千束たちを探していると、デカい噴水の前に、2人を見つけた。
「千束、たきな」
「お兄ちゃん。フキたちは?」
「とりあえずうるさいバカは、黙らせてきた」
そう言うと、うへぇとでもいいたげな顔で、俺を見る千束。
それを無視して俺は、たきなと目線を合わせる。
「たきな。今は次に進む時だ。壊れたからこそ、平和の象徴と呼ばれる旧電波塔みたいによ、失ったからこそ得られるものもある」
「そうだよ。たきながあの時ああしなかったら、私たちは出会えなかったんだよ?ん?」
俺たちが話していると、奥の方からコソコソと、リコリスの話し声が聞こえる。
…やれやれ、最近の奴らは本当に、口だけだな。
「…千束」
「お兄ちゃん。…ぃよいしょ!」
「ひゃ!?」
千束がたきなを抱き上げて、俺がさらにそれを抱き上げる。
「私たちは君に出会えて嬉しい!嬉しい!嬉しい!ね、お兄ちゃん!」
「ああ、俺もたきなと出会えて嬉しいぞ」
「わ、分かりました!?分かりましたから!」
そっと下ろしてから、俺たちは口を開いた。
「誰かの期待に答えるために悲しくなるなんて、つまんないって!」
「居場所ならある。まずはお店や店のみんなとの時間を、試してみな」
「それでもここがいいなら、戻ってくればいい」
「遅くない。まだ途中だ。チャンスは必ず来る。その時、やりたいことを選べばいい」
「…私の…やりたいこと…」
今はまだ分からないだろう。
でもそれでいい、いいんだたきな。
だってお前は…まだ踏み出したばかりなんだから。
「そ!私はいつも、やりたいこと最優先!ま、それで失敗することもあるけどね」
「その尻拭いはマジ大変」
「それはホントにマジでごめん」
「ほんとに篭ってる?謝罪の念」
「2人とも、なぜ韻を踏んでるんですか?」
「「We’re 錦木シビリングス!アァイ!」」
「もういいです」
さてとおふざけはここまでにして。
「今はたきなに酷いこと言ったあいつらをぶっとばしたいので!ちょっと行ってきますよ」
「俺も見に行こうかな、面白そうだし。たきな」
「…なんですか?」
「…最後の最後、本当に迷った時は、事をシンプルにして、自分の直感に従え。一番最初に思ったことに、従ってみな。存外、何とかなるもんだぜ?」
■
俺は楠木さんたちと一緒の部屋で、試合を観戦することに。
「あれ〜?これで全員でしたっけ?誰か足りないような?」
「作戦だ作戦!エースの体力を温存してるの!」
「あいつは任務以外で、戦えるような奴じゃない」
「人を見る目がないねぇ?よくそんなのでファーストやってるね」
「ハッ!お前こそその制服は飾りか?ゴムしか撃てねぇ腰抜け」
「…んだとぉテメェ、どこ中だコラァ!」
「アァン?頭ん中までゴムになったのかぁ?電波塔の麓でいっそ茶ぁでも入れてろよぉ」
…おい、楠木さん。
おたくらは、どんな教育してんだよ。
まだリリベルの喧嘩の方が、品があるぞ。
…いやごめん、嘘ついた。
俺ら口より先に、拳が出るわ。
『双方、実戦だと思ってやるように。それでは…始め!』
千束とフキが同時に駆け出して、撃ち合いを始める。
千束はご自慢の眼でフキの弾丸を交わしながら、接近して銃を撃つ。
だが長い付き合いのフキも、千束対策は当然している。
すぐに距離を取ると、正面を向いたまま、背中を向けて千束を正確に狙う。
「…へぇ」
「おぉ、やるなぁ、フキ」
そのまま千束はドアを蹴り破り、フキを追いかける。
その途中で見張っていたサクラが出てくるが…あぁ、それじゃ当たんねぇよ。
筋はいいんだがな。
一気に接近され、腕を掴まれて銃を突きつけられるサクラ。
はい、1回死亡。
「ほう、なかなか」
「なめやがって…!」
強引に振り払って、千束に狙いを定める。
あぁ、そんなに近くで腕伸ばしたら…ほらすぐにまた拘束されて、銃を奪われた。
「「もう、2回死んでるよ」」
その直後壁の角から、フキが乱射してサクラを助ける。
流石だなフキ、冷静で戦い方も熟知している。
「なんなんすかあいつ…!なめやがって!」
「待ってんだろ。そういうやつだ」
■
千束さんと一護さんの声が、頭の中に響く。
私の心と、2人の思いがぶつかって、よく分からなくなってきた。
その時だった。
ーー本当に迷った時は、事をシンプルにして、自分の直感に従え。
自分の直感は?
