覇気使いのハンター   作:狼ルプス

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ゆで卵の話も原作通りに行きます。


締めはゆで卵

 

二次試験合格者はゴン、リュウマ、ポンズの3人という結果となり、会場は異様な空気に包まれる。そんな中で審査委員会に報告の連絡を入れているメンチの声が響き渡っている。

 

 

 

「報告してた審査規定と違うって? なんで!? 始めから私が美味しいって言ったら合格にするって話になってたでしょ?」

 

「メンチ。それは建前で、審査はあくまでヒントを逃さない注意力と――」

 

「あんたは黙ってな!!」

 

ブハラが注意を促すも、メンチも聞く耳を持たないご様子だ。あの後試験のメンチは何処かに連絡しており、今の状態が続いていた。

 

「こっちにも事情があんのよ! 受験生の中にたまたま料理法知ってる奴がいてさ~! そのバカハゲが他の連中に作り方バラしちゃったのよ!」

 

「ぐ……」

 

「とにかく、あたしの結論は変わらないわ! ちゃんと合格者も出てる以上、この二次試験は合格者は3人よ!!」

 

 メンチは通話を切ると、電源も切り携帯を投げ捨て足を組んで両手をソファの後ろに回して「ふん!」と‥とても不機嫌にしている。ブハラもため息を吐き、『やれやれ』と言った表情だ。

 

「……(まずいな、約二名…殺気が大きくなってるな)」

 

 

不合格者とされた者達は徐々にざわめきが大きくなり、殺気立ち始める者もいる。リュウマはヒソカと、針を刺している男を警戒していた。このままいけば血の海と化してしまう可能性もあるのだ

 

「マジかよ……」

 

「まさかこれで本当に試験終了かよ?」

 

「冗談じゃねぇぞ……!」

 

突如、ドオオォン!!と何かが砕く音が響き渡った。体格の大きい男が苛立ち具合を露わにして拳を握り締めている。その目の前には大きくひしゃげた流し場、先ほどの音は拳を叩きつけた音だった。

 

 

 

「納得いかねぇな。とても『はい、そうですか』と帰る気にはなれねぇな」

 

男は青筋を浮かべてメンチさんを睨みつけてる。メンチはそれを意に介さずただ座っている。

 

「俺が目指しているのはコックでもグルメでもねぇ! ハンターだ! しかも賞金首ハンター志望だぜ! 美食ハンター如きに合否を決められたくねぇな!!」

 

「それは残念だったわね」

 

「……何ぃ!?」

 

「今年は試験官運がなかっただけよ。また来年頑張れば~?」

 

「(煽ってるなぁ…それにこの感じやばいな、下手したら死ぬぞあいつ)」  

 

メンチの煽りに男は我慢の限界できずに拳を更に握り締めて殴りかかろうとする。

 

「ふざけんじゃ――!!」 

  

男が殴りかかろうとした瞬間、ブハラの巨大な手によって猛烈な勢いで吹き飛び壁を突き破る。巻き起こされた突風で近くにいた受験生達も風に煽られて耐える。

 

「っ!?!?」

 

「ブハラ、邪魔しないでよ」

 

「だって、メンチ…殺すつもりだったろ?」

 

 メンチはソファから立ち上がる。その両手には四振りの包丁が握られていた。

 

「賞金首ハンター? 笑わせるわ! ブハラの張り手も見切れず、あたしの殺気にも気づかないくせに。どのハンター目指すなんて関係ないのよ。ハンターたる者、誰だって武術の心得があって当然!!」

 

 メンチはお手玉のようにナイフを器用に回している。リュウマも【あれくらい俺にもできるな】と内心思いながら見ていた。

 

「あたしらも食材探して猛獣の巣の中に入るのだって珍しくはないし、密猟者を見つければもちろん戦って捕らえるわ。その中には賞金首の奴だっている!! 武芸なんてハンターやってたら嫌でも身につくのよ! あたしが知りたいのは、未知のモノに挑戦する気概なのよ!!」

 

 

 

メンチの気迫に瓦礫から這い出てきた男は肩を震わせていた。少なからずオーラに敵意を乗せて男に放っていたのをリュウマは気づいていた。

 

 

