「残った、42名の諸君に改めて挨拶しとこうかのぉ、ワシが今回のハンター試験の審査委員会代表取締役会長の、ネテロである」
「秘書のビーンズです。次の目的地は明日の朝8時に到着予定です。こちらから連絡するまでは各自自由に時間をお使いください」
番号プレートを配っていた豆顔の男の言葉に、受験生達は解散し飛行船内を移動する。レオリオとクラピカは漸くの休息時間に一気に疲れが襲ってきた。
「俺はとにかくぐっすり寝てぇぜ……」
「私もだ。恐ろしく長い1日だった……」
「私はまずシャワーを浴びたいわ…体中汗でベトベト…」
「俺は飯食ってシャワー浴びたら取り敢えず寝る」
「ゴン! 飛行船の中、探検しようぜ!!」
「うん!」
キルアとゴンはテンション高く走り出し、飛行船内を見回り始める。
「元気ねぇ…あの2人」
「だな…」
その後ろ姿をリュウマとポンズは見送る。
「さてと、俺はメシ食ってくるわ。レオリオ達はどうする?」
「あ~……そうだな、俺も先になんか腹に詰めとくか」
「確かにそうね。私も何か食べておこうかな…」
「そうだな、朝に食べられるか分からないが、少し気になることがある」
「気になる事?」
「試験はあと幾つあるのだろう」
「そういやぁ、聞かされてねーな」
「だいたい平均して5つか6つくらいだな」
リュウマ達の話を聞いていたのかトンパが近づいてくる。
「なおのこと、今は休んでいた方がいい」
「そーだな」
私達は会話を終えるとトンパから離れ休憩を取りに行こうとするが…
「そうかあ、気をつけた方がいいなあ、さっき進行係は目的と言ったからもしかしたらこの飛行船の中が第3次試験会場かもしれないし、連絡があるのは朝8時だとは限らない訳だあ」
トンパが不安を煽ろうとしてくるが
「マジかよ…」
「まあ、一理ある」
「ホントかしらね…」
「(そしたらあの秘書は『各自時間を自由に使え』ではなく、『待機しろ』と言うはずだ。それがないって事は目的地に着くまでは本当に自由時間、もし本当だったら笑い話だな…)」
リュウマはまずトンパの言っていることはないと判断し、ポンズはトンパのことを全く信用しておらず全て聞き流す事にしていた。
「この飛行船の中でも気を抜かないことさ」
「ま、よく分かったぜ、さんきゅーな!」
「まあ、よく肝に銘じても置こう」
「フン…」
レオリオとクラピカ、ポンズも食堂に移動する。そして、料理を頼んだのだが……。
「………」
「リュウマ……お前…大食いなんだな……」
「ブハラと言う試験官もそうだが、お前胃はどういう構造をしているんだ?」
「ん?そうか?」
リュウマの前にはステーキ、フライドポテト、ハンバーグ、サラダ、ピザ、骨つき肉、スパゲティなどが置かれている。
それらが瞬く間に消費されていく。レオリオとクラピカ、ポンズはもちろん、周囲にいた受験者達も唖然と見つめていた。
今後いつ食べられるか分からないのでいざと言う時に力が出ない、リュウマは『腹が減っては戦はできぬ』と言うだろう。
「……やっぱハンターってのは厳しい世界なんだな」
「全くだな」
「私、あなたの食事してるところを見てるだけでお腹いっぱいよ…」
レオリオとクラピカ、ポンズの言葉に首を傾げながら、リュウマは食事を続けるのだった。
その頃、試験官達も食事をしながら盛り上がっていた。
「ねぇ、今年は何人くらい残ると思う?」
「合格者ってこと?」
「そ。中々の粒ぞろいだとは思うのよね。料理はセンスがない連中ばっかだったけど」
「でも、それはこれからの試験内容次第じゃない?」
「そりゃまぁ、そうだけど~。それでも結構いいオーラ出してた奴いたじゃない?【念】って意味じゃなくてさ。サトツさんはどぉ?」
「ふむ。そうですな……ルーキーがいいですね今年は」
「あ、やっぱりー!?」
メンチは我が意を得たりとばかりにテンションを上げる。
「私は、370番と294番がいいと思うのよね~。片方ハゲだけど」
「(2人ともスシを知ってたからね)」
「私は断然99番ですな」
「えー!? あいつ、きっとわがままでナマイキよ! 絶対B型! 一緒に住めないわ!」
「(似てるもんね)」
ブハラは料理を食べながら内心で呆れる。
