「そもそも無かったのか?」
「はい」
「楠木さん、偽の情報掴まされてやんの〜」
ふむ…これは厄介だな。
もし情報がただのガセネタなら、まだいい。
ただしフェイクだった場合、かなりヤバい。
「ちなみに、銃の数は?」
「約1000丁」
「「せ、1000丁!?」」
思わず千束と2人で、声を張り上げる。
おいおい…戦争でもおっぱじめる気か!?
「…ヤバいな、それ」
「え?どうヤバいの?」
「もしその情報がフェイクで、実際はその段階で取引が終わっていた場合、相手は銃を抱き抱えてるってことになる」
なんの目的があるのか知らないが、相当厄介な事件になっているってことだ。
「いちごー!ちさとー!」
「お兄ちゃん!お姉ちゃん!」
「…お兄ちゃん、今はおいとこ?」
「…そうだな。ガキの前では、笑顔でいないとな」
俺たちが着いたのは保育園。
ここの子供たちの相手が仕事だ。
「みんなー!久しぶりー!」
「今呼び捨てにしたの誰だー!?…お前かー!」
俺は1人を捕まえて、こちょこちょする。
すると大笑いしながら悶える男の子。
うん、やっぱ子供と女は笑顔が1番。
「新しいお友達の、たきなお姉ちゃんだよー!」
「みんな!ちゃんと挨拶しろよ!」
「「「「「「たきなお姉ちゃん!」」」」」」
「…」
よし、次行ってみよう!
次は…日本語教室だ。
「エクササイズワン!…戸惑っています!」
「「「「「トマドッテイマス」」」」」
戸惑ってるね〜…たきなが。
「出身校が同じなので、私たちができることは、たいてい出来ます」
「あ、たきな。ロシア語は?」
「немного」
お、できるなこいつ。
さてお次はちょいと荒っぽいぞ。
「オラァ!ここはガキの来るところじゃねぇぞ!」
「んだとゴラァ!舐めてんじゃねぇぞ、ハゲ野郎!」
「お兄ちゃん、ステイ」
「客人だ」
「…マジっすか」
多分知らないであろうことは、想像ついたが、その上で思いっきり凄んだ。
「新入りでな。許してやってくれ一護、千束」
「あんたが出なかったら血が流れてたぜ、おやっさん。…はいこれ、ご注文のブツ」
「お〜!たっぷり入ってるな〜!」
「だろ?上物だぜ」
ここはヤクザの事務所。
俺たちの相手は、その組の組長だ。
「す〜…いい香りだ」
俺とおやっさんの会話に、怪しさを感じていたらしいたきなが、咄嗟に銃を抜こうとした瞬間、俺は逆にその銃を元に戻させる。
そのままそっと耳打ちした。
「たきな、大丈夫」
「挽きたてだって、先生が」
そう、渡したのはコーヒーの粉だ。
いい香りがするに決まっている。
「そうか!マスターによろしくな。ところで、そっちのお嬢ちゃんは?」
「たきな。今日から入った新人だよ」
「「「「「「「「たきなさん!よろしく!」」」」」」」」
俺たちは組事務所から移動を始める。
「ヤバい粉だと思った!?思ったでしょ!?」
「…ええ。撃ち殺すところでしたよ」
千束、んな楽しのそうな顔すんな。
あとたきな、撃ち殺すのはなしな。
「ころ!?…もう!冗談だよ、冗談!」
「ただのお店のお得意さんだ」
さてと、次は一転、警察署なのだが…まだ時間があるため、ひと休憩。
「あの…この部署は何をするところなのでしょうか?」
「「え?」」
■
ふむ…何するところなのか…か。
改めて言われると、考えるな。
千束も思いつかないのか、トマトジュースを飲みながら、難しい顔で考えている。
「保育園…日本語教室…組事務所…共通点が見つかりません」
「困っている人を助ける部署だよ!」
「個人のための部署、かな」
「…私たちは国の公的…」
「長い長い!んなもん知らん!」
俺の冷たい一言に、たきなは黙り込む。
そりゃそうだろう、なんせリコリスやリリベルの存在意義を否定するような、物言いだもんな。
「俺はさ、たきな。世界のためにとか、お国のためにとか、そういうの合わないんだよ。そんなもんのために命を懸ける…ハッ、アホかと」
「だったら、一護さんは何のために…!?」
「こいつの為だよ」
そう言って俺は、千束の頭に手を乗せる。
そっと撫でてやると、嬉しそうに目を細める千束。
「…こいつや先生やミズキ、常連客のみんな、子供たちや外国人や組の人たち…それに、たきなも」
「私も…ですか?」
「俺は俺の身近にいる人たちを守りたい。リリベルになった日、そう決めたんだよ。いつか、たきなにも分かるさ、きっと」
その大切なものは、少しずつ増えてきて、俺にとっても戦う理由となり、力になる。
そういうありふれた日常を守りたい…それが俺の戦う理由だ。
「まあともかく!DAが興味持たなくても、困ってる人はたくさんいてさ!助けを求めてる!だからたきな、私たちに力を貸して!」
千束がそう締めくくって手を差し出すと、たきなは黙ってその手を掴んだ。
「何か聞きたいことある?」
「ありすぎますね」
悪ぃ、そりゃそうだわな。
■
さてと、着いたのは押上警察署。
そこで待っていたのは、常連の阿部さんだ。
「彼女は新人の、井ノ上たきなさん」
「いやー!リコリコに行く楽しみが、また増えちゃったなー!」
阿部さん、それはセクハラか?