私は…どうしたいんだ?
私は…私は…!
気付けば私は、走り出していた。
■
千束に対して、闇雲に撃ってもまず当たらない。
サクラのように、射撃に自信があるやつなら尚更だ。
「忘れ物ですよ〜」
そう言って千束は、サクラの銃を滑らせる。
その態度に腹を立てたサクラは、直ぐに銃を拾って、弾が無くなるまで撃ち続けた。
しかしその銃弾は全て躱され、逆に蹴り飛ばされるサクラ。
「サクラ!っ!?」
滑りながら千束が牽制にフキの動きを封じた隙に、千束がサクラ戦闘不能にさせた。
その背後を、フキが撃とうとした時
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
「っ!?グハァ!」
たきながその後ろから、フキを殴り飛ばして、前受け身を取りながら銃を抜いて、フキの頭に1発命中させて、さらに弱点を全て撃ち抜いた。
「…これが千束ですか。一体どういう魔術?」
「…あいつは服の動きや筋肉の微細な動きで相手の射撃タイミングと、射線を瞬時に見抜く天才」
「まあそれ以外は、ただのちゃらんぽらんだけど」
そう呟きながら見ていると、何故か千束とフキが、こっちを見上げていた。
「おい!一護!降りてこい!」
「…は?」
「お兄ちゃん!久しぶりにやろう!」
…おいおい、それは色々マズイんじゃ?
俺はそっと視線で確認すると、一言。
「…模擬戦ならいいだろう」
「…仕方ねぇ」
あの二人が相手なら、俺も本気でやらないと勝てない。
そう思いながら俺は、準備を始めたのだった。
■
「…たきな、弾置いてって、全部」
「え?あ、はい」
「サクラ、お前もだ。あと2人は上で見てろ」
「え?2人でやるんすか?」
千束とフキは、それぞれのパートナーに、弾だけ置いて、立ち去るように言う。
その事に驚くたきなとサクラだが、それには見向きもせず、装備の確認をしていた。
「相手がお兄ちゃんだからね。2人はまだ追いつけないよ」
「そういうこった。特にお前はあれだけビビらされたんだ、徹底的にへし折られるぞ」
ファーストリコリスは総じて、化け物揃いだ。
フキはおろか、その中でも特に規格外の千束すら、強い警戒心を抱いている事実に、たきなとサクラは何も言えずそのまま立ち去った。
それから数分後、一護が現れる。
「よ、弾ちょうだい」
「ほらよ」
フキが自分とサクラの分の弾を投げ渡し、千束から弾を分けてもらう。
「さてと…始めるか」
ふらりと木箱の隣に立ち、のんびりと構える一護に、2人は警戒しながら身構える。
「…司令、2人はなぜあれほどに?」
「見ていれば分かる。それでは…始め!」
楠木の合図に、先手を取ったのは一護。
最小限の動きで千束へ早撃ち。
それと同時に木箱を蹴り飛ばして、接近するフキを牽制する。
「チッ」
「っ!フキどいて!」
「あぁ!?」
しまった…誘導された!
