君影草の俺が頑張る話   作:ネコ耳パーカー

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リコリコは閉店します!


LycoRico will be closed!

「おーいクルミ」

 

「「わぁ!?」」

 

クルミに用があり、襖を開けると反対の襖からミズキが顔を出していた。

2人揃って何を…ああ。

 

「んー、もう潮時かね〜」

 

もう死にゆく俺のために、みんなの時間を割くのは不本意だ。

というわけで

 

「リコリコは閉店しま〜す!…ハッ!」

 

某筋肉芸人のマネをしながら、わがままを通してみることにした。

ここは最後まで楽しい場所でいて欲しい。

 

「…千束たちはいいのか?」

 

「まあ、ここは元々お兄ちゃんを受け入れるための場所だからね。そのお兄ちゃんが閉めるっていうなら、閉めるよ」

 

「そう言われると罪悪感がすごいんだが…?」

 

思わずガクッと項垂れてる。

 

「とはいえだ!むしろ長かったくらいだしな。な、ミズキ」

 

ミズキに話題を振ったが、そのミズキは難しい顔をするだけだ。

やれやれ…仕方ないな。

 

「さぁ〜て!みんなもたきなを見習って、新しい1歩を踏み出そう!Heyミズキ!Youは何する!?」

 

「へ!?…婚活サイトで知り合った、バンクーバーのイケメンに会いに行こうかしら」

 

「Wow!どれどれ…うわ、ムキムキだな」

 

思わずそのムキムキっぷりに、軽く引きながら、俺は次にクルミに振った。

 

「で!?クルミは!?」

 

「…僕はお前たちがいないと、この国では危ない。この国を離れるよ」

 

あ、そういうば。

その事でクルミに用があったんだった。

 

「そうそう、クルミ。千束とたきなの戸籍、作ってやってよ。んで、そのまま一緒に連れてってやって。ドイツとかオススメ」

 

「まぁたボードゲームか」

 

そうそう、ドイツは本場だしな。

大きなコンペもあるくらいだし、千束やたきなと組めば、いい線行くだろ。

 

「ならお前もどうだ?2人も3人も変わらんぞ」

 

ふむ…それは魅力的だな。

でもそれは無理だな。

 

「先生が寂しがるしな〜」

 

「私も。お兄ちゃんの側にいたいし」

 

そう言って後ろから抱きついてくる千束を、俺は軽く撫でながら見つめる。

…全く、しょうがねぇ妹だな。

そのまま夕方になり、クルミはミズキとともに、空港に行くことに。

 

「これでよし。今度はケースに入らずに、空港まで行けるな」

 

って、なんだよそのツラ。

せっかくの旅路だぜ?

 

「…世話になった」

 

おいおい、らしくもないこと言いやがって。

それはこっちのセリフだっつーの。

 

「こっちこそ。ミズキも達者でな」

 

「うん、おうよ」

 

そう言って俺とミズキは、拳を合わせる。

これくらい雑なのが、俺たちらしい。

 

「それじゃ、一護たちのこと、任せたから」

 

「…ああ」

 

「あんま無理言うなよアホ兄妹。おっさんも歳なんだから」

 

「「アホ言うな」」

 

そのまま俺たちは、走り去るタクシーを見送り、片付けを始めるために、店に戻るのだった。

 

 

真夜中、月明かりしかない独房に私…井ノ上たきなはいた。

檻の中の、DAが捕らえた人物に用がある。

 

「真島の依頼主か」

 

「…もう全部話しただろ、やつの狙いは延空木だ」

 

それは知ってる。

 

「武器供与したのはお前か?」

 

「またそれか…。いくら銃があっても、兵隊がいねぇと意味ねぇだろ。1000丁だぞ」

 

でしょうね。

…ここからが本題だ。

 

「では吉松か?」

 

「吉松ぅ?誰だそりゃ」

 

そう言って檻の中の男は、私に近づく。

 

「これがリコリスか。こんなガキに、仲間を殺されてたとはな…!」

 

私に掴みかかろうとしてきた男の腕を極めて、下に落としてから、思いっきり踏みつけて、銃を突きつける。

 

「や、やめろ!」

 

「私は殺しすぎて、一度ここをクビになってまして。外の暮らしも良かったので、もう一度クビになるのもありかなって」

 

店長がいて、ミズキさんがいて、クルミがいて、千束がいて、一護がいる。

そんな生活はとても楽しくて、有意義で、キラキラしていて、温かくて、愛おしくて。

あの気持ちを感じるのは、とてもいい事だ。

だが今、その愛おしさを教えてくれた一護が、いなくなってしまいそうになっている。

それを取り戻すためなら私は…

 

「吉松など知らん!本当に知らん!」

 

