君影草の俺が頑張る話   作:ネコ耳パーカー

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大きな街が静まり返る、この夕焼けが好きだ


I love this sunset, when the big city is quiet

「いつつ…」

 

「千束!大丈夫ですか!?」

 

エレベーター内。

たきなは足を撃たれた、千束の手当てをしていた。

 

「私は大丈夫。弾も抜けてるし。でも…」

 

そういう千束の視線の先には、エリカに手当てをされるサクラ。

明らかに千束より重傷だ。

 

「たきな。私は自分で出来るから、サクラをお願い」

 

「…エリカ、手伝う。そこ押えて」

 

「分かった。ガーゼは?」

 

「これ、使え」

 

そう言ってフキが、たきなたちに自分用のガーゼを渡す。

 

「ど…どんな感じ…っすか?結構…痛い…すね」

 

「ちょっと血が出てるが、問題ねぇよ」

 

震える声のサクラに、フキは空元気で答える。

 

「…あぶなかった〜…」

 

そう言って、サクラは気を失う。

 

「サクラ、こっち見て」

 

「っ!司令部!」

 

フキは怒鳴るように通信を行う。

そんな時、突然延空木が停電した。

 

 

電気が落ちた延空木、第二展望台。

俺と真島は、そこで向き合っていた。

 

「これでしばらく2人っきりだ。うぜぇハッカーどもも、電気がなけりゃ、何も出来ねぇだろ」

 

「野郎と2人っきりとか、ゲロ吐きそう。…で?何の用だよ?もう終わったろ」

 

「終わってねぇ」

 

そう言って真島はスマホを取りだして、何かを操作した。

その途端、液晶画面にカウンドダウンが映し出された。

 

「…今度は何?」

 

「この塔がここに立ってる残り時間」

 

「また爆弾かよ…好きだねぇ」

 

こいつら、何本へし折りゃ気が済むんだ。

全くいい加減にしてくれよ。

こちとら老い先短ぇんだよ。

 

「確かに俺の仕事は終わりだ。いくら隠蔽しようが、人々の疑念の種は残り、やがてお前らは終わりだ」

 

「ならもういいだろう」

 

「俺とお前のケリがついてねぇ」

 

何言ってやがるんだか。

 

「それももう終わった。俺たちが勝ったろ」

 

「お前たちがな」

 

…チッ、そういうことかよ。

要は、俺とサシでやりたいってことか。

面倒なことを…。

 

「お仲間抜き…ガハァ!?」

 

言い終わる前に、取り合えずマガジンに残ってる、非殺傷弾を撃ち込む。

グラリと真島の身体が倒れる。

これで終わり…。

そう思った瞬間、真島が走り出した。

 

「っ!?」

 

俺は慌ててリロードして銃を構えようとしたが、それより速く、真島に首と腕を掴まれて、身動き取れなくなってしまう。

こいつ…下に何か着てる…!?

 

「いい服じゃん…!高かったんじゃ…ねぇの…?」

 

「ヨシさんからの贈り物さ」

 

あの野郎…余計なマネを!

 

 

フキたちは、予備電源で降りるよう指示を受けた。

だがフキはそれに反発するように、上昇すると返事をする。

 

『フキ、命令だ』

 

「…真島は、どうするんですか?」

 

『現在、一護が交戦中だ。奴に任せるしかない』

 

「ですが一護は!?」

 

『二度は言わん』

 

そんな2人のやり取りを見て、たきなが立ち上がる。

 

「フキさん。二手に分かれましょう」

 

「っ!?ダメだ!命令だ!」

 

「以前と同じく、私の独断ということにしてください」

 

「たきな!だったら私も…いつっ!」

 

千束もついて行こうと立ち上がったが、撃たれた足が痛むのか、直ぐにまた座ってしまう。

 

「ダメです。その足ではいくら千束でも、足手まといです」

 

「お前たち!現場リーダーは私だ!」

 

「だから、あなたにお願いしています。今、一護を救えるのは私で、サクラを救えるのはあなたです」

 

少しの間、フキは黙り込んで。

 

「…一護を頼む」

 

そしてたきなは、非常階段を登りだした。

 

 

「こん…のぉ!」

 

「グッ!ガハァ!」

 

俺は足を踏みつけてから、膝蹴りで顎を蹴り上げる。

さらに頭突きをして、突き飛ばしてから、さらに1発撃ち込む。

 

「つぅ!」

 

そのまま撃ってくる真島の銃口を予想して、しゃがんで躱してから、腹を蹴る。

 

「「っ!」」

 

そのままお互いに撃ち合いながら、距離をとる。

 

「…お前は妹よりはいいが、あの黒いのよりは下手だな。よく狙え、足とかいいんじゃねぇか?」

 

「そりゃどうも!」

 

あいつ、柵の上を走ってきた!?

なんつーバランス感覚してやがる!

