らしいです。
それではよろしくお願いします。
「というわけで、閉店ボドゲ会スタート!」
リコリコ恒例行事が、今日も始まった。
常連客を交えて、閉店後のボードゲーム大会をするのが、このお店のあるあるなのだ。
「たきな、お前も行ってきたら?」
「一護さんは行かないんですか?」
「まだ在庫整理がな」
甘味の材料を始め、意外に重いものが多い、リコリコの在庫は結構な重労働だ。
そのため、主に俺や店長の仕事になっているのだ。
「混ざってきたらどうだ?」
ほら、先生にだってそう言われてる。
だがたきなは頑なで
「そうすればDAに戻れますか?」
そう言い残して、そのまま更衣室に入ってしまう。
そこへ千束が来るも、あえなく撃沈。
そこへ、先生が止めに入った。
「千束、健康診断と体力測定は済んだのか?」
「あ〜…いや…」
「…おい、お前さ。あれだけ行けって言ってるよな?」
俺はクルミが来た翌々日に、早めに終わらせた。
リリベルの本部は日本武道館の地下にあり、特別なパスを使い、入れるようになっている。
「だって、お兄ちゃんと違って、すごく遠いんだもん。あんな山奥まで行くのダルいし」
「知らん。ライセンス更新に必要だろうが。仕事を続けたいなら行ってこい」
「そこは先生お願い!先生のお願いなら聞いてくれるでしょう、楠木さん」
通るわけないだろ、このおバカ。
俺は千束を軽く小突く。
全く何を言って…
「司令に会うんですか?」
「うぉぉ!?バカ、服ぅ!」
俺と先生は、何も見てませんアピール。
「…たきな、黒って意外だったね」
「は?水色じゃん?イメージどお…あ」
「見てんじゃねぇか!この変態兄貴!」
「ドボロォ!?」
ナイスキックだぜ…マイシスター。
あと…そのお子様パンツはいい加減…卒業だな」
「私のパンツまで見てんじゃねぇ!あとたまたま!」
「グボロォ!」
俺も…たまたまだ。
俺はそう言うことも出来ずに、もがき苦しむ羽目に。
「私も連れていってください」
「…仕方ないな。分かったよたきな。ほらお兄ちゃん!早く起きて着替えて!明日は付き添いよろしく!」
「…いい加減1人で行けよな、と言えない事情もあるから悲しい」
いつどこで狙われるか分からない千束だし、こいつ…あれが苦手だから、俺がいないとダメなんだよな…仕方ない。
■
翌日、土砂降りの雨の中、富士山の近くまで来た俺たち。
そのまま駅から車に乗り、厳重なゲートをくぐり抜け、ついに到着したリコリス関東本部。
「錦木千束さんは体力測定と健康診断ですので、医療棟へ。錦木一護さんは付き添いですね。それとこちらを。井ノ上さんはどうなさいますか?」
「司令に会いたいのですが」
「分かりました。少々お待ちください。…2時間後になりますが、よろしいですか?」
「待ちます」
その時だった。
「ねぇ、あの子でしょ。味方殺しの」
「DAから追い出されたんでしょ?」
「組んだ子、みんな病院送りにするんだって、恐ろしい」
…あーやだやだ。
ねちっこいったらありゃしない。
これがリリベルなら、真っ向から喧嘩になって、最終的には銃が出てくるんだよなぁ…。
まあ、誰も俺に喧嘩を売ろうとはしないけど。
「なんだぁ、あいつら…」
「千束、ステイ」
「…私、訓練所に行ってますから」
「「ちょ、たきな!」」
俺が千束を抑えてる間に、たきなが走り去ってしまう。
やれやれ…どうしたものか。
って、これは一体?
俺は渡された手紙を見ると、どうやら再検査が必要な項目があったらしい。
「あ〜…ここでやってもいいんですか?」
「はい。そう通知が来ておりますので」
「なになに?どうしたの?」
「再検査だって」
というわけで、俺も検査する羽目に。
とはいえ簡単な血液検査だけで、直ぐに終わった。
「…暇だなぁ」
俺がぼんやりと千束を待っていると、1人の女の子が話しかけてきた。
「あの…?」
「うん?」
「たきなと一緒にいましたよね?」
「…たきなの知り合いか?」
明るい茶髪を、前髪パッツンにした女の子。
一体誰だ…?
