面接から3日間、リュウマ達にはそれぞれ個室が与えられ、ゆっくりと過ごすことが出来た。到着したのは審査委員会が経営するホテルで、試験終了までは受験生の貸しきりになっている。その中の大広間に受験生達は集まっていた。リュウマ達の前にはネテロを始めとする試験官が揃っており、ネテロの横には布が被せられたボードのようなものが置かれている。
「さて、最終試験は1対1のトーナメント形式で行う。」
ネテロが布を取り払う。露わになった組み合わせにゴン達は目を見開く。トーナメント表はひどく歪で、人によって戦う回数が違い、レオリオとギタラクルに関しては最大2回しか戦う機会がない。だが、リュウマが注目したのは自身の相手と次の相手だ。
「おいおいおい」
「嘘でしょ?」
「ふぅん♥」
「力作じゃろお?何より誰にでも2回以上勝つチャンスが与えられているからな」
「(これは……避けようがなくないか?)」
リュウマの初戦の相手はポンズであり、しかもどちらも負けてもその次の相手はヒソカだった。ヒソカは嬉しそうに笑みを深める。ヒソカの相手がリュウマだと確信しているような顔だ。
「最終試験のクリア条件だが、いたって明確じゃ。たった1勝で合格である」
「1勝で?」
「じゃあ、このトーナメントは…」
みんなが疑問を口にしていく
「勝ったものが次々と抜けていき、負けたものが上に行くシステムじゃ、つまり、トーナメント表の頂点が不合格を意味する」
「不合格はたった1人って訳か」
「左様」
ネテロはそう言いながら組み合わせを発表していくトーナメント表を見た後に、それぞれ思った事を口にした
「組み合わせが公平ではない訳は?」
武闘家のボドロががネテロ会長に聞いた。
「うむ、当然の疑問じゃな、この組み合わせは今まで行われた試験の成績によって、決められておる」
この試験中で成績が良かったものから、チャンスが多めに与えられている。
しかし、それを聞いたキルアが異議をとなえる。
「それって納得行かないな、もっと詳しく点数の付け方とか教えてよ」
「だめええええ!!」
ネテロ会長は大声を出しながら目を思いっきり開き、黒目を上下に動かしながら叫んだ
「なんでだよ!」
「ふふ、採点内容は極秘事項でな、全ての内容を言う訳にはいかんが、やり方くらいは、教えてやろう」
ネテロが言うには、大きくわけて3つ
1つ目、身体能力値
2つ目、精神能力値
3つ目、印象値
身体能力値は敏捷性、柔軟性、耐久力、五感能力等の総合値、精神能力値は、耐久性、柔軟性、判断力、想像力などの、総合値、一番重要なのが印象値で、前の面談の時の答えを参考に考えたらしく、リュウマもあの面接の意味を納得する。
「戦い方は単純明快、武器OK、反則なし、相手に参ったと言わせれば勝ち、ただーし!相手を死に至らしめてしまった場合は即失格、その時点で残りのものが合格、試験は即終了じゃ!よいな!」
ルールを聞いた後リュウマが手を挙げる
「質問いいか?」
「なんじゃ?」
「勝負内容はわかったが、仮に試合中相手が気絶した場合。参ったは言えない状態になるが…その場合はどうするんだ?」
「うむ、その場合相手が参ったと言わん限りカウントは取らず、試合は継続じゃ」
「成る程…」
が言い終わると、直ぐに近くにいた黒服の1人が試験を開始すると言った
最初に試合をするゴンとハンゾー、2人はその場に残り、私達は端に避ける事になり、移動を開始する
リュウマ達が全員端っこによると、黒服の1人が前に出てくる
「第1試合!ハンゾー対ゴン!前へ」
2人は黒服の前まで歩いていき、向き合い、お互いに睨み合う。
「私、立会人を務めさせていただきます、マスタです」
少し2人が離れると、直ぐに試合が始まる
「始め!」
瞬間ゴンが一気にハンゾーから距離をとる…しかし、差は歴然で一瞬で追いつかれ、そのまま首に手刀を食らう。
