全であったことだろう。

その詠唱は通常よりも短く省略されているため、攻撃魔法としての効果は不完全ではあった。

だがそれにより発動までの時間が短縮され、火炎弾がダイスダーグに接触する前に詠唱が完了する。

そして本来のブリザドは冷気を一点に収束させて氷の刃を作り出すものだが、今回は詠唱短縮の影響によって冷気が収束せずに周囲へと拡散して炎を減衰させた。

完全なブリザドが発動していれば、多数の火炎弾に対して単発の氷刃では相殺しきれなかっただろう。

不完全な詠唱は、時間の短縮しながらも効果を最適化するという一石二鳥となったのだ。

それは士官アカデミー時代に黒魔法の資料でも一度見たことがある応用技術だ。

確か昔の高名な魔道士がレッドドラゴンのブレスを防ぐのに使った旨が書かれていたのを思い出した。

集団戦において後衛の魔道士が攻撃を受けるような状態は負けも同然だし前衛は魔法を使う余裕などあまり無いために、実際には殆ど使われない技術だ。

ただでさえ黒魔法をほとんど使わないギュスターヴはそれを使うような機会は無いだろうと思って忘れていたが、ダイスダーグは憶えていたのだろう。

ギュスターヴは上手い機転だと驚き感服するものの、それで隙を晒すようなことはない。

ブッシュファイアの制御を即座に放棄し、同時にウォーターハンマーを構成する。

巨大な水塊での強打と同時に、頭部に直撃すれば水が流れ落ちるまでの非常に短い時間ではあるが呼吸を阻害する攻撃魔法だ。

この攻撃に慣れていない相手に対しては予期せぬ窒息による恐慌も期待できるが、ダイスダーグにとってはただの打撃でしかないだろう。

抑々、これは攻撃よりも牽制を重視した行動だから攻撃効果に関してはどうでもいいとギュスターヴは考えていた。

ウォーターハンマーを出現させる位置はダイスダーグの前方斜め上。

そこからダイスダーグのやや前方に向かって叩きつける。

ブッシュファイアを突破したままの勢いでこちらへと走ろうとしていたダイスダーグは勢いを殺し、後退して避ける。

即興で水塊の一部を分離させてダイスダーグに向かわせる。

水塊の一部であるのは、ウォーターハンマー全体を素早く操るにはギュスターヴの制御能力が不足しているためだ。

分離したウォーターハンマーの欠片をダイスダーグが盾で受ける。

ウォーターハンマー本体を避けるために行った後退の勢いと欠片がぶつかる衝撃が相俟って、ダイスダーグをさらに数歩後退させることができた。

ギュスターヴの方も、ブッシュファイアとウォーターハンマーを放ちながらもさらに後退して距離を開けている。

両者の距離は目測で10メートル以上だ。

「さっきの火は危なかったな。

 で、何の話だった?」

平然とした態度で言いながらダイスダーグはギュスターヴへと駆ける。

ギュスターヴの力は遠距離の魔法戦でこそ最大限に生かせるからだ。

ダイスダーグも黒魔法が得意ではあるが、魔法の撃ち合いとなればギュスターヴに劣る。

黒魔法等の一般的な魔法では詠唱中に無防備となるため、詠唱が不要で素早く魔法を放てるギュスターヴに対しては一方的に攻撃されることになりかねない。

詠唱を省略したとはいえ後出しのブリザドが間に合ったのは、発動から着弾までのタイムラグが数秒あるブッシュファイアだからこそだ。

タイムラグが小さい他の魔法であればそうはいかない。

せめて剣技の間合いまで詰めて、魔法攻撃を阻止せねばダイスダーグに勝ち目は無い。

