一夏のくせになまいきだ   作:シシカバブP

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自分の認識としては、アリーナのシールドバリアって、穴を開けられると一度解除して再起動しないと張り直せないタイプかなーと思ってました。



第16話 嵐が過ぎて

――第2アリーナ、管制室

 

ーside真耶ー

 

「Unknown最後の1機、反応消失(シグナル・ロスト)!」

 

「終わった、のか……?」

 

私の報告に、織斑先生はそれしか呟くことが出来ませんでした。

 

「北山君、凰さん、聞こえ――」

 

とにかく状況を確認するため、北山君と凰さんに通信を繋いだ途端

 

『翔ぉぉぉぉ!!』

 

凰さんの悲痛な声に慌ててアリーナのカメラモニタを見ると、具現維持限界(リミット・ダウン)で展開解除された北山君が落下していくのが見えました。

 

『くっ!』

 

凰さんも追いかけようとしますが、落下スピードが速すぎます!

 

私は最悪の結末を覚悟しました。

……けれど、北山君が地面に叩き付けられることはありませんでした。なぜなら――

 

 

 

「別の……全身装甲……?」

 

 

 

映像の視界外から全身装甲のISが現れると、北山君を受け止めていたのです。

全身淡い青色で、両肩にどういう意味か『UN』と『14』のマーキングが施されている機体……。

 

「新手か!」

 

「サーチ開始……っ! 学園のデータベースに該当あり!」

 

「何!?」

 

「機体名『不知火』、操縦者は……北山さんです!」

 

「北山……北山妹か!」

 

対比検証としてお兄さんの北山君と共に貸与されて、これまで使用していませんでしたが……あれが……!

 

北山君を抱えた北山さんは、そのままピットへ移動していきました。 ……はっ、それどころじゃない!

 

「こちら管制室山田です! 第2アリーナWピットへ至急医療班を寄越して下さい!」

 

具現維持限界(リミット・ダウン)で展開解除するほどだったんです! 無傷なわけありません!

 

「織斑先生! ハッキングが止みました!」

 

「なんだと!?……教師部隊に出撃指示! アリーナ周辺を捜索、残敵がいないか確認させろ!」

 

「了解!」

 

タイミングが良すぎる気がします……けれど、今は一刻も早く事態を収拾するのが先決です。

 

「なぜあんなマネをした……一夏……!」

 

小声だったこともあり、織斑先生の悲痛な声は、私にしか聞こえていませんでした……。

 

ーside真耶 outー

 

 

――スター・ラビット・カンパニー(SRC)地下、研究開発室

 

ーside束ー

 

「ショウママ……」

 

ゴー君のカメラアイから送られてきた最後の映像には、展開解除されて宙に投げ出される、ショウママが映っていた。

 

「どう……して……」

 

ショウママの注文通り、ビームは観客席のバリアを破らないように調整していたのに。当初はそれで問題なかったのに。

だからこそ、ハッキングを仕掛けたのに。観客を逃げられないように、今起こってることをしっかり認識させるために。

 

 

まさか、バリアが()()()()破られるなんて想定していない。

 

 

「いっくん……! あそこには箒ちゃんだっていたのに……!」

 

今回の襲撃を計画したのは私だ。だからこれは逆恨みなのかもしれない。

でも……それでも、この事態を引き起こした"親友の弟"に、怒りを禁じえない。

 

もしショウママが身を挺して守ってくれなければ、他の観客もろとも、箒ちゃんも消し炭になっていたかもしれない。

私はまだ、箒ちゃんに、謝れてないのに……!

 

「――そうだ、お見舞いに行こう。束さん特製の医療用ナノマシンとか用意して!」

 

棚の中を引っ搔き回し、お目当てのものを拡張領域に放り込むと、私は大急ぎで研究室を出て行った。

 

ーside束 outー

 

 

――IS学園医務室、集中治療室

 

ーside美波ー

 

翔ちゃんは、まだ目を覚まさない。

ピットから担架でここ(集中治療室)に運ばれて、医療ポッドに入れられて、そのままだ。

 

「……」「……」

 

私もセシリアちゃんも、何を話すでもなく、ただただポッドの横で椅子に座って、ガラス部分から見える翔ちゃんの顔を見ていた。

 

内臓の損傷、全身の火傷、擦傷に至っては数えきれないほど。

いつ死んでもおかしくない重症だった。仮に峠を越えても、なにかしらの後遺症は残るかもしれないと、お医者さんからも言われた。

 

――ピコンッ

 

