そんなに都会が良いのか!?   作:goldMg

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いや、最初からそうしろよ

「本当にまたやるんですか?」

 

 ベッキーはとても嫌そうな顔をしている! 

 まあそれも当然だ。どっかの令嬢と思しき女の子を危険度の高い遺跡に放り込まされそうになっているんだから。仮に怪我したり、最悪死んだりしたらギルドにとって猛烈な損失が生じる事は見えているんだから。

 

「そう思うんだったらこういう手合いにもある程度の規制を掛けて欲しいもんですけどねえ!」

 

 でも、嫌味満点にジンさんがそう言うのも当然だ。そして俺はどちらかというとジンさん寄りの意見だし、ジンさんに責任は無いと考えている。

 上位ランク保持者のお墨付きがあれば、下位ランクの人間を同行させることができる今の制度に問題があるだけだ。

 

「まあまあ、どこの誰でもジンさんには関係無いじゃないですか。その時はその時ですよ」

 

「お前も半分ぐらい当事者になるんだからな」

 

「ええー? ぼくしらなーい」

 

 ジンさんと俺が必要事項を記入して、最後にマリーが紙に面と向かう。

 当然のように字は書けるようだ。名前を書くところで戸惑っているのは、本名を書かないといけないのだろうかとか思ってるんだろう。

 

「名前なんて適当に書いとけよ、あとそこは──」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 ジンさんはさっさと済ませようと介入して、マリーもそれに従って次々と書いていく。

 何だかんだ面倒見が良いところはあるからな。

 ……いやでも高難易度遺跡に初心者連れてって選別行うのは面倒見いいのか? 

 まあそんな事はさておき、久しぶりのピラミッドだけど、箱入り娘に何が出来るのかじっくりと見させてもらおうか。

 

「では、3人分のキーシートです」

 

 そう言って手渡された紙には俺の実績が記載されていた。こうやって見るたびに、俺も中々やるもんだな、って実感が湧く。

 ……やっぱり勧誘されたりしてもおかしくないよなぁ。

 

「おら、さっさと行くぞ。ボサっとすんな」

 

「おっと、待ってくださいよー、ほらマリーさんも行きましょうか」

 

「え、ええ……何か準備とかいらないの? ほら、あの人達は凄い鎧とか着てるし……怪我とかしない?」

 

「黙ってついてこい」

 

 やっぱりいきなり遺跡に連れていかれるって事で怖くなってきたんだろう。最初に話しかけてきた時のような威勢の良さは鳴りを潜めている。

 

「ジンさんジンさん」

 

「なんだよ」

 

「流石に靴はどうにかしたほうがいいんじゃないですかね」

 

「知るか、いつもこうだ」

 

 結構厳しい感じなのか。でも俺の時はこんな冷たくなかった気がするんだけど、記憶が美化されてるのか? 

 

「マリーさん、死ぬほど歩くことになりますけどそんな靴で大丈夫ですか? そもそもどうやってチプタ村まで来たんですか?」

 

「そうなの? ここには馬車を使ってきたんだけど……」

 

 おいおい筋金入りだな。まあジンさんは冷たいからバランスを取って俺が親切してやるか。

 

「多分その靴だと足がダメになるので、買っていきましょう。なーに、金は貸しにしときますよ」

 

「ありがとう、あの……さっきはひどい事を言ってごめんなさい」

 

「気にしないで良いっすよ」

 

 どうせこの探索が終わったら泣いて帰ることになるんだから、とは言わずに通り沿いにあった装備屋でパパッと機能性の高い靴を買ってきてやった。

 

「はい、多分サイズはこれで良いですよね」

 

「ありがとう……ピッタリだわ」

 

 まあ最低限の準備は出来たのでこれで行っても問題無いだろう。ピラミッドは安定して行き来が確保されている遺跡の中では最も難易度が高いので、本来ならガッチガチの装備で行くものなんだけど、ジンさんがいればまあ大丈夫だろう。

 そして西の門前に向かうと、やはり多くの人が集まっている。次々と遺跡に向かう人に混じってジンさんもキーシートを持って"ゲートオープン"と唱える。

 今回はリーダーであるジンさんが開いたゲートを三人で使用する形となっている。

 しかしマリーが尻込みしている。

 

「ほら、行きますよ」

 

「こ、これがゲート……遺跡の扉……」

 

 できた亀裂をくぐると、鬱蒼としげる森に出た。

 

「えっ、ええ!? どこよここ!」

 

 マリーは何か騒いでるけど、遺跡に決まってるのに何を驚いているんだ? 

