君影草の俺が頑張る話   作:ネコ耳パーカー

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リコリコにお任せ!


Leave it to LycoReco!

お兄ちゃんがいなくなってから、半年近くが経った。

 

「メリー!クリスマース!」

 

これまでみたいに、クリスマスを一緒に過ごしたかった。

美味しいケーキとチキンで、映画を夜更かしして見たかった。

 

「あけおめ〜!」

 

これまでみたいに、一緒に新年を祝いたかった。

着物を着て、神社に初詣に行って、おしるこを飲みたかった。

 

「ハッピーバレンタイン!」

 

これまでみたいにバレンタインに、チョコをあげたかった。

甘いチョコと苦いコーヒーで、一緒にゆっくり過ごしたかった。

 

「ありがとう!お兄ちゃん!」

 

これまでみたいにホワイトデーに、チョコを貰いたかった。

バレンタインの時みたいに、一緒にゆっくり過ごしたかった。

 

「…桜か」

 

これまでみたいに花見をしたかった。

お弁当を作って、みんなでお花見を…

 

「ぁぁぁぁぁぁあ!」

 

「ちょっ!?なになになに!?」

 

突然クルミが叫びながら、押し入れから出てきた。

 

「み、見つけた!見つけたぞ!」

 

クルミが手にするタブレットには、沙織さんのSNSが。

沙織さん、まだ続いてるんだ…って!?

 

「あぁ!?そ、その奥にいるのって…!?」

 

私が慌てて奥にいる釣竿を持った人物をズームすると、私によく似た色の髪色をした、男の子が。

 

「お兄ちゃん!?」

 

 

気付いた時には、既に手遅れだった。

私の初恋は、自覚と共に終わりを告げた。

 

「…一護…」

 

そっと唇を撫でる。

あの時から半年近くが経ったが、未だにあの感覚は忘れられない。

あれが最初で最後の、私のキス。

恐らくもう、一生しないだろう。

 

「…メリークリスマス」

 

千束や店長達と、クリスマスを祝った。

でもやっぱり、ポッカリ空いた穴は埋まらない。

 

「あけましておめでとうございます」

 

千束や店長達と共に、新年の初詣に行った。

でもやっぱり、ポッカリ空いた穴は埋まらない。

 

「はい、千束。ハッピーバレンタインです」

 

千束と共に、みんなへチョコを作って配った。

でも本当に受け取って欲しい人は、もういない。

 

「ありがとうございます、店長」

 

店長からホワイトデーのお返しを頂いた。

でも一番欲しい人からは、貰えない。

 

「…桜、ですね」

 

私が来たのも、ちょうどこの時期だ。

その時はいたあの人は、もういな…

 

「ぁぁぁぁぁぁあ!」

 

「ちょっ!?なになになに!?」

 

突然クルミが叫びながら、押し入れから出てきた。

その事に驚いた千束の声で、私もそこへ駆けつけた。

 

「どうしたんですか?」

 

「み、見つけた!見つけたぞ!」

 

そう言ってクルミは、私達にタブレットを突き出してきた。

これは…沙織さんだ。

まだ続いてるんだ…良かった。

 

「あぁ!?そ、その奥にいるのって…!?」

 

千束が何かに気付いたのか、奥にいた人物をズームした。

そこで私も、やっとそれに気が付いて、思わず声を上げた。

 

「一護!?」

 

 

一人の少年が、カフェの勤務の休憩中に、視線に気が付いた。

 

(…2人。尾行が上手いな。プロか)

 

スマホのインカメラで髪を確認するフリをして、後方を確認する。

木からはみ出た金色にも見える白髪と赤いリボンに、思わず顔を引き攣らせかける。

 

(落ち着け〜。こういうのは焦ったら負けだ。さてと…あいつとなると、もう一人も見当がつくな)

 

少年は何気ない動作でポッケに手を入れ、中に入っていたスモークグレネードのピンを抜き、ギリギリまで粘り、煙が出る直前に放り捨てた。

 

「「っ!?」」

 

後方にいた少女…千束が慌てて追いかける。

そして煙に突入した少女は、直ぐに足を取られてしまった。

 

「えっ!?」

 

(しまっ…!?足元!?)

