そんなに都会が良いのか!?   作:goldMg

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入学準備2

 家でダラダラしていたら村長が訪ねてきた。

 

「お前さあ、バカだろ」

 

「ええ?」

 

 開口一番これだ。うちの村の村長は口が悪すぎやしないだろうか。というか俺って村長に会うたびにバカって言われてないか? 

 しかも俺が用意したお茶を飲みながら言うもんだから、叩き出しても文句を言われる筋合いは無いだろう。

 

「カタナにカードを渡しただろ」

 

「ああ……渡しましたね」

 

 確かに、学校入学の為には色々金がいるらしいと聞いたので渡したがそれがどうかしたのか。

 

「幾ら何でも考え無しすぎやしないか?」

 

「そうは言っても、好きなもの買わせた方がカタナのやる気に繋がりませんかね?」

 

 別に俺が適当に買った物を渡しても良かったかもしれないけど、どうせならカタナが気に入った物を買えばいいじゃん。

 

「あんな物をガキが持ってるなんて広まったら、普通に危ないだろ」

 

「いや、広まらないはずですけど」

 

「は? 広まるだろ」

 

「いや適当に言ってるわけじゃ無くて、カタナに渡した袋があるでしょ? アレはそういう異物なんですよ」

 

「あー……」

 

 アレも探索で手に入れた異物であり、袋とその中の物対しての認識が薄くなりやすくなるという効果がある。

 持ち主が自ら袋の中の物について話すとその効果は薄くなってしまうという弱点はあるが、結構役に立つ代物だ。

 

「まあ、流れで話しちゃったんでしょうけど、そうやって人に話せば話すほど効果は薄れるんで、噂とかで流すのはやめて下さいね」

 

「俺は話したりしねえよ……カードの方もそうだけど、あいつが買ったもんも結構目立つぞ。そっちの方はどうすんだよ」

 

「ん? 何を買ったんですか?」

 

「具体的な物はまあ色々あるから省くが、文具だけで合計で98万ゼニーだそうだ」

 

 そっかー…………え? 

 

「きゅ、きゅきゅきゅ98万ん!?」

 

「お前も驚くのかよ」

 

「が、学校って結構お金掛かるんですね……校長に聞いた時は学費以外はそこまでみたいな話だったんですけど」

 

「いやいや、普通はそんな掛けねえからどうすんだって話をしてんだろうが。こんな田舎だ、あんな貧乏人がいいもん使って……みたいなことにもなりかねないぞ」

 

 金額はまあ驚きはしたがどうでもいい。でも、確かにカタナの家はそこまで裕福じゃないし、そこら辺のギャップを考えておくべきだったな。

 ……いや、そこまで高いのを買うとは思わないじゃん? カタナって結構豪胆だったんだな。

 

「まあ、お前が一人で考えても碌な事にならないのは実績が示してるから、行くぞ」

 

 と、村長に指先で外を示される。

 その言い分には反論したいが、出来そうに無いので大人しくカタナの家に行く事にした。

 

「こんな大金を今すぐ返す事はできないので、将来、カタナが騎士になった時のお給金で返済させてください」

 

 カタナの家に着くなり、居間で地べたに正座していた夫妻が頭を下げて頼み込んできた。

 

「金とかどうでもいいんで、土下座はやめてもらって、とりあえず買った物を見させて頂いても良いですか?」

 

「はい、カタナ」

 

「あ、う、うん……」

 

 いつもとは違う両親の様子に動揺を隠せないカタナは、買ってきたという服や文具を持ってきて机の上に置く。

 

「ちょっと見させていただきますね?」

 

「マック君の金で買った物だ。好きに見ていい」

 

 一つ一つ買った物を見て行くと、確かに文具はシェープシフトの、服はアルメイドの物だ。

 

「おっ、結構センス良いの買ってきたんだな。この服とかはこの前に着ていたやつか、メイヤーと選んだんだっけ?」

 

「う、うん、ほとんどメイヤーが選んじゃったけど……」

 

 えへへ……と気恥ずかしそうにしている。

 

「良いじゃん、このペンとか俺も持ってるやつだし」

 

「え、そうなの?」

 

「ああ、ほら」

 

 ペンを取り出して見せる。

 

「じゃあ、おそろいなんだね」

 

「おう、そういう事になるな」

 

「なんか恥ずかしいな……」

 

 本当にかわいいなカタナは、そう思いながらも次々と買った物を見ていく。

 

「ふんふん、イイじゃんイイじゃん。これなら長持ちするだろうな、服はまた買えばいいし」

 

「お前、何しにきたか忘れてないか?」

 

 そう言えば、と思い出す。

 

「そうでしたね、まあ、俺から言える事としては、金は本当にどうでもいいです。入学祝いって事にしといてください」

 

 カタナの肩にポンと手を置く。

 

「気にすんな! そんな事より、立派な騎士様になれよ!」

 

「う、うん……ねえ、一緒に──」

 

「じゃあまあそういう事なんで、あ、カードはまた必要になったら貸すんで言ってください。それで、まあ、イザコザがどうとかはメイヤーがいるし大丈夫でしょう」

 

 これで一安心だし、今は俺がいるとなんか金の関係でややこしくなりそうだから退散するとしようか。何でもかんでも俺が手を貸しても変だしな。

 

「そんじゃ、失礼しまーす」

 

 マックのいなくなった室内で村長がボヤく。

 

「そうか……アレがクソボケってやつか……カタナ、気にしなくてもいい、アイツはそういう奴だ」

 

 しかしフォローも虚しく、カタナはがっかりしていた。

 

