~とある山中の自宅~
二日後、目が覚めると共に朝から忙しく動き始めていた。
昨日の内に経営していた喫茶店に張り紙をして、買う必要がありそうな物は全て揃えている。
今は家の中で店で最後の荷物チェックをしているところだ。
(向こうで使うか微妙だけど……)
小さめのリュックの中身を確認してゆく。
とは言え入ってるものは服が少しと簡単な調理器具のみである。
(人が住んで居ると言っていたからまずは宿探しか……)
そんな事を考えながら居間に向かい、棚の上の写真をバックに挟む。
そして横に立て掛けてある小太刀を持ち上げた。
(……こいつには世話になりそうだな……)
過去……あの日に一度だけ抜いた覚えがあるこの小太刀は今は鍔と鞘は布で固定してある。
いや、正確には自分が気づいた時には既に固定されていたが正しいだろう。
何を斬ったかは覚えていない、だが確かに何かを斬った気が……
(っつ……)
唐突に来た頭痛と目眩に膝を着いた。
毎度毎度あの時の事を思い出そうとするとこうなるのである。
感覚にはもう慣れている。
(今でもダメか……くっ……)
かれこれ二十一になる今も尚4年前の惨劇からの呪縛から自分は抜け出せていない……
そんな考えを直様振り払いながら小太刀の鞘の部分を持ちその場を後にする。
外に出るとそのまま軽く振ってみた。
重さもそこまで無いため持ち歩くことにする。
(道場の経験もある、いざとなったら頼むぞ……)
「終わったかしら?」
いきなり頭上から聞こえた声に見上げると一昨日の自称妖怪――ゆかりが空に浮かびながら此方を見据えていた。
準備は全て終わっている。
頷いて答えた。
「こちらにはしばらく戻れないけど……いいわね?」
少し細めた目で此方を見つめながらゆかりは言った。
これにも頷く。
自分の居場所はもうここには存在しないのである。
「そう、じゃあ行きましょうか」
ゆかりが此方に移動してきて一昨日見せてくれた能力で目の前に線を出現させて大きく開いた。
そしてゆかりが中に入ってゆくとゆっくりと振り向いた。
「どうぞ?遠慮無く」
(いや、遠慮なくと言われてもな……)
そう言って此方に手招きをしたゆかり。
しかし、此方の足は線の手前で止まってしまう。
原因はその中に見える無数の目、あの誘いこむような瞳である。
じっと此方を見つめてくるのだ。
しかもたまに瞬きもしている。
(……はあ、止まってても変わる訳無いしな……)
この程度で止まっていては向こうに言ってからはやっていけないだろう。
諦めてその中に足を踏み入れると、突如不思議な浮遊感に包まれた。
それに入ってみると、意外と目に見られている事は気にならない。
「じゃあ、お一人様ご案内ね」
紫さんがそう言うと同時に外の景色が見えなくなった。
先程の入り口を閉じたのだろう。
光が入ってこないのに周りはとても明るい。
(先ほどから感じる風が当たったような感覚……これは自分がこの空間内を流されているのか?)
周りを見渡してみると先ほどの無数の目が結構な速度で移動している。
やはり自分が流されているので間違っていないようだ。
(とは言えこの空間はなんか苦手だな……一応時間は聞いておくか)
リュックの端に引っ掛けておいたボードとペンを取り出した。
すると隣で同じように浮いているゆかりが動きに気づいたようで此方に顔を向けている。
そのままボードに書いた。
『どのくらいで着きますか?』
「ん?すぐに着くわ、今は身を任せていなさい」
『わかりました、縁さん』
「ええ……あ、ついでだから幻想郷についてもう少し詳しく話しておきましょう、それと私のゆかりの漢字は『紫』よ」
『わかりました、覚えておきます』
(紫でゆかりか……まあ現代じゃなかなか使わないな)
そんな事を考えていると紫が幻想郷についてもう少し教えてくれた。
それなりに長かった為、簡単に略すと以下の項目に注意する必要があるようである。
一つ、現代の一般的な考え方は通用しない事が多々あるためその考え方は捨てること
二つ、人間は基本的に『人間の里』と呼ばれる場所に住んでいる為それ以外の場所で会った人は基本人外であるため注意すること
三つ、夜は基本的に危険な妖怪や怨霊などが活発になる時間帯であるためなるべく出歩かないこと
四つ、危険になったら『博麗神社』と呼ばれる神社に助けを求めること
である。
後、白麗ではなく『博麗』であるらしい。
「一応招待とは言っても貴方を『試す』目的もあるから博麗神社から離した場所に貴方を落とすわ」
『はい、構いませんよ。それで自分が期待にそえれば幻想郷に居ても問題ないと言う事ですよね?』
紫にそう書いてボードを見せた。
すると薄らと笑みを浮かべて笑みを浮かべている。
自分を試すのであれば幾らでも試しても構わない。
既に決断してここまで来ているのだ。
「ええ……そろそろ着くわ」
そう言って紫が扇子で示した方を見ると奥から謎の光が迫ってきていた。
あの先が幻想郷があるのだろう。
(さて……気合入れていくとするか!)