『それにしても合格者3人と言うのは、二次試験の結果としちゃあちとキビシすぎやせんか?』

 

突如、外から声が響き渡る。その声に、全員外に出て上を見上げる。上空には飛行船が停まっていた。飛行船の側部にはハンター協会のロゴが描かれていた。

 

「審査委員会か!?」

 

すると、飛行船から人1人が飛び降りてくるのがリュウマには見え、その影は徐々に大きくなっていき、受験生達はそれが人であると理解したときには『ドォーン!』と音を響かせて地面に着地していた。

 

飛び降りてきたのは白髭を蓄えた和装に高下駄を履いた老人。数十メートル上から飛び降りてきたのにケロリとしており、負傷した様子もない。

 

「(マジかこの爺さん……研ぎ澄まされたあの【纏】、下手したらレイリー師父よりも……)」

 

リュウマも老人の実力が測り切れず、余りの差に困惑するしかなかった。

 

「な、何者だ? このジイさん……」

 

「審査委員会のネテロ会長。ハンター試験の最高責任者よ」

 

 受験者の呟きにメンチが答える。突然の最高責任者の登場に受験者達は、驚きとこの状況が好転するかもしれないという期待が湧く。

 

「ま、責任者と言っても所詮裏方。こんな時のトラブル処理係みたいなもんじゃ。さて、メンチくん」

 

「は、はい!」

 

 ネテロに声を掛けられて、メンチはピシィ!と背筋を伸ばし気を付けをして返事をする。流石にメンチもハンター協会会長のネテロに対しては強気に出れない様子だ。

 

「未知のものに挑戦する気概を彼らに問うた結果、3人を除いてその態度に問題ありと、つまり不合格と思ったわけかの?」

 

「……いえ。受験生に料理を軽んじる発言をされてついカッとなり、更にはその際に料理方法が受験生達に知られてしまうトラブルが重なりまして……。頭に血が昇っているうちに腹が一杯にですね……」

 

「フムフム。つまり自分でも審査不十分だと分かっとるわけじゃな?」

 

「……はい。スイマセン。料理のことになると我を忘れるんです。審査員失格ですね。私は審査員を降ります。試験の無効かどうかに関してはお任せします。ただ……合格にした受験生に関しては認めて頂きたいと思います」

 

「ちなみに何故その3人だけ合格にしたのかの?」

 

「はい。それは――」

 

 メンチはかしこまった姿勢のまま説明を続ける。ネテロはその説明に納得するように髭を撫でながら頷く。

 

「フム……なるほどのぅ。坊主とお嬢ちゃんの方は微妙なとこじゃが、あの青年に関しては合格は問題なさそうじゃな。よかろう」

 

「ありがとうございます」

 

「しかし、選んだメニューの難度が評価するにはお互いに少々高かったようじゃの。よし! こうしよう。審査員は続行してもらう。ただし、新しいテストにも審査員である君にも実演と言う形で参加してもらう、というのでいかがかな?」

 

『!!』

 

 ネテロの提案にメンチや受験生達は僅かに目を見開く。

 

「その方が受験生達も合否に納得しやすいじゃろ」

 

「……そうですね。では……ゆで卵で!」

 

 メンチは新しいメニューを告げる。そして、遠くに見える岩山を指差す。

 

「会長、あたし達をあの山まで連れて行ってくれませんか?」

 

「なるほど。もちろん、いいとも」

 

 ネテロは意味を理解したのか笑みを浮かべて快諾する。そして受験生は飛行船に乗り込んで、山へと向かう。

 

山に到着した一同はメンチの案内の下、山の中央を走る崖に歩み寄る。

 

「さぁ、ここよ」

 

 メンチは崖下を指差す。受験生達は下を覗き込んで唾をのみ、崖の底は見えず、落ちたらそう簡単には助かりそうになかった。

 

「下は……どうなってんだ?」

 

 先ほどメンチに殴りかかろうとしたレスラー男は青褪めながら下を見る。メンチはブーツを脱ぎ始める。

 

「安心なさい。下は深ーい河よ。流れが速いから落ちたら数十km先の海までノンストップだけど」

 

そう言いながらメンチは崖際に歩み寄ると、

 

「それじゃ、お先に」

 

軽やかにジャンプして、崖へと飛ぶ。

 

