そんなに都会が良いのか!?   作:goldMg

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虎と馬を植え付ける者

「こ、腰が抜けて立てない……」

 

 ワイバーンによって一瞬でピラミッドの付近に移動した俺たちだが、直接降り立つ事はしなかった。

 それというのも、ピラミッドに近付くにつれて天気が崩れていき、最終的には竜巻を伴う雷雨になってしまったからだ。

 ワイバーンはモノともしなかったけれど、マリーは一度手が滑ってしまい、空中に浮遊する事態が起きたのだ。幸いすぐに回収したけど、乗っている間中はジンさんにしがみついて離れなくなってしまった。

 まあ安全だからな、気持ちは分かる。

 そして降り立ったのは、入口を守るように聳え立つ一対の石像の前だ。

 ここから改めてピラミッドを見上げると、壁のようにしか見えない。やっぱりおかしいわここ。

 

「さて、中でも引き続き俺が先頭でマックが後ろn──」

 

「ひぃっ……」

 

 後ろな、と言い終わらないうちにジンさんが吹き飛んだ。そして吹き飛ばした犯人は、ピラミッドの中から現れた。

 極限まで磨き上げられた金属のような光沢を持った素材を帷子状にした鎧を着ており、異物でたまに見かけるような、何かしらの機構を組み込んだメガネを兜に取り付けていた。

 そして大きく膨らんだ頭部を特徴とし、4本の足と4本の腕を有し、剣あるいは銃を持っていた。

 

「あいつらなんなんだろうなあ……」

 

「ひ、人……? いえ、そんな事よりなんて数なの! それとあの人は!?」

 

「いやあんぐらいで死んでたらチプタ最強なんて呼ばれないでしょ」

 

「そうそう、万単位でかかってきても死なないぜ」

 

 あ、戻ってきた。

 

「まあ、ここから暫くは掃討戦になる。マック、お前はそいつを守ってろ」

 

「はーい」

 

 ジンさんはパイルバンカーを空から取り出すと、ガシャコンと構える。

 

「行くぜオラァァァァ!!」

 

 気炎一息、異生物の集団に突っ込むと、前方にいる奴は全員ミンチになって後ろに道ができる。

 

「インパクトォォォォ!!」

 

 ジンさんが踏ん張った状態で先端を敵に向けるとパイルバンカーのパイルが圧縮から解放されて、先端から衝撃波が出る。どうやら杭で直接攻撃する武器では無いらしい。

 俺も実際に運用しているのを見るのは初めてだからなあ。

 ジンさんも衝撃で体が押し戻されて地面が抉れているのを見ると、確かにあの武器をすぐに使いこなすのは厳しいモノがあるようだ。

 敵の波の中に入ってしまったのでどこにいるのか姿は見えないが、声と、敵が吹き飛んでいく光景がジンの位置を正確に教える。

 そこにいる異生物の全部が全部ジンを狙うわけではなく、俺とマリーを獲物に定めるやつも少なくない。マリーを抱えながら、飛んでくる光の弾を避けて拳を叩き込んでいく。そこまで耐久のある異生物ではないので、殴ればちゃんと粉砕されてくれて一撃で処理できるのが良いところだ。

 

「キャアアアアアア!! なんで私を抱えたままやるのよおおおおお!」

 

「放って! おいたら! すぐにミンチですよ!」

 

「ひいいいい、何かの液がついたわ!」

 

 異生物の体液がついた程度で叫んでいるが、そんな事では探索者なんてやっていられるわけがないんだけど分かってるのかな……

 

「おっと」

 

「うぐっ……」

 

「ちょっと本気で避けますね〜」

 

 通常の光弾では無理だと悟ったのか超高速連写に切り替えてきたので急角度で曲がったらマリーの腹に負担がかかったらしい。

 持ってくれよ、マリーの身体……! 

 知覚速度を上げて、弾と弾の間を俺とマリーがすり抜けるように微調整しながら接近する。

 

「っしゃおらああ! ……え?」

 

「ちょっ、いたい! なんか飛んできたわよ!?」

 

 折角の実戦の機会なのでロウさんにもらった石剣でぶっ叩いたら、へし折れるっていうか剣身の根本から砕け散った。

 破片の一部がマリーに当たってしまったらしい。

 こんなんじゃ戦えないじゃん……

 

「っっっ!! ふぅぅぅぅ……」

 

「なんなの!? 耳が痛いんだけど!」

 

 石剣の脆さに引いてたらジンさんが衝撃波を出しながら突っ込んできた。

 ただ武器を前に構えているだけなのに後ろにいた敵は吹き飛んでいる。

 

「この武器、星5です!」

 

 笑顔で採点したジンさんはまた衝撃波を出して突っ込んでいった。異生物の手から落ちた剣を拾う。かなりデカいが、そこまでの重さは無いようだ。一体どんな金属で出来ているのか気になるけど、それは後でやろう。

 

「……ッオェェェェ」

 

 なんかマリーがゲロってるから一旦地面に置いて、向かってくるやつを迎撃する。

 

「……こ、こんな広いところにいる敵を殲滅するのに、一体何週間かかるのよ!」

 

「一層攻略なんでそんな時間かからないですよ」

 

「だ、だって、王都より広いじゃない!」

 

「まあまあ、落ち着いて下さいよ」

 

「落ち着けるわけないでしょ!」

 

 何でそんな興奮してんだよ……

 

「あっ、そうだ。そんな余裕あるならそこらへんの銃でも拾って撃ってて下さいよ」

 

 そこら中、異生物の肉片だらけだが、武器も落ちているため拾い放題だ。

 

「……うぷ、む、むり……気持ち悪い……水……」

 

「ジンさんの仲間になりにきたのに死体見た程度で吐きそうになってどうするんですか」

 

「だって探索者がどんな事やってるかなんて教えてもらってないしグェッ……」

 

「あっぶね! やっぱ抱えてないとダメだわこれ!」

 

 もうマリーが吐くのはしょうがないと割り切ろう。

 マジで勧誘者をこれに連れてきてたとかジンさんヤベえわ。ギルドはもう少し危機管理しっかりした方がいいね。

 どうせそのうちアイツが現れるしそこまで避け続けるか。

 

「オラァァァァ!!」

 

 おっ、ジンさんはなんか赤い光線みたいなの振り回してるな。アレもパイルバンカーの機能なのか? 