「私も370番は注目してます。しかし、彼はすでに【念】を使えるようですから、ルーキーと呼ぶには少し特殊と思いますね」
「あ~……そういうことか」
もちろんメンチとブハラも、リュウマやヒソカ達の【纏】には気づいていた。
「正直、【念】に関してはあたしより上…かなりの使い手ね。しかも念で身体強化せず素で空を飛んでいたし…」
「そうですか。しかし私は彼の持つ刀が気になりますね」
「あ、やっぱりサトツさんも気になった?」
「ええ、彼の持つあの刀…おそらくそこらの武器を容易に凌駕していますね。仮に念能力者であれど使い手によっては軽く斬り裂かれるでしょう…」
「ええ…おそらく業物で間違いないでしょうね。まぁ私としては、彼が美食ハンターになってくれることを願わずにわいられないわね!」
「(既に合格する前提なんだね。否定はしないけどぉ)」
2人の会話は、黙って目の前の食事を腹に詰め込むブハラであった。
「へっきしっ!!」
「い、いきなりどうしたのよ?」
「いや、なんか誰かに噂されてたような…」
食事を終えシャワーを浴び終えたリュウマとポンズはここまでの試験を振り替えながら雑談していた。レオリオとクラピカは疲れがピークを迎え既に眠っていた。
「ただの湯冷めよきっと」
「…それもそうか、なら俺達も寝るとするか…」
「ええ、明日も頑張りましょう」
「ああ」
「おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
リュウマはポンズから離れ、空いている場所に横たわりそのまま寝る。
翌朝。予定時間の8時を過ぎたが、何故かまだ到着する様子はない。
ポンズは天候の具合で予定より遅く到着したのかと推測するが…昨日の天気は爽快でそれはまずなかった。首を傾げるが、ゆっくりできるならいいかと考え切り替え、連絡があるまで食事をとり、到着まで体を休めることにした。
そして、9時を過ぎた頃に…
『皆さん、大変お待たせいたしました。まもなく目的地に到着です』
「お、ようやくか」
「予定より1時間遅れね…」
飛行船から降りると、そこはとてつもなく高い石塔の上だった。周囲を見渡すが、階段らしきものは見当たらなかった。
「ここはトリックタワーという塔のてっぺんです。ここが三次試験のスタートとなります。それでは試験官からの伝言をお伝えします」
ビーンズと言う豆顔男が説明を始める。試験官からの伝言と言う言葉に受験生達は聞き漏らすまいと集中する。
「『生きて下までおりてくること。制限時間は72時間』。飛行船が離れたらスタートです」
ビーンズは飛行船に乗り、飛行船がゆっくりと浮かび上がっていく。それを見送ったリュウマは早速周囲を調べようと歩き出した。
「あ、リュウマにポンズさん!おーい!」
ゴンが両腕をブンブンと振って呼びかけていた。そこにはキルアとクラピカ、レオリオもいた。
「ゴンが呼んでるな」
「ええ、何かあったのかしら?」
2人はゴン達の方へ向かうと、場所はタワーの橋だった。最上階だけあって実際目の当たりにするととてつもない高さだ。
「こう見ると私達すごい場所にいるのね…」
「流石にここまでの高さの建物は俺も初めてだな…」
そして隣にいるレオリオが震えながら
「まさかここを降りろってのか…」
「自殺行為に等しいな…」
「俺はいけなくもないが、流石に試験内容はこんな簡単なはずないしな…」
「お前…サラッとすげぇこと言ってたぞ」
「……いや、レオリオ、リュウマならあり得るだろう。二次試験の時、リュウマは空を飛んでいたのを見ただろ…」
「……確かに、リュウマなら行けそうだわな…」
「やらねぇからな?流石につまらん事はしない」
「そうだリュウマ!二次試験の時のアレはどうやってたの?空を飛んでたやつ!」
「ん?月歩の事か?」
「うん!あれって俺にも出来るのかな?」
「まぁ、死ぬ気で鍛えれば出来なくもないが…今はこのタワーをどう降りるか考えるのが優先だろ?」
そういうと後ろの受験者が鼻で笑いながらリュウマ達に近づいてくる。
「普通の人間ならなぁ、このくらい一流のロッククライマーなら難なくクリアできるぜ」
「あんた。それはやめた方がいい」
「あ、なんでだ?」
