ーside翔ー
目が覚めると、病室らしい部屋のベッドの上だった。
「……知らない天井だ」
まさか、自分がこのセリフを言うことになるとは思わなかった。
とりあえず起き上がろうとして……うん、普通に上半身は上がるな。
どうやらフィオナが言ってた『
「翔ちゃん?」
声のする方を向くと、ちょうど部屋のドアを開けた美波だった。
「おう」
「翔ちゃん……」
美波はツカツカと俺の方に歩いてくると
――パチンッ!
「痛った!?」
不意打ちデコピンは卑怯じゃありません!?
「翔ちゃん無理しすぎー」
さらに追い打ちをかけるように、美波が俺の頬を両手でサンドして
「私も、セシリアちゃんも心配したんだよー?」
「……」
「も~、ちゃんと分かってるー?」
「分かってるって」
そりゃ、分からんわけないだろ。
そんな涙目で言われたらさ……。
「ただいま、美波」
いつものように、頭をポンポンと撫でる。
「うん。おかえり、翔ちゃん」
――グウゥゥーッ!
「……」
「……」
まぁ、何というか……
俺の腹の音だ。
「「……プッ! アハハハハハハッ!」」
もう、2人して笑うしかなかった。
「翔ちゃん、ロマンなさすぎー」
「しょうがねぇだろ、寝てたって腹は減るんだよ」
「それについては、束ちゃんが原因なんだけどねー」
そう言って、美波は昨晩のことを話し出した。
AAでゴーレムを撃破したものの、展開解除されて真っ逆さまに落ちたこと。
落下した俺を美波が不知火でキャッチしたこと。
そのまま学園内の集中治療室に運ばれたこと。
後遺症が残る可能性を伝えられたこと。
束さんがやってきて、医療用ナノマシンを注射したこと。
そのナノマシンの効果で、一般病室に移されるほどに回復したこと。
「で、翔ちゃんが空腹で仕方ないのは、ナノマシンの副作用なんだってー」
「まぁ、火傷と内傷で後遺症が残る可能性に比べたら、許容内のデメリットだな」
「だねー」
――コンコン
「美波、翔はまだ――って翔!?」
鈴だった。
「翔! アンタもう大丈夫なの!?」
「おう、見ての通りだ」
「そっか~……」
鈴はそう言うと、ベッドの横にあったパイプ椅子に座り込んだ。
「そうだ、結局クラス対抗戦はどうなったんだ?」
「あんなことがあったのよ? 中止よ中止」
「だよねー」
それもそうか。当たり前のことを聞いちまったな。
「それより、今回の件、箝口令が敷かれるらしいわよ」
「箝口令?」
「そう。『IS学園が襲撃されるなんて、IS神話に傷がつく』って、女性権利団体からIS委員会経由で圧力がね」
「そうか……」
ありもしない神話を守るために、事実を隠蔽するつもりか。
束さん。どうやら、言っても聞かないどころか、事を起こしても無視し続けるつもりらしいですよ。
「誰から聞いたのー?」
「箝口令のことを聞かされた時、千冬さんからチラッとね」
「鈴ちゃん、織斑君と幼なじみだから、織斑先生ともその頃から面識あるんだもんねー」
「う、うん……」
「? どうしたのー?」
美波が不思議そうな顔をすると、鈴は俺と美波の顔を見て
「2人に、言っておかなきゃならないことがあるの」
「「?」」
「あたし……」
「一夏のこと、諦めたから!」
「……そっかー」
「……理由を、聞いてもいいか?」
「転入すぐに、一夏を引っぱたいたことあったでしょ?」
あったな。色々勘違いされた酢豚の件。
「実はさ、あの後一夏に謝ったんだけど、別のことで喧嘩になっちゃってさ」
「あれほど負い目を残すなと言ったのに……」
「それ今は言わないでよ! で、あたしもその時は頭に血が上っててさ、口も利かなかったのよ」
何があったかは知らないが、かなりお冠だったんだな。
「でもホントはさ、仲直りする気はあったんだ。……その時はまだ、一夏のことが好きだったから……」
頑張って作り笑顔を作ろうとして失敗した鈴は、顔を俯かせて
「でも、一夏が観客席のバリアを破ったのを見た時……ダメになっちゃった」
「……」
「あいつ、昔から『俺が守る』って口癖のように言ってたのよ……でも、ホントは何も考えてないって、あれを見て、分かっちゃったから……あの時、あたしを助けてくれた時も、たぶん、何も考えて……何も思って……」
「鈴ちゃん……」
俯きながら、パタパタと涙を流す鈴を、美波がゆっくりと抱きしめた。
「だから、あたし……」
「うん」
「ナミママの子になる!」
「「んん!?」」
どうしてそうなった
ーside翔 outー
――学生寮1025号室
ーside千冬ー
「どうしてだよ千冬姉!」
先ほど決まった一夏の処遇について伝えに来たのだが、案の定か。
「どうして俺が懲罰房なんかに!」
2週間の懲罰房行き。それが一夏に科された処分だった。
だが、本来ならもっと厳罰に処されるはずだった。それを何とか減刑してもらい、2週間になったのだ。
「織斑、お前、自分が何をしたのか理解していないのか?」
「分かってるさ! みんなを守るために戦ったんだからな!」
守るだと?