俺はそのまま撃つが、上手く当たらず、撃ち返される羽目に。

そのうちの数発が、俺を掠める。

 

「っ!クッソ!」

 

策を乗り越えてから、俺は空になった弾倉を、実弾にリロードする。

片耳削いでやる…!

乗り出してきた真島に目掛けて、一発撃ち込む。

 

「つぅ!?テメェ!実弾!?」

 

チッ、外したか。

俺はそのまま耳は諦めて、肩を撃ち抜く。

 

「ガァ!この!」

 

今何を…って!?

手榴弾はヤバいだろ!?

 

「おいおいおい!」

 

慌てて滑り落ちて、なんとやり過ごす。

うわぁ…ガラス割れそう…ってか割れてる。

 

「クハハハハ…」

 

にゃろう…逃がすか!

俺はやり過ごした爆風の中を、一気に走り抜けて、一気に飛び出す。

 

「何!?」

 

そのまま俺と真島は、同時に狙いを定める。

同時に放った銃弾は、俺の二の腕と、真島の耳を掠める。

なんとか柵に足をつき、展望台に戻る。

 

「ガァァァ!」

 

痛がる真島の声を聞きながら、俺は二の腕の痛みよりも、息苦しさに喘いでいた。

心臓が軋むような…嫌な感覚。

 

「クソが…この…ポンコツめ…!」

 

こんな時に…もっと踏ん張れよ…!

 

「クソッタレがァ…アァ?」

 

やべぇ…真島が、立ち直っ…え?

真島が俺ではなく、自販機を破壊した。

 

「…良くねぇ音だ…分かりにきぃけど」

 

そう言って、壊れた自販機から出てきジュースを俺に差し出してきた。

 

「休憩だ」

 

 

俺たちはガラスにもたれながら、小休止を挟んでいた。

 

「お前…何がしたいんだよ?」

 

「これだよ」

 

「いや、どれだよ?」

 

俺と呑気に一息つきたいってか?

だったら、店に来い。

コーヒーくらい振舞ってやる。

もちろん、激苦のやつ。

 

「命懸けの勝負。俺が唯一、恐怖と尊敬を抱いたヤツとのな」

 

「…尊敬?」

 

「お前は俺や妹の方とは違う。特別な特異体質はない。そんなお前が、俺とここまで張り合えるのは、お前がとんでもない鍛錬を積んできたからだろうが」

 

…確かにそうだけど。

千束を守るために、色んなことをしてきた。

もちろん、殺しだって。

それを真島に認められるのは、妙に癪だな。

 

「ていうかお前、殺さないんじゃなかったのかよ?死ぬかと思ったぞ」

 

「俺はあくまで殺さないようにしてるだけ。殺す覚悟も殺される覚悟も、しっかり持ってるつもりだ。千束ほど、ご大層な考えは持ってないよ」

 

肩を竦めながら、俺はゆっくりと息を吐く。

少しづつ楽になってきた。

 

「お前こそ、ここを壊したいんじゃないのか」

 

「それだけならとっくにやってるさ。調子悪いお前と殺りあってもつまらん」

 

「とりあえず時計止めろよ」

 

そう言うと、真島はスマホを確認してから、小さく笑う。

 

「そりゃダメだ。モザイク無しの現実を見せないとな」

 

そう言いながら、真島は缶ジュースを積み立てていく。

器用なことで…。

 

「なんだそれ」

 

「俺は秩序を守ってんだぜ?自然の秩序を破壊する、お前らからな」

 

自然の秩序ってなんだよ。

意味わかんねぇ。

 

「壊してるのはお前ら、テロリストだろ」

 

「そう。お前らが壊すから、俺らも壊す。バランスを取ってるだけだ。DAが消えれば、俺も消える」

 

そう言って、真島は自分が建てた缶ジュースの塔を、自分で壊した。

 

「何それ、渋々悪人やってるってのか?」

 

「悪者やってるつもりはねぇ。俺はいつも弱いものの味方だ。もしDAが劣勢なら、俺はお前らに味方するぜ」

 

はぁ…そういうことかよ。

俺は思わず深いため息をつく。

 

「お前も自分が正しいと思ってるのか。…本当の悪は映画の中だけか、やっぱ」

 

「だから映画は面白いんだろ?現実はいい人同士が殴り合う。それが、このクソッタレな世界の真実だ」

 

…それはそうなのかもな。

結局、人間っていうのは、自分のためにしか生きられない。

そのための生存競争こそが、人間の本質か。

俺は渡された缶ジュースを空けて、煽りながら呟く。

 

「…みんな自分が信じた良い事をして、どこかで他人とぶつかり合って、蹴り落として、落とされる。それが世界の現実か…。まあ、それで生きていけるんだから、それでいいだろ」

 

「良くねぇ。自然なバランスが…」

 

「おぉ!」

 

一口飲んで、その美味さに思わず大きな声が出る。

あ、悪いな真島。

 

「これめっちゃ美味い!ちょっと飲んでみ!」

 

