「いいとこって…ここですか?」
「いい所でしょ?ここ!」
俺たちが来たのは、千束行きつけの水族館。
「よく来るんですか?」
「年パス〜!気に入ったらたきなもどうぞ!」
俺も千束もよく来るため、年パスを持っている。
…まあどちらかというと、千束に連れ回されるから、俺も持っているのだが。
というわけで、水族館を見て回ることに。
「どしたの?」
「これ魚なんですって」
「マジか…ウオなのか…」
「この姿になった、合理的理由があるんでしょうか?」
「ご、合理的…?」
「理由?」
「何かあるでしょう」
タツノオトシゴに、生態系の神秘を感じて。
「これも魚ですか…何してるんですか、千束」
「何って、チンアナゴだけど」
「おい、頭おかしいヤツだと思われるからやめろ。いや、おかしいか」
「んだとぉ!?最近妹に冷たくないか!」
「2人とも、目立ちますよ!私たちはリコリスとリリベルなんですから」
「「制服来てない時は、リコリス/リリベルではありませ〜ん」」
「…腹立ちますね、あなたたち」
チンアナゴを見て、なぜかたきなに苛立たれたり。
まああっちこっち色々見て、それなりに楽しんでいた時だ。
「千束、一護。あの弾はいつから使ってるんです?」
…これまた突然だな。
驚きながら、俺はたきなの横顔を見る。
「…なぁに、急に?」
「旧電波塔の時は?」
「その時作ってもらったのよ。ちなみにお兄ちゃんはそれからしばらくして、リコリコに来たからその後かな」
「何か理由があるんですか?」
「なぁに、私たちに興味あるの?」
「タツノオトシゴ以上には」
「チンアナゴより?」
「茶化すならもういいです」
茶化しすぎた千束がたきなに謝ってから、口を開いた。
「気分が良くない。誰かの時間を奪うのは気分が良くない。それだけだよ」
「…気分?」
悪人にそんな気持ちにさせられるのは、もっと気分が良くない。
だから死なない範囲でぶっ飛ばす。
「…一護は?」
「俺はそうだな…」
チラリと千束を見て、俺は千束の頭を優しく撫でる。
気持ちよさそうにする千束を、俺は見つめながら
「可愛い妹に、誇れる兄貴でありたいから…かな」
「…ふふ」
たきなが、突然笑いだした。
おいおい、いきなりなんだよ。
「もっと博愛的な理由かと…2人は謎だらけです」
「Mysterious siblings!そっか〜!そんな魅力もあったか私たち!」
「まあそんな難しい理由じゃねぇよ。俺たちは…」
「したいこと、最優先」
お、なんだよ覚えてるじゃん。
まあ俺も、千束のことは言えないってこと。
「DAを出たのも?」
「「え?」」
あ〜…そっちか〜…。
そこを言われると、ちょっと答えにくいな〜。
さてさて、どうしたものか。
「…会いたい人がいるんだ。私にとって、すごく大切な人。お兄ちゃんを救ってくれた人」
「一護を?」
…そう、千束が外にいる理由は、俺だ。
そして俺が外にいる理由は、千束だ。
俺が服の下から取りだしたのは、普段首に下げている、木彫りのフクロウのネックレス。
「…これ、知ってるだろ」
それは、アラン機関のシンボルだ。
■
アラン機関とは、才ある者に支援を送る、謎の組織。
実際個人が集団か、そこすら不明。
最近では金メダリストがアランの支援を受けたもの…通称アランチルドレンであるという、ニュースが話題になっている。
「なんの才能があるんです?」
「ふっ…わからな〜い?」
千束が壁に貼ってあった、グラビアポスターのポーズをとる。
「…ハンッ!」
「てめぇ鼻で笑ったな!このバカ兄貴!」
「そもそも千束ではないですし、千束だったとしても、それじゃないのは分かります」
冷静なたきなの一言に、ついにダウンする千束。
やれやれ、このバカ妹は。
というか、シンボルは俺のものなのに、どうして千束が自慢げにポージングする?
