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今、ヌメーレ湿原を抜けて二次試験会場に向かっており、リュウマは全然まだ余裕があり、足場の悪い中走っていた。
「ちっ!またマラソンの始まりかよ!」
「くっ!下がかなりぬかるんでやがる!」
湿原とあって、地面はかなりぬかるんでいた。ただでさえ疲れている体にはさらに堪える。
「ここが本番か…」
「そのようだな」
「この足場だけでも厄介なのに、これで騙されないように備えろとか無茶にも程があるぜ!」
レオリオは愚痴りながら必死に体に鞭を打つが湿原とあって、地面はかなりぬかるんでいる。
「(あのピエロ…殺気が大きくなってるな)」
その中でリュウマはヒソカから放たれる殺気に気づき、いつ奇襲されてもいいように愛刀に手を添えるが、ヒソカから殺気がどんどん大きくなるのを感じた。
「ポンズ」
「なに?」
「この場から離れておいた方がいい。多分あのピエロ…ひと暴れしそうだ」
「!わかったわ」
ポンズはリュウマの言葉に従いペースを上げる。リュウマの忠告にポンズはヒソカが霧に乗じて受験者を殺すつもりだと察した。
ポンズはこの試験で3回目の参加でヒソカも数回参加している為、一緒の時期の試験を受けてた事もあり、リュウマの言っていることはすぐに理解出来た。
ヒソカから離れるように移動を始めるポンズとリュウマ。更に霧が出始めており、どんどん視界が悪くなっていく。
スピードを上げてサトツの姿を見失わないようにする。ヒソカが後方に下がったのも前に出たい理由でもあった。
「レオリオー!クラピカー!リュウマ!ポンズさん!キルアが前に来た方がいいってさー!!」
「ドアホー!行けるならとっくに行っとるわい!!」
「そこをなんとかー!!」
「ムリだっちゅうのー!!」
いきなりゴンが後方にいるクラピカとレオリオ、リュウマとポンズに呼びかける。
「(キルアもあのピエロの殺気に気づいたか、っ! 霧が……)」
キルアもおそらくヒソカの殺気に気づいているが、さらに霧が濃くなっていくことに目を細める。
「いけない、霧が…」
「この霧もこの湿原に住む獣達に有利に働きそうだな…」
『ぎゃあああ!!』
突如後方から悲鳴が聞こえてきた。しかし、その方向は通って来た道から逸れていた。
「別の場所から悲鳴!?」
「おそらく騙されたんだろ」
「それに、いつのまにか後ろにいた人達も消えてる」
「確か100人はいたはずだ。しまったな、ゴン達ともはぐれたか…」
ポンズも驚き、リュウマが冷静に言う。他の受験者が背後にいたはずの受験者達がごっそりといなくなったことで周囲に気配を張り巡らせる。
「(一気に声が複数も消えた。あのピエロの仕業もあるだろうが…この湿原の猛獣も含まれてるな…)」
近くにいる集団の中にクラピカとレオリオの姿はない。おそらく別口で何かしら騙されはぐれてしまったのだろう。
「(4人なら大丈夫だろうが…あのピエロが相手になったら命はない。なんとか合流して二次試験会場に向かわないとな)」
『グオャァァァ!!』
すると霧の中から背中にイチゴを生やした巨大な亀、【キリヒトノセガメ】が現れ2人を囲む。その中には受験者を口に含んでいる個体もいた。
「いけない、囲まれた!」
「(……変わった亀だな、世界は広いな…ホント)」
リュウマは初めてみる生物に興味を示すが…冷静に状況分析を行っていた。
「(こいつを使うまでもないな)ポンズ、そこから動くな」
「え?リュウマ、いったい何を」
「いいから動くな…」
「ちょっとリュウマ⁉︎」
リュウマはキリヒトノセガメの方まで歩いていく。それに気づいたカメ達はリュウマに襲い掛かろうと牙を向ける。
「…………」
その瞬間、亀はリュウマを捕食しようと攻撃をする。このままでは間違いなく食われてしまう。
「リュウマ!?」
ポンズは声を上げるがリュウマは動く様子はない。このままじゃ食べられる。そう思っていた彼女は…
「武装」
と声がポンズに聞こえ、リュウマは右腕をキリヒトノセガメに翳すように向けると、迫ってきたキリヒトノセガメが…
吹き飛ぶように倒れた。
「───え?」
キリヒトノセガメは牙は折れており立ち上がる気配はない、ポンズはリュウマが何をしたのかわからず…呆然とする。
「ふぅ、これなら修行場所にいた時の猛獣やヒヒ達の方がもっと強かったな…」