そこからの試合は一方的だった、ゴンは血が無くなるんじゃないかと言うほど、蹴られ、殴られ、その光景にポンズは目をそらし、リュウマは腕を組み黙って試合を見ている。
「もう……3時間だぜ」
「もはや血反吐も出なくなっているぞ」
ポックルとボドロが慄くように言う。すると、レオリオが遂に我慢の限界を迎えた。
「てめぇ、いい加減にしやがれ! ぶっ殺すぞ! 俺が代わりに相手してやるぜ!」
「……見るに堪えないなら消えろよ。これからもっと酷くなるぜ」
「んだとお!」
レオリオが前に出ようとすると、黒服の男達がレオリオを囲む。
「1対1の勝負に他者は入れません!もしこの状況で貴方が入れば、失格になるのはゴンさんですよ!」
「レオリオ、落ち着け」
「お前はなんも思わないのかよ!!」
「………」
リュウマは全然落ち着いてないレオリオを無言で見つめ、このままじゃそのうち飛び込みかねない様子だった。
「レオリオ、大丈夫だよ。こんなの全然…平気さ…ま、まだやれる」
「ゴン…」
ハンゾーはゴンに足祓いをかけそのまま仰向けに倒すと…
「腕を折る、本気だぜ?言っちまえよ、参ったと」
「嫌だ!!」
会場に耳障りな音が響く。ゴンは左腕を押さえて、歯を食いしばっている。
「……さぁ、これで左腕は使い物にならなくなったぜ」
「ゴン!!」
ポンズは悲鳴混じりの声でゴンを呼ぶが、ハンゾーはゴンを見下ろして、言い放つ。しかし、リュウマの隣から殺気が溢れてきて目を向ける。そこには歯を食いしばって怒りに震えるレオリオがいた
「クラピカ、止めてくれるなよ、あの野郎がこれ以上何かしやがったら…ゴンには悪いが、抑えきれねぇ…!」
「止める…?私がか?大丈夫だ、恐らくそれはない…!」
「そんな事したら俺がお前ら2人を止めるぞ?」
リュウマはレオリオとクラピカに小さく威圧を放ちながら言う。2人はリュウマの威圧に体が固まる。
「ルールがあるからまだいいが、本当の戦いなら、もう殺されてもおかしくはない」
「っ……! けどよ……!お前はなんも思わないのかよ⁉︎」
「ゴンの覚悟踏み躙る気か? 仮にレオリオ、ゴンの相手が俺の時、参ったと俺が言えばゴンは今すぐ合格できる。ただ、ゴンの性格を考えれば、その時にゴンがハンター証を素直に受け取ると思うか?俺は思わないね」
「っ!!」
「それとクラピカ、お前は幻影旅団を捕まえたいんだろ?この戦いは正直可愛い方だ。そいつらとの戦いはこんな生易しい物じゃない、奴らとの戦いは生きるか死ぬかの殺し合いだぞ?」
「っ!!」
「それに、この試合…ハンゾーは負ける」
「は?どう言う意味だよ!」
「まずゴンは手足を切られようが死んでも参ったとは言わないだろう。それに殺してしまえば失格になるのはハンゾーの方、だからそんな心配はしてないんだよ…俺は。だから2人も、ゴンを信じて見守ってろ。直ぐに戦況は変わる」
リュウマの説明の中、ハンゾーは自分語りを始める、どうやらハンゾーは忍びと呼ばる隠密集団の末裔で指一本で、逆立ちを始める
恐らく目をつぶっているハンゾーは見えていないがゴンが立ち上がり、その隙にハンゾーの顔面を蹴り飛ばす。
「痛ってぇー…くっそお!痛みと長いお喋りで頭は少し回復してきたぞ!」
ゴンの様子を見て安心したのかレオリオ
「っしゃあ!行けー!ゴン!蹴って蹴って蹴りまくれぇ!」
ポンズとクラピカもクラピカも表情が穏やかになっている。
蹴られたハンゾーが飛び起きるが、ハンゾーは鼻血を流しているのに決め顔をして
「まあ、わざと蹴られてやった訳だが?」
「嘘つけぇー!」
「(いや、完全に油断してただろ……)」
リュウマはハンゾーに内心で突っ込む。
「分かってねーぜお前、俺は忠告してるんじゃない命令してるんだぜ?もう少し分かりやすく言ってやろう、足を切り落とす」
ハンゾーが腕から剣を取り出す、瞬間、リュウマ以外の顔にまた緊張に固まる
「それは困る!」
ゴンの言葉でその場にいたリュウマ、ヒソカも含めた全員が一瞬固まり、その言葉に全員がポカ~ンとしてしまう。
