俺たち…と言うより、千束とたきなは、そのまま沙保里さんちに泊まることに。
念の為、一緒にいた方がいいだろう。
「じゃあ親睦も兼ねて、パジャマパーティーなんてどうです?」
「いいわね!」
「やたー!たきな、私とお兄ちゃんは荷物持ってくるから、しばらくよろしくね。無茶はしないように、命大事にだからね」
「はぁ…。すみません、沙保里さん。うるさいヤツなので、遠慮なく叱ってやってください」
というわけで、俺たちはリコリコに帰ってきた。
「お兄ちゃん!私のお泊まりセットは!?」
「押し入れだわ!というか自分の荷物は把握しとけ!アホ!ついでに戦闘用意も忘れるなよ!」
戦闘用意も整え直した俺たちは、沙保里さんちへ急いでいた。
そしてその道中。
「…たきな!?」
「急ぐぞ!」
俺たちは慌ててたきなに駆け寄り、そのまま担ぎあげて、壁の裏に引きずり込む。
「何してんのー!?」
「尾行されてたので、誘き出しました。彼らが銃の所在を…」
「ちょーい!ちょいちょいちょい!沙保里さんは!?」
「車の中です」
「…はぁ!?護衛対象を囮にしたのか!?お前アホか!なんのための俺たちだ!」
思わず俺も叫んでしまう。
そもそもあんな末端共が、そんな情報を知ってるはずがないだろ!
「自分が守るべき対象を、自分から危険に晒す護衛がどこにいる!」
「彼らの目的はスマホのデータです!沙保里さんを殺す意図はないかと思います!」
「人質になるだろうが!そもそも銃撃戦の最中に、絶対に当たらない確証もねぇだろう!たとえ射撃に自信があっても、射線上に沙保里さんが出てきたらどうする!1度引いた引き金は、もう戻せないんだぞ!」
「2人とも!そこまで!今は喧嘩してる場合じゃないでしょ!」
千束が慌てて俺たちの間に入って、喧嘩を止める。
はぁ…仕方ない。
俺は銃を引き抜いて、安全装置を外した。
「…チッ。千束、やるぞ。たきな、お前はそこで見てろ、邪魔だから」
そう吐き捨ててから、俺は後ろを飛んでいたドローンを、オリジナルカスタムをした愛銃のRuger-57で撃ち抜いた。
「GO!」
俺の声に合わせて、千束が飛び出す。
ドアを盾にしていた男に対して
「やあ。取引したいんだけ…」
言い切る前に撃たれるも、ご自慢の眼で瞬時に見抜き躱す。
「…ど!」
ドアを蹴り飛ばして男を挟み、そのまま全弾掃射。
その隙に俺も飛び出して、バンに飛び乗り、屋根を滑って裏に行く。
「…よう」
「なっ!?テメェ…!?」
銃を向けられるより早く、俺は男の銃を回し蹴りで蹴り飛ばす。
そのまま回転を利用して後ろ蹴りで車にめり込ませて、思いっきり顎を振り抜く。
さてと、もう1人は千束が片付けたし、俺は運転席の怪我人でも手当するかね。
「千束、クリーナーに連絡しろ。あと沙保里さんも頼む」
「ほいほーい」
「…おう、生きてるか?」
「殺さないでくれ…」
うるせぇな、死なせないために手当してやるんだろうが。
「…命大事にって、敵もですか」
「ま、そこは千束に言え。俺は千束ルールに則ってるだけ…だっぶねぇな!」
俺は傷口縛った後、銃を引き抜き、最初に千束が無力化した敵の頭を撃つ。
そこから出る弾は…特注の非殺傷弾だ。
血しぶきの代わりに、先端に付けられたいるゴムが、粉々に散るその姿は、彼岸花が散るように見えるらしい。
「おい千束、ちゃんと確認しろって」
「ごめんごめん!連絡は済んだよー!」
「よし。たきな、今度こそきっちりやれ。また同じことしたら、お前に彼岸花咲かせるぞ」
「は、はい…」
俺は銃を回しながら、しまい直す。
そのまま荷物を預けて、その場を立ち去ったのだった。
■
「…ごめんね、たきな」
「何がですか?」
「お兄ちゃん、仕事にはすごく厳しい人だから」
夜、沙保里の家に泊まりに来ていた2人は、こっそりと寝室を抜け出して2人きりで話していた。
「…いえ、一護さんの言い分は何一つ間違っていません。護衛対象を囮に使うなんてダメだとは分かっていながら、私はそれをした。そのリスクを、完全に把握していた訳ではないのに」
たきなにはあの位置からなら、沙保里に当てずに全員射殺する自信はあった。
だが、沙保里自身の動きまでは、考えていなかった。
もし彼女が突然起き上がったら?