「幸運を期待するわ、橘 恭……数日後に生きていたらまた会いましょう」
そう呟くと紫は軽く手を此方に振りながら別の入口を横に作るとそこに消えていった。
数日後にまた様子見にくるのであろう。
(ご期待に添えれば良いがな……さて)
振り返るともうすぐそこまで光が近づいていた。
ボードとペンをリュックに引っかけ直して身構える。
この光の先はどんな場所に出るかわからないからだ。
そして光に飲み込まれる。
(さあ、新しい人生の始まりだ!)
少しの期待を持ちながら光の中を進んでゆくと不意に下から風を感じた。
どうやら落下しているようである。
そして光が瞬時に晴れると……
(……は!?)
目の前に見えたものに驚愕してしまった。
突如落下し始めた自分に見えたのは一面緑や薄っすらな紅葉に彩られた場所。
つまり森であった。
今自分は結構な高さから森に落下しようとしているのである。
(おいおい……早速殺す気か!)
結構な勢いのまま落下する中、森を目を凝らして見た。
このままでは地面に激突でぺしゃんこである。
何処かにクッションとなりそうな場所が無いか探した。
(……!)
自分の落下している場所から少しズレた場所に結構な量の落ち葉が溜まっている場所が見えた。
そこに落ちてもこの高度からでは到底助からないと普通は考えるであろう。
その落ち葉が溜まってる場所に落ちるように体を使って軌道修正する。
(くっ……頼むぞ落ち葉達!)
念を込めても意味が無いとは思わなかった。
ここは幻想郷である、紫の言ったことが正しいのであれば現実的な考えは通用しない。
ならばこの下にある落ち葉にすべてかけるのみだ。
(行くぞ!)
少しでも衝撃を和らげる為に地面に背を向ける。
そうしてそのまま落ち葉に背を向けるようにして落下していった。
刹那、唐突に感じた落ち葉の感触と共に落ち葉に埋もれて行くのがわかる。
そして視界が暗転する中意識が遠ざかっていった……
~妖怪の山~
「――?――……」
(……あれ?……)
良く聞き取ることが出来なかったが、何かしらの話し声で意識が戻りはじめていた。
「―みたい、頭を――ってるけど……」
少しずつ意識が戻り始めているのだろうか?徐々に声が聴こえるようになってきた。
それと誰かが頭を擦っているのか、温かい感触がおでこの上の方から感じ取れる。
(誰だろうな……いや、それよりも自分は……)
自分が気絶する前に何をしていたかゆっくりと思い出してみる。
(確か空から落ちてきて……いや、その前に紫と話していたような……ん?紫……あっ!?)
紫という人物を思い出した所で今自分が来ている場所のことも、先程自分が置かれていたことも次々と思い出して行った。
自分はあの空間から落ちて幻想郷と言う場所へ来たのであった。
そして落下死を逃れようとたまたま見つけた落ち葉の山へ落下したのである。
(ってことは、ここは……)
目を開けてみる、するとそこには板が貼られた壁が見える……いや、天井であろうか?
(天井?空じゃないって事は外じゃない……?)
「あっ!起きたみたいだよお姉ちゃん」
「あら?本当?」
頭の上から声が聞こえてきた為そちらに視線を向けると二人の少女の姿見えた。
簡単に容姿を呟くなら、手前で座っている少女は淡い金髪のボブショートヘアに真っ赤な帽子を被っており、帽子には葡萄のようなバッジが付いていた。
服装は黄色の上着に黒色のスカート、それにオレンジ色のエプロン? のような物を着ている。
今頭に感じる暖かさは彼女の手であろう。
また奥で立ちながら此方を見ている少女は手前の子と同色で髪型も似ており、髪に紅葉を模したものであろう髪留を着けている。
服装はシンプルな赤い上着とスカートであるが、スカートはグラデーションが掛かったように下に行くにつれて黄色に変化していた。
そして二人共服の色が全体的にこれからの時期、つまり秋の紅葉のように様々な色と言えばしっくり来るだろう。
お姉ちゃんと言うことは二人は姉妹か?