 

「ここ森よ!? 遺跡って古びた建物なんじゃないの!?」

 

「マック、あれが普通の反応だ」

 

 へー、世間の遺跡のイメージってあんな感じだったんだ。

 

「俺が先頭行くからお前は後ろ守れ」

 

「分かりました」

 

 マリーお嬢様はお上りさんのようにあちこちを珍しそうに見ている。

 

「周りを見るのも大事ですけど、足元も気をつけましょうね〜」

 

「え? ふぎゃっ!」

 

「ほらー」

 

「何してんだ……ここはジャングルっていうこの遺跡特有の森林で、通常の森林よりも樹木が大きくなっているから足元も普通の森を歩く感じではいけないぞ」

 

 ジンさんは遺跡探索の達人だから、素人が自分で行くよりも楽な道を進んではいるんだろうけど、それでもやはり蔦や大きく地面から出た根っこが存在するから、足元に気を付けないとマリーみたいに転んでしまうってわけだ。

 

「森林なんて歩いた事ないわよ……」

 

「じゃあ行くぞ」

 

 マリーはその後も転んだり、そこら中に垂れ下がっている蔦に絡まったり、刺さったら即死の毒の棘を持つイバラに触れそうになって俺が阻止したり、ありとあらゆるスネーク種・スコルピ種・ビー種が餌を求めて襲いかかってくるのと俺が戦っている光景に失禁して着替えたりしながら文句も言わず着いて来ていた。

 俺、ボディーガードとか向いてるかも……

 だけどジンさんはその程度のことで休憩を取ったりしないので、マリーは露骨に歩くスピードが遅くなって来ていた。

 まあ、ジンさんに寄生するってことは最低限これに余裕でついて来れないと話にならないからな。俺も特に口を出さずに最後尾を守る。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

「ほい、水」

 

「あ、ありがとう……」

 

 まあ水分補給は人間としてするべき事だからな、ジンさんもとやかく言わないだろう。

 

「……」

 

 チラと見ると黙って立ち止まってくれているので問題無いようだ。

 

「マックくん……いえ、マックさん、あなた凄い方なんですね……」

 

「え!? 分かる!? いやー照れるなあ〜」

 

 この令嬢、中々見どころがあるじゃねえか。ちょっと好感度が上がったぞ。

 

「おい、くっちゃべってる暇はねえぞ」

 

「……んぐっ、はいっ」

 

 水分補給をして少し元気になったのか良い返事だ。先程は脱水によって熱がうまく逃げていなかったのか顔が赤くなり始めていたからな。

 その後も黙々と森の中を進むが、マリーは一つ気になった事があったようだ。

 

「あの……これって……どこに向かって……いるんですか?」

 

 まあ当然の疑問だ。変わり映えのないジャングルは方向感覚や距離感覚を失いやすいため、どこに向かっているのか分からなくなりやすい。それに遺跡特有の現象だが、太陽が存在しないため、どれぐらい時間が経ったかを太陽から知ることができない。そのため探索者は'時空時計'という何にも左右されない時計を手に入れて初めてやっと一人前になれるのだ。

 恐らく彼女は今、体力的にも精神的にも限界まで削られているのだろう。

 

「俺達はピラミッドに向かっている」

 

「ピ、ピラミ……?」

 

「この遺跡に存在する巨大な建造物だ。お前の言っていたようなやつの代表格だな。今回はそこの第一層までをお前と一緒に攻略する」

 

「あと……どれぐらいで……?」

 

「さあな、それがすぐに分かるような異物があるなら探索者の間で革命が起こるだろうよ」

 

「どういう……ことですか?」

 

「ここはゲートがギリギリ安定しているぐらいの遺跡だ。毎回、どこに飛ばされるか分からないから、この座標針を持っていないと永遠に彷徨うことになる」

 

 そうしてジンさんが見せたのは方位磁針に良く似た形をした器具だ。

 動かしても一つの方向を指しているようだが。

 

「これはある座標を記録すると、必ずその場所を差すようになる。ちなみに買おうと思ったら1000万ゼニーからだ」

 

「1000万ゼニー……」

 

 マリーは泣きそうな顔で座標針を見ている。

 これを売れば、今の状況が改善するもんねえ。

 

「方向は分かるが、距離はわからない。2時間かもしれないし、1週間かもしれない、そういう遺跡だ」

 

「そ、そんなの不可能じゃありませんか……」

 

「……まあ、流石にそろそろ良いか」

 

 マリーの全身を見回した後そう言ってジンさんはまた一つ物を取り出した。

 それは黒い立方体だった。網のようなもので形作っているらしく、中空に見えるが、良く見ると中には何かがいるようだ。

 それをジンさんは地面に叩きつけた。

 

「キャッ!」

 

 網が砕け、中にいた何かがいきなり巨大化して出てきた。マリーさんは驚いて尻餅をついてしまった。

 

「いたた……きゃあああああ!」

 

 そしてさらに自分の顔を覗き込んでいるモノに気付いて悲鳴を上げた。

 

「これが内部に遺跡を擬似的に再現したネストボックスだ」

 

「ワイバーンですか」

 

「ああ、凄いだろ、俺はこいつを使って移動する」

 

「俺の時は走っていきましたよね」

 

「そんなに遠くは無かったし、どこまで着いてこれるか気になったからな」

 

 なるほどなあ……

 え、乗れって? 

 

「……やっほ──!!!」

 

「た、たたた高すぎません!?」

 

 上からの眺めサイコ──!! 

 

「ジンさん! あんたいつもこんな景色を味わってたのか! ずるいぞ!」

 

「フハハハハ! 良いだろう! そして向こうを見ろ!」

 

「…………!」

 

「うおおおおでけええええ!!」

 

「お前も下からしか見た事無いからな! 凄いだろ!」

 

「すげえ! デカすぎてどれぐらい遠くかも分からねえ!」

 

「しっかり捕まってろよ!」

 

 ワイバーンは流星の如き早さでピラミッドまでひとっ飛びだ!

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