99社落ちた俺が酔った勢いで妹の部屋に乱入した結果、自分以外全員美少女なvtuber事務所に所属する事になった件〜頭のおかしい奴らを添えて〜   作:なべたべたい

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7話 2回目の初配信その2

配信を開始してから約10分後、何故か今配信では轟奏への質問コーナーをやっていた。

 

「はい、では質問です。轟奏さんとパーフェクトゲロお兄様こと、アクトさんはどんな関係なんですかだって。普通に友人じゃね?」

「まぁそうだね、でも僕にとっては恩人兼友人って感じかな」

 

人気のシンガーソングライターと友人というのもそうだが、それ以上に恩人と言うことが気になったのかコメント欄では、恩人についての質問が大量に書き込まれていた。

 

「おい奏リスナー達が、恩人の件が知りたいって」

「そう?なら特に隠してることじゃ無いし、アクトがいいなら話そうかな」

「俺は別に構わない」

「なら話すとするよ」

 

そう言うと、奏はスゥッと息を吸い込んで、一息ついてからゆっくりと話し始めた。

 

「アレは今から数年前、僕が有名になる少し前の話になる」

 

 

それは天気の良い夏の出来事だった。

ネットで自分で曲を作っては歌うのを繰り返して、約二年ほど経った頃、当時の奏は今ほどと言うよりかは、全くと言って良いほど知名度はなく、新しい曲を出しても数百回ほど再生されてからは、その後は一切の変動なしという、ネットで活動している者のほとんどと同じように、陽の目を浴びることがなかった。

初めてからの一年は、ネットに触れるのも初めてで、少しでも曲を聴いてもらえれれば嬉しかったのだが、それが二年目になると流石に気が滅入ってきていた。そのせいかここ最近出した曲は、そんな気持ちの表れか、自分で聞きいてもつまらない曲だと思ってしまうほどに、曲としてダメなものになっていた。

そんな気持ちでは良い曲ができないと感じた奏は、路上演奏の盛んな通りにやって来ていた。

奏は曲に詰まった時などに、何か良いインスピレーションが湧くかもとよくここに通っており、今日もそんな考えで特に何も考えずやって来ていた。

 

いつもはその通りで演奏する者達は、皆自分の世界を作り込んで、他の演奏者のことなど気にせずに好き勝手演奏していたのだが、何故だろう?今日は何だか少し違和感があった。

 

そんな事を考えながらも奏は、良い演奏をするものを見つけ、その演奏者の近くに座りその曲を聴きいていた。

そんな時にこの違和感の正体であるやつが現れた。

そいつはこの付近では無いどこかの高校の制服を着ており、更には背中には一本のギターを背負ってやって来ていた。

その時奏は、高校生がここに来るなんて珍しい。程度に考えていたが、その考えはその少年が行った次の行動のせいで、一瞬で吹き飛んでしまった。

 

その少年はゆっくりと、背中のギターケースからギターを取り出しながら演奏者に近づくと、いきなり曲に割り込んできた。勿論その演奏者はいきなり乱入された事に驚き、演奏者を止めるとその少年も同様に演奏を止め、その演奏者に意味のわからない説教を始めた。

 

「おいおい、どうして急に曲を止めるんだよ?それでもお前はギタリストか?」

「いやどうしてって、それは急に君が乱入して来たからで……」

「はっ!言い訳か、それだからお前はプロにもなれずこんな所で燻ってるんだよ。この前俺が乱入したライブをやってた奴なんかは、普通に俺の演奏に合わせて来たぞ?それをお前は、一緒に演奏するじゃなく止める?それも言い訳付きで?何?もしかして音楽舐めてんの?」

 

舐めてるのはどっちだ!と奏は言いたかったが、その少年が言っている事はめちゃくちゃで、暴論すぎる暴論だったが、実際ここで演奏をしている者や聞いている者達は、全員が全員プロにもなれないくせに、僕含め音楽にしがみついているような奴らだったので、誰一人言い返す事は出来なかった。

 

そんな風に皆が呆然としていると、その少年は乱入された演奏者に、ビシッと効果音の出そうなほど完璧な指を挿しながら言った。

 

「お前、今から俺と即興で自作の曲を作って勝負しろ。もし勝てたのならお前をプロにしてやる」

 

それを聞いた演奏者は、意味のわからなさに驚きながらも、プロにしてやると言う言葉に食い付き、その勝負を受け取った。

そして勝負を受け取った演奏者が、勝敗はどうやって決めるのかとその少年に聞くと、少年は僕達の方を指差し、ここにはプロにはなれなくとも、音楽に携わった者達がいる。どっちが良かったかはこいつらに決めさせれば良い。

 

そう言うと同時にその少年は、自前のギターを弾き始め、それを見た演奏者も釣られるように弾き始めた。

そこで驚くべき事実を僕は知った。あんなにも自信に満ち溢れていた学生服の少年は、ギターのギの字も知らない様な素人だったと言う事に。

それに比べて、勝負を挑まれた方の演奏者は長年ギターを弾いているおかげか普通に上手かった。

 

そしてそんな風に驚きながらも、2人の曲を聴き終えると少年は手げた。

 

「では、今から勝敗を決める。俺の曲の方がいいと思った者は俺の前に、俺の隣にいるやつの方がいいってやつは、そいつの前に行け」

 

少年がそう言うと、周りで聞いていた者達は、自分達の楽器やマイクなどを持ちながら、一斉に自分が良かったと思う方へと移動した。

 

結果は少年の圧勝だった。

 