その音が、自分にメールが届いた音だと気付くのにしばらくかかった。

スマホを取り出してディスプレイを――

 

 

『差出人:束ちゃん  件名:そこの窓開けてー』

 

 

「っ! セシリアちゃん! そこの窓開けるよ!」

 

「は、はい!?」

 

セシリアちゃんの返事を聞く時間も惜しんで、私は部屋に1つだけある窓の鍵を外して開けた。すると

 

「束さん! 参、上!」

 

束ちゃんが、窓からスライディングで飛び込んできた。

 

「ナミママ! ショウママは!?」

 

「こっち!」

 

「えっあの……」

 

ごめんセシリアちゃん! 今は時間が惜しいから!

 

「容態は!?」

 

「お医者さんの話だと、内臓の損傷と火傷、それと無数の擦傷!」

 

「よしっ! それくらいならこれで……!」

 

そう言うと、束ちゃんは注射器を拡張領域から取り出して、一緒に出したアンプルの中身を詰め始めた。

 

「ナミママ、ポッドを開けて!」

 

「りょうかい!」

 

「ちょっ、勝手にそのような……!」

 

ええいっ、止めるなセシリアちゃん!

 

「これを血管注射でブスリと……これでよし!」

 

翔ちゃんの右腕に注射を打つと、ひと段落着いたとばかりに束ちゃんは額の汗を拭くような仕草をした。

 

「束ちゃん、これで翔ちゃんは大丈夫なんだよね……?」

 

「もち! 束さん特製の医療用ナノマシンを注射したから、2,3時間で元に戻るはずだよ」

 

「そっかー……」

 

それを聞いて気が緩んだのか、私は崩れ落ちるように椅子に座り込んだ。

 

「あ、あのー、美波さん?」

 

「あえ~?」

 

「こちらの方は……?」

 

あっそうか。セシリアちゃん面識なかったもんねー。

 

「篠ノ之束だよー」

 

軽ーい感じで束ちゃんが自己紹介をした。昔は私や翔ちゃん以外、相手の顔すら見ようとしなかったから、これでも成長したんだよねー。

 

「篠ノ之束!? あのIS開発者の!?」

 

「そだよー」

 

あ~、セシリアちゃんのテンプレな驚き方に、束ちゃん喜んじゃってるよー。

 

「それで、篠ノ之博士」

 

「ん?」

 

「翔さんに打ったナノマシン?ですが、副作用などは……」

 

「おいおい、この束さんが作ったものに、副作用なんてあるとでも?……Exactly(その通りです)

 

「ちょぉぉぉ!?」

 

セシリアちゃん、おちょくられてるから。

 

「それで束ちゃん、どんな副作用なのー?」

 

「このナノマシンは体の新陳代謝を活性化させることで、傷の治りをものすごーく早めるってものなのです」

 

「IS学園でも治療用ナノマシンはありますが、それ以上のものなのですの?」

 

「チッチッチッ、束さんの方が遥かに高性能なのだよ」

 

あれ? 学園のより高性能ってことは……

 

「もしかして、"治療のために、体中から大量のエネルギーを消費する"ってことー?」

 

「ナミママせいかーい! だから目が覚めたら、今度は空腹で動けなくなってると思うよ」

 

それなら、今度病室に来た時にいっぱい食べ物持ってくればいいねー。

 

「さて、あんまり長居するとちーちゃんに見つかりそうだから、今日はこれで帰るねー」

 

束ちゃんはそう言うと、来た時と同じように窓からスライディングで病室を出て行った。

 

ーside美波 outー

 

 

――???

 

ーside翔ー

 

辺り一面、真っ白な世界。

これはあれか? 死に戻った(ロキ部屋行き)か?

 

『いいえ、貴方はまだ生きています』

 

突然の声に振り向くと、そこには見知った奴がいた。本来、()()()()()()()奴が――

 

「これは一体、どういう仕組みなんだ? なぁ……フィオナ」

 

かつて別の外史で出会い、先代(Unknown)からホワイト・グリントを引き継ぎ、戦い、別れた時のままの姿で、彼女はそこにいた。

 

『正確には、私は貴方の知るフィオナ・イェルネフェルトではありません』

 

「どういうことだ?」

 

『貴方が()を操縦していく中で、貴方の記憶の中の『フィオナ・イェルネフェルト』が焼き付き、そして私が生まれました』

 

『私を操縦』って……おい、つまりそれって……

 

「まさか、お前は……」

 

『そう、私は――』

 

 

 

 

 

