俺たちは3人揃って寝っ転がる。
いや…マジしんどい…。
「生きてるか…?」
「当たり前…。たきな、DAはどうしたんだよ?」
「…やめてきました」
全く…バカだなぁ…。
そんなスッキリした顔しちゃって…。
さてと、いつまでも休んでられねぇな。
「さっさと吉松を探さないとな」
「私、上見てくる!」
「なら俺も…」
「その前に、一護はまず傷の手当を。傷だらけじゃないですか」
まあ、千束みたいに避けられるわけじゃないしな。
そりゃ結構派手にドンパチしたし、ボロボロにもなるわな。
「え?うわぁ!何それ、ボロボロじゃん!早く手当!」
「致命傷はねぇし、自分で出来るからいい。お前は吉松を頼むぞ」
俺は千束を送り出して、応急処置を始めた。
■
私は階段を駆け上がって、展望台に着く。
ヨシさんはそこにいた。
「ヨシさん!大丈夫?撃たれてないですか?」
「…ああ、大丈夫。掠めただけだよ。来てくれたんだね、千束。それで…殺したか?」
「え?」
私は初めてヨシさんの顔を見た。
その顔は、とても冷たく冷酷な顔だった。
「私をこんな目に遭わせた真島を殺したか?殺してくれたんだろう?」
…やっぱり、ヨシさんは…私を殺しの道具としてしか見てないんだね。
私はその眼が、とても悲しなった。
「…ヨシさん」
「殺してないのか!君はマザーテレサにでもなったつもりか!」
だって…私は大切な人を助けてもらった。
そんな私が、誰かの大切な人やものを奪えるわけないよ!
「君はわかっていないようだ。人生で明確な役割が分かっている人間は少ない。だが君は分かっている!それがどれほど幸福なことか!」
「幸福…?殺しが私の幸福なの…?」
「そうだ!それで君は、人類と世界に貢献出来るのだがら!私は君に、あんなおままごとをさせる為に、一護という壊れかけの人形のゼンマイを回した訳では無い」
人形…お兄ちゃんが…?
…ふざけないで!
今すぐ訂正して!
そんな言葉が溢れ出そうで、でもショックで口が開けなかった。
「君にその銃は相応しくない。返してもらう」
結局私は何も言えず、黙って銃を返した。
「…ミカめ。こんなものを。君には…実弾が相応しい」
そう言って先生の作ってくれた非殺傷弾を抜いて、実弾を込めてから、私に向かって発砲してくる。
私がそれを躱した瞬間、後ろから誰かが発砲した。
「動くな、吉松。次は眉間に撃ち込みますよ」
「たきな!?銃を下ろして!」
私の制止を無視して、たきなは銃を向けながら、ヨシさんと話し出す。
「吉松、お前が真島と共謀して一護たちをおびき出したのは分かってる。…いや、真島も利用したんでしょう?武器を渡したのもお前。ウォールナットにラジアータをハッキングさせたのも、殺したのもお前。あぁ、あと松下もお前。そして…一護の心臓を壊したのもお前。だけど…そんなことはもうどうでもいい」
そう言ってたきなは銃口を、アタッシュケースに向けた。
「そのケースさえ手に入れば」
あの中に何が…?
「クルミが掴みました。その中に、一護の命が入ってる」
命…まさか、新しい人工心臓!?
そこまで言われたヨシさんは、軽く笑って、胸元をはだけた。
その下には…なんらかの手術痕が。
「物知りだね、たきなちゃん。…千束、一護の心臓は、今はここにある。私を撃って手に入れなさい」
心臓が…お兄ちゃんの人工心臓が…ヨシさんの中にある?
そんな…それを取り出そうとすれば、ヨシさんは…!?
でも、そうしないと、お兄ちゃんを救う手段は、もうない…!
私はほんの数秒の間に、色んなことを考えて…そして…
「…仕方ないよね」
諦めた。
私は握らされた銃をしっかりに握り、トリガーに指をかける。
ーー命大事に、だよ。
ーー死んじゃうでしょ!
ーー目の前で怪我してるのを、放っておけないじゃん。
ーー誰も死ななくて良かった良かった。
私が言ってきた言葉が、そのまま頭の中で反響する。
そんな私の色んな言葉が、浮かんでは消えていき、そして最後に出た言葉は
「お兄ちゃんのためだもんね…」
そう自分に言い聞かせて、私は引き金を引こうとした…その瞬間、頭に衝撃が。
あれ…景色が歪む…倒れそう…?
「アホが、何してんだよ」
「お兄…ちゃん…?」
私が最後に聞いたのは、お兄ちゃんの声だった。
■
「ふぅ…。走って追いついてみれば、何やってんだ、千束のアホは」
俺は千束を抱き上げて、隅に寝かせる。
そこでやっと、たきなが再起動したのか、慌てたように叫び出した。
「…っ!?い、一護!何をしてるんですか!?」
「ん?何って、目の前で人を殺そうとしてる妹を止めない兄貴はいないだろ」
「そうじゃなくて!なぜ止めたんですか!?今、吉松は一護の心臓を持ってるんです!」
あら、そうなのか。
でもまあ…それとこれは別だろ。
「…やはり、私は間違えを犯したようだ」
「あん?」
「千束を縛る枷を外すために、君を救ったが、それが間違いだった。君がいなければ、千束はこうはならなかっただろう。…一護!君が!千束の未来をねじ曲げた!」
…まあ、あながち間違えではないだろう。
確かに俺の存在が、千束の未来をこの道だけにしてしまったのだろう。
「…で?」
「なに!?」
「何をどう選択するかは、千束の自由だ。俺はただ、千束が間違わない限り、その選択を尊重してきただけ。今まで不殺を心がけてきた千束が、ここでそれを曲げようとしたから、俺はそれを止めただけ。…というか、俺の心臓と千束が殺そうとするの、どう関係してくるんだ?」
「…一護の心臓は、今は吉松の中にあるんです」
…は?