『はぁ!? なああああ!?』

 

 受験生達が驚く中、メンチは崖下へと落ちて行く。そこにネテロが口を開く。

 

「マフタツ山に生息するクモワシ。その卵を採りに行ったんじゃよ。クモワシは陸の獣から卵を守るために崖の間に丈夫な糸を張り、卵を吊るしておる。そして、今回の試験はその糸に上手く掴まり、1つだけ卵を採って岩壁をよじ登って戻ってくることじゃ」

 

 

そしてメンチが戻ってきて、茶色の殻の卵を受験生達に見せる。

 

「よっと、この卵でゆで卵を作るのよ」

 

簡単に言うメンチにレスラー男を始めとする一部の受験者は青褪めて足踏みをする。しかし、そこに明るい声が響く。

 

「あー、よかった」

 

「こういうの待ってたんだよね!」

 

「走るのやら民族料理よりよっぽど分かりやすくていいぜ」

 

キルア、レオリオ、合格しているゴンも一切戸惑うことなく崖へと飛ぶ。クラピカや他の受験者達も続き、どんどんと飛び降りて行く。リュウマとポンズもゆっくりと崖へと歩み寄る。

 

「あら、あなた達はいいのよ?ツンツン頭の子は行っちゃったけど…」

 

「俺は鍛えてくれた師匠と食べたことがあってスシを知ってたからちょっとズルをした感があってな、それにあの卵の味も純粋に気になる!」

 

「私の場合リュウマに聞いて合格できたようなものだから、今度は自分の力で合格したいの!」

 

 

「そ、好きにしなさい」

 

「ああ、それじゃあ行くかポンズ」

 

「ええ!」

 

リュウマとポンズもトン!と飛び降りて行く。メンチは残った受験者達に顔を向けて声を掛ける。

 

「残りは? ギブアップ?」

 

「「「「……」」」」

 

「やめるのも勇気じゃ。試験は今年だけではないからの」

 

ネテロはギブアップすることを肯定しする。

 

 

「(このまま行っても問題はないな)みんな、俺は先に上で待ってるぞ」

 

「え、ちょっとリュウマ⁉︎」

 

「お、おい⁉︎」

 

「リュウマ⁉︎」

 

「よせ!まだ風は…」

 

 

糸をつかんでいるポンズ、ゴンとレオリオ、クラピカは何故このタイミングで離した事に驚く。吹く風はタイミングでがありタイミングを誤ればそこに落ち海まで一直線、リュウマはタイミングも関係なく飛び降りたのだ。

 

飛び降りた先に吊るされた卵を掴み、リュウマは体勢を立て直し

 

 

 

 

 

「月歩!」

 

 

 

 

 

 

空中を蹴って飛んだのだ。

 

「なっ⁉︎」

 

「マジか⁉︎」

 

「宙を⁉︎」

 

「飛んでやがる⁉︎」

 

 

「……もう、なんでもありねあなた」

 

 

「それじゃあ俺はお先に。後は頑張れよみんな」

 

 

ポンズを除いた他の受験者、キルアまでも驚いており、リュウマも崖の上まで行くと試験官のメンチとブハラまで驚いており、ネテロは髭を撫でながら『ほほぉ』と呟いていた。リュウマは【念】は使っておらず、素の力で飛んでいたのだから。

 

 

その後、何人か風を待てず落下し、残った受験者達は崖を登り終え、卵を用意してくれたお湯に入れて茹でる。

 

 出来上がったゆで卵は今まで食べたことがない無いくらい美味しかった。

 

「美味っ!」

 

「美味い…これ美味しいよ!」

 

「まさに、幻の卵だな!」

 

 

リュウマもゆで卵の感想を声に出し言っていると、ゴンが試験を受けなかったトードーに近づいて行き、卵を渡していた。メンチも近づいていき少し話すと、トードーはメンチに頭を下げてこちらにも聞こえる声でこう言った

 

「来年!出直してきます!」

 

と、吹っ切れたように新たな覚悟を胸にそう告げた。クモワシのゆで卵はとても濃厚で味付けもしていないのに、それだけで立派な料理として成立するほどの美味さだ。

 

 

「それじゃ!! 二次試験合格者は42名!!」

 

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