「へいお待ち!」
…なんじゃありゃ。
栗きんとん、黒蜜、小豆、ソフトクリーム、抹茶アイス、白玉…ダメだ、把握しきれん。
あのバカ、一体何作ってやがるんだ…!?
「お兄ちゃん!千束スペシャル3丁!」
「お前の頭にアチョー!」
「いった!?ちょ!?割とマジで痛いんだけど!?」
「痛くしてんだから当たり前だろ。なんじゃそりゃ!採算とれねぇだろうが!なしだなし!」
「いやいや!もう頼まれてるから!」
「そもそも作り方知らねぇよ!」
こんのバカ妹、なんで勝手にこんなことやるかね…。
というか…割とマジでシャレにならん。
「千束、ちょっとこい。割とマジでお説教」
「…マジで?」
「うん?」
「あ、はい」
俺がなぜこんなにも危機感を抱いている理由…それは、このお店の収益にある。
簡単に言うと…結構な赤字なのだ。
細かく見てないが、多分やばい。
そんな話を、コンコンと千束に話す。
その日の休み時間。
「「「「…うわ」」」」
「思ってたより酷いな…」
たきなが計算したグラフを見た結果、俺の思っていた以上に赤字だと判明し、苦い顔をしてしまった。
「これは、依頼金を含めての収益です。弾丸費とか移動費はどうなってるんですか?」
「DAから支援金があるのよ。一応、こいつらの活動費ってことで」
「…DAから独立してると言いながら、そこは頼ってたんですね?しかもこれ、完全に足出てますよね?」
たきなよ…そんな眼で睨まないでくれ…。
俺と千束はつい、目線を逸してしまう。
「…分かりました。以後私が、リコリコの経理をします!」
■
というわけで、たきなによりリコリコにおける倹約が始まったわけで。
「千束。クリーナーを使うと、膨大な費用が飛びます。できるだけ現状復帰が不要な活動を、心掛けてください」
「はいそこまで」
「千束、撃ちすぎです」
リコリスとしての現場では、千束の行動を制限し。
「ミズキさん。冷蔵庫の開けっ放しは、電気の無駄です」
「店長、私がやります」
「はっ!ほっ!とう!」
リコリコ店内においても、色々とやってくれているのはいいが…
「なぁ、たきなさんや」
「…なんでしょうか、一護さんや」
「俺、何も変更点なし?」
「…そうですね」
俺だけ何も言われていないのだ。
弾は接近戦のトドメに使っているので、あまり使わないし、バカスカ撃たないから、現場も壊れない。
実弾だって正確に狙えるから、無駄撃ちもないしものも壊れない。
お店だって意識してるわけで無いが、まあ節電や節水はそれなりに心掛けてるつもりだ。
「…一護、少し座ってください」
「ん?おう」
誰もいないリコリコの店内。
座敷に座らされた俺は、なんのつもりか不思議に思っていると、突然たきなが俺の膝に寝っ転がった。
「…たきな?」
「千束が言ってたんです。暖かくて落ち着くと。…なるほど、確かにそうですね」
「男の膝枕に、なんの需要があると…?」
…まあ、いいか。
これでたきなへの労いになるのなら、お易い御用だ。
俺は千束にやるように、お腹を軽く叩いてやりながら、優しく頭を撫でる。
千束曰く、このお腹を叩くリズムが、眠気を誘うのだとか。
「…たきなってさ、普段は凛々しい綺麗系だけど、ツインテにしてるリコリコモードの時は、一気にカワイイ系だよな」
「なっ…!?」
「…たきな、可愛いよ。よしよし、えらいえらい。いつも頑張ってるな。今はゆっくり休みなさいな」
「…休めません…」
あ…なんて言ったこいつ?
俺は不思議に思いながらも、手を動かすのをやめずに、ゆっくりとした時間を過ごす。
「お〜、お前ら、いた…」
「クルミ。しー」
「…だな。すまない」
穏やかな顔で寝るたきなは、年相応の女の子の顔だった。
■
本日もお仕事お仕事。
さてと、爆弾処理を進めていこうかねっと。
「たきな、その緑。次は白。その次黒。次は青…はいクリア」
さてと、報酬を貰おうかね。
「「サア!デテイクアル!」」
おいおい、そりゃナシだぜ、中国人さんよ。
というか俺らが、その程度に屈するとでも?
「報酬がまだですが」
「ほれほれ〜!」
「約束は守ってもらわないと…ね?」
俺と千束はずんずん進んで、金を要求する。
もちろん、正当な報酬だから、俺らに正義はある。
だというのに…
「コレノコトアルカ!」
全く、なんで銃を突きつけてくるかな。
1人が突きつけた銃を、千束が奪い。
慌てて抜いたもう1人の銃は、俺が叩き落として、俺の非殺傷弾を撃ち込む。
その際酒瓶が一本、たまたま発射されてしまった銃弾で割れるが、お構い無しだ。
「これは私たちのせいでは無いので、知りませんからね」
ナイス、たきな。
千束がニヤニヤしながら銃を返すと、直ぐに千束に対して発砲するが、1発も当たるわけなく。
「お、おい!?やめ!ヒィィィ!」
「エ?エ?ナンデ?」
「払いませんからね」
「フォワーチャー!」
お前は拳法家か。
さてとそれはともかく…そろそろネタばらししてもらおうか。
「皆さん!実はまだ、最後の2本を残してあります。あとはご自分でどうぞ。それでは私たちはこれで」
「お邪魔しました〜」
俺たちが出口に歩き出すと、後ろから情けはい悲鳴と共に、助けを求めてくる依頼人。
だが、俺が撃った中国人が、何処からか剣を抜いて襲いかかってきた。
「ヤアァァァァァァァァア!」
「うるせぇよ」
俺は特殊警棒を抜いて、いなしてから首筋に思いっきり叩きつけた。
完全に気を失ったそいつを蹴り飛ばしながら、俺は黙って手を差し出した。
…さっさと払え、という意味で。
「ひ、ひぃぃぃぃ!?」
「…さてと、こっちは終わりました」
「くれるよね?」
しっかり依頼料を受け取った俺たちは、意気揚々と退散したのだった。
「いや〜!私1発も撃ってない!」
「俺も1発だけだな」
「2人とも、よく出来ました」
■
翌日、出勤した俺たちは、座敷にいるたきなとミズキに挨拶をしようと、近づいた。
…なんかいい匂いがするな。
「ぐっどもー…え、なにこれ?」
「はよざー…す?ん?うん?」
…う〇こ?
