そんなに都会が良いのか!?   作:goldMg

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幕間
収穫したらお祭りだよねえ!?


 ゴルディウスの一件以来、モンスターの動きが活発になっていた。相次いで2級モンスターが見つかり、チプタのギルドはてんてこ舞いといった状況だ。探索者とはいえ最高戦力であるジンはどこかへ消え、それ以外の2軍戦力で対処しなければならず、後手の対応が続いている。

 

「2級か……くそっ」

 

 レクスは手元に上がってきた報告書を見て呻いていた。アルケイン領のカレアレ火山で2級モンスター『ヴァルカン』が出現し、自領の戦力では太刀打ちできないとの事で救援要請が来たのだ。

 

「だからあそこの遺跡は閉じろって何度も言ってんだろうが……」

 

 前々から不穏な兆候が見られていた遺跡であり、レクスは忠告の意味でアルケインの領主に何度も念書を送っていた。それなのにもかかわらず封印処理を怠っていた尻拭いを己にしろと言える厚顔無恥さに頭がクラクラしてきた。

 チプタには数えきれないほどのゲートが存在するが、そのほとんどは常時封印されている。探索者に解放されている遺跡というのはほんの僅かでしかないのだ。そんな、全体から見れば僅かな数の遺跡でも、アドラント王国内で最も富の発生する場所であるあたりその異質さが伺えるが。

 

 そしてレクスは『ヴァルカン』に対して誰を宛てがうかで頭を悩ませていた。結局のところ戦力を派遣しなければならないのだ、それがこの国の組織のあり方というものであるが故に。確実な勝利を期するならば一級冒険者を派遣しなければならないが、在籍する4名のうち3名は既に別の一級モンスターの所に向かった。この先一級モンスターが他に現れないとも限らない状況で、迂闊に最後の一級冒険者を動かす事はできなかった。一級探索者は何しているかと言うと、同じように一級モンスターの討滅に向かっている。ジンは突出した能力を持っているが、他の一級探索者とて2軍とはいえども一線級の実力者だ。こんな時には漏れなく戦力としてカウントさせてもらう。

 じゃあ誰を向かわせるかという話なのだが、レクスは2級パーティのドラゴンネストを宛てがおうとしていた。一時は伸び悩んでいたようだったが、最近新人が加入して勢いを取り戻して来たパーティだ。加入前は3級パーティだったのが、新人加入後には2級に級を伸ばして来た。ヴァルカンの討滅実績は無かったはずだが、今回は情報もしっかり渡させてもらうし恐らくいけるだろう。

 

 

 ──────

 

 

「で、お前らを招集したわけだが……いけそうか? 正直拒否されても困るわけだが」

 

「困っている人がいるならレオは必ず行くわ! ね? レオ!」

 

「お、おう……そういう事です」

 

 コレだ、この少女がこのパーティを変えた。セネカ村のミレーユ──レオにくっついてチプタに出て来たらしいが、実際のところ引っ張っているのはミレーユの方だ。リーダーシップがあり、細かい所に気配りができる。必要なタイミングで必要なスペルを、罠を、アイテムを用いて全体の補助を行う。ドラゴンネストの要は彼女だった。

 惜しむらくは、彼女自体にはリーダーをやる気は無いということだが、そこらへんも含めてバランスが取れているのだろう。

 

「というわけだがレイナ、どうだ?」

 

 それはそれとして、パーティリーダーはレオでもミレーユでも無いので判断はリーダーに聞く。

 

「……良いわよ、2人が良いって言うなら」

 

 興味なさげのやる気なさげにそう答えるレイナ。シャンとしろ! お前リーダーだろ! と言ってやりたい気分だが、内々の問題に権力者が突っ込むのはよろしくないからな……

 このパーティの問題点はここにあった。レオとミレーユという新風が吹いた事によってパーティ全体の戦力としてはアップしたが、統率力で自らを超えるものが来てしまった事でリーダーの自信が無くなっているのだ。

 前はもっと快活で、自らどの依頼を受けるか決めていたし今みたいに下を向いてたりしなかった。

 悲しい事に、圧倒的なカリスマを持つミレーユはそれでもレイナを信頼している。レオを第一としつつリーダーを立てるようにも心がけているのだ。レイナは自らを蔑ろにせず、笑いかけてくる相手を邪険にできるような人間性では無かった。

 だからこそ、怒りをぶつける相手がいない。いつか潰れるだろうなとは思いつつ、今回で潰れないように祈るしかないだろう。

 ともかく、リーダーの了承は得た。次はヴァルカンの情報を伝える必要がある。

 

「そうか! よし、じゃあ奥の部屋で詳しい事を話そう!」

 

 そして説明などは他のやつに投げて俺は元の仕事に戻る。

 元の仕事というのは当然、変動する遺跡の調査結果から封鎖するモノ、解放するモノを分別する事だ。

 ここのところはずっとこの仕事ばっかやっててノイローゼ一歩手前だ。

 いや、ノイローゼ気味なのはいつもの事か(笑)