…うわマジっぽい、なんか手術痕あるし。
マジか〜…仕方ねぇな、諦めるか。
俺はため息をついて、銃をしまった。
「一護!どういうつもりですか!?」
「俺は別に、他人を殺してまで生き延びる気はねぇな」
俺が肩を竦めながらそう言うと、後ろからたきなの近づく音が。
振り返るのと同時に、たきなが俺をどかして、迷いなく発砲した。
「っぶねぇ…。何すんだよ?」
俺は咄嗟にたきなの腕を掴みあげ、射線をずらさせた。
「一護がやらないなら、私がやります!」
「いいって、たきなやめろって」
「その心臓!私が抉り出してやる!離して一護!」
「たきな、ちょっと落ち着けって!」
俺は悪寒を感じて、咄嗟にたきなを力ずくで突き飛ばした。
鉄骨の上には、あの時の看護師が。
「お前…!」
上から降りてきたそいつは、軽い身のこなしでたきなを蹴り飛ばして、そのまま外まで飛んでいってしまう。
「たきな!」
俺も直ぐに追いかけて、たきなにナイフを刺そうとしている女に、後ろから殴りかかる。
「フッ!」
「グッ!?」
俺はよろめいた隙に数発、非殺傷弾を撃ち込み、ワイヤーガンで拘束する。
その時上から、吉松がたきなの銃で狙ってくる。
「クソ!」
俺は残りの非殺傷弾を撃ち込むが、上手く当たらず弾切れ。
しかも予備マガジンも尽きてしまった。
マズイ…マズイ!
そう思っていると、中から鈍い銃声が。
「この音は…ガバメント…!?」
まさか千束のやつ!
撃ちやがったのか、実弾を!
「一護!先に行って!」
「…クソ!」
俺が慌てて戻ると、千束が暗い顔で吉松に銃を向けていた。
引き金を引く前に、俺は何とか間に合って、千束の銃を持つ手を持ち上げた。
「何してんだよ」
「こうしないと…お兄ちゃんが!?」
「お前は俺を救ってくれた人みたいに、誰かを救えるようになりたい、そう言ってたじゃねぇか」
「お兄ちゃんが救われないじゃない!」
「俺はもう救われた。だからもういいんだよ、千束。…もういいんだ」
俺はそっと千束を撫でながら、俺はアランのネックレスを外して、吉松の方に投げ捨てる。
「それ、返すよ。それと…」
特殊警棒を引き抜いて、いつの間にか千束の後ろに立っていた女に突きつけた。
「たきなは?」
そう呟くと、さらにその後ろから、たきなが登ってきた。
よしよし、無事で何より…って感じじゃなさそうだな…おい。
俺は特殊警棒を捨てて、女の襟首を掴むと、そのまま後ろに投げた。
「逃げろ!早く!」
俺がそう叫ぶのと同時に、たきなが走り出し、銃を拾い発砲する。
たきなが冷静じゃなかったおかげで、俺の手の届く範囲に来たのは、ラッキーだった。
「たきな落ち着け!」
「心臓が!心臓が逃げる!」
俺が必死にたきなを押えていると、千束がその隙に追いかけようと動き出す。
このアホ妹!
「お前もだわ!動くな!」
「お兄ちゃん離して!ヨシさん!心臓を置いてってよ!ヨシさん!」
「「うぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁ!」」
獣みたいに唸るなよ。
2人とも、弾が切れても引き金を引き続ける。
ったくお前らな…!
「いい加減にしろ!」
俺は2人をまとめて抱きしめる。
「よく聞け!吉松を殺して生きても、それはもう俺じゃねぇし、あいつの代わりには生きられない!」
ここでやっと、2人が力尽きたのか、ぐったりとしだした。
「…お兄ちゃん…いやだよぉ…」
「いや…一護が死ぬのはいやだ…」
「…ありがとう、2人とも。でもな?俺は本当はもう、死んでるはずの人間だ。吉松に生かされたから、千束と再会できた。たきなと出会えた」
俺は2人の頬を撫でて、視線を合わせる。
「いいか、別れは必ず来る。俺だけじゃなくてみんなに等しく平等に。だがそれは今日じゃない。だろ?」
そう言って笑いかけていると、突然すごい突風が。
いきなりなんだ…しかもこの音、ヘリか!?
現れたヘリから顔を出したのは
「おーいお前ら、無事か!?ミズキがうるさいから早くしろ!これ風がすごいな。口と眼が乾くんだよ」
…締まらねぇな、クルミ。
まあいい、まだ全部は終わってないからな。
「さあ行くぞ、次は延空木だ」