 光線が通り過ぎると異生物の体が通り過ぎたところを断面にしてズレて崩れ落ちる。

 

「はっはっはっは!!」

 

 テンション高過ぎだろ。いつもはジンさんあんな感じゃないのに、もしかして一人の時はいつもあんな感じなのか? 

 

「ば、ばけもの……」

 

 マリーは俺の背中で慄いている。まあ一般人が見たらそうなるよな。

 おれもまけないようにしなくちゃな! 

 

「これ飲んで!」

 

「えっ? これなに?」

 

「飲んだ? ヨシ、じゃあ本気出すぜ!」

 

「ちょ──」

 

 いま出せる最高速度で、群がってくる異生物の隙間を縫っていく。

 すれ違い様に拾った剣で切り裂いていくのめっちゃ楽しいんだが、剣士ってみんなこんな感じなの? 

 おれも剣士になろうかな……でもメイヤーが飾ってある剣を怖がってたからあんま持ちたくないんだよなあ。石剣もメイヤーにはあんまり見せないようにしてたし。あいつ騎士になるのに剣が怖いって何なんだ? おれと知り合う前に包丁でなんか失敗でもした事あるのかね。

 カタナたちが入学するのは秋だから少し先だし、それまでに直ると良いけどなあ。

 学校といえばあの学校の名前はアルバート騎士学院というんだけど、貴族以外でも入学する子供は意外といるらしい。ジンさんも普通の家庭に生まれたけど入学したとかなんとか。

 最初は楽しかったけど学年が上がるに連れてみんな真面目になっていくのが苦しくてやめたっていうのがジンさんらしいけど。

 目につく異生物を倒していくと段々数が減っていくのが感じられ、密度が薄くなってきたな、というあたりでジンさんが空に火柱を打ち上げた。

 

「マァァァァッッック!!」

 

「了解!」

 

 合図を受けて防御用の異物を取り出す。

 

「……え?」

 

「この中にいて下さい」

 

 超高速の世界から戻ってきたばかりで意識がハッキリとしないマリーを異物の安全地帯内に放り込んでジンさんの横に並ぶ。

 

「アイツが来るぞ、クソデカ光弾には気をつけろよ」

 

「はい」

 

 かなり疎になった異生物どもはどこかに退却していき、辺りに警告音が鳴り響く。

 そしてどこからか光の粒が流れてくる。

 粒はある場所に集まると一つの塊をなし、最終的に縦横20mほどの大きさの塊になった。

 そしてそのまま先ほどの異生物が巨大化した形になる。

 

『警告、直ちに当施設を出ない場合、武力行使に入ります。警告、直ちに当施設を出ない場合、武力行使に入ります』

 

「最初は手を出すなよ」

 

「分かってますって」

 

 何喋ってるか分からないけど、これ喋ってる間に攻撃するとめんどくさいことになるって言ってたな。

 

『負傷を負っていて出られない場合は2本、指を立てて下さい。負傷を負っていて出られない場合は2本、指を立てて下さい』

 

 なんか人差し指と中指を立てて掌に当たる部分をこちらに向けている。

 

『10秒以内に行われない場合、武力行使を開始します。10、9、8』

 

「おっ、そろそろ始まるぞ」

 

 どうやら何かの合図のようなモノがあるようで、ジンさんが武器を構えた。

 

『7、6、5』

 

 そして俺も先ほど拾った剣を構えた瞬間、後ろから光線が飛んできて巨大異生物の頭部に着弾した。

 ……え? 

 

「おいおいだから攻撃するなって……」

 

「いや俺じゃ……」

 

 後ろを振り向くと、マリーは落ちていた銃を構えている。

 肩を震わせ、荒く息を吐き、表情は恐怖に染まっており、正気を失っている事を示していた。

 

『積極的な武力攻撃を確認。第三号危険因子と認定。第三段階のロック解除』

 

 巨大異生物は姿を変えていき、東の果てから来たという人が絵で見せてくれたロボット? みたいな姿になった。

 ロボットは人が乗って操縦するらしいので多少は違うだろうけど。

 

「あ──めんどくせえ! コレになると当たったら俺でも即死の攻撃しかしてこないぞ!」

 

「当たったことあるんすか!?」

 

「俺が装備してた鎧が溶けた! 素材は神獣のだ!」

 

「マジかよ」

 

 神獣とは’深淵'と名付けられた地下階層型遺跡にいる異生物だという話だけ聞いたことがある。

 ランク1になってようやく入る事ができる遺跡だ。そこに住まう異生物ともなればその素材の頑強さたるや推して知るべしだろう。

 出土する異物も異生物も破格で、そこに潜るときはジンさんもお遊び無しの性能のものを持っていくらしい。

 

「まあ威力と速度だけだ! 俺とお前なら余裕で避けられる!」

 

「じゃあダメじゃん」

 

 マリーが死ぬじゃん。

 

「……ちっ、もう邪魔だ! お前は戻ってろ!」

 

 そう言うと即座にゲートを開けてマリーを放り込んでしまった。

 

「違約金取られますよ?」

 

「うるせえ! 死ぬよかマシだろ!」

 

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