「失礼します、しずは様、みのりこ様、宴会の用意が出き……あ、そちらの外来人の方が起きられたのですか?」
考えていると今度は右から別の女性の声が聞こえてきた。
そちらを向くと襖らしきものが開かれており、その横に少女が立っている。
上に居る二人と違い、肩から袖までの部分が服と分かれている巫女服? のような上着を着ており水玉模様の描かれた水色のスカートを身につけていた。
髪は緑色のロングヘアーに白蛇と蛙? の髪飾りをつけている。
「うん、今丁度目が覚めたところだよ、ね?」
自分の頭の上から此方のおでこ辺りを擦っている少女が確認を取るように問いかけてきた。
この場所も、この少女たちが何者かもわからない。
しかし、自分に敵意があったり何か企んでいる様子は伺えなかった。
それに、巫女服っぽい姿の少女が言った『外来人』と言うのも気になる。
「あれ?大丈夫?」
少女が此方からの答えがない事に疑問を持ったのか続けて聞いてきた。
どんな場所なのかは気になるがとりあえず敵意は無さそうである。
頷いて答えた。
「うんうん、大丈夫そうだね」
先程からずっと此方の頭を擦っている少女は微笑みながらそう呟いた。
しかし何というか……こんな近くで見られながら擦り続けられるとても恥ずかしい。
「でも良かった、貴方をひなが見つけてくれなければ人喰い妖怪に襲われていたかもしれないもの」
擦り続ける少女の後ろに立っていたお姉ちゃんと呼ばれていた少女がそう呟く。
妖怪の話が出てくると言うことはここは紫の言っていた幻想郷で間違いないようだ。
(そして自分を助けてくれたのは君達ではなくて今言ってた『ひな』って人か……後でお礼を言わないとな……)
そのひなと言う人がいなければ死んでいたわけである、命の恩人ということだ。
「よし!君も起きたことだし宣伝でも――」
「あっ、その前にしずは様、みのりこ様、宴会がもう始まっていますよ?行かなくてよろしいんですか?」
「そうなの?ん~もう少し頭撫でてあげたいけど……また後にしようか、時間は全然あるしね」
「そうね、お酒は味わいたいわ、貴方も体が動きそうなら後から来ると良いわ」
「そうそう、お酒は皆で飲んで騒いで楽しむものだから。それじゃあ先に行くよ、後から来てね~」
そう言って頭を擦っていた少女が立ち上がってお姉さんと共に部屋を抜けていった。
宴会で酒を飲むと言うことは成人してるのだろうか?
(いや、違うか。多分そんな法律は存在ないだろうから関係無いのだろう……さて)
勝手に納得しながら体が動くか確かめてみた。
指、腕、足その他諸々、動かせる場所を軽く動かしてから起き上がってみる。
(痛っ……まあそりゃああの状況で無傷な訳無いか)
少々左腕に痛みを感じ、見てみると少し包帯が巻かれている。
どうやら誰かが応急処置してくれたようだ。
そのまま立ち上がってみると足腰は問題ないようである。
「あの……体は大丈夫ですか?」
先程の巫女服の少女が横から聞いてきた。
どうやら此方が立ち上がるまでずっと待っててくれたようである。
頷いて答えた。
「そうですか、ならよかったです。私はこの神社で巫女をしているこちや さなえと言います」
そう言って軽く会釈をしていた。
名乗られてしまったのであれば此方も名乗らなければならない。
(そういえば荷物は……)
少し見渡すと此方の荷物が後ろにあった。
慌てて中身を確認する。
「周りに落ちていた荷物は全部持ってきてあるそうですよ」
そうさなえさんが言ってくれて少しホッとした、確かに小太刀もリュック中もボードとペンもきちんと残っていた。
とりあえずリュックからそのままボードとペンを取り外す。
「?」
何をするのかわからないのか、さなえさんがきょとんとした感じで待ってくれていた。
此方はそのままボードに書き始める。
『自分は橘 恭と言いう者です、自分は声が出せないのでこのボードで失礼します』
「え?声出ないんですか?」
『はい、申し訳ありません』
そう書きながら頷いた。
声に関しては自分でも出ない原因がわからないのである。
多分過去の事が関わっているのであろう。
「いえ!気になさらないでください……それであの、体が大丈夫であれば宴会に来ませんか?」
(宴会と言うと、さっき話してたやつだよな……)
先程の二人の少女が言っていた事を思い出す。
宴会に来てくれとそういえば言っていたが……
(神社で宴会と言うのもなかなか見れない光景だし、それに命の恩人の『ひな』って人の話も聞きたいしな、行くとしようか)
『参加出来るのであれば是非ともお願いします、ただ自分みたいなよそ者が行って良いんですか?』
「はい、問題ないですよ、他に来てる方々も言ってしまえば人間ではないので」
(え?)
