一夏のくせになまいきだ   作:シシカバブP

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第17話 目覚め

ーside翔ー

 

目が覚めると、病室らしい部屋のベッドの上だった。

 

「……知らない天井だ」

 

まさか、自分がこのセリフを言うことになるとは思わなかった。

 

とりあえず起き上がろうとして……うん、普通に上半身は上がるな。

どうやらフィオナが言ってた『ドクター(束さん)』がどうにかしたのだろう。

 

「翔ちゃん?」

 

声のする方を向くと、ちょうど部屋のドアを開けた美波だった。

 

「おう」

 

「翔ちゃん……」

 

美波はツカツカと俺の方に歩いてくると

 

――パチンッ!

 

「痛った!?」

 

不意打ちデコピンは卑怯じゃありません!?

 

「翔ちゃん無理しすぎー」

 

さらに追い打ちをかけるように、美波が俺の頬を両手でサンドして

 

「私も、セシリアちゃんも心配したんだよー?」

 

「……」

 

「も~、ちゃんと分かってるー?」

 

「分かってるって」

 

そりゃ、分からんわけないだろ。

 

 

そんな涙目で言われたらさ……。

 

 

「ただいま、美波」

 

いつものように、頭をポンポンと撫でる。

 

「うん。おかえり、翔ちゃん」

 

 

 

――グウゥゥーッ!

 

 

 

「……」

 

「……」

 

まぁ、何というか……

 

 

 

俺の腹の音だ。

 

 

 

「「……プッ! アハハハハハハッ!」」

 

もう、2人して笑うしかなかった。

 

「翔ちゃん、ロマンなさすぎー」

 

「しょうがねぇだろ、寝てたって腹は減るんだよ」

 

「それについては、束ちゃんが原因なんだけどねー」

 

そう言って、美波は昨晩のことを話し出した。

AAでゴーレムを撃破したものの、展開解除されて真っ逆さまに落ちたこと。

落下した俺を美波が不知火でキャッチしたこと。

そのまま学園内の集中治療室に運ばれたこと。

後遺症が残る可能性を伝えられたこと。

束さんがやってきて、医療用ナノマシンを注射したこと。

そのナノマシンの効果で、一般病室に移されるほどに回復したこと。

 

「で、翔ちゃんが空腹で仕方ないのは、ナノマシンの副作用なんだってー」

 

「まぁ、火傷と内傷で後遺症が残る可能性に比べたら、許容内のデメリットだな」

 

「だねー」

 

――コンコン

 

「美波、翔はまだ――って翔!?」

 

鈴だった。

 

「翔! アンタもう大丈夫なの!?」

 

「おう、見ての通りだ」

 

「そっか~……」

 

鈴はそう言うと、ベッドの横にあったパイプ椅子に座り込んだ。

 

「そうだ、結局クラス対抗戦はどうなったんだ?」

 

「あんなことがあったのよ? 中止よ中止」

 

「だよねー」

 

それもそうか。当たり前のことを聞いちまったな。

 

「それより、今回の件、箝口令が敷かれるらしいわよ」

 

「箝口令?」

 

「そう。『IS学園が襲撃されるなんて、IS神話に傷がつく』って、女性権利団体からIS委員会経由で圧力がね」

 

「そうか……」

 

ありもしない神話を守るために、事実を隠蔽するつもりか。

束さん。どうやら、言っても聞かないどころか、事を起こしても無視し続けるつもりらしいですよ。

 

「誰から聞いたのー?」

 

「箝口令のことを聞かされた時、千冬さんからチラッとね」

 

「鈴ちゃん、織斑君と幼なじみだから、織斑先生ともその頃から面識あるんだもんねー」

 

「う、うん……」

 

「? どうしたのー?」

 

美波が不思議そうな顔をすると、鈴は俺と美波の顔を見て

 

「2人に、言っておかなきゃならないことがあるの」

 

「「?」」

 

「あたし……」

 

 

「一夏のこと、諦めたから!」

 

 

「……そっかー」

 

「……理由を、聞いてもいいか?」

 

「転入すぐに、一夏を引っぱたいたことあったでしょ?」

 

あったな。色々勘違いされた酢豚の件。

 

「実はさ、あの後一夏に謝ったんだけど、別のことで喧嘩になっちゃってさ」

 

「あれほど負い目を残すなと言ったのに……」

 

「それ今は言わないでよ! で、あたしもその時は頭に血が上っててさ、口も利かなかったのよ」

 

何があったかは知らないが、かなりお冠だったんだな。

 

「でもホントはさ、仲直りする気はあったんだ。……その時はまだ、一夏のことが好きだったから……」

 

頑張って作り笑顔を作ろうとして失敗した鈴は、顔を俯かせて

 

「でも、一夏が観客席のバリアを破ったのを見た時……ダメになっちゃった」

 

「……」

 

「あいつ、昔から『俺が守る』って口癖のように言ってたのよ……でも、ホントは何も考えてないって、あれを見て、分かっちゃったから……あの時、あたしを助けてくれた時も、たぶん、何も考えて……何も思って……」

 

「鈴ちゃん……」

 

俯きながら、パタパタと涙を流す鈴を、美波がゆっくりと抱きしめた。

 

「だから、あたし……」

 

「うん」

 

 

 

 

 

「ナミママの子になる!」

 

 

 

 

 

「「んん!?」」

 

どうしてそうなった

 

ーside翔 outー

 

 

――学生寮1025号室

 

ーside千冬ー

 

「どうしてだよ千冬姉!」

 

先ほど決まった一夏の処遇について伝えに来たのだが、案の定か。

 

「どうして俺が懲罰房なんかに!」

 

2週間の懲罰房行き。それが一夏に科された処分だった。

だが、本来ならもっと厳罰に処されるはずだった。それを何とか減刑してもらい、2週間になったのだ。

 

「織斑、お前、自分が何をしたのか理解していないのか?」

 

「分かってるさ! みんなを守るために戦ったんだからな!」

 

守るだと?

