一夏のくせになまいきだ   作:シシカバブP

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第13話 束の計画

――クラス対抗戦2日前、スター・ラビット・カンパニー(SRC)

 

ーside翔ー

 

クラス対抗戦を明後日に控えた日曜日、俺と美波はSRCを訪れていた。

 

目的は俺の専用機の調整。何せ入学直前の3月末に受け取ってから、まともに起動してないのだ。それに、せっかく練習の時もラファールを使っていたのだ。出来れば対抗戦当日まで隠し通しておきたい。

そしてそれとは別に、束さんに直接会わなければならない理由があったからだ――

 

 

 

「2人とも、よく来たねぇ!」

 

SRC社屋の地下フロア。IS研究開発室で、束さんが俺達を出迎えてくれた。

 

「それじゃあショウママ、その子を預かるよ」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

頷くと俺は、首から提げていたドッグ・タグ(待機状態の専用機)を外すと、束さんに渡した。

 

「どれくらいかかるのー?」

 

「損傷したわけじゃないから、30分くらいで終わるかな?」

 

束さんは部屋の中央にある装置のドアを開けると、ドッグ・タグを入れた。そして

 

「ポチッとな。はい、あとはシステムチェックが終わるまで全自動なのだー!」

 

「おーしゅげー! かんたーん!」

 

「むふふー! そうでしょうそうでしょう!」

 

美波の誉め言葉にどや顔。

 

「それじゃ、終わるまでお茶にしよう!」

 

そそくさと束さんは、部屋の隅にあった応接セットのテーブルから紙の山をどかし始めた。

 

「時間があるなら束さん、少し聞きたいことがあるんですが」

 

「なになに~?」

 

 

 

 

「明後日のクラス対抗戦、何かする気じゃありません?」

 

 

 

「……」

 

束さんの手が止まる。

 

「……どうしてそう思ったの?」

 

もちろん「原作知識が」などとは言わない。

 

「明後日の対抗戦には、各国から人が集まります。特に今年は、世界でも希少な男性操縦者(俺と織斑)を見るために」

 

「そうかもね。それで?」

 

「束さんは今のISの使われ方を是としていない。だから、それを伝えるために何かするんじゃないかなと」

 

「う~ん。でもそれなら、別に明後日じゃなくてもよくない? 例えば、今すぐ世界中の電波をジャックして演説を始めてもいいわけでしょ?」

 

面白そうだと顔に書いてありますよ、束さん。

 

「思ってもいないことを言わないでください。そもそも、各国政府やIS委員会の連中に言って聞かせて済むなら、今の世界はこんな歪んでませんよ」

 

「まぁねぇ。でも、言っても聞かないなら力尽くって、まるでちーちゃんみたいな発想だねぇ」

 

「違うよ束ちゃんー。織斑先生は口で言う前から実力行使(出席簿アタック)だよー」

 

「ブフッ!」

 

美波のツッコミ(しかもなんでこれが事実なんだよ……)に、束さんが吹いた。

 

「それで、いったい何をするつもりなんですか?」

 

「いやぁはははは、そこまでバレてるならしょうがないね」

 

束さんは壁に付いているボタンを押した。すると、壁の一部がシャッターのように上がっていく。上がった場所にはガラスが窓のようにはめ込まれていて、その先には――

 

 

 

「試作型無人IS『ゴーレムⅠ』だよ」

 

窓ガラスの向こうには、全身装甲型(フルスキン)のISが鎮座していた。

 

 

 

「無人機ですか……」

 

「本来は木星の高重力下みたいな、ISを使ってても有人じゃ危険な領域で作業をするために作ったんだけどね」

 

「危ない場所はロボットにやってもらおうってことー?」

 

「そうそう。しかも普通なら人が入るところに大容量コンデンサーとか付けられるから、高出力ビームを装備しても長時間稼働するってメリットもあるんだ。まぁ人間ほど柔軟な行動はできないけどね」

 

なるほど。宇宙進出の先、惑星開発も視野に入れてるわけか。

 

「で、このゴー君(ゴーレムⅠ)を対抗戦に乱入させるつもりだったんだ。『ISを兵器として使うことの意味』をもう1度考え直させるために」

 

ああうん、理由はともかく、そこは原作通りなのな。

 