「では早速向かいましょうか」
そう言って少し楽しそうにしているさなえさんが促すように此方を招いてくれた。
しかしこちらは逆に少し不安になってきている。
(……まあ頑張ってみよう、にしても人間では無いって……まさかな……)
そんな事を考えながらさなえさんに付いて歩いてゆくのであった……
~守矢神社、宴会場~
(……この状況は何なんだ?)
「どうもどうも、清く正しいしゃめいまるです、貴方が先程見つかった外来人の方ですね?」
さなえさんに案内されて襖を開けた瞬間、まるで待っていたかのように目の前で喋っている少女に拉致されてしまった。
まるで突風が吹いたかのように視界が移動して気づいたら石の上に座らされていたのである。
少女の容姿は、黒いセミロングの髪に山伏風? のような赤い帽子を被っており。
服装は白いブラウスにフリルの入った黒いスカートを着ている。
ちなみに、今居るのは神社のある境内の脇であろうか?
(さっきの移動の感じだと人間では無さそうだが……まあ話を聞くぐらいは良いか)
取り敢えず頷いておく。
「ビンゴですね!なかなか独占取材は難しいですからね~、なんで軽く拉致させていただきました」
拉致したことは自覚しているようである。
しかし来てそうそう取材されるとはそんなに自分のような境遇の人間は珍しいのだろうか?
「ではでは、邪魔者が来る前にちゃっちゃと終わらせちゃいましょうか、まずは――」
「待ってください~」
横から声がするので振り向いてみると、先程案内をしてくれたいたさなえさんが駆け足で此方に向かってきていた。
あんな突風のような移動をしてきた自分たちを良く見つけたものである。
「はあはあ……か、彼はさっき起きたばかりで、まだ今の状況も知らないかもしれないんですよ?」
全力で追いかけて来てくれたのか少し息切れしながらさなねさんが話していた。
何というかとても申し訳ない。
「あやややや、そうでしたか……ふむ、ではきちんと話を聞くのは日を改めた方が良いかもしれませんね、では失礼します!」
といって山伏帽子の少女は軽く会釈すると目の前から突風と共に空へ飛んで行ってしまった。
やはり人間では無いだろう。
「ふう~、やっぱりあの天狗は面倒ですね……にしても今みたいなものを目撃しても驚かないのですか?」
今の自分の顔から察したのかさなえさんが此方に問いかけてきた。
ってか今『天狗』と行っていたがやはり妖怪であったようだ。
やはり自分のような人間は普通驚くものなのだろう。
ボードを出した。
『いえ、何というか……此方に自分を呼び込んだ妖怪が似たような非現実的な事をしていたのでまあ……』
「呼び込んだ?……ああ、なんとなく察しがついた気がします」
さなえさんが憐れむような顔で此方を見ていた。
紫はこのような事ばかりしているのだろうか?
「お~い、さっきの君~」
また横から声が聞こえてきたのでそちらを向くと先程の少女達が此方に歩いてきていた。
しかも手には酒瓶が握られている。
しかしその二人の後ろにもう一人少女が居るのが見えていた。
さなえさんの髪とはまた違う緑色……強いて言うならエメラルドグリーンの髪を後ろも横も束ねて胸元でまとめており、頭にはフリル付きの赤色リボンが結ばれている。
そしてなんといっても服装が派手である、前進真っ赤なフリルが強調されたドレス……前にテレビで見たゴスロリというものだろうか?