 

身体を丸めて、彼女の進行方向を先読みして、用意していただけだ。

そのままコケる彼女から銃を奪い、同時にワイアーガンと猿轡で拘束した。

 

「じっとしてな」

 

そう言って少年は、数発撃った。

 

「っ!?千束!」

 

銃声を聞き、慌てて駆け寄るもう一人の尾行犯、たきな。

たきなが慌てて駆けつけた時には、千束周辺の煙幕はすっかり晴れており、転がらされた千束の姿に、困惑するたきな。

 

「んえ!んえ!」

 

意味不明なもがきを見せる千束に、困惑するたきな。

故に、木の上にいる少年に、全く気づいてないった。

 

「隙あり」

 

上から撃たれたたきなは、そのまま崩れる。

意識を失うことは無かったが、膝をついて動けなくなり、そのまま千束同様、ワイアーガンで拘束された。

 

「やれやれ…まだまだだな。お前ら」

 

そう言って2人を見下ろす少年。

その少年こそ…

 

「おふぃひゃん!」

 

「一護…!」

 

行方不明となっていた、錦木一護その人である。

 

 

「ほらよ」

 

「ありがとう」

 

「ありがとうございます」

 

拘束した2人を抱えて、今のバイト先に連れていく。

その場で解放して、俺は2人の飲み物を用意した。

 

「綺麗だろ」

 

2人とも海に見とれていたので、俺は声をかけることに。

もうすぐ夕焼けだ。

綺麗なグラデーションの海。

水平線に沈みそうになっている夕陽。

うん、綺麗だ。

 

「…で?どうしてここが?」

 

「…クルミが」

 

クルミ?

淡々と答えるたきなに、俺は首を傾げた。

 

「ネットもカメラもないここが、どうやってアイツにバレる?」

 

俺がそう尋ねると、今度は千束がスマホを見せてきた。

ん?

これは…沙織さんか。

 

「へぇ…まだ続いてたのか。…って、あぁ!?」

 

俺は思わず画面の一角をズームする。

そこには釣り道具を持った、俺の姿が写っていた。

 

「おいおい…あの人、次はエイリアンでも撮るんじゃねぇか?」

 

あの人ならやりかねん…。

てかそれ以前に…

 

「驚かねぇんだな。俺が生きてることに」

 

「元気そうでなにより」

 

「元気すぎでしょ、むしろ」

 

「じゃがしい。なんで生きてる?」

 

「その前に。どうして消えたのさ?」

 

どうしてもなにも…起きたら病室で一人だし、なんか手術痕があるし、めっちゃ痛いし。

こりゃ死ぬなぁって思ったから、終の住処を探して東奔西走。

 

「だからってどうして逃げるの!?」

 

「いや、動けるうちにいい終の住処を探そうと…ね。あと湿っぽいの嫌だし」

 

…あ、そもそも沈むな。

俺はこの時が一番好きだ。

…さてと。

 

「いい加減答えてもらおうか。なんで俺は生きてる?」

 

「…店長から預かってきました」

 

そう言ってたきなが、小さい箱をテーブルに置いた。

 

「あの後、店長が吉松のスーツケースを持ってきたんです。心臓と一緒に、それが入ってたそうです」

 

箱の中には小さい手紙が。

えぇっと…『HAPPY NEW BIRTHDAY』か。

チッ…吉松め。

随分と嫌味な手紙なことだ。

 

「…普通、入れないよな」

 

「普通、は」

 

そう、普通は。

だがアランは純粋すぎるくらい、純粋だ。

もしかしたら…有り得るかもしれない。

もしかしたら…先生が殺ったのかもしれない。

それも有り得そうな話だ。

だってあの人、足怪我してないし。

それを気付いてるのを、先生は気付いてるしたな。

 

「…ん?何か入ってる?」

 

箱を漁ると、中からアランのペンダントが入っていた。

…これはもういらない。

 

「おりゃ!」

 

そのまま俺は、それを海に投げ捨てる。

 

「…良かったんですか?」

 

「いいんだよ。俺はもう、アランには縛られたくない。生きるも死ぬも、俺の意思で決める」

 

しばらく海をじっと見ていると、千束が飛びついてきた。

 

「おっと。どうした?」

 

「…グスッ。…もう…離れ…ないで…。ヒッグ…。私達のそばに…ずっといて…」

 

泣きながら千束が懇願してくる。

…ああ、もちろんさ。

2度目の奇跡だ。

もう手放さない。

 

「ああ。ずっとそばにいるよ」

 

そう言って、千束を抱き締めて、頭を撫でてやる。

しばらくそうしていると、千束が俺から離れた。

 

「うひひ…!じゃあ次は、たきなの番!ほら、しっかりね」

 

何故かニヤケ面の千束は、たきなの背中を押して、そのまま立ち去る。

一体なんだ…?