逆に、剣技が届く中距離戦であればギュスターヴが不利だ。

いくら詠唱が不要でも一瞬で発動できるというわけではない。

魔力を扱う以上は一定の精神集中が必要になり、呪文詠唱よりは短い時間だが隙ができる。

その隙に対して、ギュスターヴの魔法よりも早く発動できる剣技は致命的になのだ。

「ああ思い出した、敵の狙いだったな。

 それは全部落とすつもりだろう。できるかどうかは別だが。

 恐らく前線付近に居る部隊は全て動いてるからな。」

ギュスターヴは毒音波、ハウリングヘヴンと立て続けに攻撃魔法を放って迎撃する。

毒音波は毒水を音速で叩きつける攻撃、ハウリングヘヴンは音による精神攻撃だ。

どちらも音速の広範囲攻撃であり、ブッシュファイアよりもなお回避が難しい。

それを知っているダイスダーグには端から回避するつもりは無く、攻撃を受けることを承知で走り続ける。

「一部だけが狙いだとしても、その一部の中にピアフォンドやレンスのような重要拠点は全て入ってるだろうから同じ事だ。」

物理的な威力が高くないとはいえ、ダイスダーグは二撃を受けて体勢を崩しながらもなお毅然とした態度で走り続ける。

これも一種の精神攻撃なのだろう。

いくら攻撃を受けても平然としているのは、攻撃側の心理としては少々つらいものがある。

尤も、中距離にまで持ち込めばダイスダーグが有利だとわかっているから多少の攻撃に動揺しないというだけかもしれないが。

ハウリングヘヴンを受ける直後に剣技の間合いに入っていたが、そのまま走り続けた。

格闘戦が狙いかと判断し、接触前にできる最後の行動のつもりで魔法を発動させる。

今回は攻撃魔法ではなく、自身にかける補助魔法ベルセルクだ。

ベルセルクは一時的に魔法制御力が低下するが、その代わりに戦意を高める効果を持つ。

大規模な集団戦では当然だが、個人戦であっても戦意は軽視出来るものではない。

ベルセルクによって極限まで高められた戦意は筋力を限界以上に引き出して戦闘能力をも高める。

ギュスターヴの意識は研ぎ澄まされ、破壊衝動にも似た感情がダイスダーグに向かう。

それまでの疲れさえも忘れ、万全の体調であるかのように錯覚する。

「このピアフォンドにはリールやルウェンに駐留してた奴等がこっちに向かってるわけだ。」

剣の間合いに入ろうかという瞬間、ギュスターヴは下段に構えていた剣で袈裟に斬り上げる。

ダイスダーグは一歩退いて回避し、剣を上段に構える。

それは剣技の基本となる構えだ。

ギュスターヴにはタイミングが読めればガードビーストによって防御が可能であるものの、通常は剣技と言えば防御不能とまで言われるものだ。

ガードビーストの展開時間は短く、タイミングが読めない攻撃に対しては使いづらい。

剣技の中でも発動までのタイムラグは技によって多少差があるため、ガードビーストの防御ですら完全ではないのだ。

回避する場合は致命的な隙ができるのは明白であり、そのときに先程の不動無明剣と同じタイミングで追撃してくるとは限らないので危険な賭けになる。

防御も回避も却下するならば、ギュスターヴは必然的に剣技の発動阻止を選ぶ。

ダイスダーグが刃を振り下ろし、ギュスターヴは前に大きく踏み込み斬りかかる。

ギュスターヴの剣はダイスダーグの剣の腹を打った。

安定した構えのダイスダーグに対してギュスターヴは多少無理のある姿勢ではあったが、それでもベルセルクで強化されたギュスターヴの膂力によって、両者の打撃力に大差は出なかった。