「……それでショウママ、どうする? やめた方がいい?」

 

「そうですねぇ……」

 

「やった方がいいと思いまーす!」

 

シュバッと手を挙げて美波が言った。

 

「えーっと、ナミママ?」

 

「翔ちゃんも気付いてると思うけど、学園の授業内容には問題があるんだよー」

 

「問題?」

 

「そう、束ちゃんは嫌だろうけど、ISは兵器やスポーツとして見られてるよねー。なのに、それを扱う上での危険性について全然言及がないんだよー」

 

確かにそうだ。IS使用中の事故などによる負傷や死亡例と言った話が、教科書や参考書にまったくと言っていいほど載ってないのだ。

過度の恐怖心を与えないためとか言うのだろうが、舐めるなと言いたい。自動車免許を取る時ですら、教習所で事故映像を見るというのに。

 

「だからゴー君を乱入させて、『ISって、使い方を間違うと怖いものなんだ』ってみんなに思ってもらえばいいと思うんだー」

 

「ナミママ……」

 

「だけど美波、乱入させるのは良いが、そのあとどうするんだ?」

 

「え? 翔ちゃんが片付けるんだよー?」

 

「ファッ!?」

 

まさかの俺任せである。

 

「翔ちゃーん……」「ショウママぁ……」

 

2人してキラキラした目で見んな!

 

「はぁ……鈴との勝負はお預けになりそうだな……」

 

 

 

そんなこんなで束さんの『無人機によるIS学園襲撃計画(盛大なマッチポンプ)』が実行されることに決まった。

だが一応、俺からも注文は付けた。言ってしまえば脅かすのが目的であって死傷者を出したら意味が無いからな。

 

・乱入する時以外、ビームの出力を(アリーナのシールドバリアが破れない程度まで)落とすこと

・ISに乗ってる奴にしか攻撃しないこと

・ISに乗っていても、SEが切れて具現維持限界(リミット・ダウン)した奴は狙わないこと

 

これで最悪、俺が途中で力尽きて(SE切れになって)も、観客席に被害はいかないはずだ。

でもなぜだろう、まったく安心できる気がしないのは……。

 

ーside翔 outー

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ーside???ー

 

「ああもう! ホントに、あいつってば何なのよぉ!!」

 

「……」

 

いったい、私はいつまでルームメイト()の愚痴を聞き続ければいいんだろう。

 

「ちょっとティナ、聞いてるの!?」

 

「はいはい、聞いてる聞いてる」

 

「しかも言うに事欠いて『貧乳』ですってぇ!? ああもうああもう!」

 

そう言いながら地団駄を踏む鈴を見た。正確には、彼女の胸部。

そして視線を自分の胸部に移す。

 

「……フッ」

 

「ティィィナァァァ!! アンタ喧嘩売ってんの!?」

 

「はいはい、売ってる売ってる」

 

「むがー!!」

 

「で、結局その織斑君とはどうするつもりなの?」

 

最初は鈴が織斑君を引っぱたいちゃって、それに対して謝ったけど、その後またちょっとしたことから口論になってエスカレート、最後に織斑君が『この貧乳!』みたいなことを言ったんだっけ? 小学生か。

 

「……あいつが謝るまで、絶対に口利かない」

 

「ああそう……」

 

面倒だわー。

 

「とりあえず、明後日のクラス対抗戦に集中したら?」

 

私もスイーツのフリーパスは欲しいし。

 

「そ、そうね」

 

気を取り直したように見えた鈴だったけど、なんかまた萎れ始めた。

 

「今度はどうしたの?」

 

「いやあのね……1組に、北山って兄妹いるじゃない?」

 

「1組のクラス代表とその妹だっけ?」

 

「そう。で、一夏を引っぱたいた日に色々世話になってさ、その時に『あとあと負い目になりそうなものは早い内に片付けとけ』って言われたの……」

 

「ああ~……」

 

ダメじゃん。せっかく謝ったのに、また喧嘩して作ってるじゃん、負い目になりそうなもの。

 

「なんて言い訳すればいいのよ~……」

 

「知らないわよ……」

 

本当に、私のルームメイトは面倒臭いやつだわー……

 

ーsideティナ outー

 




貧乳発言:
鈴音→織斑の好感度down(大)
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