そんなに都会が良いのか!?   作:goldMg

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凡そ全てのモノを手に入れられる力

「ゴアアアアアア!!」

 

「おおおおお!!!」

 

 炎を纏った剣とファルメンレオの爪が衝突する。

 衝撃は空気を揺らして辺りに拡散し、近い所にいた兵士は吹き飛ぶ。

 

「わああああ!」

 

「へっ……やっぱ5級にいるタマじゃねえな、アイツは……ほら、ぼさっとしてないで早く避難してくれ」

 

「う、うむ……感謝する」

 

 幸いにして負傷が大きなモノは先程横叩きにされた少年以外にはおらず、生き残った24名は避難を開始した。

 それを横目に、タイクンは雷鞭を弾く。

 

「そらそら! そんなちょこまかした攻撃で俺をやれると思うなよ!」

 

「グルウウウ……」

 

 口ではこう言っているが、実際のところ、タイクンが有利というわけでも無い。ファルメンレオの雷鞭を捌く程度なら難なくこなせるが、攻めに転じるには手数も、装備も不足していた。

 それに、ファルメンレオに関してある程度知識のあるタイクンは、今の状態が、容易に崩れる状態であると分かっていた、それも自分にとって都合の悪い方に。

 迸る雷の量が、明らかに少ない。本来ならば、木々を焼き尽くしてあまりある雷量の筈だ。

 舐められているのか、それとも、あの兵士と見られる人達が予想以上に粘ったのか。しかし、主兵装が何の変哲も無い直剣と弓だった事から、高く見積もっても7級冒険者程の強さしか無いだろう。純粋な個々の強さがあまりに足りていないようだった。それ故に練度の高さで補ったのだろう。恐るべき統率力だ。

 

「おっと、考え事してる場合じゃなかったな」

 

 回り込むように撃たれた雷鞭を避けて反省していると、膠着状態に焦れたのか最初と同じく直接攻撃を繰り出して来た。

 

「動きっ! 自体は! 読み易いんだけどな!」

 

 獣に近い今の姿から繰り出される攻撃は左右からの引っ掻きがメインであり、避ける事自体は出来る。しかし、フェイントをかけて体当たりを仕掛けてくる事もある。

 そういう時は長剣で無理やり受け流すしか無いわけだが

 

「くぅぅ! 流石に重いな!」

 

 見た目が雷だから勘違いしそうになるが、体当たりの一撃は想像以上に重い。

 更に、こちらが体勢を崩した所に雷鞭を全て叩き込んでくる。砂埃が舞い上がり、タイクンの姿が覆い隠される。

 

「タイクン!」

 

「問題ねえ! うらあ!」

 

 雷鞭に関しては一撃の重さが足りない。タイクンの放つ剣閃の元に叩き落とされていた。

 しかし、雷鞭を切り落とすまではいかない。武器には尽きぬ炎が付加されているが、長剣の切れ味が普通程度しかないためだ。

 タイクンももっと質の高い武器は持っているが、今回はそれを縛っていた。そもそも、タイクンは今回ネレイェーグを狩りに来たのだ。5級モンスターを狩るために最高の装備を揃えて最高の調子で、なんて甘い事を言っていては上に上がれない。

 しかし、持っている装備の中でフィールシットに渡した短剣だけは持っている中で最高品質のものだ。本当ならば自らが持って、至近距離での立ち回りを繰り広げた方が倒しやすくはあるのだが、今の目的は時間稼ぎだ。

 フィールシットからの合図が来るまでは現状で耐えた方が良い。

 

「さーて、また同じ手でくるならもう対応できるぜ。どうするよ、3級モンスターさん」

 

「……」

 

「なんだ?」

 

 その声に反応したのか雷鞭を引っ込めると、先程までの俊敏な動きは嘘のようにその場から動かなくなる。タイクンがその様子に警戒を強めると、ファルメンレオの身体から小さな稲妻が漏れる。

