(なかなか文字変換で出てこない)贅沢な名だね。
今からお前の名前は鈴音(すずね)だ。いいかい、鈴音(すずね)だよ。分かったら返事をするんだ、鈴音(すずね)!
というわけで、新章開始でございます。
第12話 中国娘到来
「おはよー北山君。転校生の噂聞いた?」
翔と美波が教室に入ると、クラスメイトの相川清香が声をかけてきた。
「転校生? この時期に?」
「そう、なんでも中国から来るんだってさ」
「2組に編入されるらしいよ」
「へー」
話を合わせるが、中国という単語で、2人はそれが誰かを察した。
「あら、わたくしの存在を危ぶんでの転入かしら」
「はいはい」
「せめて流さずに何か返してくださいません!?」
清香とセシリアの掛け合いをよそに、クラスの話題は別の内容に移る。
「そういえば、クラス対抗戦の優勝クラスには賞品があるんだって!」
「知ってる! 学食デザートの半年フリーパス!」
「「翔(しょー)ちゃん、頑張ってねー!」」
賞品内容を聞いた途端、美波と本音が翔の左右からキラキラした視線を送る。
「1年のクラス代表で専用機持ちはうちと4組だけだし、セシリアと引き分けた北山君なら勝てるよ!」
「その情報、古いよ」
聞き覚えの無い声に、皆が教室の入り口を向くと
「鈴……? お前、鈴か?」
織斑が驚いたように立ち上がる。
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
少女――鈴音と名乗っていた――が腕を組み、片膝を立ててドアにもたれ掛かっていた。
「何格好つけてるんだ? すげえ似合わないぞ」
「んなっ……!? なんてことを言うのよアンタは!」
((((うわー、織斑君……))))
「おい」
「何よ!?」
後ろから突然声を掛けられた鈴音は、振り向き様に文句を言おうとして――
――スパーンッ!!
「もうSHRの時間だ。自分の教室に戻れ」
「ち、千冬さん……」
――スパーンッ!!
「織斑先生だ」
出席簿アタックを連続で受けた鈴音は、涙目になると
「また後で来るからね! 逃げないでよ! 一夏!」
そう言い残して逃げるように去っていった。
ーーーーーーーーーーーーー
ーside翔ー
今日は朝から騒がしい。
そして昼休み、美波とセシリアを連れて食堂に来たのだが――
「……」「……」
……何が楽しくて、篠ノ之と凰の睨み合いを見ながら飯を食わにゃならんのだ……。
「(い、いたたまれませんわ……)」
「(我慢だよセシリアちゃんー……)」
俺達3人だけでなく、食堂にいる人達全員、このギスギス空気の流れ弾をもらっていた。
唯一平気そうなのが、この空気の大元の原因である織斑だっていうのが余計腹立たしい。
「(とりあえず、さっさと食って出よう)」
「「(賛成ー(ですわ))」」
皿の上のものを急いで胃に入れて、トレーを持って下げようとしたところで
「ちょっと待ちなさいよ」
件の
「アンタがもう1人の男性操縦者?」
「そうだが?」
「知ってるだろうけど、もう1度名乗っておくわ。凰鈴音、中国代表候補生で、2組のクラス代表よ。鈴でいいわ」
「北山翔だ。北山と翔、どちらでも」
「なら翔って呼ぶわ。で、翔が1組のクラス代表なんでしょ?」
「ああそうだ」
「そっか。本当はクラス対抗戦では一夏と戦いたかったんだけど――」
そこまで言うと、鈴はビシッと指さすと
「もしあたしと当たっても手加減なんてしてあげないんだから、覚悟しておくことね!」
宣戦布告された。セシリアといい鈴といい、代表候補生はそうする規則でもあるのか?
「分かってる。こっちだって全力で戦うつもりだ」
トレーを返却すると、俺は一足先に片づけて入口で待っていた2人に合流した。
その際、俺と鈴のやり取りを見ていた織斑から睨みつけられていたが、そんなん知らん。
鈴と違って、お前は承諾も何もなく人のことを勝手に呼び捨てにしてただろうが。
ーーーーーーーーーーーーー
あっという間に放課後の帰り道。いやまぁ、さっきまでアリーナで訓練してたんだがな。
実は、俺は今も練習でラファールに乗っている。
本当は専用機に乗るべきなんだろうが、できればクラス対抗戦まで情報を伏せておきたいからだ。
データの欲しい政府やIS委員会の連中からしたら、面白くないだろうが。
山田先生も「クラス対抗戦では絶対に乗って下さいね? 絶対ですよ!?」って言ってたし。
そういえば、織斑も白式で練習していたのを見かけたな。自分の専用機が手に入ってようやっとらしい。
篠ノ之が横でアドバイスしていたが、「ガッとやってそこでグイッだ!」じゃ誰も分からんだろうよ。
さて、そんな寮への帰り道、美波と歩いていると
「あれ? 鈴ちゃんー?」
美波の視線の先には、道脇のベンチに座り、俯いている鈴がいた。
「アンタは……」
「北山美波だよー」
美波が鈴の正面に立つ。
「辛いことでもあったー?」
「別に……アンタには関係ないことよ」
「そっかー。でもねー」
美波は屈み込むと、鈴と目線を合わせた。
「辛い時は辛いって、言っていいと思うんだー」
「……本当に、アンタ達とは関係ないのよ?」
「それでもいいよー」
「……グスッ」
そして鈴は
「一夏の馬鹿ぁぁぁぁ!!」
美波に縋りつきながら泣きじゃくった。
ーside翔 outー
ーーーーーーーーーーーーー
――1210号室の前
ーsideセシリアー
『
茶葉良し。お茶請けのスコーン良し。完璧ですわ。
――コンコン
「どちら様ー?」
「セシリアですわ」
「はいはーい、ちょっと待ってねー」
いつもの様に美波さんの声が聞こえて来て、少しするとドアが開きました。
「今日はどうしたのー?」
「ええ、お2人とお茶をと思いまして」
わたくしが持っていたバスケット(紅茶缶とスコーン入り)を見せると、美波さんは少し悩むような顔をなさると
「実は先客がいるんだよねー。それでもいい?」
「先客ですの?」
どなたでしょう? 山田先生とかでしょうか?
