一夏のくせになまいきだ   作:シシカバブP

13 / 37
本作の一夏の頭の中では
(A:一夏、B:千冬、C:世界、D:翔)

「俺は千冬姉みたいに(強く)なるんだ!」(A=B)
        ↓
「千冬姉は(俺の中で)絶対の存在、世界そのものなんだ!」(B=C)
        ↓
「俺の『女は守るもの』って考えは世界の考え、当然のことなんだ!」(A=C)
        ↓
「だから俺の考えを否定する翔は世界の、みんなの思いを踏みにじる卑怯者だ!」(D≠A→D≠C)

みたいなとんでも理論が展開されています。



第11話 代表就任~そしてパーティへ~

代表決定戦翌日のSHR。教壇には千冬が立っていた。

 

「さて、代表決定戦の結果、北山とオルコットが1勝1分けで同率となったわけだが「織斑先生」ん?なんだ?」

 

手を挙げていたセシリアが、席から立ち上がる。

 

「わたくしセシリア・オルコットは、クラス代表を辞退いたします」

 

「ほう?なぜだ?」

 

「『クラス代表はISの実力がトップの人間がなるべき』、あの時わたくしはそう言いました。であれば、訓練機でありながらあれだけの実力を発揮した翔さんが代表になるべきだと思います」

 

「なるほど……」

 

千冬は少し考え込む格好をしたが、すぐに

 

「オルコットはこう言っているが、北山から反対意見はあるか?」

 

「いいえ。どこまでやれるかは分かりませんが、引き受けようと思います」

 

「そうか……では、クラス代表は北山とする!」

 

――パチパチパチ!

 

クラスメイトからの拍手により、1年1組のクラス代表は翔に決まった。

もちろん拍手した者の中に、織斑は含まれていない。

むしろ、昨日あれだけ暴言を吐いたにも拘らず平然と出席している織斑に、女子生徒たちは逆に問題追及するタイミングを失ってしまっていた。千冬も指摘しないところを見ると、大事にしたくないのだろう。

 

 

「ところでさ、さっきオルコットさん、北山君のこと『翔さん』って呼んでなかった?」

 

「そういえば……」

 

クラスメイト達の視線がセシリアに向いた。

 

「え……あの……」

 

視線に耐えられなくなったのか、顔を真っ赤にして髪を弄り始めたセシリアを見た面々は察した。

 

 

((((セシリアさんマジちょろイン!))))

 

 

そうしてSHRが終わるかと思われたが、

 

「ああそうだ。北山、昨日の試合結果に対して、お前にも専用機が手配されることになった。午後は公休にしてやるから受け取りに行くように」

 

「「「「北山君の専用機ぃ!?」」」」

 

最後に、千冬が特大の爆弾を落としていった――

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

――IS学園、整備室に続く廊下

 

ーside翔ー

 

専用機が手配されるらしい。

いや、もうすでに持ってるし。複数持ってても同時展開とかできないから、持ち腐らすの確定だし。

しかしあの試合の後ねぇ……織斑千冬(ブリュンヒルデ)の弟ってネームバリューばっか見てた連中が、俺の方が有用なデータを取れると踏んで手のひら返して来たか。

 

とりあえず、受取先である整備室に移動しているわけだが――

 

「翔ちゃんの専用機、どんなのだろうねー」

 

さも当然のごとく、美波も隣を付いてきていた。

おかしいな……午後の授業を抜ける形で教室を出て来たのに、どうして全員、美波が一緒に出て行ったのに当然のように見送ったよ?

 

 

 

そんな疑問が頭の中をぐるぐる回ってるうちに、整備室に着いてしまった。

 

「お待ちしてました」

 

部屋の中には、黒髪ロングで眼鏡をかけたスーツ姿の女性がいた。

 

「私、北山翔さんの専用機の開発を委託されました、スター・ラビット・カンパニー(SRC)の担当でございます」

 

「SRC?」

 

困った。失礼な話だが、知らない社名だ。

そう思っていると、担当さんも苦笑して

 

「ご存じないのも仕方ありません。我が社は最近になってIS事業に参入した、いわゆる新興企業となりますので」

 

「顔に出てましたか。申し訳ありません」

 

しかしそんな新興企業が、専用機を作れるんだろうか? 実際それに乗る身としては、少々じゃないくらい心配なんだが……

 

「御心配には及びません。なぜなら――」

 

そう言って、担当さんは肩にかけていたバッグからリモコンのようなものを取り出して、ボタンを押した。

すると、まるで映像にノイズが入ったかのように担当さんの姿が一瞬歪み――

 

 

「へーーーい!! ショウママ、ナミママ、会いたかったよ~~~!!」

 

 

担当さん――もとい、束さんに美波ごと抱きしめられていた。

 

「た、束さん!?」

 

「おー束ちゃん、久しぶりー」

 