「まあ実際、俺の才能なんてわかんねぇしな」
「そうですよね…。それで?どうして千束が探していて、一護が探していないんですか?」
「…まあ、事情があるのさ。少なくても、俺はアラン機関には感謝の念はない。それと…俺は決して、人の善意で救われたわけじゃない」
「お兄ちゃん…?」
ここから先は、千束にも話していない…俺と先生だけが知る話だ。だからこれ以上、話す内容はない。
「…それで?10年探しても見つからないんですか?」
「もう見つからないかもね…」
気まずさを感じたのか、たきなが強引に話を変えたがそれも失敗。
少しだけ寂しそうな顔をする千束を見て、突然たきなが立ち上がって、通路に出る。
「…さかな〜!」
…おおっと、なんだあれ。
クッソ可愛いな、おい。
「お〜!さかなか〜!チンアナゴ〜!」
この時俺は、過去最速でスマホを取りだして、動画撮影した。
全人類よ、俺の偉業を讃えよ。
それをリコリコの公式アカウントに上げてから、俺は立ち上がって3人分のゴミを捨てる。
「ほら、次はお兄ちゃんだよ!」
「期待してますよ、一護」
「やらねぇよ。ほら行くぞ。ペンギン、見に行くんだろ」
「「っ!ペンギン♪」」
アランの支援を受けたものには、使命が与えられる。
俺の使命はなんなのか?
知ろうとも思わない俺は、今この時を楽しむのだった。
■
帰り道、駅前に来た俺たちは、険しい顔でその光景を見ていた。
封鎖された駅。
その周囲を紛れるように待機するのは
「リコリス…」
「妙に多いですね」
サードリコリスだ。
基本ツーマンセルのこいつらにしては、確かに相当多い。
駅で一体何が…?
そう思っていると、突然駅から爆発音と、大量の土煙が吹き出た。
「何かあったんでしょうか…!」
「たきな、どこに行く気だ。今銃を取り出したら、警察に捕まるぞ」
「制服来てない時はリコリスじゃないって、言ったでしょう?それに戦利品と多いし、今日は帰ろ?」
向かおうとするたきなを、俺と千束で止める。
渋々と言った感じで、言うことを聞いたたきなを連れて、俺たちはリコリコに帰った。
回送電車が脱線したと、事故に処理されたことを知ったのは、帰ってすぐだった。
■
「はい捨てまーす。捨てまーす。これも捨てまーす。捨てまー…」
ーーこれ、開放的でいいんですけどね…。
私はたきなの履いていたトランクスを捨てながら、たきなの感想を思い出していた。
私たち兄妹は家事を役割分担していて、料理はお兄ちゃん、掃除は分担、洗濯は私になっている。
というのも、服にもちゃんとそれにあった洗い方があるのだが、お兄ちゃんはあまり気にしない。
後、兄に下着を洗われるのは恥ずかしい。
だから私が一手に引き受けている。
そのため、お兄ちゃんのトランクスを洗う機会もかなり多く、実は前から気になっていたのだ。
「…」
私は周囲を確認して、自分のパンツを脱いで、そのトランクスに履き替えた。
…ほう、この開放感は確かに…!
「これはいい…」
「千束、いつまで…」
ミズキ…なぜ今開けた。
あまりにも間が悪すぎではないか、お主。
「いや…これは…」
「キャアァァァァァァァァア!変態ぃぃぃぃぃぃぃ!」
いや、変態扱いするな!
というか、裸締めやめろ…苦しい…!
「あんたとうとう男の家帰り!?もしくは兄妹の禁断の恋!?あんたらヤッたわね!一護!来なさい!」
「んだよ、ミズキ。騒がしいぞ」
「何してるんですか?」
たきな!
そう、たきなのだから!
「たきなの!たきなのパンツなの!」
ミズキは鋭い眼光でたきなを見ると、私を解放して、ズンズンとたきなに近づき、なんの躊躇いもなくスカートを捲りあげた。
「「っ!?」」
驚くたきなと、慌てて顔を背けるお兄ちゃん。
…おい、お兄ちゃん…まさか見たな?
「…可愛いじゃねぇか」
「それを昨日、買いに行ったんだよ〜!」
ミズキがそんな私の言葉を無視して、お店に出ると
「皆さ〜ん!この店に裏切り者が〜!」
「ちょぉぉぉぉぉぉぉい!何して…!」
「はい御開帳」
ギャーー!
ミズキに拘束されて、スカートを捲り上げられる。
本当に勘弁して〜!
■
「…えぇっと…」
「…見ましたか」
相当顔を赤くさせたたきなに睨まれて、俺は何も言えずに、ただ顔を背ける。
そうか…あういうのを選んだのか。
「その…可愛かったぞ?」
「っ!か、感想はいりません!」
「グボロォ!?」
たきな…いい蹴りだ…。
千束が扇風機でスカートを捲られる中、俺は裏でみぞおちを蹴り飛ばされ、悶絶するのだった。
さて、ここまで読んだ皆様、少し疑問に思ったでしょう?
その答えは次にあります。
それでは失礼します。
ありがとうございました。