君影草の俺が頑張る話   作:ネコ耳パーカー

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別れは平等に来る


Parting comes equally

俺たちは3人揃って寝っ転がる。

いや…マジしんどい…。

 

「生きてるか…?」

 

「当たり前…。たきな、DAはどうしたんだよ?」

 

「…やめてきました」

 

全く…バカだなぁ…。

そんなスッキリした顔しちゃって…。

さてと、いつまでも休んでられねぇな。

 

「さっさと吉松を探さないとな」

 

「私、上見てくる!」

 

「なら俺も…」

 

「その前に、一護はまず傷の手当を。傷だらけじゃないですか」

 

まあ、千束みたいに避けられるわけじゃないしな。

そりゃ結構派手にドンパチしたし、ボロボロにもなるわな。

 

「え?うわぁ!何それ、ボロボロじゃん!早く手当!」

 

「致命傷はねぇし、自分で出来るからいい。お前は吉松を頼むぞ」

 

俺は千束を送り出して、応急処置を始めた。

 

 

私は階段を駆け上がって、展望台に着く。

ヨシさんはそこにいた。

 

「ヨシさん!大丈夫?撃たれてないですか?」

 

「…ああ、大丈夫。掠めただけだよ。来てくれたんだね、千束。それで…殺したか?」

 

「え?」

 

私は初めてヨシさんの顔を見た。

その顔は、とても冷たく冷酷な顔だった。

 

「私をこんな目に遭わせた真島を殺したか?殺してくれたんだろう?」

 

…やっぱり、ヨシさんは…私を殺しの道具としてしか見てないんだね。

私はその眼が、とても悲しなった。

 

「…ヨシさん」

 

「殺してないのか!君はマザーテレサにでもなったつもりか!」

 

だって…私は大切な人を助けてもらった。

そんな私が、誰かの大切な人やものを奪えるわけないよ!

 

「君はわかっていないようだ。人生で明確な役割が分かっている人間は少ない。だが君は分かっている!それがどれほど幸福なことか!」

 

「幸福…?殺しが私の幸福なの…?」

 

「そうだ!それで君は、人類と世界に貢献出来るのだがら!私は君に、あんなおままごとをさせる為に、一護という壊れかけの人形のゼンマイを回した訳では無い」

 

人形…お兄ちゃんが…?

…ふざけないで!

今すぐ訂正して!

そんな言葉が溢れ出そうで、でもショックで口が開けなかった。

 

「君にその銃は相応しくない。返してもらう」

 

結局私は何も言えず、黙って銃を返した。

 

「…ミカめ。こんなものを。君には…実弾が相応しい」

 

そう言って先生の作ってくれた非殺傷弾を抜いて、実弾を込めてから、私に向かって発砲してくる。

私がそれを躱した瞬間、後ろから誰かが発砲した。

 

「動くな、吉松。次は眉間に撃ち込みますよ」

 

「たきな!?銃を下ろして!」

 

私の制止を無視して、たきなは銃を向けながら、ヨシさんと話し出す。

 

「吉松、お前が真島と共謀して一護たちをおびき出したのは分かってる。…いや、真島も利用したんでしょう?武器を渡したのもお前。ウォールナットにラジアータをハッキングさせたのも、殺したのもお前。あぁ、あと松下もお前。そして…一護の心臓を壊したのもお前。だけど…そんなことはもうどうでもいい」

 

そう言ってたきなは銃口を、アタッシュケースに向けた。

 

「そのケースさえ手に入れば」

 

あの中に何が…?

 

「クルミが掴みました。その中に、一護の命が入ってる」

 

命…まさか、新しい人工心臓!?

そこまで言われたヨシさんは、軽く笑って、胸元をはだけた。

その下には…なんらかの手術痕が。

 

「物知りだね、たきなちゃん。…千束、一護の心臓は、今はここにある。私を撃って手に入れなさい」

 

心臓が…お兄ちゃんの人工心臓が…ヨシさんの中にある?

そんな…それを取り出そうとすれば、ヨシさんは…!?

でも、そうしないと、お兄ちゃんを救う手段は、もうない…!

私はほんの数秒の間に、色んなことを考えて…そして…

 

「…仕方ないよね」

 

諦めた。

私は握らされた銃をしっかりに握り、トリガーに指をかける。

 

ーー命大事に、だよ。

ーー死んじゃうでしょ!

ーー目の前で怪我してるのを、放っておけないじゃん。

ーー誰も死ななくて良かった良かった。

 

私が言ってきた言葉が、そのまま頭の中で反響する。

そんな私の色んな言葉が、浮かんでは消えていき、そして最後に出た言葉は

 

「お兄ちゃんのためだもんね…」

 

そう自分に言い聞かせて、私は引き金を引こうとした…その瞬間、頭に衝撃が。

あれ…景色が歪む…倒れそう…?

 

「アホが、何してんだよ」

 

「お兄…ちゃん…?」

 

私が最後に聞いたのは、お兄ちゃんの声だった。

 

 

「ふぅ…。走って追いついてみれば、何やってんだ、千束のアホは」

 

俺は千束を抱き上げて、隅に寝かせる。

そこでやっと、たきなが再起動したのか、慌てたように叫び出した。

 

「…っ!?い、一護!何をしてるんですか!?」

 

「ん?何って、目の前で人を殺そうとしてる妹を止めない兄貴はいないだろ」

 

「そうじゃなくて!なぜ止めたんですか!?今、吉松は一護の心臓を持ってるんです!」

 

あら、そうなのか。

でもまあ…それとこれは別だろ。

 

「…やはり、私は間違えを犯したようだ」

 

「あん?」

 

「千束を縛る枷を外すために、君を救ったが、それが間違いだった。君がいなければ、千束はこうはならなかっただろう。…一護!君が!千束の未来をねじ曲げた!」

 

…まあ、あながち間違えではないだろう。

確かに俺の存在が、千束の未来をこの道だけにしてしまったのだろう。

 

「…で?」

 

「なに!?」

 

「何をどう選択するかは、千束の自由だ。俺はただ、千束が間違わない限り、その選択を尊重してきただけ。今まで不殺を心がけてきた千束が、ここでそれを曲げようとしたから、俺はそれを止めただけ。…というか、俺の心臓と千束が殺そうとするの、どう関係してくるんだ?」

 

「…一護の心臓は、今は吉松の中にあるんです」

 

…は?

