俺は翌日、リリベルの本部で真島の人相書きをさせられた。
「なるほど…ご苦労だった」
「はいよ。なあ、虎杖のおっさん。リリベルは、別に表に出るような仕事はしてないだろ?なんでそんなに警戒する?」
「貴様には関係の無いことだ」
そう言い残して立ち去る虎杖のおっさん。
チッ…イケすかねぇおっさんだ。
俺はリリベル本部を後にして、移動していると、フキから連絡が来る。
「フキ、どうした?」
『どうしたもこうしたもねぇ!あのバカ2人どうにかしやがれ!』
突然ご挨拶だな、おい。
いきなりどうしたんだよ。
『あいつらの人相書き酷すぎんだよ!なんだあれ!少女漫画と幼稚園児の落書きか!』
「お前、少女漫画とか読むのか?」
『それくらいの娯楽ならあるんだよ!ていうか、今はんな話じゃねぇよ!お前から人相を聞きてぇんだよ!』
「あ〜…リリベルで書いた人相書きならあるが、その写真でいいなら送るぞ」
『頼む』
そう言って電話が切られる。
俺は写メっといた写真を、フキのスマホに送る。
数分後
ーーあのバカ2人に、絵描き指導しとけ
ーーんなもの、リコリスの必修にしとけ
そんな暇ねぇわ、バカ。
俺はスマホをしまって、お店に急ぐのだった。
それにしても…真島か。
「お前は…何者だ?」
■
「お待たせしました。抹茶団子セットと、きな粉団子セットですね。以上でおそろいでしょうか?」
「はい!」
「それでは失礼します。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます!…ねぇ、あの人イケメン過ぎない!?」
「だよね!?しかも下の女の子とよく似てるし!双子とかかな!?」
「制服もお揃いで可愛いし!」
さてと、無視無視。
無視したかったのだが…
「たきなさん?どうしたの?」
「いいえ、なんでもありません」
そんないかにも私不機嫌です、って顔されて言われてもな…。
俺は苦笑いしながら、たきなの頭を撫でてやる。
「ちょ!?一護!?」
「はいはい、どうしたのかな?」
「わ、分かりました!分かりましたから!恥ずかしいのでやめてください!」
はいよろしい。
俺はそのまま手をどかして、千束に休憩に行くように急かす。
「お兄ちゃんやりますな〜」
「何言ってんだ、お前?」
「お前というやつは…なんかあれだな」
「どれだよ、クルミ」
訳分からん2人を追い出して、次の客に元へ向かう。
そして、その後からだ。
千束の様子がおかしかったのは。
いや、元からおかしいのだが、より一層変という話だ。
「千束、どうしたんだ?今日はいつもに増して変だぞ」
「実の妹に酷い言い方だな、兄よ」
「ですが確かに変ですよ、千束」
「こいつがおかしいのは、いつもの事だろ」
それぞれが千束をディスりながら、千束の様子のおかしさを指摘する。
だがそんな俺以外のディスりを、千束は無視して
「先生は?」
「買い出しに行きましたよ」
「もうおっさんがこいちいのかな〜?」
何故か先生が、どこにいるのか尋ねてくる。
先生がどうしたんだ?
「…皆さん、リコリコ閉店の危機です」
「「「「…え?」」」」
■
なんでも休憩に行く時、たまたま先生のスマホを見たらしい。
明後日、何処かのバーで密会するらしい。
というか、まずそれ以前に
「人のスマホを勝手に覗き見ちゃいけません」
「だって見えちゃったんだも〜ん!」
「目がいいと余計なものも、見えてしまうんですね」
「パンツ見られたり?…あで!」
クルミ…頭いいくせに、余計なことを言うから。
口は災いの元…だぜ?
「全く…気をつけろよ?」
千束の頭を軽く小突きながら、優しく叱る。
その様子を何故か、たきなにジト目で見られる。
「…何?」
「いえ、相変わらず千束に甘いと思いまして」
ん、そうか?
自覚はなかったが、甘すぎなのか?
「まあ確かに、あんたは千束に甘いわね」
「逆にたきなにはスパルタな気がするな。もちろんいい意味でだが」
「いい意味でスパルタってなんだよ?」
「ただ厳しいだけじゃなくて、ちゃんとたきなを見てるってことだ」
ん〜…そうかな?
確かにたきなには、色々叩き込んでる自覚はある。
お店の仕事然り、DAの仕事然り。
たきなには、大きな期待を抱いている。
だから熱が入ってしまったかもしれない。
「う〜ん…もうちょい優しくする?」
「…いえ」
首を横に振ったたきなは、静かな俺の隣に来て、俺を見上げながら一言。
「今のままがいいです」
その黒い瞳の眼差しに、吸い込まれそうになった俺は、咳払いをひとつして、話を元に戻す。
「さて、脱線したがなんで閉店の危機だと?」
「きっと楠木さんだよ!」
楠木さん?
なんであの人だと?
