一夏のくせになまいきだ   作:シシカバブP

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第10話 代表決定戦~全試合終了後~

代表決定戦の第3試合は前の試合同様、短期間で決着した。それというのも

 

「いやぁ、オルコットさん、激おこだったねぇ」

 

「そりゃあねぇ、あんな事の後だもん」

 

開幕からレーザーライフルで織斑を撃ち続け、近付かれる前にSEを空にして完封したのである。しかも執拗に頭狙い(ヘッドショット)胸狙い(ハートショット)を仕掛けて。

どう見ても、「男が女の装甲外を狙うのは卑怯」と抜かした織斑に対する意趣返しである。

しかもセシリアの顔が、試合終了までただただ虚無だったのが、余計に彼女の怒りを物語っていた。

 

「正直さぁ、ちょっと織斑君には幻滅しちゃったかなぁ」

 

そう言った女子生徒──相川清香に、周りの視線が集まる。

 

「最初は女性に優しい人だなぁって思ってたんだけど、今日のを見ちゃったらさぁ……」

 

「う~ん……『女は守るべきもの』って言ってたけど、単純な優しさから言ってるのか、私達女を自分より下に見てるのか分かんなくなるよね……」

 

「ナミママはどう思う?」

 

清香に話を振られた美波は、そうだねぇと考える素振りを見せると

 

「織斑君は、1世紀ぐらい生まれるのが遅かったんだと思うな―」

 

「い、1世紀?」

 

「うん。第2次大戦より前に生まれていれば、男尊女卑が世界の常識だっただろうから、真意はどうあれ『男は女を守って当然』って考えで全く問題なかったんだと思うんだー」

 

「それって、今の時代では異端だと?」

 

「そう思うよー。翔ちゃんは比較的男女平等って考えだけど、それでも今の時世だと良く思われないこともあるから―」

 

「「「「……」」」」

 

美波の感想に、1組の面々は黙り込むしかなかった……

 

 

ーside美波ー

 

「翔ちゃん、お疲れさまー」

 

「ああ……」

 

第2試合の後、翔ちゃんはすぐに寮に戻っていたらしい。

私が寮の部屋に戻ると、翔ちゃんはベッドに座り、組んだ手の上に頭を載せていた。これは今までの経験から、かなり自己嫌悪に陥ってるなー。

 

「ホント、自分ではもっと自制できると思ってたんだけどなぁ……」

 

「うん」

 

頷きながら、翔ちゃんの隣に座る。

 

「この外史とは別の話だってのも、分かってるつもりなんだ……」

 

「うん」

 

「それでも……大尉や雪蓮の矜持が、献身が全て否定されたような気がして……」

 

「うん」

 

翔ちゃんの頭をポンポン撫ぜる。いつも私にやってくれる、『元気出せ』というサイン。

しばらくそうしていると、翔ちゃんが顔を上げた。うん、切り替えられたっぽいねー。

 

「とりあえず食堂にいこー。観戦中に飲んでたシュワシュワ(炭酸飲料)がお腹の中から無くなって、ペコペコなんだよー」

 

「観戦中にシュワシュワって……ビール片手に野球観戦してたおっさんみたいなこと言うなよ」

 

うんうん、ツッコミが出来るぐらい元気になったねー。

 

 

――コンコン

 

 

「ん~? どちらさまー?」

 

「わたくしですわ」

 

「ありゃ、セシリアちゃんー?」

 

ドアを開けると、ほんのり湯気の上がったセシリアちゃんがいた。

シャワー浴びたんだろうねー。今日の試合でいっぱい汗かいただろうしー。

 

「北山さん、この度はお礼を申し上げたく参上しましたわ」

 

「お礼? いったい何の?」

 

「わたくし……いえ、わたくしを含めた女性操縦者の誇りを守って下さったことについてですわ」

 

おおー。何か話が大きくなってきたぞー。

 

「あの時、織斑さんの言葉に貴方が怒りを向けてくださったこと、『女に本気で戦う価値はない』という主張を否定してくださったことで、わたくし達女性操縦者の誇りは守られました」

 

「そんな影響力、あの行動には無いと思うんだが……」

 

「いいえ、男性操縦者である織斑さんの主張を、"同じ男性操縦者"である北山さんが否定されることに意味があるのです」

 

「同じ男なら、か」

 

ごめんねーセシリアちゃん、たぶん翔ちゃんが否定してもダメだと思うんだー。言い方が悪いけど、織斑君って『自分の正義、自分の理想』の中だけで生きてるっぽいからねー……

もしかしたら「翔は間違ってる!なのにみんな翔のことを肯定する!みんな騙されてるんだ!俺がみんなを助けないと!」とか言い出す日が来たり……しそうだなー……

 

「それと、ですね……実はお願いがありまして……」

 

「お願い?」

 

 

 

 

「その……わたくしのことを『セシリア』と、よ、よよ、呼んでいただきたいのです……」

 

 

 

 

「え?」

 

翔ちゃんにセシリアルートの確変キタ━(゚∀゚)━!