ダイスダーグの剣は振り下ろす途中で側方へ弾かれ、剣技の発動には至らない。

同様にギュスターヴの方も、振り下ろしの威力によって剣を弾かれて下方へ流れた状態だ。

そのまま両者は数度切り結ぶ。

「リールに居た部隊には金羊毛騎士団も合流したって話もある。」

「金羊毛っていうと、あの突撃騎士だよな。確か、ボアゴーグ公だったか?」

話し続けながら戦うダイスダーグに対し、ギュスターヴは三度目の発問をする。

戦いとは別の事を考えさせて集中力を低下させるつもりでいるのだが、ダイスダーグにはその効果が見受けられない。

まあそれでも情報収集にはなると考えて、ギュスターヴは問答を続ける。

「ああそれだ。

 戦う度に初端から突撃するくせに、今までしぶとく生きているあの突撃公だよ。

 彼奴を捕えるなり殺すなりできればだいぶ楽になるんだろうがな。」

ダイスダーグはそこまで言ってから一度口を閉じた。

数歩下がりながら剣技の構えをとる。

ギュスターヴが頭上に剣を横向きに掲げた防御姿勢をとりながら低い姿勢で接近すると、ダイスダーグはさらに後退した。

接近を終えて速度を緩めようとした矢先に更に距離を開けられたのだ。

ギュスターヴはさらに前進しようとするが、足が追い付かず姿勢を大きく崩した。

疲れを感じなくさせていたベルセルクの効果が切れたらしい。

もともと長時間持続する魔法ではなかったのでこのタイミングで切れるのはおかしくないのだが、それに加えて効果時間中は魔法の制御がほとんどできなくなるために魔力感知による残り時間の把握ができなかったためでもある。

ベルセルクは使った回数が少なく、その使い勝手をまだ把握できていなかったための事故だ。

その隙を逃すダイスダーグではない。

ダイスダーグは素早く剣をギュスターヴの首元に添えて、最後に言った。

「チェックメイトだな。」




さて、負けました。
原作の人物と比べるとギュスターヴの強さはこんな感じということで。

手加減無しだとしたらブッシュファイアの時点で勝っただろうなー。
と一瞬だけ思ったけど、下手したらその前の不動無明剣のタイミングをずらされただけで負けてたんだと思い直すとか。
とりあえず剣技は怖い。
がんばって剣技を避けてますけど、ゲーム中では必中でしたし。

ダイスダーグは剣技を使うだけあってなかなか強いんですけど、ダイスダーグ戦はシチュエーション的にダイスダーグの印象が薄いんですよね。
ゲストユニットのザルバッグ将軍が戦闘後に仲間になるんだろかと期待しながらダイスダーグを倒したら、直後のイベントでダイスダーグがザルバッグを殺す悲劇。
ザルバッグが死んだショックが大きすぎて、ダイスダーグやアドラメレクの印象が消え去ったという。

使用技術
・不動無明剣
FFTの聖剣技。
聖剣技の中では最弱。
威力も聖剣技の中では最低であるものの、通常攻撃よりは強いし範囲攻撃だしストップの状態異常まであるし、最弱って何だろう。

・ブッシュファイア
序盤には非常に頼りになる広範囲攻撃術です。
術全体から見ると弱めの威力ですが、序盤では充分な威力ですし広範囲ですしデフォで修得してますし。
ただ、石化(即死と同義)付きの範囲攻撃術であるデルタペトラを修得したらブッシュファイアの出番が減りますかね。
そういえばFF12にブッシュファイアという名前の敵が居るらしいですね。
FF12は未プレイなので詳しくは知りませんが。

・ブリザド
黒魔法。
FFシリーズの代表的な魔法ですね。
鋭利な氷塊をぶつける攻撃です。
本来の詠唱は「闇に生まれし精霊の吐息の凍てつく風の刃に散れ!ブリザド!」
これを実際に唱えてみたら4秒ほどかかりました。

・毒音波
敵全体にダメージと毒。
音波耐性があると無効化されて、水耐性があっても無効化されるので、これが効かない敵も少なからず居ますね。
ゲーム中だと敵味方が区別されるけど、実際に全体攻撃技術を使ったら味方も巻き込まれるんじゃなかろうか?

・ハウリングヘヴン
敵全体にダメージと戦意(物理攻撃力のようなもの)下降の効果。
これも音波耐性で無効化されますが、音波耐性を持つ敵はほとんど居ませんでした。

・ベルセルク
効果は味方一人の戦意上昇と狂戦士化。
狂戦士の効果は攻撃力上昇と術使用不能。
狂戦士はFFのバーサクと違って、コマンド入力不能になるほどの極端な効果ではないですね。
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