「……観客席のシールドバリアを破ることがか?」
「それは……でも、みんなを一刻も早く助けるためには仕方なかったんだ。必要なことだったんだよ!」
「その結果、戦闘に参加、いや乱入したお前は敵機のビームを食らってあっさり撃墜、ビームはそのまま観客席を目指し、最悪生徒達が犠牲になっていたかもしれないわけだが?」
「わざとやった訳じゃない!……不可抗力、そう、不可抗力なんだよ!」
「……なるほど、不可抗力か」
「そう、不可抗力さ! それに、結局みんなに被害はなかったわけだし、結果良ければ全て良しだろ?」
「北山が被害を受けただろうが」
「翔? 別にあいつのことなんかどうでもいいだろ」
「……は?」
その言葉を聞いた時、私の頭の中は真っ白になった。
どうでも、いい……?
「あいつも俺の『女は守るべきもの』って考えを理解したからこそ、ああなっただけなんだし。男なら女を守って当然。その過程で傷つくのも当然、だろ?」
「……」
どうして……どうしてそんなことを言うんだ、一夏……
「だから俺がやったことは正しいし、懲罰房行きなんか何かの間違いさ」
もう、だめだ。これ以上、一夏に何かを口にさせたら――
「……一夏、右腕を出せ」
「? あ、ああ」
突然言われた一夏は、条件反射で右腕を出した。
私はその腕を掴むと、白式の待機形態である白い腕輪を外した。
「な、何するんだよ千冬姉!」
「警備員」
私の声に、部屋の外で待機していた偉丈夫な警備部員――数少ない男性職員――が4人、中に入ってきた。
「織斑を、懲罰房に」
「なっ!千冬姉!?」
驚く一夏をよそに、警備部員4人の内、2人が一夏の腕を左右から掴み、残り2人が前後を固める。
「くそっ!離せよっ!がふっ!うぅぅ~!!」
途中で他の生徒達に見つからないよう、口に猿轡をかまされ、さらに頭から麻袋を被せられて、一夏は連行されていった。
そんな一夏を、私はジッと見送ることしかできなかった。
「千冬さん……」
部屋の奥から、これまでのやり取りを見ていた篠ノ之が出て来た。
「織斑先生だ、篠ノ之。織斑の件に変更はないぞ」
「……」
こればかりは、私でもどうにもならない。
「なぁ、篠ノ之」
「何ですか?」
「お前は、今でも織斑を……一夏のことを想っているか?」
「……分かりません」
「そうか……」
それだけを聞くと、私は白い腕輪をスーツのポケットに仕舞うと、部屋を後にした。
ーside千冬 outー
ーside束ー
「だ~、やっぱりそうなるかぁ」
「箝口令……ちーちゃんか、はたまたIS委員会とかいう凡愚共か」
まあいいや、そっちがその気なら、こっちだって考えがあるもんね!
「ん? なんだろこれ」
情報漁りしてた時に出てきたのかな? IS学園編入者?
……ほほぅ、これは面白そうだ。
「ナミママに教えてあげよーっと!」
私は壁に貼り付けていたスマホを取ると、ナミママの番号をコールした。
「――あ、ナミママ? 束さんだよ~! うん……あっ、ショウママ目が覚めたんだ! 良かった~!」
ショウママもあれから目が覚めて、ナノマシンに持ってかれたエネルギーを補給するために食堂でドカ食いしてるんだって。
……私以外にナミママの子が出来た? ほぅ、それは一度顔合わせが必要そうですなぁ……。えーっと、セシリア、だっけ? あの金髪ドリル娘とも、ショウママとの関係についてOHANASHIが必要そうだしね……。
「っとそうだ。それでさぁ、今
「そのうちの1人、"3人目の男性操縦者"なんだって~」
ーside束 outー
一夏は何も考えてなかった:
鈴音→織斑の好感度down(特大)
ナミママの子になる!:
鈴音→美波の好感度up(極大)
鈴も翔に走ると思った? 残念! ナミママでした!
あんまり翔ちゃんとばっかくっ付いちゃうとハーレムになって、ワンサマーになっちゃうからね。仕方ないね。
それでは皆様、今回もよろしければご唱和ください。
「一夏に!ハーレムは!おとずれなぁい!!」