「きっと先生を誑し込んで、私をDAに連れ戻す気だよ!」
「自慢ですか。結構ですね、必要とされてて」
「あぁ〜!そうじゃないよぉ!たきな〜!」
余計なこと言うから、たきなが拗ねた。
全く…自分で何とかしろよ、千束。
まあ発想としての理由は分かった。
根拠は無いが。
「それがなんで閉店と繋がるんだ?」
「小さいとはいえ、ここはリコリスの支部だからね。いくら一護がいても千束がいないと、ルール上成り立たないのよ」
DAの支部のルールとして、ファースト級が最低でも1人は必要なのだ。
その点で言えば、ファーストリコリスとファーストリリベルがいる、この店は戦力として破格だな。
「なら私が戻りますよ」
「うぇ〜!そんな寂しい〜!」
「たきなはお呼びじゃないんだろ…グウェ!…失言だった…すまんすまん…」
まあクルミが原因だからな。
たきなもお前にだけは、言われたくないんだろ。
「み、みんなもお店無くなると困るでしょ!」
「…まあ私は養成所戻しですし…」
「僕はまだここに潜伏しないと、命が危ない…」
「私も男との出会いの場がなくなる…!」
…なんて不純な奴らだ、うちの女性陣は。
まずクルミが、そのバーを調べることに。
「BAR Forbidden…会員制のバーだな」
クルミの力で色々偽装するから、潜入は問題ないとして、一つ疑問。
「ここで本当に仕事の話するか?」
「ただの逢引じゃないか?」
いくら会員制のバーとはいえ、公衆の面前で出来る話では無いだろう。
俺とクルミは疑問に思っていると
「店長と司令は愛人関係だと」
「愛人って…せめて恋人って言えよ。愛人だと…」
「なんというか…なんか、興奮する!」
「黙れ、酔っ払い」
何言ってるか、この酔っ払いは。
おっさん臭いわ。
「でもそういうことだろ?」
「「ないないないないない」」
「なんでだよ?有り得る話だろ?」
「「ないないないないない」」
そこまで全否定しなくてもいいだろうが…まあ、理由は分かるけど。
■
かきいれ時をすぎた頃、テレビを見ていると警察署が襲われたという事件が発生したという、ニュースが流れていた。
「お〜お〜、すげぇな」
「うわ、すげぇ紋々。今どき珍しい」
ミズキと二人で呑気に見ていると、ドアのベルが鳴り、フキとサクラが入ってきた。
「おう、フキ。いらっしゃい」
「よう一護。千束はいるか?」
「おう、フキ!いらっしゃい」
「お前ら兄妹揃って同じ反応するなよ。…説明は不要だな。お前たちに見せたいものがある」
そう言ってカウンター席に腰をかけると、サクラがテレビを消した。
「…ん?見ない顔だな」
「ででで、DAの者です…」
クルミ…まあ見つかったらまず殺されるだろうしな。
そりゃ緊張もするか。
「そうなのか?お前ら」
「え?そ、そうそう!うちのコンピュータの人」
なんというか…コンピュータの人って…お前。
普通に電脳担当とかでいいだろうに。
本当にスマホしか使えねぇんだよな、千束。
「ならいい。ちょっと借りるぞ」
そこに映し出さられたのは、署内の監視カメラ映像だ。
「紋々じゃねーじゃん!」
「報道はとっくに規制してるに決まってるじゃないっすか!」
「行動前にやるのが、あんたらの仕事でしょ」
まあ確かに、俺らDAの仕事は、不穏要素の芽を摘むことだしな。
後手に回ってる時点で、既に負けてると言っても過言では無い。
そこへ先生が現れた。
「おや、珍しいお客さんだな」
…フキ〜、なんだよ。
乙女じゃんか、このこの〜!
俺は肘でフキをつついていると、フキが顔を真っ赤にさせて、俺たちに怒鳴りつけてきた。
「お前ら!どれだ!どれが真島だ!」
「「そんな大きな声で叫ばなくても…あ!」」
「…双子って本当にシンクロするんすね」
やかましいぞ、クソガキ。
ってそれはともかく、やっぱり写ってたな真島。
「こいつこいつ!ね、2人とも!」
「ですね」
「…やっぱ俺が1番上手かったな」
「違いないっすね」
「…サクラ行くぞ!」
「え!?団子が!?」
そのままサクラを引き摺って、店の外に引っ張り出したフキ。
それを見送りながら、俺は不毛な争いを続ける2人に、俺の書いた似顔絵を見せつけ
「…ドヤッ!」
「「は、腹立つ〜!」」
盛大に勝ち誇るのだった。
■
閉店後のリコリコにて。
「腹減った〜」
「おうどんでもゆがきます?」
「食べま〜す!」
「右に同じく〜!」
俺たちが夜食で盛り上がっていると、先生が杖をついてドアに向かう。
「あ〜悪いが、私は用事があるので外出する。戸締りを頼むよ」
…行動開始!
全員が動き出したその直後
「あ〜、言い忘れたがガスの元栓を…どうした?」
「いや…うどんどこかなって…」
「こっちは無いです」
「見つからないよ〜」
「うどんなら納戸だ」
「「「「「…ぷはぁ〜」」」」」
めちゃくちゃ緊張したな、おい。
さてとそれでは、潜入調査開始だ。