とぐろを巻いて、湯気を立てた、完全無欠にう〇こだ。
なのにチョコレートのいい匂いがする。
…頭の中が宇宙になっていく。
…ダメだ、理解するのを放棄しよう。
「私が考案した、新作パフェです!どうですか、2人とも?」
「いや…これは…う」
「しっ!」
ミズキ…そこは指摘した方が…いや無理か。
あんなキラキラした眼で言われたら、流石に指摘するのは、躊躇われる。
「う、うん…いいんじゃない…かな?」
「ホットチョコレートか…これからに良さそうだな」
「はい!」
というわけで売ってみたはいいのだが…
「えぇっと…お兄ちゃん!これ何番さん!?」
「それは2番!」
「違います!4番さんです!一護のが2番です!」
「「分かるかー!」」
それはそれは、大層よく売れる。
こっちがびっくりするレベルで売れる。
あまりの売れ具合に、クルミまで引っ張り出して、総動員させても追いつかない。
「っと電話か。はい!喫茶リコリコ」
『山岸だけどよ。あんたら今日検診だよ!連れてくるって言ってたじゃないか!』
「…げぇ!?」
しまった…忘れてた…!
いや、というかこの状況じゃ…!?
「ええっと…忘れてたっていうのもあるんすけど、ちょっと今手が離せなくて…いや、マジで何故か大繁盛中…あ」
ミズキ…珍しくやらかしやがった…。
クルミじゃねぇのな、というかみんななんで撮ってるの?
『…本当に繁盛してるようね。こっちまで聞こえるわよ』
「あはは…すみません。割とヤバいです」
『まあいいわよ。あんたはまだあるしね。近日中に来ること。いいね!?』
「はい…」
マジですんません、山岸先生。
今回ばかりは、本当に緊急なんです。
その他にも
「みんな、今日実はね…」
「「トリックオアトリート!」」
「2人とも。こちら1人で大丈夫ですので、これを」
保育園でのハロウィンにかこつけた、お菓子配りの予定が、何故か外回りに。
…というか…
「なんで!」
「俺たちばかり!」
「外回り!」
「なんだよぉぉ!」
組長のおやっさんの所にコーヒーを配達したり、迷子を送り届けたり、たぬき捕まえたり、悪いやつら捕まえたり、射撃講座だったり。
…いや、何故日本で射撃講座?
「…Wow!お兄ちゃん、すごいよ!」
「金を配るサンタみたいだな…」
報酬を袋にひとまとめにしているのだが、なんというか、金を詰めたサンタみたいで、かなり見た目が悪い。
保育園に戻ると、たきなが子供たちにお菓子を配っていた。
「「「「「「「「「トリックオアトリート!」」」」」」」」」
「ハッピーハロウィン。いい子ね」
一人一人に優しく声をかけるたきなに、俺は何故か目が離せなかった。
来た時は生き急いでいたたきなが、今はああやって子供たちに優しく接している。
その姿が、俺にはとても魅力的に見えた。
「って、なんで並んでんの?あいつ」
よく見ると千束がこっそりと、子供たちに紛れて並んでおり、流れに乗って貰おうとしてる。
案の定見つかり、拒否られてるし…ってあいつ、お金はどうした?
「ねぇ!ちさとおねーちゃん!これも貰っていいの!?」
「いいよー!じゃんじゃん持ってけー!」
「…アホかお前は!いいわけないだろ!」
慌ててバカをやらかす千束を、何とか止める俺。
まだお金は早すぎる。
そんなたきなの金策により、リコリコはかつてない黒字に。
浮いたお金で、店長がレコードを買ったり、食器洗浄機を買ったり、配膳ロボを買ったり…配膳ロボ?
「安かったので…」
「大丈夫なのかよ、あれ」
「クルミよりは使える…!」
…否定要素がないのが残念だな。
すっかりたきな様々になった俺たち。
「いや〜!たきな様々だわ!」
「あれ?そのたきな様は?」
「うん?…押し入れか?」
開けるとクルミと何かをしていた。
よく見ると…
「…株?」
「クルミと組んで、投資してみようかと」
「そこまでやるか?」
思わずそう呟いていると、千束のスマホが鳴る。
この音は…山岸先生だな。
嫌そうな顔をしていると、たきなに強奪され、明日行くことに。
なったのだが…
「…よォ、お二人さん」
俺たちの前に、真島が立ち塞がったのだった。