だったらお兄さん許しませんよ?
それはともかく、俺たちは受け取った写真の裏に書かれた名前を確認する。
「篠原沙保里さん…」
「ストーカー被害っていうのは、警察は鈍くてねぇ…。俺も管轄じゃねぇんで、動けないんだよ」
なるほど、そこで同性の千束とたきなか。
同性の方が話しやすいと、踏んだのだろう。
「あの…こんなことで、評価されるのでしょうか?」
「評価?どういうこと?」
俺たちは沙保里さんとの待ち合わせ場所に先に行き、たきなの話を聞くことに。
評価を上げて、早く本部に戻りたい…ね。
「私への人事は、正当だとは思えません」
「じゃあ、なんで撃った?仲間にあたるリスクを背負ってまで、なぜ機銃掃射をした?」
俺とたきなの間に、深い沈黙が落ちる。
そんな空気に、千束が慌てて口を開いた。
「お、お兄ちゃん!何言って…!ええっとね、別にお兄ちゃんは、怒ってるわけじゃないんだよ!?ただ揉めたくないなら、なんで命令無視をしたのかってことだよ!」
「…あれが、一番合理的だと思ったのですが…それがあんな騒動になるなんて…」
ご、合理的理由…。
ただまあ、一つだけ言うなら。
「多分騒動にはなってないよ。事件は事故に、悲劇は美談になる。最後の大事件も、今や立派な平和のシンボル」
「…でしたら私は、何をしたのでしょうか?」
何を言い出すかと思えば…決まってるだろ?
「1000丁の銃の所在を知ってるかもしれない連中を、皆殺しにした」
「…」
「お兄ちゃん!」
たきなの気まずそうな顔と、千束の焦ったような顔を見て、俺は小さく笑う。
「冗談だよ。んなもの決まってんだよ。…お前は仲間を救った。それ以上でもそれ以下でもない。…よく頑張ったな、たきな」
俺は手を伸ばして、優しく頭を撫でてやると、たきなは驚いた顔をした後、ほんのり顔を赤くした。
「…子供扱い、しないでください」
「お、悪かったな」
「…お兄ちゃんって、そういうとこあるよね」
何故かジト目で、千束に睨まれる俺。
それこそ俺が何したってんだよ?
「なんでもない!…あ、沙保里さん!」
「バカ…!声でかい!」
お、来たな。
というわけで、早速話を聞くことに。
「これをアップしてから、ストーカー被害が出たと…」
「はい。脅迫リプも来たから怖くてすぐ消したけど…」
一見ごく普通のカップルの、ツーショット写真だが…?
これ見て脅すのミズキくらい…いや、待て。
たきなも気付いたのか、ついボソッと呟いた。
「このビルって…」
「そうそう!ガス爆発のあったビル!その三時間前くらいなの!」
…これは…なんということだ。
一見普通のカップルのツーショット写真だが、その実態は、武器取引の事が映っていたのだ。
「…ブー!」
「うわ!汚!おい千束!」
「ご、ごめん…お兄ちゃん…!でもそれって…」
「ああ…沙保里さん、この画像、こいつのスマホに送っても?」
「え、ええ…2人は兄妹なの?」
本当は双子なのだが、二卵性双生児ということもあり、あまり双子感はない。
「私たち双子なんです。とは言っても似てないんですけどね」
それはともかく。
どうやら俺の予想は、後者が的中したらしく、おそらく脅迫もストーカーも、この事件の関係者。
沙保里さん…メチャヤバなのに狙われてるのな…。
いちおう各話に一回は、錦木兄妹のハモリを入れて行きたいですね。
それでは失礼します。
ありがとうございました。