その時、たまたま射線上に顔を出していたら?
リコリスやリリベルには、殺人が許可されている。
だが、だからといって、罪もない一般人を撃っていいのか…答えは流石にNOだというのが、たきなの自論だ。
「…一護さんもフキさんも、何も間違ってはいない」
「そうね。でも殴るのはダメだよね〜」
呑気にいいながら、千束は空を見る。
「お兄ちゃんは現実主義者だからさ。私の命大事にをモットーとして掲げながら、それの厳しさを真剣に考えてくれる。だからこそ、こういう荒事には、かなり厳しい人なの」
「…私には命大事に、っていうがのよく分かりません」
「いつか分かるよ、たきなにも」
■
「…ったく、イチャついた写真を投稿するから、こんなことになるのよ」
翌日、千束のスマホに送られた画像を見ながら、ミズキが早速僻みだした。
「僻まない」
「僻みじゃないわよ!無自覚なSNSの投稿が余計なトラブルを招くって言ってんのよ!」
早口で捲したてるなよ…事実に見えるぞ。
…先生、老眼か?
「どこだ?」
「ここだよ、先生」
俺は画面をタップして拡大してあげる。
ここまでしてやっと分かったのか、渋い顔をして詳細を聞いてくる。
「…あの日か」
「3時間前だって」
「楠木さん、偽の情報掴まされてやんの〜」
千束が悪い顔をしながら、司令の楠木をバカにする。
あの澄まし顔の眉間に皺がよるのが、想像出来る。
「そういえば、その襲ってきた連中どうしたのよ?」
「クリーナーが持ってった」
「あんたら!またクリーナー使ったの!?高いのよ!?」
「DAに引き渡したら、殺されるだろ?それにあんな末端だ、情報も持ってないだろうし、殺され損だろ?あいつらが」
「いや殺されるのに、損得ないからね!?」
俺は別に千束のほど、命大事にって考える訳ではない。
銃を持ち、引き金を引く以上、いつどこで殺されても文句は言えない…それが俺たちのような裏稼業の人間だ。
要するに因果応報…それが俺の信条だ。
「とにかく!こいつらを追えば、たきなの復帰に近付くかもってこと!どう思う、たきな!」
「やります!」
おう、ものすごい食い気味で来たな、あいつ。
たきなの制服は千束の色違いだ。
髪型もツインテールにしており、全体的によく似合っている。
「うはぁ〜!可愛い〜!なになに!?●▲♂〒※仝〇ゞ▲▽」
…なんて言った、あいつ?
可愛いまでしか聞き取れなかったぞ、今。
まあいいか、あいつがおかしいのはいつもの事だ。
「可愛いじゃん、たきな」
「っ!?…ありがとうございます」
…うん?
なんで顔を赤くさせる?
不思議に思ってると、千束とミズキに呆れられた。
「お兄ちゃん…」
「あんたって本当に…はぁ」
「いや、だからなんだよ」
店長まで、なんだよその顔。
不思議にそう思っていると、突然千束に引っ張られた。
「よし!写真を撮ろう!先生もミズキも!もっと寄って!」
千束が早速写真を投稿したところで、来客を告げるベルがなる。
金髪のナイスミドルだ。
「やあ、ミカ」
「っ!?」
にこやかに挨拶をする客と、息を呑む先生。
先生の知り合いか?
「ほらたきな、お客さんだよ!練習通り!」
「「「いらっしゃいませ!」」」
これにて一話は終了です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。