先程の二人と比べてかなり浮いていた。
「これはしずは様とみのりこ様、それにひな様も三人揃って御出で……宴会はどうですか?」
「うんうん、楽しんでるよ~、これからは秋、つまり私とお姉ちゃんの季節だからね!」
(ん?今『ひな』って言ってたってことは……)
さなえさんと先程の二人、それとゴスロリの少女、この四人しか居ない中で『ひな』とさなえさんは言っていた。
つまり、二人の後ろに居る少女が『ひな』と言う人物になる。
(じゃあ自分はこの子に助けられたということか)
「その話も良いけれどみのりこ、彼に恩人を紹介してあげなくてよいの?」
「そうだった。さ、ひな、前に出よう」
「いや、私は……」
そう言ってゴスロリの少女を押し出す葡萄帽子の少女。
ゴスロリの少女は少し躊躇した後に少しだけ近づいてきた。
「私はかぎやま ひなよ、貴方が森に倒れていたから助けたのだけれど……」
と言った所で足を止めてしまう、普通に会話するにはまだ結構距離があるのだが……
彼女の行動は良くわからなかったが命の恩人である。
きちんと礼をしなければな。
ボードに書き始めた。
『自分は橘 恭(たちばな きょう)と言います、この度は命を救っていただきありがとうございます』
そう書いて深々と礼をした。
彼女のおかげで自分は今ここに立っていられるのである。
「いえ、それは私の勝手だから良いのだけれど……あなた、何か不幸な事起きてないかしら?」
(ん?不幸なこと?)
突然の質問、それにより頭にハテナが浮かんでいた。
確かに落ちたのは不幸であるが、彼女が言っているのはその後の事だろう。
『いえ、先程取材さして欲しいと言われましたがそれ以外は特に……』
「え?そうなの?……でもそれはおかしいわね?」
彼女は何か悩みながらそんな事を呟いていた。
一体どうしたのだろうか?
「……私は人々から厄を集める厄神、言い方を変えると私は不幸を溜め込む妖怪なのよ……」
(厄神……不幸を溜め込む妖怪……)
つまり彼女も人外であるということである。
しかし疫病神ならわかるが厄神、それに厄とはなんだろうか?
「だから私は貴方を抱えてきたから厄が貴方に移ってる筈なのよ、それなのに……っ!?……」
(危ない!)
そう言って此方に歩み出そうとした瞬間、彼女が石につまずいたのか足がもつれて倒れかける。
いち早く気づいた自分が倒れかけた彼女を地面の手前で支えこむ。
「えっ……?」
(痛~! 左腕包帯巻いてたの忘れてた……)
少女を前から抱え込む形ではあったが倒れるのは防げたみたいである。
左腕は……まあ問題は無いだろう。
「おお~、反応はやいね~」
「二人共大丈夫?」
先程の二人が声を掛けてきてくれた。
ひなさんをゆっくり立たせながら二人に頷く。
「あれ?ひなどうしたの?」
葡萄帽子の少女が目の前に立っているひなさんに聞いていた。
ひなさんをよく見ると、支える時に偶々掴まれてしまった此方の右腕をじっと見ている。
「あなた……私の厄を弾けるの?」
(え?弾く?)
右腕を見ると彼女が此方の腕を掴んだままでいた。
よく見ると、掴んでいる部分から薄っすらと黒い靄のような物が自分の腕から離れるように消滅していくのが見える。
(これが厄なのか……?)
「あの、えーと……とりあえすずっと立っているのもあれなので向こうで座りながら詳しく話をするのはどうでしょうか?」
悩んでいるひなさんと同じく良く意味がわかっていない自分の様子に気づいてか、さなえさんが口を開いた。
確かに色々聞きたいことも、話す事もありそうである。
「そうだね、宴会なんだし飲まなきゃ損しちゃうよ」
「そうね、座ってゆっくり話しましょうか、二人共なんか混乱してるみたいだしね」
「……そうね……あ、助けてくれてありがとう、感謝するわ。えっと……恭」
そう言ってひなさんが笑顔で軽く会釈してくれた。
自分は命を救っていただいたからこの程度全然問題ない。
此方も返す。
『いえいえ、命を救って頂いた事に比べれば全然足りませんよ、えっと……雛さん、この漢字で合ってますか?』
「ふふ、合っているわよ……さあ、向こうで一緒に飲みましょうか」
『ええ、いただかせて頂きます』
そう書くと共に皆さんに着いて歩き始めた。
どうやらひなさんも特に怒ったりしている訳では無さそうである。
(さて、さっきのことが少し気になるが……まずは幻想郷のお酒を頂く事にするか)
そんな事を考えながら宴会場へ向かって行くのであった……
秋 穣子「何で私達や雛の名前は平仮名なの?」
毛玉「恭の視点だから彼の頭のなかで変換出来ない漢字はひらがなにしてあるよ、特に名前は」
秋 穣子「なるほど~」
秋 静葉(これ、読者わかりにくいと思うのよね……)