『私は、ホワイト・グリント。IS『ホワイト・グリント』の、コア人格です』

 

 

 

 

 

「ISコア……」

 

『だから、私はホワイト・グリントであると同時に、フィオナ・イェルネフェルトでもあります』

 

束さんから、ISコアの深層には独自の意識があるとは聞いていたが、まさかこんな風に相対することになるとは……。

 

「あ~……とりあえず、今はフィオナと呼んでおく」

 

『分かりました』

 

「それでフィオナ、俺はまだ生きてるんだな?」

 

『はい。QB(クイックブースト)による内傷、ビームを受けた際の熱による火傷、AA使用時の衝撃による外傷、および展開解除され落下した際の衝撃で気を失っている状態です』

 

うん。死んでないだけで、結構ボロボロだな。

 

『とはいえ、『ドクター』が訪れたようなので、心配はしなくてよいかと』

 

「ドクター……束さんか?」

 

俺の問いに、フィオナが首を縦に振る。

 

『さぁ、そろそろ意識が覚醒する頃です』

 

「そうか……」

 

心なしか、眠気のようなものを感じて来た。

 

『それではまた、いつかお会いしましょう……マイ・マスター』

 

「その顔で……マスターは……違和、感が……」

 

最後まで言い切ることが出来ずに、俺はまた意識を失った。

 

ーside翔 outー

 

 

――IS学園、理事長室

 

ーside千冬ー

 

私は理事長室で今回の顛末、その詳細を説明していた。

しかし今回は、轡木理事長だけでなく、IS委員会日本支部長の男も同席していた。

 

「なるほど、大筋の話は理解できました」

 

理事長は頷くと、向かいのソファに座っている支部長の方を向き

 

「IS委員会としては、今回の件をどう判断されていますか?」

 

「謎のISの侵入とハッキングを許した件については、警備プランの再考と提出を学園側に要求する旨で、各国とも意見が一致しています」

 

警備プランの再考だと? どれだけ強固にしようとあいつ()が相手では意味がないぞ……!

だが、あいつがやったという確証がない以上、やらざるを得ないか……

 

「そして各国はおろか、国内でも意見が割れているのが……()()()()()()()についてです」

 

「なっ! どういうことですか!?」

 

なぜ一夏の処遇などという話になる!?

 

「どういう? あれだけの問題を起こしたのですよ? 多くのIS操縦者の卵を死なせかねないマネを」

 

一夏がシールドバリアを破壊したことか……!

 

「……委員会の意見がまとまらないため、今回の彼の処遇については、学園側にお任せします」

 

「……分かりました」

 

理事長が頷いた。状況は良くないが、なんとか学園内で収めることができそうか……。

 

「それでは私はこれで」

 

そう言って支部長は立ち上がると、部屋のドアに向かって歩いていたが

 

「それとこれは独り言なのですが」

 

「? なんですか?」

 

「最初に今回の事件内容が知らされた時、『織斑一夏を研究所送りにしよう』という意見もあがっていました」

 

「なっ!」

 

一夏を……研究所送りだと!?

 

「委員会内で多数決を取った結果、ギリギリ規定数を満たさず流れましたがね」

 

「そうですか……」

 

「ただ、反対票を入れたメンバー全員が口にしていましたよ」

 

 

 

「『千冬様(ブリュンヒルデ)の弟でなければ、何の躊躇いもなく研究所(処刑台)送りにしたのに』、と」

 

 

 

「……っ!!」

 

「それでは、改めて失礼します」

 

「――待ってください」

 

「何ですか?」

 

「貴方は……貴方はどう思われているのですか?」

 

ドアノブを握ったまま

 

「……私には年の離れた従妹がいましてね。今はIS学園に在籍しています」

 

振り向いた支部長の目は

 

「北山翔。彼がいなければ、あの時、あの場所(対抗戦の観客席)で、死んでいたでしょうね……()()()()()()のやらかしの所為で」

 

怒りと憎悪がこもっていた――

 

ーside千冬 outー

 




一夏のやらかし:
束→織斑の好感度down(特大)

みんなの盾に:
美波→翔の好感度up(特大)
セシリア→翔の好感度up(特大)

観客のみんなは逃げるのに必死で、この時点では翔の活躍を認識してないです。
(前回入れ忘れた後付け設定)

不知火:
かつて美波が搭乗していた戦術歩行戦闘機。
淡い青の機体カラーと『UN』の文字は、つまりそういうこと。
『14』の数字は『1個中隊12機編成+2機』ということで、つまりそういうこと。
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