「千束、明日は俺は別行動だから、自力でどうにかしろよ!」
「はーい」
「分かってねぇな…」
もう知らん。
俺はそう思って、さっさと自分の布団に入る。
さてと…明日はしんどいぞ。
■
「zzz…やっばぁ!寝過ごした!」
お兄ちゃんどうして起こしてくれないの!?
っていうか、お兄ちゃんいないし!?
「えぇっと…これと、これ!」
私は走りながらスマホを確認する。
よく見ると、2件のメールと3件の着信が。
…全部お兄ちゃんだ。
そういえば、別行動だって言ってたっけ。
「うぉぉぉぉぉぉぉ!」
唸れ、私の健脚よ!
全力疾走で、お店に着いた私は、そのまま店内に飛び込んだ。
「おまたせ〜!千束が来ましたー!お、ヨシさん!」
お店に着くと、1か月ぶりにヨシさんに会った。
たきなの初めてお客さんだから、よく覚えてる。
ロシアのお土産を貰って、ヨシさんが帰ったところで
「千束」
先生からいつもの銃を渡される。
私はマガジンに弾を込めながら、状況を確認する。
「どんくらい急ぎ?」
「現在、武装集団に追われている」
お〜…それは大変だ。
「たきな、仕事の話もう聞いている?」
「はい、一通り」
「OK!そう!昨日話してたブツ、そこに置いてあるから、帰りに持って帰ってね♪」
ブツとは、私セレクトのおすすめ映画だ。
映画鑑賞が趣味な私は、少し古い映画をよく見る。
ちなみに私は映画にはお菓子が必須で、お兄ちゃんはあればつまむって感じ。
「ミズキとお兄ちゃんは?」
「ミズキは逃走経路の確保に動いている。一護はその補佐だ」
「ミズキ張り切ってるね〜、めずらし」
「報酬は相場の3倍、一括前払いだ」
道理でやる気を出すわけだ…。
よし、準備完了!
「危機的状況だ。5人から10人、プロよりのアマ、ライフルも確認した。気をつけろ」
「了解!行こうたきな」
道中移動で電車を使ったから、駅弁買ったのに、すぐに降りることに。
「だから説明したじゃないですか」
えへへ…聞いてなかった。
たきなが仕方なさそうに、これからの説明をしてくれる。
この先の駐車場で、今回の護衛対象のハッカー、ウォールナットと接触。
車で移動して、途中車を変えて羽田まで目指す。
「マジ!?ハイハイハイ!千束が運転します!」
「私が運転します」
「え〜!?たきな、車運転できんのかよ〜!?」
「…出来なきゃリコリスになれないでしょう」
そう呆れられながら着いた駐車場に止まっていたのは、赤いスーパーカー。
思わずフェンスにしがみついて、大興奮する私。
「スーパーカーじゃん!すげーすげー!やっぱり私が運転するー!」
「目立ちますね…」
何言ってんの!
その目立つスーパーカーでガンアクション…まさに映画じゃん!
ジェ〇ソン・ステ〇サムじゃん!
そんな大興奮の私の耳に入る、エンジン音。
「ん?」
振り向いた時、隣の公園から白い軽自動車が飛び出してきた。
なになになんで公園から!?
運転席に座る、犬の着ぐるみを着た人物が、私たちに向かって
『ウォール!』
「ナット」
「え?え?」
何それ、今の合言葉?
すげーダサい。
『早く乗れ!追っ手が来るぞ!』
というか待って、スーパーカーは!?
「私スーパーカーがいい〜!」
■
白い軽自動車に乗り込んだ千束たちは、そのまま車に揺られていた。
車内では何故か演歌が流れていた。
「なんで守られる側が、颯爽と車で現れるのよ。普通逆でしょ」
未だにスーパーカーがいいとごねる千束と、冷静に目立たない方がいいというたきな。
『予定と違ってすまない。ウォールナットだ』
「はいはい、千束です。こっちはたきな」
やる気がなくなったような、ダルそうな声で自己紹介をする千束。
「なんか、イメージしてたハッカーさんとは、違いますね」
『底意地の悪そうな痩せたメガネ小僧とでも?だったら映画の見すぎだよ』
そのイメージは当初千束が描いていた、ハッカーのイメージそのものだ。
思わず顔が引きつる千束と、呆れるたきな。
「ほらやっぱり」
「いやいや、だからといって、着ぐるみじゃないでしょ」
『ハッカーは顔を隠した方が長生きできるってだけさ。JKの殺し屋の方が異常だよ、リコリス』
「熊のハッカーよりは合理的ですよ」
「たきな、犬だよ」
『リスだ』
「「…」」
リス…これが?
と言った顔で、思わず黙り込む2人。
それを知ってか知らずか、ウォールナットは話を続けた。
『どう合理的なんだ?』
「つまり、日本で1番警戒されない姿だってことですよ」
『…JKの制服は、都会の迷彩服ってことか』
そこでたきなが、ずっと気にはなっていたものに、目をつけた。
「この大きいのなんです?」
『僕のすべて。荷物は身軽な方がいいだろう?』
「いや今のあんたの姿が、身軽じゃないんですけどね!?」
そうツッコミを入れた千束は、何気ない動作で後ろを確認する。
「でもいいな〜…私も海外行ってみた〜い」
『…一緒に行くかい?』
「私たち戸籍がないから、パスポート取れないんですよ」
『…そうか』
ほんの少しの寂しさを乗せた千束の声に、こちらも寂しさを乗せた返事をしたウォールナット。
だが2人は尾行の確認に気を取られていて、その事に気付いていなかった。
「…来ませんね」
「来ないね〜。このまま行くの?」
「いえ、1度車を変えます。ウォールナットさん、ここに向かってください」
『…承知した』
しかしその車は高速を使わず、下道を走り続けてしまう。
「あれ?高速を使うのでは?」
『どうした?』
「いや、それはこっちのセリフだけど」
ウォールナットが恐る恐るハンドルを手放すと、そのハンドルが勝手に動いていた。
その事に冷静にウォールナットが呟いた。
『…車を乗っ取られたか』
「…えぇぇぇぇぇ!?ちょっとちょっと!」
身を乗り出した千束だが、急加速の反動で、後ろに転がり戻される。
『ロボ太か、腕を上げたな』
「ぐぉ!?どこ向かってるの…!?」
『加速してる。…このまま海に落とす気か』
「回線の切断を!」
『いや、直ぐにロボ太に上書きされる。物理的にネットを切るしかないが、これは僕の車じゃない。ルーターの場所が分からない』
車内でどうするか話し合っていると、たきなが車の後ろに、ドローンが着いてきていることに気づく。
「いや〜…あれは自信ないわ。そっちはたきなに任せた」
方針が固まったところで、反撃に出る。
『制御を取り戻すぞ。3,2,1…』
制御を取り戻した瞬間、千束がガラスにヒビを入れて、たきなが体当たりで割る。
その勢いのまま身を乗り出して、ドローンを撃ち落とした。
そして…何とか車を止めることに成功したのだった。
というわけで、2話スタートです。
そして2話の構成上、いきなり一護と千束のハモりが出せなかった…。
それでは失礼します。
ありがとうございました。