 

「……観客席のシールドバリアを破ることがか?」

 

「それは……でも、みんなを一刻も早く助けるためには仕方なかったんだ。必要なことだったんだよ!」

 

「その結果、戦闘に参加、いや乱入したお前は敵機のビームを食らってあっさり撃墜、ビームはそのまま観客席を目指し、最悪生徒達が犠牲になっていたかもしれないわけだが?」

 

「わざとやった訳じゃない!……不可抗力、そう、不可抗力なんだよ!」

 

「……なるほど、不可抗力か」

 

「そう、不可抗力さ! それに、結局みんなに被害はなかったわけだし、結果良ければ全て良しだろ?」

 

「北山が被害を受けただろうが」

 

「翔? 別にあいつのことなんかどうでもいいだろ」

 

「……は?」

 

その言葉を聞いた時、私の頭の中は真っ白になった。

どうでも、いい……?

 

「あいつも俺の『女は守るべきもの』って考えを理解したからこそ、ああなっただけなんだし。男なら女を守って当然。その過程で傷つくのも当然、だろ?」

 

「……」

 

どうして……どうしてそんなことを言うんだ、一夏……

 

「だから俺がやったことは正しいし、懲罰房行きなんか何かの間違いさ」

 

もう、だめだ。これ以上、一夏に何かを口にさせたら――

 

「……一夏、右腕を出せ」

 

「? あ、ああ」

 

突然言われた一夏は、条件反射で右腕を出した。

私はその腕を掴むと、白式の待機形態である白い腕輪を外した。

 

「な、何するんだよ千冬姉!」

 

「警備員」

 

私の声に、部屋の外で待機していた偉丈夫な警備部員――数少ない男性職員――が4人、中に入ってきた。

 

「織斑を、懲罰房に」

 

「なっ!千冬姉!?」

 

驚く一夏をよそに、警備部員4人の内、2人が一夏の腕を左右から掴み、残り2人が前後を固める。

 

「くそっ!離せよっ!がふっ!うぅぅ~!!」

 

途中で他の生徒達に見つからないよう、口に猿轡をかまされ、さらに頭から麻袋を被せられて、一夏は連行されていった。

そんな一夏を、私はジッと見送ることしかできなかった。

 

 

「千冬さん……」

 

部屋の奥から、これまでのやり取りを見ていた篠ノ之が出て来た。

 

「織斑先生だ、篠ノ之。織斑の件に変更はないぞ」

 

「……」

 

こればかりは、私でもどうにもならない。

 

「なぁ、篠ノ之」

 

「何ですか?」

 

「お前は、今でも織斑を……一夏のことを想っているか?」

 

「……分かりません」

 

「そうか……」

 

それだけを聞くと、私は白い腕輪をスーツのポケットに仕舞うと、部屋を後にした。

 

ーside千冬 outー

 

 

ーside束ー

 

「だ~、やっぱりそうなるかぁ」

 

ネット上の情報を漁ってみた(サーバを片っ端からハッキングしてみた)けど、やっぱりIS学園襲撃について一切情報が無かった。

 

「箝口令……ちーちゃんか、はたまたIS委員会とかいう凡愚共か」

 

まあいいや、そっちがその気なら、こっちだって考えがあるもんね!

 

「ん? なんだろこれ」

 

情報漁りしてた時に出てきたのかな? IS学園編入者?

……ほほぅ、これは面白そうだ。

 

「ナミママに教えてあげよーっと!」

 

私は壁に貼り付けていたスマホを取ると、ナミママの番号をコールした。

 

「――あ、ナミママ? 束さんだよ~! うん……あっ、ショウママ目が覚めたんだ! 良かった~!」

 

ショウママもあれから目が覚めて、ナノマシンに持ってかれたエネルギーを補給するために食堂でドカ食いしてるんだって。

……私以外にナミママの子が出来た? ほぅ、それは一度顔合わせが必要そうですなぁ……。えーっと、セシリア、だっけ? あの金髪ドリル娘とも、ショウママとの関係についてOHANASHIが必要そうだしね……。

 

「っとそうだ。それでさぁ、今ネットサーフィン(ハッキング)してたら面白そうな情報があってね~。なんでも、1組に編入生が2人入ってくる予定みたいなんだけど――」

 

 

 

「そのうちの1人、"3人目の男性操縦者"なんだって~」

 

 

 

ーside束 outー




一夏は何も考えてなかった:
鈴音→織斑の好感度down(特大)

ナミママの子になる!:
鈴音→美波の好感度up(極大)


鈴も翔に走ると思った? 残念! ナミママでした!

あんまり翔ちゃんとばっかくっ付いちゃうとハーレムになって、ワンサマーになっちゃうからね。仕方ないね。



それでは皆様、今回もよろしければご唱和ください。


「一夏に!ハーレムは!おとずれなぁい!!」
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