 

「その代わりと言ってはなんですが、北山さんのことを『翔さん』とお呼びしても、よ、よろしいでしょうか……?」

 

「あ、ああ、構わない」

 

「そ、それでは……これからもよろしくお願いします……翔さん」

 

「分かった……セシリア」

 

「はいっ!」

 

初々しい、初々しいぞ2人とも―! ていうか翔ちゃんが初々しいのはダメでは?

別の外史でも、女の子にアプローチ受けてたでしょー。ACのオペレーター(フィオナちゃん)とかー、剣仙の孫娘(アネラスちゃん)とかー。

 

「それではっ、明日またお会いしましょう!」

 

そう言って、セシリアちゃんはルンルンで帰っていった。

 

「……翔ちゃんってさー」

 

「なんだよ……」

 

「もしかしてちょろインー?」

 

「止めてくれ美波、その言葉は俺に効く」

 

ーside美波 outー

 

 

ーsideセシリアー

 

わたくしにとって、男性には悪い印象しかありませんでした。

 

オルコット家の発展に尽力し、常に堂々としていた母と比較して、婿養子として入ってきた引け目からか、あまり前に立つことのなかった父。

ISが登場し、女尊男卑の風潮が強まると、両親の関係はさらに悪化していきました。

その頃からでしょうか。父の瞳に、卑屈さが混ざるようになったのは……。

 

その後両親が列車事故で亡くなると、わたくしの周りには、親族という名の汚らわしい方々がオルコット家の遺産を狙って群がってきました。

そんな方々から両親の遺産を守るために、わたくしは努力と勉強を重ね、ISの代表候補生という後ろ盾を得たのです。

 

そして代表候補生としてIS学園に入学した時、わたくしが出会ったのは2人の男性操縦者でした。

織斑一夏さんと北山翔さん。どちらも昨今の女尊男卑に染まらず、自分の意志を持った方達でした。

けれど、お二人には決定的に違うものがありました。

 

北山さんは、わたくしを『セシリア・オルコット』として見ておりました。

わたくしの強さも、努力も、誇りも。全てをご存知のようで、その上で全力を尽くして戦ってくださいました。……自分と『対等の相手』として。

 

織斑さんは、わたくしを『女』として見ておりました。

『女は守るべきもの』と言えば聞こえはいいですが、そこに、わたくしが血の滲むような努力の末に得た強さは、代表候補生としての、オルコット家としての誇りがあったのでしょうか――

 

だからこそ、わたくしは北山さんを……しょ、翔さんのことを……。

 

(あ~!やってしまいましたわ~!)

 

「セシリア~、いい加減うざいから寝てくんない? そんなベッドの上でエビみたいに飛び跳ねてないで」

 

ルームメイトの如月さんが何か言っていますが、今のわたくしには聞こえませんわー!

 

「……ねぇセシリア」

 

「何ですの?」

 

 

「北山君に告白でもした?」

 

「ごっふっ!!」

 

 

如月さんってば、なんてことをおっしゃるんですの!? しゅ、淑女にあるまじき声が出てしまったではないですか!!

 

「で、どうなの?」

 

「べ、別に、告白だなんてそんな……」

 

「ふーん……」

 

如月さんは寝袋から出てくると(原因はわたくしの私物が多くてベッドが置けないからなのですが……今度いくつか本国に戻しましょうか)、わたくしの肩を掴むと

 

「で、何したの?」

 

「い、いえ、別に……」

 

「な・に・し・た・の?」

 

満面の笑みで問いかけて来ないでください、怖いですわ。

 

「別に……下の名前で呼ばせていただいただけで……」

 

「ほぉ~それで?」

 

「それと翔さんにも、せ、セシリアと呼んでほしいと……」

 

「……よし。セシリア、赤飯炊こう」

 

はいぃ!? 赤飯ってあの赤いライスのことですわよね!? しかも今から炊くんですの!? どうしてですの!? WHY JAPANESE PEOPLE!?

 

「大丈夫、飯盒でおこわを炊いたことはある。たぶん赤飯もいけるはず」

 

「全然安心できませんわー!」

 

――結局、寮長の織斑先生から「こちとら残業で疲れてるんだ、さっさと寝ろ!」と寝かし付け(鉄拳制裁)を受けてしまいましたわ……痛い……

 

 

ーsideセシリア outー

 




・操縦者としての誇りを守る:
セシリア→翔の好感度up(大)


原作でも出番があまり無いどころか、アニメ版は未登場な如月さんに御出座いただきました。もしかしたら原作より喋ってるのでは?
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