「そう、だね……」

 

「マジあいつ1発ぶん殴っとけば良かったか……」

 

「こんなに沢山貰っといてなんだが、俺もそんな気分だ」

 

「私も」

 

 その場の大人全員にこんな事を言われているとも知らずに、彼はアホ面で歩いている。いつか痛い目をみる事だろう。

 そんな彼はというと、メイヤーに会いに行っていた。

 メイヤーとカタナの二人の力が合わされば大体の問題は解決するだろうとマックは考えているが、一応、ちゃんと会って伝えておこうという意思はあった。

 そんなわけでメイヤーの家、というより村長の家に着いたわけだが、中にはいなかった。

 

「あれー? どっかほっつき歩いてんのか?」

 

「うーん、ちょっと出掛けてくるとは聞いたんだけどね」

 

「まあ、適当に探してみます」

 

「何か用があったの?」

 

「学校のことでちょっと」

 

 全部言ってたら長くなってしまうから、適当に答えて村長宅を出る。

 お互いの位置がすぐに分かるような異物があったら楽なんだけどなあ。そうすればこんな時にすぐに見つかるし。

 絶対に市場には出回っていないだろうから自分で見つけるしか無いか。

 基本的には異物というのはどれも一点物なので、便利なモノは見つけた人が自分で使っていることがほとんどだ。稀に機能が被っていてかつ、要らないと判断した物なら売りに出される事はある。

 それこそネジや歯車なんかは大量に同じ物があるので市場にも出回っているわけだが、あの遺跡では大した異物は産出しない。

 もっと上の級に潜るとしよう。

 

「おっかしいなあ〜」

 

 メイヤーは基本的に一人では村の中心部以外には行かないから探し回ってみたんだけど、見つからない。

 前は家からも基本的に出ないような子だったので、メイヤーがどれだけ変わったかというのが分かる。そこは嬉しく感じるけど、さて、どこに行ったのか。

 

「……原っぱか?」

 

 思いつく限りの行きそうな場所を連想して行くと、一番ありそうなのは南の原っぱだった。でもアソコまでは結構距離あるし、一人で行くかなあ? 

 まあ他に思いつくところも無いしとりあえず行ってみるか。

 かくして原っぱに辿り着いたわけだが……

 

「あれぇ?」

 

 人っ子一人いない。

 ここにもいないとなると最早俺では分からないなあ。

 日も暮れかけているし、そろそろ見つけないとまずいんだけど……

 

「ん──……すれ違いで家に帰ってるかあ?」

 

 それが一番いいんだけど、そんなことあるか? 

 それにしてもなんか徒労感が凄いな……

 草の上に寝そべる。

 

「はー……やっぱ、おもしれーわ」

 

 あの二人を見てると飽きなくて良いなあ。

 毎日毎日変化していく様子は正しく人間を象徴しているるようで、いつまでも見ていたい気分になる。

 

 願わくば、大地と海に眠る神に祝福されますように、か……まさに、神に祝福された世界だと実感できるな。

 天頂で星が瞬いた気がした。

 

「よっ、と……」

 

 さて、もう少し探しますか。

 ダラダラと歩いて行くと、程なくして南門に着くが、誰かがそこに立っているのが見えた。

 あの姿は……

 

「ほっほっほ」

 

「ロウさん、どうしたんすか」

 

「ほれ、出ておいで」

 

「あ……」

 

 ロウさんだけかと思ったら陰に隠れていたようで、メイヤーが出てきた。

 なんだか子供が叱られる時みたいな顔をしている。

 

「これは一体?」

 

 状況が飲み込めないので聞いてみるが、ロウさんは何も答えない。

 あれか? ワシは関係無いから……ってやつか? 

 メイヤーはなんかモジモジしていて、いつもの大人しい姿ともまた違ったしおらしい感じだし、なんだこれ。

 

「まあ、アレじゃ、チョイとした相談事に乗っておっただけじゃ」

 

「あぁ、そういう……」

 

「もう夜になる、お嬢ちゃんを連れて急いで帰りなさい」

 

「はい、ほらメイヤー、おぶさって」

 

 背中を差し出すが、メイヤーがおぶさってくる様子が無い。

 

「メイヤー?」

 

「歩いて帰る……」

 

「え、そう?」

 

 いつもならすぐ乗るのに、珍しいなと思って、ロウさんに頭を下げた後、先に歩いて行ったメイヤーの後を追う。

 

「どうしたんだよ? いつもならすぐ乗ってくるじゃんか」

 

「……」

 

「メイヤー?」

 

「……今日はいいの」

 

 どうやら意思は固そうなのであまりしつこくは聞かないことにした。嫌われたとか怒らせたとは少し違う気がするんだけど、なんだろう。

 カタナと学校に通うにあたって、金持ちとの付き合い方とか村長の娘のメイヤーなら分かるかと思ったんだけど、今日は無理そうだな……

 結局この日は家に送ってバイバイして終わりだった。

 しかし次の日、メイヤーに会いに行くと度肝を抜かれた。

 

「どう、マック!」

 

「お、お前……それ……」

 

 これまで長髪だったメイヤーは、短めのさっぱりとした髪型になっていた。

 

「似合う?」

 

 ちょっと恥ずかしそうな顔をしているが、メイヤーからいつもと何か違う雰囲気を感じる。

 

「似合ってるけど、どうしたんだ?」

 

「ふふっ、ひ・み・つ!」

 

 楽しそうに笑っているメイヤーは、昨日とはまるで真逆だ。

 ロウさん、あんた一体何の相談に乗ったんだ?

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