「2人に会いたくて、ホロで変装して来ちゃった!……くんかくんか」

 

おいばかやめろ。

 

「そ、それで、SRCっていうのは……」

 

いい加減ハグから抜け出すと、束さんは「もうちょっと~」みたいな顔をしていたが

 

「束さんが新しく作った会社です!(ドンッ)」

 

「会社作っちゃったのー?」

 

「うん。もともと隠れ蓑兼資金調達のために建てたんだ。束さんが表に出なくていい様に、人材とか手続き(ハッキング)とか色々準備してね。で、そこでショウママに専用機をって話を聞きつけて……」

 

「参入したと?」

 

「ピンポ~ン♪ こうやって専用機を手配した体にすれば、2人に渡してある専用機を気兼ねなく使えるでしょ?」

 

確かに、入学時から持っている専用機は、出処の関係でまったく使えないでいた。それが解消されるわけか。仮に問いただされても『SRCって企業から貸与されたものです』で言い逃れできるもんな。

 

「あ……でもそれだと、美波の専用機はどうします? 俺の専用機を手配したって名目なんですよね?」

 

「え~、私もこの子を使ってあげたかったのになー」

 

「だいじょーぶ!」

 

束さんはバッグの中をゴソゴソ探し始めると、中身の入ったクリアファイルを渡してきた。

 

「これをちーちゃんに渡せば問題ないよ」

 

「ちーちゃん……織斑先生にですか?」

 

「うん。ショウママの専用機を渡したよーって書類と、ナミママにも専用機作ったよーって書類」

 

「おおー、やったぜー」

 

美波、嬉しいのは分かったからコロンビアはやめろ。

 

「さて……名残惜しいけど、監視カメラのハッキングがバレる前に、束さんは退散するよ」

 

あ、やっぱりそうですか。ホログラムの変装を解いたから、何となく予感はしてましたが。

束さんがまたホログラム発生装置(リモコンもどき)のボタンを押すと

 

「それでは、今後とも当社とよしなに」

 

黒髪スーツの女性がお辞儀をしていた。

 

 

 

教室に戻った後(授業の途中だった)、束さんに持たされたクリアファイルを織斑先生に渡すと、中の書類を見た先生は

 

「なんだこれはぁぁぁぁ!」

 

と、腹部を押さえながら叫んでいた。ストレスの多い(手のかかる弟がいる)職場だからね。仕方ないね。

書類の内容はというと『双子での対比検証もしたいから、妹の方にも専用機渡すね』的なことが書いてあったそうな。

 

ちなみに、織斑先生の胃は授業終了までは持ちこたえた。その後SHRを山田先生に任せると、保健室へ薬をもらいに教室を出て行ったが……

 

ーside翔 outー

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

――その日の夜、学生寮内の食堂

 

「それでは、北山君のクラス代表就任を祝して、かんぱーいっ!!」

 

「「「「かんぱーいっ!」」」」

 

 

食堂の一画で、1組有志が企画した「北山翔 クラス代表就任記念パーティ」が開かれた。

もちろんそれが主目的であるが、クラス内の親睦会も兼用の催しである。

幸い、1組には女尊男卑主義者はおらず、欠席者は織斑と箒だけである。

 

テーブルには購買で買ってきたお菓子やジュースの入った紙コップが置かれ、立食形式で皆思い思いに談笑していた。

するとそこへ

 

「新聞部でーす! 話題の男性操縦者を取材に来ましたー!」

 

1人の女子生徒が乱入して来た。

 

「私、新聞部副部長の黛薫子(まゆずみ かおるこ)よ、はいこれ」

 

と言って、翔に名刺を渡す。

 

「あれ? もう1人男性操縦者がいるって聞いてたんだけど」

 

「ええっと……」

 

織斑のことを聞かれ、皆が言い淀むが

 

「織斑君は欠席なんですよー。急な計画だったから都合がつかなかったみたいでー」

 

「あ、そうなんだ」

 

美波のファインプレーに、何人かがサムズアップした。

実際、今朝計画されたパーティだから急だったのは事実な上、『都合がつかなかった()()()』と断定はしていないので、嘘は言っていない。

 

「では北山君、クラス代表となった感想を一言!!」

 

「そうですねぇ……クラス対抗戦も含め、自分が『為すべきこと』をしますよ」

 

「おっ、何かぐっとくるフレーズ入れて来たね!」

 

翔に向けて突き出していたボイスレコーダーを引っ込めると、今度はセシリアに向けて

 

「それじゃあ次にオルコットさん、北山君と同じ勝率だったのに、クラス代表を辞退した理由について!!」

 

「翔さんは代表候補生であるわたくしと引き分けましたわ。その実力、そして将来性を加味した結果、翔さんがクラス代表に相応しいと思ったのですわ」

 

「う~ん、固い、固いなぁ。もうちょっと読者を引き付ける部分が欲しいなぁ」

 

薫子は頭を掻くと

 

「いいや、『北山君に惚れたから』って捏造しておこう」

 

 

ボンッ!