 

「…一護」

 

「…なんだ?」

 

いかんな…2人きりだと、あの時のことが過ぎる。

 

「…私は、いわゆる世間知らずです。普通の人が知ってそうなことは、ほとんど知りません。普通の人が経験したそうなことは、ほとんど未経験です。だから…」

 

顔を赤くさせて、モジモジするたきな。

だが俯いていた顔を上げて、俺を見る。

その赤くなった頬と、潤んだ瞳に、俺は目を奪われた。

 

「この気持ちも初めてなんです。誰かを好きになったのは、初めてなんです」

 

…好き?

誰が…誰を好きだって?

 

 

 

「…一護。私は、貴方が好きです」

 

 

 

息が止まりかけた。

好き?

たきなが?

俺を?

色々ごちゃごちゃになってきたが、それでも身体は反射で動いていた。

 

 

 

「…俺も。たきなが好きだ」

 

 

 

気づけばそう返事していて、俺はたきなを抱き締めていた。

いつからかは自覚は無いが、あの雪の日には、自分の恋心を自覚した。

そのまま墓場まで持ってく気だったが、なんの幸運か、こうして再び生き長らえられた。

 

「っ!?いち…ご…」

 

「千束のために生きると決めたが…たまには俺のやりたいようにやっていいよな?」

 

胸元のたきなを覗き込むと、たきなはポカンとした後、嬉しそうに抱きついてきた。

 

「ええ。一護の思うように生きたらいいです。その一つがこれなのは、私も嬉しい限りです」

 

そして…どちらから、という訳でもなく。

俺達はそっとキスをした。

 

「…さてと、これからどうするかな?」

 

「自分の直感に従っては?」

 

俺の直感…そうだな…よし!

 

「さて、行くか。皆の元に」

 

「はい!」

 

俺達は手を握り、千束の元へ行く。

 

「お〜!おめでとう!2人とも!」

 

「サンキュ。そら、行くぞ!」

 

「行くってどこに?」

 

「ワイハが呼んでる!」

 

「「ワイハ…ハワイ!?」」

 

 

あっちぃ〜…!

ったく、いくらなんでもこんなところで…。

 

「カフェオレだ」

 

「はい。enjoy!」

 

「Are you ready order?」

 

「はぁい!カフェ·リコリコ!」

 

千束…日本語で出てどうする?

いや、ここは日本語通じやすいけど。

 

「お兄ちゃん!電話だよ!」

 

「俺?…はい、一護です」

 

『なんだ?死にかけてた割には元気じゃないか』

 

うげっ…虎杖のおっさん。

うぜぇヤツから電話来た。

 

『仕事の話だ。ミカに変われ』

 

「仕事〜?あぁ、無理無理」

 

『何?』

 

「だって俺達…今ハワイだから〜!」

 

そう、俺達は今、ハワイの海岸にいる。

キッチンカーを借りて、喫茶リコリコハワイ出張店を営業中なのだ。

 

『…パスポートはどうした?』

 

おや、珍しく唖然とした虎杖のおっさんの声。

この人が感情を出すのは、珍しいことだ。

 

「んな野暮なこと言いなさんな。あと、リリベルけしかけるなよ。そっちのもみ消しが効かなくても知らないからな」

 

そう言って電話を切る。

 

「誰ですか?」

 

たきなが俺に電話の主を尋ねてくる。

う〜ん…そうだな…

 

「俺のファン?」

 

「おっさんが?」

 

「冗談に決まっとろうが…」

 

このアホ妹、マジにしてないだろうな…?

顔色が青いぞ。

 

「あぁ…変な人だ、と」

 

「…フッ」

 

「先生。笑ってやるなよ。事実なんだし」

 

虎杖のおっさんは変なやつだ。

それは間違いない。

 

「千束ー。凍えたペンギン」

 

「おー!待ってました!」

 

という訳で、営業終了後。

 

「なぜ着替えたんですか?」

 

「これがワイハの迷彩服だろうよ」

 

「逆に目立つわ」

 

何故かアロハの衣装に着替えた千束を伴い、俺達は依頼者の元へ向かう。

 

「Hey!Are you in trouble?」

 

「アロ〜ハ〜」

 

ニッコニコの千束と、よく分からん髪飾りを着けたクルミ。

 

「…浮かれてんじゃねぇぞ、テメェら」

 

ですよね〜。

さて、こんな感じでハワイでも、俺達は俺達らしくやっていく。

仕方ないので、俺は依頼者に近付き、彼に手を差し伸べた。

 

「Leave it to LycoReco!」

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