「いいですわよ。お茶請けのスコーンも少し多めに用意しておりますし」
「分かったよー。それじゃあ入ってー」
美波さんに促されて中に入ると、そこには翔さんと
「あら? 貴女は――」
そう、確か中国代表候補生の凰鈴音さん、でしたか。
「アンタ確か、お昼に翔達と一緒にいた……」
「自己紹介をしていませんでしたわね。イギリス代表候補生、セシリア・オルコットですわ」
「セシリアね……あたしのことは鈴でいいわ」
「分かりましたわ。ところで……なぜ鈴さんが翔さん達のお部屋に?」
よく見ると、鈴さんの目は赤くなっていて、まるで泣いた後のようでした。
とはいえ、翔さんや美波さんが鈴さんを泣かせるとは思えませんし、もしかして――
「……織斑さんと、何かありまして?」
「……っ!」
ビクッと肩を震わせる鈴さんを見て、わたくしは何となく確信がついてしまいました。悪い方に。
「俺達も、詳しい話はまだ聞いてないんだ」
「それじゃあ鈴ちゃん、聞いていいかなー?」
「あの、わたくしが聞いてもいい話なのでしょうか?」
他人のプライベートを無断で聞くのはよろしくありませんわ。
「いいわよ……むしろあたしの愚痴に付き合ってよ」
「はぁ……」
そして鈴さんは、これまでの経緯を話し始めました――
鈴さんは小学5年の頃、日本にやってきたそうです。
当時は日本語があまり上手くなく、それが原因でいじめられており、その時手を差し伸べてくれたのが織斑さんだったと。
それがきっかけで彼に好意を抱いておりましたが、中学2年の時に両親の都合で中国へ帰国。
帰国後IS適正が見つかり、努力を重ねた結果代表候補生に。
そして、世界初の男性操縦者として織斑さんの名前が出た時、IS学園行きを希望したそうです。
そこまではただの美談なのですが、問題は帰国する前に鈴さんが織斑さんとした、とある約束なんだそうです。
「あたし、一夏に言ったの……『料理の腕が上達したら、毎日酢豚を食べてくれる?』って……」
「えーっと……」
どういうことでしょう?
「セシリアちゃんー、日本には『毎日味噌汁を作ってくれ』っていうのがあるんだよー。『毎日味噌汁を作るために、ずっと俺と一緒にいてくれ』っていう遠回しな言い方なんだー」
「なるほど」
美波さんの説明で納得出来ましたわ。つまり『毎日酢豚を食べてもらうために、ずっと貴方と一緒にいていいわよね?』という、鈴さんからのプロポーズだったと。
「それで放課後、一夏に聞いたの。『あの時の約束、覚えてる?』って。そしたら……」
まさか、覚えていなかったとか?
「『酢豚奢ってくれるんだろ?』だって!!」
「んんっ!?」
ちょっと待ってくださいまし。理解できませんわ。どうしてそうなりますの?
「……なぁ鈴」
「何よ」
「
「うぐっ!」
……鈴さんの口から、まるで鳩尾を抉られたかのような声が出ましたわ。
けれど確かに、翔さんのおっしゃる通りですわ。あの織斑さんに婉曲表現が理解できるとは、到底思えませんわ……。
「そして『酢豚を食べさせる』って部分だけが残ったと―……」
切ないっ、切なすぎますわ……っ!
「そこに関しては、奴の鈍感力を見くびっていた鈴にも問題があったのかもな」
「そうね、あたしにも非があったのかもね……。勢いで引っぱたいちゃったし……」
鈴さんは紅茶(話を聞いている間に、わたくしと美波さんが用意したもの)を飲み干すと
「今度会ったら、引っぱたいたことは謝ってみる」
「そうだな。奴のことを諦めるにしろ諦めないにしろ、あとあと負い目になりそうなものは早い内に片付けとけ」
「分かってるわ。なんか言いたいこと言ったらスッキリしたわ。今日はありがとね」
そう言って、部屋を出て行きました。
鈴さんは大変ですわね。あの織斑さんを好きになってしまうなんて。正直、心配にもなってしまいますわ……。
「心配なのは分かるけど、今は鈴を信じてやろうじゃないか」
顔に出ていたのでしょうか。翔さんはわたくしの頭を、ポンポンと優しく撫でてくださいました。
「そう、ですわね」
――つくづく、わたくしが好きになった相手が翔さんで良かったと思いますわ。
ーsideセシリア outー
・鈴からの呼び捨てを許す:
織斑→翔の好感度down(小)
・泣きたい時に胸を貸してくれた:
鈴音→美波の好感度up(中)
・大切な約束を理解していなかった:
翔→織斑の好感度down(微小)
美波→織斑の好感度down(微小)
鈴音→織斑の好感度down(大)
セシリア→織斑の好感度down(中)