「脚を斬られちゃうのは嫌だ! でも、降参するのも嫌だ! だから、もっと違う方法で戦おうよ!」
「……なっ!立場分かってんのか、テメー!!」
無茶苦茶な言葉にハンゾーが声を荒らげる。
「勝手に進行すんじゃねぇよ! 舐めてんのか! その脚、マジでたたっ斬るぞコラァ!!」
「それでも俺はまいったって言わない!そしたら俺は血が一杯出て死んじゃうよ」
「うぐっ!」
「そうなると失格になるのはあっちの方だよね?」
「あ、はい」
「ほらね! それじゃお互い困るでしょ。だから、考えようよ」
外野はゴンの言動に笑いが抑えられなくなる。先程まともに試合が見れなかったポンズまで笑っている
「くっ、あははは!」
「……な、なんちゅうワガママな……」
「もう大丈夫だ。完全にゴンのペースだ」
「な、言った通りになったろ?(流石に場の雰囲気を変えたのは想定外だったが)」
リュウマも苦笑しながら、ゴンの動向を見守る。一瞬にしてそれだけで場の空気を一気に支配してしまった。
ハンゾーは歯軋りし、剣をゴンの額に突き立て、再び空気が張り詰める。
「やっぱりお前は何にも分かっちゃいねぇ。死んだら次もくそもねぇんだぜ。片や俺はここでお前を殺しても、来年またチャレンジすればいいだけの話だ。俺とお前は対等じゃねーんだ!!」
追い詰められているゴンは全く揺らいでいない。対する有利だったはずのハンゾーは汗を流し、間違いなく精神的に追い詰められていた。
「何故だ。たった一言だぞ……? それでまた来年再チャレンジすればいいじゃねぇか。命よりも意地が大切だってのか!? そんなことでくたばって本当に満足か!?」
「…親父に会いに行くんだ」
ゴンは全く揺らぐことなく、力強くまっすぐ見つめ、ハンゾーに言い放つ。
「親父はハンターをしてる。今は凄く遠いところにいるし、一度も会ったことはないけど。それでも会えると信じてる。でも、もし俺がここで諦めたら、一生会えない気がするんだ。だから退かない」
己に誓う様に言うゴン。
「退かなきゃ……死ぬんだぜ?」
改めて剣を突き立てて告げるハンゾー。それでもゴンはやはり揺らがない。数秒見つめたハンゾーは目を瞑って、剣を引く。
「まいった。俺の負けだ。俺にはお前は殺せねぇ。かと言って、お前に参ったと言わせる術も思い浮かばねぇ。俺は負け上がりで次に賭ける」
剣を仕舞って降参を告げ、ハンゾーはゴンの前から去ろうとするが、何故かゴンは不満そうな表情を浮かべいた。
「そんなの駄目だよ、ずるい!! ちゃんと2人でどうやって勝負するか決めようよ!」
「……そう言うと思ったぜ。馬鹿か、てめぇは!! てめぇはどんな勝負をしようがまいったなんて言わねぇよ!!」
「だからって、こんな風に勝ったって嬉しくないよ!」
「じゃ、どうすんだよ!?」
「それを一緒に考えようよ!」
「要するにだ。俺はもう負ける気満々だが、もう一度勝つつもりで真剣に勝負をしろと。その上でお前が気持ちよく勝てるような勝負方法を一緒に考えろと?そう言う事か?」
「うん!!」
「アホかーー!!!」
ハンゾーはゴンを全力のアッパーで殴り飛ばす。ゴンは避ける事も出来ずに吹き飛ばされて、床に倒れて気絶する。
「おい、審判。俺の負けだ。しかし、そいつが目覚めたら、きっと合格を辞退するぜ。一度決めたら意志の強さは見ての通りだ。不合格者はたった1人なんだろ? ゴンが不合格ならこの後の戦いは全て無意味なものになるんじゃないか?」
「心配ご無用。ゴンが何と言おうと合格、それは変わらんよ。仮にゴンがごねて儂を殺したとしても、資格が取り消されることはない」
「なるほどな」
ハンゾーはネテロの言葉に納得して、控えに戻り、ゴンはスーツを着た男たちに運ばれていく。
それに合わせてリュウマも前に出て、会場の真ん中で向かい合う。
「第二試合! リュウマ対ポンズ!!」
最終試験第一試合、ゴン・フリークス、第一号…ハンター試験合格。