「なら銃は!?」

 

「アラン!アランと名乗っていた!それしか知らん!」

 

「アラン機関か!」

 

「知らん!本当にそれくらいしか知らん!」

 

喜んで、狂犬になろう。

私は、これ以上使えないと判断したその男の腕を、思いっきりへし折った。

悲鳴を聞き流しながら、私は直ぐに走り出す。

やはり、この裏には吉松がいる。

それだけ分かれば、十分だったのだ。

 

 

表に千束お手製の閉店チラシを貼り、片付けをしているのだが、さっきから千束のやつ、ずっとアルバムを見るばかり。

テレビもつけっぱなしにして、何してんだよ。

俺はため息をつきながら、黙ってテレビを消した。

 

「あ〜、見てたのに」

 

「見てたのはアルバムだろ。…お、リキじゃん」

 

秋田犬のリキ。

可愛かったな〜。

 

「お前たち、片付けてるんだぞ」

 

「…ねぇ、先生、千束。これからどうすんの?」

 

「明日の朝、不動産屋かな」

 

「違うよ。この店、バイト雇ったりして、続けたりとかさ」

 

「お兄ちゃんはそうして欲しいの?」

 

…そう言われると、答えに困るな。

リコリコが無くなるのは惜しい。

でも、俺たち以外の誰かにリコリコに来られるのは、ちょっと嫌な気もする。

…うん、やっぱり嫌だな。

小さく首を振りながら、俺たちは一度外に出る。

改めて見ると、この店って立派だよな。

 

「お前たち、いつまでそうしてる。もう閉めるぞ」

 

「はいはーい」

 

俺たちは中に置きっぱなしの荷物を手に取り、そこから動けずにいた。

 

「この店ともちゃんと、お別れしねぇとな…」

 

「…寂しいね、お兄ちゃん」

 

「…だな」

 

どう取り繕っても、決して消えないこの寂しさ。

このリコリコが、俺たち兄妹にとっての実家であり、リコリコのメンバーが家族だ。

そっとカウンターを撫でると、懐かしい傷跡を見つける。

これ、俺がカップを割った時に、つけちゃった傷か。

 

「…コーヒー、淹れるか」

 

そんな先生の言葉に俺と千束は

 

「「ん〜!是非〜!」」

 

思い出話を咲かせることにしたのだった。

そのまま朝を迎えて、だらけていると伊藤さんが飛び込んできた。

 

「ちょっと何!?なんなのよこれ!?」

 

そんな伊藤さんを皮切りに、次々と常連さんが流れ込んでくる。

いや、嬉しいんだけど…

 

「つ、疲れた…」

 

「愛されてたね〜、この店。嬉しい」

 

「…そうだな。お前たち、手伝って欲しいことがある」

 

突然どうした?

そう思いながら俺は連れられて、倉庫まで降りる。

 

「その棚の上の木箱…それだ」

 

これなのはいいが…

 

「ゲホゲホ!すげーホコリ…。千束、パス」

 

「おう!…ケホケホ!いつから触ってないのよ、もう…ライフル?」

 

「いや、刀かも?」

 

「どちらも違う。そもそも武器じゃない。お前たちのだ」

 

先生はそう言って、俺たちに開けさせる。

中から出てきたのは、男物と女物の着物が一着ずつ。

 

「お前たちの晴れ着だ。成人式にはちょっと早いがな」

 

「先生…!」

 

「〜っ!ん〜!」

 

千束が嬉しさのあまり抱きつき、俺もつい笑ってしまう。

マジで嬉しい。

俺たちは早速着てみることに。

 

「おぉ!千束似合ってるじゃん!」

 

「お兄ちゃんこそ!カッコイイ!」

 

先生が記念撮影してくれる事に。

…さてと、次は先生に聞かないとな。

 

「先生、どう?」

 

「ああ、よく撮れてるぞ」

 

「いやそうじゃくて!先生の感想を聞いてるの!」

 

「ああ、もちろんよく似合ってるよ。すっかり大人だな、2人とも」

 

いや〜、先生にそう言われると照れるな。

 

「ありがとう、先生」

 

「お前たちに感謝されることなんて、何も無い」

 

「またまた〜!私とお兄ちゃんに名前をつけてくれたこと」

 

「銃や体術も教えてくれたし、たきなにも会えた」

 

「お兄ちゃんのために、ヨシさんを探してくれた!あ、そうだ!さっきの写真、ヨシさんに…」

 

「そうじゃないんだ!」

 

突然デカい声出すから、ビックリした。

…先生、まだ気にして…。

 

「一護、千束。シンジのことで、話すことがある」

 

そういう先生の顔は、とても辛そうだった。

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