千束とフキはお互いがぶつかるように誘導されたと気付き、焦りを抱く。
「こん…のぉ!」
だが千束の眼はそれすら避ける。
フキの背中を支えに、背中合わせで一回転しながら、一護に銃を構えようとした時、千束は目を見開いた。
「…しまった…!」
「ばーか」
そしてその動きは、全て一護に読まれていた。
いくら千束でも、回転中の身体では、弾を躱す事は出来ない。
このまま撃たれるか…まさにその時
「っ!?チッ!」
一護が撃とうとしていた動きを止めて、身体を捻った。
その直後、銃声が響く。
フキが千束の支えになりながら、引き金を引いたのだ。
「やるなぁ、フキ!」
「舐めてんじゃねぇぞ、一護!」
「私もいるんだけど!」
一護は逃げながら、フキと千束に数発撃ち込み、牽制する。
その後ろを撃ちながら追いかける2人。
曲がり角という曲がり角を曲がり続け、途中設置されている障害物を盾にしながら、逃げ続ける一護。
「…そろそろ仕掛けるか」
俺は曲がった先に見つけた土嚢を、ちょうどあったドアに思いっきり投げつけてから、物陰に隠れる。
「…そっちだ!」
よしよし、千束が出てきたな。
ドアまで来た千束が土嚢に気付き、直ぐに振り向いた。
残念、俺は反対側なんだよな。
俺は一撃、千束の頭にインク弾を撃ち込んだ。
「…あ」
「千束!?クソ!」
狙いが雑だぜ、フキ。
俺は直ぐに移動して、木箱を足場に壁を飛び越える。
「逃がすかよ!」
「来させねぇよ」
俺は空中で、ドアに向かって数発撃ち込む。
出ようとしていたフキは、直ぐに足を止めて影に隠れる。
俺はその隙にリロードして、一気に接近した。
「バァ!」
「な!?速いやつだな!相変わらず!」
フキは悪態つきながら俺に銃を向けるが、俺は直ぐにその銃を、銃で殴りつける。
「グッ!…クソ!」
直ぐにゴムナイフを抜いて襲ってくるが、俺も千束の撃ち方を真似て、銃を撃つ。
直ぐにフキに距離を取られて、弾切れになる。
リロードしようとした瞬間、好機と見たのか、フキが斬りかかってくる。
…ばーか、予想済みだっつーの。
俺は直ぐに銃を手放して、ゴムナイフを引き抜く。
「なっ!?」
「そらそら、ボサっとするなよ!」
ナイフ裁きはほぼ同等、間合いと力は俺が上、速さはフキが上だ。
だから俺は、ナイフで戦う最中に、ナイフをわざと手放した。
「…え?」
「隙あり」
やったことは簡単…猫騙しだ。
ただし、状況としてはかなり刺さるはずだ。
そして…驚きのあまり動けないフキに対して、俺は銃を拾ってその頭を撃ち抜いた。
■
「…今のは…なんですか?」
たきなの呆然とした呟きは、全員の感想だった。
そんな中、楠木だけは冷静に解説を始めた。
「一護は豊富な実戦経験や過酷な修練、そして類まれなる観察眼から、相手の動きを予測し、それらを使い自分の都合のいいように、相手を誘導するのを得意としている」
千束が一手先の未来を予測できるとするなら、一護は数手先の未来を望む形へ誘導する。
「どちらも規格外の怪物だが…それ以外は、生意気なクソガキどもだ」
■
「ぬぁ〜!く〜や〜し〜い〜!」
「お前は奇想天外な動きをするが、慣れてくると読みやすいんだよ。アホだから。たきなもよく見とけ。そうすればこいつの手網を握りやすくなるぞ」
「アホって何!?」
帰りの電車、負けたことをずっと悔しがる千束を、俺はヘラヘラ笑いながらからかう。
「全く…どっちもどっちですよ。2人とも非常識です、千束と一護は」
おいおい、俺まで巻き込むなよ。
とはいえ…
「でもさ、スカってしたでしょ?」
「…ええ、スカってしました」
それは何より。
…おや、スマホが鳴った。
「…おいお前ら、ボドゲ会、延長戦中だって」
何故にコロンビアしてるんだ、クルミ?
ただあの小さい身体で、コロンビアしてるのを想像すると、笑えてくる。
「よし!2人とも寄って!」
「OK。たきな、もっとこっち!」
「は、はい!」
「いくよー!はいチーズ!」
ーー3人で行くぜ!byちさと
千束が眼がいいなら、一護も眼をよくしてやれ!
というノリで、一護も千束とは違う意味で眼がいいということにしました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。