…うわマジっぽい、なんか手術痕あるし。

マジか〜…仕方ねぇな、諦めるか。

俺はため息をついて、銃をしまった。

 

「一護!どういうつもりですか!?」

 

「俺は別に、他人を殺してまで生き延びる気はねぇな」

 

俺が肩を竦めながらそう言うと、後ろからたきなの近づく音が。

振り返るのと同時に、たきなが俺をどかして、迷いなく発砲した。

 

「っぶねぇ…。何すんだよ?」

 

俺は咄嗟にたきなの腕を掴みあげ、射線をずらさせた。

 

「一護がやらないなら、私がやります!」

 

「いいって、たきなやめろって」

 

「その心臓!私が抉り出してやる!離して一護!」

 

「たきな、ちょっと落ち着けって!」

 

俺は悪寒を感じて、咄嗟にたきなを力ずくで突き飛ばした。

鉄骨の上には、あの時の看護師が。

 

「お前…!」

 

上から降りてきたそいつは、軽い身のこなしでたきなを蹴り飛ばして、そのまま外まで飛んでいってしまう。

 

「たきな!」

 

俺も直ぐに追いかけて、たきなにナイフを刺そうとしている女に、後ろから殴りかかる。

 

「フッ!」

 

「グッ!?」

 

俺はよろめいた隙に数発、非殺傷弾を撃ち込み、ワイヤーガンで拘束する。

その時上から、吉松がたきなの銃で狙ってくる。

 

「クソ!」

 

俺は残りの非殺傷弾を撃ち込むが、上手く当たらず弾切れ。

しかも予備マガジンも尽きてしまった。

マズイ…マズイ!

そう思っていると、中から鈍い銃声が。

 

「この音は…ガバメント…!?」

 

まさか千束のやつ!

撃ちやがったのか、実弾を!

 

「一護!先に行って!」

 

「…クソ!」

 

俺が慌てて戻ると、千束が暗い顔で吉松に銃を向けていた。

引き金を引く前に、俺は何とか間に合って、千束の銃を持つ手を持ち上げた。

 

「何してんだよ」

 

「こうしないと…お兄ちゃんが!?」

 

「お前は俺を救ってくれた人みたいに、誰かを救えるようになりたい、そう言ってたじゃねぇか」

 

「お兄ちゃんが救われないじゃない!」

 

「俺はもう救われた。だからもういいんだよ、千束。…もういいんだ」

 

俺はそっと千束を撫でながら、俺はアランのネックレスを外して、吉松の方に投げ捨てる。

 

「それ、返すよ。それと…」

 

特殊警棒を引き抜いて、いつの間にか千束の後ろに立っていた女に突きつけた。

 

「たきなは?」

 

そう呟くと、さらにその後ろから、たきなが登ってきた。

よしよし、無事で何より…って感じじゃなさそうだな…おい。

俺は特殊警棒を捨てて、女の襟首を掴むと、そのまま後ろに投げた。

 

「逃げろ!早く!」

 

俺がそう叫ぶのと同時に、たきなが走り出し、銃を拾い発砲する。

たきなが冷静じゃなかったおかげで、俺の手の届く範囲に来たのは、ラッキーだった。

 

「たきな落ち着け!」

 

「心臓が!心臓が逃げる!」

 

俺が必死にたきなを押えていると、千束がその隙に追いかけようと動き出す。

このアホ妹!

 

「お前もだわ!動くな!」

 

「お兄ちゃん離して!ヨシさん!心臓を置いてってよ!ヨシさん!」

 

「「うぅぅぅあぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

獣みたいに唸るなよ。

2人とも、弾が切れても引き金を引き続ける。

ったくお前らな…!

 

「いい加減にしろ!」

 

俺は2人をまとめて抱きしめる。

 

「よく聞け!吉松を殺して生きても、それはもう俺じゃねぇし、あいつの代わりには生きられない!」

 

ここでやっと、2人が力尽きたのか、ぐったりとしだした。

 

「…お兄ちゃん…いやだよぉ…」

 

「いや…一護が死ぬのはいやだ…」

 

「…ありがとう、2人とも。でもな?俺は本当はもう、死んでるはずの人間だ。吉松に生かされたから、千束と再会できた。たきなと出会えた」

 

俺は2人の頬を撫でて、視線を合わせる。

 

「いいか、別れは必ず来る。俺だけじゃなくてみんなに等しく平等に。だがそれは今日じゃない。だろ?」

 

そう言って笑いかけていると、突然すごい突風が。

いきなりなんだ…しかもこの音、ヘリか!?

現れたヘリから顔を出したのは

 

「おーいお前ら、無事か!?ミズキがうるさいから早くしろ!これ風がすごいな。口と眼が乾くんだよ」

 

…締まらねぇな、クルミ。

まあいい、まだ全部は終わってないからな。

 

「さあ行くぞ、次は延空木だ」

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