少年はギターを弾き慣れていなくて、その点は相手の方が優勢だったが、少年は何よりも自信に満ち溢れ、迷い無くギターを弾いていたのに対して、相手の演奏者はどうにか曲を作ろうと、どこかで聞いたことのあるフレーズを使いまわしたり、自信がないのか全く音に感情が乗っておらず、全く心に来なかった。それに比べて少年の方は、ギターは下手だが聞いていてすごく楽しかった。ただそれだけだ。たが、その少年はギターについて全く知識がない状態で、それも即興という中で僕達聞き手に、楽しいと思わせる演奏をしたのだ。

 

演奏を終えた少年は、隣の演奏者の方を見た。

 

「お前の演奏は上手かったとは思うぞ?だがお前の演奏にはそれしか無い」

 

そうバッサリ言い切ると、次は自分の列の1番前に並んでいたマイクを持った女性に、先ほどと同じ条件で勝負を挑んだ。

その後も少年は片っ端から、勝負を仕掛けていき、そしてその指は今度は僕に向けられた。

楽器は周りの人から借りて、その少年と勝負をしてみたが案の定完敗。僕に至っては誰ひとり僕の列には並ばなかった程だ。

 

そんな現実にショックを受けながらも、内心やっぱり僕には曲作りは向いていないんだなと思った次の瞬間。

 

「お前、いいな。」

 

今まで人を小馬鹿にしたような少年が、初めて純粋に僕の曲とも言えない即興曲を誉めた。その事に僕も周りも驚いていると、少年は僕の肩を掴んだ。

 

「俺の感だがお前は将来プロになれる。と言うか?もうプロなんじゃ無いのか?」

 

全くもって意味が分からなかった。正直自分の演奏が他の演奏とどこが違うのかも、よくわかっていなかった。その事を正直に話すと、少年は何を言ってるんだ?と言う表情で

 

「いやだって、今まで俺が勝負をふっかけた中で笑顔で演奏してたのは、俺が乱入したライブのプロのギタリストとお前だけだぞ?ならもうお前はプロだろ」

 

何を言ってるんだこの少年は、僕が笑顔を?そんなはずは無い最近は曲作りも辛くて、それに日常生活の方でも笑ってないのに。そんな事を考えながら前を向くと、店のガラスには満面の笑みの僕がいた。

 

「と言う訳だから、残念だが他の奴らは頑張って自力でプロにでも何でもなってくれ、俺はコイツにプロになるための秘策を伝授してやるから」

 

そう言うと少年は僕の手を掴んで走り出した。

 

そしてその後は、近くのファミレスによりお互いに自己紹介した。

 

「そうかそれじゃあ奏、今からこの俺がお前をプロにする為の秘訣を教えてやろう」

 

それを聞いて僕はゴクリと喉を鳴らした。

 

「それはな…………何も考えずお前の直感でいいと思うものを作れ」

「それだけですか?」

 

あまりに普通のことを言い始めたので、素で言い返してしまった。

 

「ん?これだけじゃ不満か?なら今から簡単な質問をするから、直感で答えろよ」

「は、はい」

「まず初めに、お前から見た俺はどんな人間だ?一言で表せ。」

 

そう言われて頭に浮かんだのは、天才で自信家な上で、周りの迷惑を考えない傍迷惑な人。だった。

 

「お前何か今考えただろ。だからそれじゃダメなんだって。まぁしょうがないか。なら今思い浮かべた中で初めに浮かべたものを言え」

「えっと……天才?」

「そうか、まぁ妥当だな。俺は何でもできる神にも愛される完璧超人だからな」

 

やっぱりすごい自信かだな。

 

「じゃあこれで作る曲の道標ができただろ?」

「……?どう言うことですか?」

「だ か ら!お前が今直感で俺に感じた事を曲にしろって言ってんだよ。そうしたら、完璧な俺をもとに、完璧な俺に教えを乞うたお前が作る曲だ。ほぼほぼ完璧な曲になる事間違いなしだ。」

「そう、ですかね?」

「当たり前だ!完璧な俺が言うんだからな。あっそれと曲ができたら連絡してくれ、直で聴きに行くから」

 

 

「そう言ってアクトは無理やり、僕のケータイに連絡先を入れて来たんだよね」

「そうだったっけ?細かい部分までは覚えてないわ」

「まぁそんな感じでできた曲が、『完璧超人』なんだよね」

「だから行っただろ?俺の言う通りにすればいいって。その後も本当に大丈夫か心配で何度も連絡かけて来やがって、流石に鬱陶しかったぞ」

「しょうがないじゃん!だって当時の僕からしたら、君の信用度なんて0に等しかったんだからね」

「えっ!そうなの?知らなかったわ」

 

そんな和気藹々と、アクトと奏でが話している中コメント欄は、ライブ乱入!?やストリートファイトで草、意味不明、何様だよ!と出てきたストーリーの濃さと言うよりかは、異常さに困惑していた。

 

「あっじゃあそろそろ時間だし、配信終わるか」

「えっ!このまま終わっていいの?この配信のほとんど僕の過去話だった気がするんだけど?」

「ヘーキヘーキ、どうせ今後も見てくれる奴らは、リリィのアーカイブから過去の配信見てくるはずだから。と言う訳だからバイバイ」

「えっと、是非アクトのチャンネル登録高評価よろし…………」

 

アクトの代わりにチャンネルの宣伝をしようとした、奏の音声が途中で切られるようにして、アクトの初配信は終了した。

 

後にこのめちゃくちゃしまくった配信は、アクトの初配信では無く、轟奏の初配信と呼ばれるようになったのであった。

 




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