「あ?あぁ…ちょっと甘すぎねぇか?」

 

苦いの苦手なやつがよく言うよ。

そう思いながら、俺はほくそ笑む。

 

「世界を好みの形にしてる間に、ジジイになっちまうぞっと」

 

俺は立ち上がって、夕焼けの街並みを見る。

…大きな街が静まり返る、この夕焼けが好きだ。

千束は朝の方がいいらしいが、どんな闇も包み込む夜の帳が好きだ。

それを照らすお月様も。

先生と千束が作ってくれた店。

コーヒーの香りに、あんこの匂い。

お客さん、街の人たち。

美味しい食べ物とか、綺麗な場所。

仲間、大切な妹。

そして…たきな。

 

「今のままでも、大切なものは沢山ある。世界がどうとか、知ったこっちゃねぇよ」

 

「小せぇな。テメェ、志はねぇのかよ?」

 

「俺は俺が大切に思う人たちが幸せなら、それでいい。まあ、必要としてくれる人には、出来るだけの事はしたいかな。そうすればその人の記憶の中に、俺が残り続けるかもしれねぇだろ?」

 

「で?その必要とする最後の依頼人が、俺ってわけか」

 

「そうだな。ホント最悪」

 

そう言って俺たちは、リロードし直す。

…さてと、そろそろ終わらせるか。

 

「日本のバランスを取り戻そうとする奴と、現状を維持する奴。正義の味方はどっちだ?」

 

「知らねぇし、どうでもいい。まあ…ここから落ちなかった方じゃねぇ?」

 

そして俺たちの、最後の殺し合いが始まった。

 

 

だいぶ暗くなってきた…そろそろマズイな。

俺は真島の行動を予想しながら、何とか間合いを詰める。

 

「どこ狙ってんだ?」

 

「うるせぇな!」

 

俺は真島に撃たせないように撃ちながら、何とか距離を詰める。

リロードした…今だ!

俺は一気に接近して、真島の懐に潜り込むと、そのまま耳元で発砲する。

 

「グゥゥゥゥ!」

 

苦しむ隙に、空になった弾倉で、思いっきり頬を殴り、さらに懐に手を伸ばしてスマホを奪おうとする。

 

「させ…るかよ!」

 

「ゲホォ!?」

 

しかしそれは襟首を掴まれてしまい、失敗する。

投げられながら、俺は非殺傷弾にリロードして、真島の追撃を躱すも、脇腹に一発弾が当たる。

 

「ガッ…!まだだ!」

 

足元に落ちたスマホ拾おうと、フェイントをかけながら走るが、それを読んだ真島が、スマホを蹴り飛ばす。

お互いその方向に走り、一発撃つ。

真島の弾は何とか躱して、俺の弾は真島の肩に当たる。

 

「「っ!ダァァァ!」」

 

お互い銃を持つ手首を掴み、至近距離から睨み合う。

 

「勝負に集中しろよ…!」

 

「止めろよ時計…!」

 

その時、真島がスマホを蹴り飛ばした。

にゃろう…!

俺は噛み付いて、直ぐにそれを追う。

だがその直後、真島に肩を撃ち抜かれた。

 

「ァァァァァア!」

 

「いつつ…お前にはガッカリだ」

 

勝手に言ってろ…!

ポンコツは一つで…十分なんだよ…!

そう思いながら伸ばした手は、スマホに届かず、そのまま柵の向こうに落ちてしまう。

 

「あ…グッ!」

 

「俺も残念だ。こんな形で終わるとは」

 

そう言って、真島が俺を踏みつけて銃を突きつけた瞬間、ドアが何者かに蹴り破られた音が聞こえた。

 

「一護!」

 

たきな…どうして…!?

だがそのおかげで、真島の気がそれた。

今だ!

俺は直ぐに仰向けになって、真島の襟首を掴むと、諸共柵の向こうに飛び込む。

この向こうは、真島の手榴弾のせいでボロボロだ。

 

「「グゥ!?」」

 

落ちた衝撃で、さらに崩壊が進む。

だが知ったものか…!

俺は下を見て、顔を青くする真島に、非殺傷弾を撃ち込む。

みるみる顔を青くさせる真島に、俺は小さく笑いかける。

覚悟はいいか…俺は出来てる。

そして、最後の一発が当たったのと同時に、完全に崩壊して、俺と真島は外に放りが出される。

 

「一護ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

…たきな…お前何して…?

たきなはまだガラスが残っている部分を走り、ワイヤーガンにワイヤーをつけて、俺に向かって撃つ。

そのまま俺をワイヤーで雁字搦めにしてから、自分の身体を支えに、何とか俺を支えた。

 

「うあぁ…ァァァァァァァァァァア!」

 

たきなの痛みに耐えるような声をかき消すように、突然花火が上がる。

…そういうことかよ。

 

「ちくしょう…。っざけやがって…」

 

この時の感情は、俺自身よく分からないくらい、ごちゃごちゃしていたのだった。

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