 

 

「惚れた……とか、そんな……その……」

 

真っ赤な顔を両手で押さえるセシリアが誕生した。

 

 

「え?マジで?――北山君!」

 

再度翔にボイスレコーダーを向ける薫子。

 

「オルコットさんに対して一言!!」

 

「いや、一言って……」

 

「いいから!」

 

翔の後ろでは、美波が「いけー翔ちゃーん!ナデポだナデポー!」とヤジを飛ばしている。

 

「これじゃあ公開処刑じゃねぇかよ……だぁもう!」

 

観念したのか、翔はセシリアの前に立った。

セシリアの方も、両手で覆っていた顔を上げる。

 

「セシリア……」

 

((((ドキドキ……!))))

 

 

 

「ごめん」

 

 

 

「えっ……」

 

「「「「ええっ!?」」」」

 

セシリアの目からハイライトが消えかける。

 

 

 

「セシリアが俺に好意を向けてくれてることは理解してるつもりだし、嬉しい。それは間違いない」

 

「……」

 

「でもな、俺にとってセシリアは、互いに切磋琢磨する相手なんだよ。戦友、が一番しっくりくるか」

 

「戦、友……」

 

「だから……まだ俺は、セシリアを異性として見ることはできない」

 

それは、自分の想いが定まらないうちに半端な返事をしたくない、翔なりのけじめだった。

 

 

 

「……翔さんは先ほど、"まだ"とおっしゃいました。ならばわたくし、諦めませんわ」

 

「セシリア……」

 

 

 

「これはわたくしと翔さんの真剣勝負! 想い敗れるその時まで、全力を持って翔さんを振り向かせて見せますわ!」

 

 

 

「……はははは!」

 

突然翔が笑い出したかと思うと、セシリアに向かって右手を差し出した。

 

「分かった。ならこれから教えてくれ。セシリア、お前のことを」

 

「ええ、承りましたわ」

 

セシリアも右手を出して、握手を交わす。

 

 

「「「「セシリア、頑張ってー!!」」」」「ちょろインだと思ってごめーん」

 

「これはすごいスクープよ!明日の一面間違いなしよっ!」

 

 

クラスメイトから祝福(一部違うものが混ざっているが)を受けて、自分が公衆の面前で翔に(ほぼ)告白した事に今更気付いたセシリアは、また顔を真っ赤にすると、手で顔を覆って蹲ってしまうのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

――同時刻、学生寮1025号室

 

自分のベッドに座りながら、織斑は頭を抱えていた。

 

「なんでだ俺が正しいはずだ男が女を守るのは当然のはずだなのにどうして翔の言葉をみんな肯定して俺を否定するんだおかしいじゃないか絶対おかしいだろ」

 

織斑は自分の世界に篭ってしまった。

 

彼にとって、"守る"というのは特別な意味を持っていた。

かつて自身が異国の地で誘拐された時、ISを纏って駆け付けた姉の姿を見て、"誰かを守ること"に憧れを抱いた。

そして幼なじみを助けた過去の経験から、『女=守るもの』という元々彼の中にあった構図が、さらに強固なものになったのである。

それだけであれば、ただの『正義感の強い人』だけで済んだのだが、彼の考えには問題があった。

 

彼からすれば、女は全て守るべき、守られるべき対象であり、そこに一切の例外はない。例えその女が自らを守る術を持っていても、例え自力でどうにかしようと考えていても。

相手の能力や思いを顧みない、見方によっては行き過ぎたお節介、大きなお世話とも言える行為。"相手にとって本当に必要かどうか"、その線引きが出来ないという重大な問題。

さらに『意思を曲げない強さ』という、本来美徳とも思える織斑の特性が、問題を致命的なものに変えてしまう。

 

「そうだ翔に負けたからだあいつに負けたからみんなあいつに騙されてるんだもっと力を手に入れなきゃ力を手に入れて俺が正しいと証明するんだそうすればみんな目を覚ますはずだ」

 

意思を曲げない。言い換えればそれは、自分が変わることが出来ないということ。だから織斑は周囲を、他者を変えることしかできないし、思考が及ばない。

例えそれが誰からも賛同されない力を持って、誰も求めていない行為であったとしても――

 

 

 

「一夏……」

 

そんな織斑を箒は心配そうな、そして不安な顔で見続けるしか出来なかった……

 




・想い敗れるまで諦めない:
翔→セシリアの好感度up(中)



これにて、セシリアは正式に一夏ハーレムから離脱となりました。

それでは皆様、よろしければご唱和ください。


「一夏に!ハーレムは!おとずれなぁい!!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。