 ……はあ、仕事しよ。

 トボトボとギルド長室まで歩いて行く。途中で受付嬢と軽く雑談をして、お茶を淹れてもらう。

 ギルド長室のでかい椅子にドッカと腰掛ける。窓の外を見ると子供達が笑いながら走って行った。

 不意に涙がこぼれそうになった。

 

「あーあ……メイヤーもあんなにちっさかったのになあ」

 

 2人がアルバート騎士学院に入学してからはや数ヶ月、メイヤーの顔が見れないのがこんなに辛いとは思わなかった。嫁とイチャイチャしてるのも良いが、娘と顔を合わせる事でしか摂取できないモノがあると思うんだ……ズズッとお茶を啜ると秘書に咎められる。

 

「のんびり飲んでないで早く仕事してください」

 

 乾いた笑いが出る。本当に泣きそう……

 

「まずは『オーファス・雨の降る街』ですね。最近では雨に雷が混じるようになってきたそうで、『神』が出現する可能性が考えられます」

 

「ふん……『神』か……一級モンスターの可能性は?」

 

「当然その可能性もあります。ですが、ご存知の通りオーファスでは度々『神』が出現してきたという経緯があります。昨今の遺跡の不安定さを考えると無視できないでしょう。如何されますか?」

 

 如何するかってのはつまりギルドの探索隊を派遣するかどうかって事な訳だが……ナシだな。一級だろうが『神』だろうが適切な能力──つまりは高い戦闘能力──が無いやつは、関わるだけで破滅する。精神を操られるか乗っ取られるか、あるいは一瞬で消し炭となるだろう。

 ギルドから探索隊を派遣する何てのは土台あり得ない話だ。コイツもそれは分かった上で念の為の確認をしたんだな。目配せをすると、委細承知と軽く頷く。

 

「オーファスは一旦封印だな……」

 

「あそこからは良い食材が手に入っていたので痛いですね」

 

「アホ言うな、人類の存亡と天秤に掛ける気か」

 

「食事は大事ですからね」

 

 まあ実際、元々この世界には無かった野菜だったり家畜っていうのを向こうから連れてきて農業的に用いたりしているから大事ではある。

 とはいえ、大衆向けの目ぼしいやつは大体こっちでも根付いている。向こうでしか取れない高級食材なんか一旦無くなったところで困るのは貴族連中だけだ。知ったこっちゃねえや。

 仮にチプタがちっせえ村だったらあいつらの圧力で遺跡を封印させてもらえなくてそのまま壊滅、みたいな事もあっただろうがな。

 

「権力なあ……」

 

 カネで物差しの長さが決まってしまうこの世界には、時折どうしようもなく反吐を吐いてやりたくなる。マック、ジン、ゴルディウス、奴らが羨ましいぜ、全く……

 

「はあ……アイツらは自由に探索してるのに俺は書類と睨めっこ、ですか」

 

「そんなアナタがいるからジンさん達も安心して探索が行えるんですよ」

 

「嬉しかねえよ……」

 

 ──────

 

 黄金の絨毯が一面に広がっていた。人類の情勢が変化しようが関係なく植物は育つ。

 チプタの周囲に広がる小麦畑の収穫時期が来ていたのだ。小麦ははるか昔、東から来た人間が持ち込んだ食材で、育てやすさと扱いやすさが相まって根付いたらしい。加工もしやすく、主食のパンの原料として大量に生産されている。広大な面積を誇る農地にはまばらではあってもその広さゆえに相当な数の人影が見られ、収穫作業を行なっているのが見られる。

 収穫作業を担当するのは風の神の信奉者達であり、風の魔導を操って小麦を根本から刈り取っていく。刈り取られた小麦が宙に浮いて荷車に詰め込まれていくのを、北の街道から竜車に乗ってやってきた一団が見物する。見ているだけで酔いそうな揺れ方をしている竜車を引っ張るのは、コリドールリザードと呼ばれる地生の亜竜だ。決まった場所をグルグルと回遊する習性を持っており、幼体のうちに捉えられて竜車用に調教されている。

 そしてそんな竜車に乗るのはドワーフと呼ばれる亜人種だ。彼らは遺跡のような別世界からこの世界にやってきたと言われており、北の山脈で王国を築いているらしい。

 偏屈で、排他的であるというのは通説だが、彼らは楽しそうに笑っていた。

 

「おっ、今年もやってるねえ」

 

「この時期が来たって感じだな」

 

「お──い! 今年は豊作かー?」

 

 手を振って様子を聞くと、信奉者達は拳を上に強く突き上げた。

 

「おっ! 見ろよ、豊作らしいぜ。こりゃあたんまり稼がせて貰えそうだな」

 

「ははは! 朱き瞳に賭けてわしが今年は一番だ!」

 

「くははは! 戦いの鐘の音が鳴るぞ! 祭りだ!」

 

「酒だ! 肉だ! 女だ! ぜーんぶ食うぞ! グハハハ!」

 

「ヴィルム=ヘンドリオンの王冠は我らが戴くぞ!」

 

 何ぞこんなところまでドワーフが竜車に乗って来たのか、そう、ヴィルム=ヘンドリオンの討伐祭が始まるのだ。

 

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