 段々と稲妻は数を増やし、太くなり、鳴り止むことの無い轟音を撒き散らす眼前の怪物にタイクンは冷や汗をかく。

 次の攻撃を避けることは出来ないと本能が警鐘を鳴らしているのだ。

 

「こりゃ、最大の賛辞だね……大技、ってわけだ」

 

 ファルメンレオが見せようとしている本気の一端に、タイクンの顔からヘラヘラとした笑みが消え、握る長剣に魔力を込める。

 極大の炎が発生し、タイクンの耐熱能力すら貫通して肌が焼かれる。

 

「ぐうううう!!」

 

 根性で熱を耐え、長剣を大上段に構える。

 ファルメンレオも低く姿勢を構え、突撃の姿勢を見せる。

 

「来い!!!」

 

 次の瞬間、タイクンの動体視力を超え、衝撃波を撒き散らしながら突っ込んできたその顔面を、無意識に振り下ろした長剣は捉えた。

 

「ぐぅっああああああ!!!!!」

 

 顔面を焼き尽くさんばかりの熱量を感じているはずのファルメンレオの突進は全く勢いを失わない。炎剣を振り下ろした体勢のまま押し続けられているタイクンは、背に当たる木々を粉砕し、雷撃をその身に浴びながらも決して手の力を緩めない。

 

 くそっ、意識が吹っ飛びそうだ……腕の感覚もねえ……だが、絶対離さねえぞ! 

 

 タイクンは意思の力で耐え続けるが、やがて速度の緩んだファルメンレオの鼻先から突き放され、地面に転がる。

 多量の雷撃を浴びた故か、タイクンの身体からはバチバチと電気が漏れていた。腕は焼け焦げ、長剣も赤熱しており、これ以上は使い物になるか分からない有様だ。

 

 対してファルメンレオの顔面も、先程の炎による攻撃は有効だったのか、ブスブスと煙が出ており、顔面が実体化して炭化した部分が見えている。

 しかし、炭化した部分はポロポロと剥がれ落ち、すぐさま修復されていく。

 

 タイクンの身体も治りつつはあるが、速度が違いすぎた。動けないタイクンと、その場に四肢でしっかりと立つ雷の獅子、今の戦闘においての勝者は明らかだった。

 勝利の余韻に浸っているのかタイクンを見据え、遠吠えをする。しかし、その声にタイクンの指先が反応する。

 

「何……勝ち誇って……やがる……まだ……終わって……ねえぞ……」

 

 見苦しい、生き汚い、往生際が悪い。これが仮に人と人の決闘ならば、既に勝敗は決していた。

 しかし、これは人とモンスターの殺し合い。見苦しく生きよう。生き汚く勝利を欲しよう。往生際悪く何度でも戦いを挑もう。

 震える足を無理やり動かして立ち上がったタイクンの手には、小さな瓶が握られていた。

 ソレは霊薬。あらゆる外傷を癒やし、魂についた傷すら修復する奇跡の薬だ。

 お値段なんと、1000万ゼニー! 

 お金の力を借りれば、大体のモノは買える。さあ、まだ戦いは始まったばかりだ。

 小瓶の中身を飲み干したタイクンの身体に力が漲る。限界を超えて魔力が供給され、魂の器が拡がる。コレまで生きてきた人生の中で最も調子が良いと言って間違いない。

 燃え尽きていた腕も治り、使い物にならない長剣は捨てて炎弓を構える。

 グイッと口元をぬぐって、獰猛な笑みを浮かべた。

 

「第二ラウンドと行こうぜ!」

 

 

 ──────

 

 

「ぐぅっああああああ!!」

 

「タイクン!」

 

 タイクンが吹き飛ばされるのをフィールシットは見ていた。衝撃波を発生させながら突っ込むファルメンレオとタイクンは木々の中に消えていき、流石にマズイことが分かる。

 