「っ!?リュウマうしろ!」
「問題ない。後ろのやつは俺に思いっきり頭を横から振るってくる」
「え…」
少ししゃがむように攻撃を躱し、続けざまに繰り出される攻撃を躱した。向けることは一切なく、何のこともないように躱し続ける。
「…ぜ、全部何も見ないで躱してる」
ポンズはリュウマが目を瞑っている事に気づき、攻撃をまるで予知していたかのように躱す姿に驚くしかなかった。
「無駄に体力を消耗するわけにもいかないんでな、恨みはないが…ここは通らせてもらうぞ」
リュウマはキリヒトノセガメを見つめると周囲に威圧感や殺気が放たれる。
するとその瞬間、キリヒトノセガメは白目と泡を口から吹きながら倒れていく。
「……なにが」
ポンズはあまりの出来事に困惑し、立ち尽くすことしかできなかった。
「よし、道が開けた。いくぞポンズ」
「え、ええ…」
移動を再開し、そこから先は猛獣が何度か出てきたが、苦戦する事なく、倒すことができあまり苦労はしなかった。しかもリュウマはここまで一切刀を使っていない。
「ねぇリュウマ…」
「ん、なんだ?」
「あなた、いったい何者なの?」
「何者って……まぁ、少し力のあるただの田舎出身者だ」
「そうじゃなくって!あの猛獣達に触れずに倒したり、勝手に気絶したり、相手を見ずに攻撃を躱す。どう見ても少しなんてレベルじゃないわ」
「トンネルを走ってる時にも言ったが、師父に教えてもらったんだ」
「あなたのお師匠さんってどんな人なの?」
「実力は俺より強いし、今も勝てる気もしない、一応ハンターだけど…基本フリーでな。楽天的なところもあって、遊びに関する事も全般が好きで結構親しみやすい性格もしてるな」
「へぇ…なら、あなたのさっきの力もそのお師匠さんから教わった物なの?」
「ああ、5年くらい鍛えてもらったが、あれの習得には一年半はかかったな…ホント……苦労したよ」
「だ、大丈夫?目が死人のような感じになってるけど…」
「ダイジョブダイジョブ…」
「(…ハンターになるにも、あれくらいできていて当然なのかしら…)」
修行の日々を思い出したのかリュウマの目は死んでおり、遠くを見ている。いや、目のハイライトが消えいた。ポンズはリュウマの力の一端を目の当たりにしハンターがどう言うものなのか考える。
「ねぇリュウマ…」
「なんだ?」
「あたなの使っていた力……いったいなんなの?ヒソカの謎の力にも関係があるの?」
「ヒソカ?ああ、あのピエロの名前か、だがすまない、それは今は言えない」
「どうして?」
「俺のもそうだが、あれは余り言いふらしてもいい内容じゃない。俺の場合縁で習得してるが、それはハンターになったら教えてやる」
「……本当ね?」
「ああ、約束は守る」
「…わかったわ。なら、試験中は聞かない。こうなったら今年で合格してやるんだから!」
「ふっ、お互い頑張らないとな…」
「私、今年で3回目の参加だから…参加した回数で言えば一応私は先輩だから、色々と教えてあげてもいいわよ?」
「そうか?じゃあ遠慮なく聞かせてもらおうか」
順調に進んでるのでポンズと余裕を持ち雑談してると、草むらから何が飛んできた。
「ッ!?」
リュウマは手にオーラを指に纏い飛んできた物をキャッチする。飛んできたそれは、トランプだった。
「あれをキャッチするなんて、流石だね♣︎既に【念】も習得しているみたいだし♠︎」
「ヒソカ⁉︎」
「……なんのつもりだ?」
リュウマはキャッチしたトランプを捨て刀に手を添えて戦闘態勢に入る。
「僕は強い奴が好きでね。君、僕と勝負してよ♦︎」
「断る、と言ったら?」
「そこの女を殺す」
「ひっ」
ヒソカの殺気や形相に、声が漏れるポンズ…
「……わかった。相手になる。ちょうど師父にもらったこいつを使いたいところだったんだ」
リュウマはレイリーからもらった刀を抜刀し、構える。刀身は逆巻く炎のような禍々しい刃紋をしており、鍔の意匠もまた特徴的で、鞘と柄は紫色になっている。
「へぇ、いい刀だね♠︎」
「そう言えばお互い名乗っていないな。俺はリュウマ、リュウマ・サイラム。あんたは?」
「クク、僕はヒソカ♣︎よろしく♦︎」
ヒソカはオーラをだし戦闘態勢に入り、リュウマもオーラを纏い刀を構える。リュウマは直ぐにポンズにアイコンタクトを送ると、ポンズはこちらを見て頷き、少し離れる。周囲は猛獣はおらず、仮に来たとしても今の2人から放たれるオーラにより容易には近づけないだろう。