「アレを見てみろ」
リュウマが指を指す方向には羽を生やした大きな魔獣が群がっており、見た感じ肉食だろう。クライマーの男性は鳥の存在に気づき顔を青ざめる
「か、壁を使って降りるのはやめたほうがよさそうだな。あ、ありがとよ兄ちゃん」
一言お礼を言い別の方法を探す為クライマーはその場から離れる。
それからリュウマ達はしばらく、塔の上を歩き回っていた、クラピカとレオリオと歩いていると急にクラピカが立ち止まった
「どうした?」
「人数が減っている」
「え、本当?」
周りを見渡すと確かに少なくなっているのがわかった。
「全部で23人半数近くがすでにここから脱出したことになる」
「嘘だろ…いつの間に」
「おそらくこの屋上に下へ続く隠し扉があることは間違いないんだが…」
クラピカは少し考えていると正面からゴンの声がする。
「4人ともちょっと来てー!」
「ああ!今行く!」
クラピカが返事をしリュウマ達はゴンのもとへ向かおうとするが
「え?」
「え、キャァァ!⁉︎」
「なっ⁉︎リュウマ!ポンズ!」
浮遊感を感じたリュウマとポンズだが、既に遅くそのまま落下していく。クラピカが2人を呼ぶが扉は閉じてしまい。穴は滑り台のようになっていた、少しすると光が見え、リュウマは何が来てもいいように降りる準備をする
「よっと」
着地に成功しあたりを見回そうとすると
「うわぁっ⁉︎」
「うおっと⁉︎」
上からポンズが落ちてきてリュウマは慌ててキャッチする。どうやらバランスが取れずそのまま落下してきたようだ。
「ううっ…一体なんなの?」
「大丈夫か?」
「え、ええ…なんとか、それよりここは…」
「何かしらの空間だな…どうやら俺達は同じ場所に落ちたみたいだ。おっ、あそこになんかあるな…」
「あの、リュウマ…」
「ん、どうした?」
「その…そろそろ降ろしてくれないかな?」
「ああ、そうだった。すまない」
リュウマはポンズを降ろすが、なぜか彼女は少なからず頬を赤くして照れている様子だったがリュウマは気づく事はない。2人はボードに書かれた文字に集中した。そのボードには、トリックタワーを攻略するためのルールと思われる説明が書かれていた。
「成る程、ここは2人で攻略しないといけないのか…」
「ここにタイマーも有るわ」
台座の上に置かれた、腕時計型のタイマー。上で説明を受けていたタイムリミットの72時間、その残りの制限時間と思われる数字の秒数まで刻まれたタイマーを、それぞれが手にとって腕に装着していく。
『ようこそ、トリックタワーへ!』
腕にタイマーを装着し終えた瞬間を見計らったかのように、部屋に備え付けられていたスピーカーから、興奮した男の大声が聞こえてきた。
『このタワーには幾通りもルートが用意されており、それぞれクリア条件が異なる。そして、君たち2人が選択したのは1番難しい、猛獣の道!』
どこからか、様子を伺っているらしいスピーカーの声の主の男。声に耳を傾けながら、リュウマ達は辺りへの警戒する。
『ルールは簡単、この先にいる猛獣を倒しトリックタワーを攻略、ただし、片方が続行不可能、あるいは死亡した場合は強制的に試験は失格、互いの協力と連携が攻略の鍵となる。説明は以上、諸君らの健闘を祈る。ぜひとも、私の用意したゲームを楽しんでくれたまえ!」
わざとらしい煽りの言葉を発して、プツンという音とともに男の声がスピーカーからは一切聞こえなくなった。
「成る程、このタワー攻略は主に猛獣との戦闘内容になるのか」
「私、あまり戦いは得意じゃないのよね。リュウマがいて助かったわ」
「ポンズ、あまり戦いに関して他人に頼るのはやめていた方がいい。二次試験の試験官のメンチも言っていたが…【ハンターたる者、誰だって武術の心得があって当然】って言ってたろ?ハンターになったらいやでも身につけないといけなくなる」
「……それはそうだけど…」
「当てがないなら、無事にハンター試験を合格出来たら俺が修行をつけてやってもいい」
「え、いいの?」
「ハンター試験を合格できたらな。取り敢えず、今回は援護を頼むポンズ。頼りにしてるぞ?」
「っ!ええ、任せて!」
ポンズは気合をいれ、そばにあった扉が開き、2人はトリックタワーの攻略を開始する。