「すまねえ! 後は自分たちで逃げてくれ!」

 

 タイクンから預かっている短剣を携えて、消えていった方向へと駆け出す。先程の突進のまま突っ込み続けたのか、木々が幹からへし折れている。

 こんな衝撃を自分が食らったら耐えられるのか、ゾッとしない。駆け出しから毛が生えただけと自負している6級冒険者のフィールシットには、あそこまで自信を持って3級モンスターに挑めるタイクンが羨ましかった。

 

「はあ……はあ……」

 

 ギュッ、と短剣を抱き締める。正直な話、恐ろしかった。

 この短剣だけ遺して一人で置いていかれるなんて、まっぴらごめんなのだ。

 

 聡い彼女は、ここが元いた場所からは遠く離れた場所であると直感的に理解していた。ソレを言語化しなかった、できなかったのは、火の番をしている時に見た光景が、余りにも理解できなかったから。

 

 木々を抜けて走り続ける彼女はやがて遠目に、光る巨体を見つけた。

 そして同時に見てしまった。

 地面に伏せ倒れるその姿を。腕は黒く焼け焦げ、剣も溶けかけていた。

 

「タイクン!」

 

 声は届かないと分かっていても、叫ぶ。もう起き上がらないのか、勝鬨を上げるファルメンレオの姿にそう心配した彼女が仰天したのは、焼け焦げた腕でタイクンが自らの上体を持ち上げ、立ち上がったからだ。なんという凄まじい精神力か。感嘆する彼女を他所に、その手に持つ何かを飲み干したタイクンの身体は見る間に治り、炎の弓を構えた。

 その場に飛び込む。

 

「タイクン!」

 

「フィールシット! 避難は終わったのか!」

 

「怪我は大丈夫なのか!?」

 

 ペタペタと体を触ってくるフィールシットにタイクンは戸惑っている。

 

「なんだなんだ、どうした」

 

「だってお前さっきの腕……」

 

「ああ……霊薬を飲んだからな、問題は無──おっと」

 

「ひゃっ!」

 

 怪我が瞬く間に治った目の前の獲物に困惑していたファルメンレオは、自らを無視して興奮したニオイを発し始めた異種族のメスに苛つき、会話を無視して雷鞭を繰り出す。

 タイクンはフィールシットをすぐさま抱えると回避した。

 

「無視すんなってか? 嫉妬深いねえ」

 

「タイクンお前、剣がぶっ壊れちまったんだろ? どうやって戦うんだよ」

 

「短剣は持ってるか?」

 

「お、おう」

 

「お前はひたすらソレに魔力を注げ、俺はアイツの気を引く」

 

「でも、またさっきみたいになったら……もう霊薬はないんだろ?」

 

「バカ言え、あんな剣で戦うよりかはこっちの方がやりやすいわ」

 

「そうなのか……でも、俺は魔力の込め方なんて……」

 

「コレばっかりは感覚を掴まないとな……そうだ! 俺の手を握れ!」

 

 握れと言った割には手を取ったのはタイクンの方だ。ちなみに話してる間にもファルメンレオの攻撃は避け続けている。

 

「自分の手に集中してくれ。俺がお前の手に魔力を注ぐからソレに反発するように力を入れるんだ」

 

 言われて集中すると確かに、タイクンが自身の手を握ってくる力の他に手を圧迫するような感覚がある。ソレに反発するように力を込める。

 

「おっ、そうそう出来るじゃねえか。後は実践あるのみだな!」

 

「わ、分かった……」

 

 何がなんだか分からないまま戦術に組み込まれてしまった。とりあえずこの短剣に、今みたいに魔力を込めれば良いらしい。

 

「ヨシ、ちと格好はつかねえが……」

 

「え?」

 

 タイクンはビシッとファルメンレオを指差す。

 

「改めて、第二ラウンド行かせてもらうぜ!!」

 

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