「勝負内容はどちらかが参ったと言えば終了…殺しはなし、これで構わないか?」
「ああ、構わないよ♦︎僕を楽しませてくれよ…リュウマ♥」
「(…こっちから仕掛けるか)」
リュウマはヒソカを真っ直ぐ見据え、それを見たヒソカは薄く笑みを浮かべていた。
「(ああ…いい、実いい目だ♣︎そんな目で見つめないでくれよ…興奮しちゃうじゃないか……♥)」
「(…っ、なんだ…この寒気は)」
リュウマは殺気と同時に別のなにかの寒気を感じ体をぶるっとさせる。ヒソカトランプを取り出し、リュウマも【纏】行う。
ヒソカはリュウマのその表情と充満している【纏】を目にして、興奮が高まり下半身が疼く。
「一刀流…」
リュウマは先手を加えるべく刀を構え、技を繰り出そうと型をとる。
しかしこの時までリュウマは知らなかった……今使っている刀が…今まで使っていた刀より、扱いの難しい刀だと言う事が……
「三十ろ…っ!な、なんだ⁉︎」
突如リュウマと刀から紫色のオーラが放たれ、刀は黒刀と化し、リュウマの腕も黒く染まる。
「い、いったいなにが……」
「へぇ」
その光景はポンズは動揺し…ヒソカは関心の声を出す。しかしオーラの量は増え続けリュウマは苦しそうな声をあげている。
「ぐっ、ああっ…く、うおおおおおおっ!!!」
「っ⁉︎(これは)」
リュウマは声を上げながらその状態のままなりふり構わずヒソカに向け刀を振るい、斬撃波を放つ。
ヒソカも予想外の威力や速度に回避を取るが、その威力に地面や近くあった木々は斬り裂かれてしまっていた。
「嘘でしょ……」
余りの威力にポンズは驚愕した。ヒソカのいた周りはたった一振りで地面や木々は切り裂かれており、それは到底一振りで繰り出す威力ではなかった。
その斬撃の威力は、地獄の底まで切り伏せるといわざる得ないほどのものだった。
「ぐっ、うう…!」
「っ⁉︎リュウマ…腕が⁉︎」
ポンズはリュウマを見ると、彼の右腕は細くなっており、まるで生命を吸い取っているかのようだった。
「くっ……このっ!返しやがれ!!」
リュウマも額から汗を流し、刀を睨みつけ怒鳴ると、リュウマの腕は元に戻り紫色のオーラは収まり、刀は元の銀色の刀身に戻る。
「はぁ…はぁ…」
「リュウマ、大丈夫⁉︎」
「ああ、なんとかな…」
リュウマは息を整え、持っている刀を上に掲げて見つめる。
「ただの刀じゃないのはわかっていたが…ここまでとはな。師父…わざと【閻魔】の詳細を教えなかったな」
ハンター試験の開始直前に一通のメールが来ており、内容は今使っている刀の名前についてだった。
「…はっ、上等。つまりコイツを使いこなしてみろ…そう言うことでしょう、師父」
力が抜けたリュウマはその場に座り込み、師から新たに与えられた課題に笑みを浮かべる。
「クク♦︎ 実に素晴らしい一撃だった♣︎後一歩遅かったら確実に斬られるところだった♠︎」
声をした方へ顔を向けるとそこには拍手をしているヒソカの姿だった。しかし横腹から出血しており無傷とまではいかなかった。
「ヒソカ⁉︎生きていたの⁉︎」
「流石に無傷とまではいかなかった様子だな」
ポンズはリュウマを庇うように前に立ち、ヒソカを真っ直ぐ見つめる。
「くく♦ そうだね♣ それに君は合格♠︎ 」
ヒソカは満足げに笑みを浮かべて頷く。そして、こちらに近づき、ポンズに目を向けて、目線を合わせるように屈んで顔を近づける。ポンズは恐怖に襲われながらも、その場からひかずヒソカを睨む。
「ん~~……君もいい目をしている♠ 今後に期待だ♥それと、この戦いは中止にしようか♣︎」
「……いいのか?結局俺が一撃を放っただけだぞ?」
「面白い物も見れたし、それに次に行かなきゃ行けないとこがあってね♦︎次はもっと強くなって、その刀を使いこなせている事を願うよ♣︎そしたらいつでも相手になるよ♠︎それじゃ、二次試験会場で待ってるよ」
そう言って、ヒソカは霧の中に消えた。
「行ったか……」
「はぁ……リュウマ…大丈夫?」
緊張からようやく解放され、安堵し息を吐くポンズが心配そうリュウマに駆け寄り聞いてくる。
「あぁ、大丈夫だ。それより少し遅れた。早く行こうか」
「えぇ」
リュウマは閻魔を納刀し、2人は二次試験会場を目指すのだった。