「私、蛇ノ目エリカと言います。実はあの時…人質にされていまして…」
…ああ、人質になっていたリコリスって言うのは、この子なのか。
「なあ、あの時何があったんだ?」
これまでのたきなを見る限り、独断で動くタイプには見えない。
おそらく、そうせざるを得なかった理由があるはずだ。
それがこの子の人質か…。
「あの時、通信障害があって…」
「通信障害…!?」
リコリスやリリベルの作戦には、全てのインフラの優先権を持つ、DAが誇る最強AIによって管理されている。
それがラジアータ。
そのラジアータで、モニターされている作戦中に通信障害…そんなこと、起こるはずない。
「つまりアイツは、トカゲの尻尾切りにあったってことか」
やれやれ、これは復帰は絶望的だな。
なんせ組織のメンツを守るための左遷だ。
それをそう簡単に覆すことは、組織は絶対にしないだろう。
「君はどうして、俺に声をかけたの?」
「私は…」
「…まあ、無理強いはしないけど、俺たちは明日もあるか分からない立場だ。それを忘れるなよ」
そう言って俺はたきなの元へ移動していたら、その道中千束とフキに会った。
「おー!お兄ちゃん!」
「千束、終わったか。…フキ、久しぶりだな」
「あぁ、久しぶりだな、一護」
フキとは、千束を介して知り合った。
というか、フキには千束のことで、色々謝らなくちゃならんことが、沢山ある。
「フキ、長い間悪いな。こいつ、色々あれだろ?」
「あぁ、色々あれだよ。こいつは」
「うぉぉい!あれってなんだよ!」
「「あれはあれだろ」」
「んがー!」
いや獣か、こいつは。
俺たちは叫ぶ千束を無視しながら、何気なく射撃場に向かう。
というか千束はともかく、フキまでこっちに用なのか?
「フキもたきなに用なのか?」
「違ぇよ。サクラ…たきなの後任だよ」
ふーん、そうなんか。
そう思いながら歩いていると、射撃場前で意外な人物と出会った。
「…相変わらず過保護のようだな、一護」
「どーもー、楠木さん。お久しゅう」
ここの司令の楠木さんだ。
特に話がある訳では無いので、そのまま挨拶だけして射撃場に入ると、刈り上げた小生意気なセカンドリコリスが、たきなに絡んでいた。
■
「誰だあれ?」
「あれがたきなの後任、乙女サクラだ」
ふーん…ちゃんぽらんそうだな、あいつ。
くだらないと思いながら見ていると、ズンズンと千束が近づいていく。
「だぁまれ、小僧」
「千束、落ち着け」
「…誰っすかあんたら?」
そりゃそうなるわな。
「そいつらが千束と一護…錦木兄妹だ」
「あ、フキせんぱーい!おっと、司令まで。…これが電波塔ツインズ」
「「これって言うな」」
「いや、ただのアホとその保護者だ」
「あぁん!?」
事実だから、何も言わない。
俺は苦笑いしていると、たきなが割り込んできて、楠木さんの縋るように言う。
「司令!銃取引の新しい証拠を提出しました!これでDAに復帰出来ませんか!?」
たきな…残念だが、それは叶わない。
なぜならこの人事は、組織のメンツを保つ為のもの。
「復帰?そんなこと言った覚えは無いが」
楠木さんの一言に、失意のどん底に落ちるたきな。
気の毒だが、確かに戻すとは一言も言っていない。
理不尽な人事ではあるが、それを戻れるとは言ってないのに、戻ろうとするのは自分勝手というものだろう。
残酷だが、それが現実だ。
「まぁだ、わかんないんすか〜?…あんたの居場所はねぇんだよ!」
…うるせぇクソガキだな…おい。
黙らしたろか、あいつ。
その時、立ち去ろうとするフキの袖を、無意識に掴むたきな。
その手を一瞬だけ痛ましそうに見たフキだが、その気持ちを掴まれた手ごと振り払って言い放った。
「殴られただけじゃ、わかんねぇようだな。ならハッキリ言ってやる。…お前はもう、必要ないんだよ!」
「やめろフキ!」
ついに我慢の限界だったのか、千束がフキの襟首を掴みあげて、食ってかかる。
「てめぇもまだ分かんねぇのか?だったら今から模擬戦でぶちのめしてやるよ」
「おーおー、いいじゃん!たきな、やろうやろう!」
「おいお前ら、ちょっと落ち着けって」
どんどんヒートアップしていく2人を、何とか宥めようとしたが、見事に鎮火失敗。
しかし無駄に煽るバカのせいか、たきなが走り去ってしまった。
「たきな!?」
慌てて追いかける千束を見送り、俺は、楠木さんに一言言い切った。
「ま、あいつは俺たちが育てますよ。俺たちが」
「いやいや、逃げる奴らに何を育てられるんだよ!」
「…はぁ…最近のリコリスは、口だけは達者だな」
「…あぁ?」
「サクラ!やめろ。…相手が悪すぎる」
ペラペラうるさいサクラを、フキが止める。
「いやいや先輩、こんな弱そうなやつ、今からでも…」
「今からでも…なんだ?」
そろそろおいたが過ぎるぞ、お嬢ちゃん。
俺の放つ殺気に、それ以上口が聞けなくなったのか、顔を真っ青にして震え上がるサクラ。
「控えなさい、一護。ここはお前の場では無い」
…まあ、ここで揉め事を起こすと、後で虎杖のおっさんから、ネチネチウザそうだしな。
俺は殺気を引っ込めて、直ぐに千束たちの後を追いかけたのだった。
■
「…っ!ハァー…ハァー…」
「ったく、このバカ、相手を見て喧嘩を売れ」
大量の脂汗を浮かべて肩で息をするサクラを、呆れたように呟くフキだが、そのフキも僅かばかり震えていた。
「なんなんすか…あいつ…!?」
「あれが錦木一護…最凶だ」
そう呟く楠木は、難しい顔で虚空を睨むのだった。
それでは失礼します。
ありがとうございました。