一夏アンチに期待されてた方々、もうしばらくお待ちください。
そして束さんが原作から遠のくよー・・・
ショウとミナミが介入することになった『外史・IS』。
しかし現時点ではISは開発されておらず、表面上は2人が元いた世界と変わらぬ日常を送っていた。
ーsideショウー
この世界に来て、早5年が経った。
(まさか、"転生"することになるとは思わなかったが・・・)
そう、今までは20代(元の世界と同じ)見た目で外史に入っていたが、今回は学園に入る都合上、赤ん坊に転生しての介入となった。
・・・意識はちゃんとあるのに言葉が話せないって、結構きつかったなぁ・・・
そんな俺は北山という家の長男として生まれ、『北山翔』を名乗ることになった。
元の名前と読みが同じなのは有難い。
そうして俺は、周りに怪しまれない(転生がバレない)よう、色々気を付けながら生活し、小学校入学1か月前に差し掛かったわけだ。
ちなみにミナミはどうなったかというと・・・
「翔ちゃーん!」
階下から階段を上がってくる音とともに聞こえてくる声。そして
「翔ちゃん開けるよー」
言うが否や、ミナミは俺の返事を待たず部屋のドアを開けた。
どういう因果か、ミナミも同じ北山家に生まれることになった。
しかも、俺と二卵性の双子として。
生まれたのが10分早かったとかで俺が兄となっているが、ほぼ差なんて無いようなもんだ。
そういったわけで、俺は妹である『北山美波』から「お兄ちゃん」系統で呼ばれることはなく、"今まで"通り「翔ちゃん」呼びなのである。
「返事するまで開けるなと、何度言えば分かるんだ?(ほっぺぎゅー)」
「ご、ごふぇんなひゃーい・・・」
「まったく・・・で、何の用だ?」
「いたた・・・、お父さんが篠ノ之道場に行くけど、一緒に行くかって」
「篠ノ之、か・・・」
その名前を聞いて、俺は勉強机の引き出しから4つ折りにされた紙を取り出した。
「あ、ロキちゃんからの手紙だね」
「ああ」
先日、俺と美波が5回目の誕生日を迎えた夜、いつの間にか俺の机の上に置かれていた、ロキからの連絡だった。
『ショウとミナミへ
5歳の誕生日おめでとう。うまくその世界に溶け込めてるようで何よりだよ。
そっちじゃまだISは表舞台に出てきてないだろうけど、そろそろ開発者の篠ノ之束が動き出すだろうから、時間の問題かな?
ちなみに君達が生まれた北山家と篠ノ之家は、親同士で縁があるらしいから、接触するなら有効活用してよ。ただ、人付き合いが壊滅的みたいだから、その辺は気を付けてね。
それじゃ、今度はIS学園入学辺りに連絡するから。アデュー!』
「さて、どうしたもんか・・・」
「とりあえず、行くだけ行ってみる?」
「だな」
美波の提案に頷くと、俺は手紙をまた引き出しにしまって椅子から立ち上がった。
ーside翔 outー
ーside美波ー
篠ノ之道場に付いていくことを伝えて、お父さんが運転する車に揺られること小1時間、篠ノ之道場に着いた。
その道場が――
「ふわぁ、大きい道場だねー」
「確かに、でかいな」
「そうだろう」
私達のセリフに、腕を組んだお父さんがうんうん頷く。
神社の境内にあるって聞いてたから、もっとこじんまりとしてると思ってたよ。
そうしていると、道場の正面から誰かが出てきた。
紺色の剣道着を着た、お父さんより少し年上っぽい人だ。
「おお
「先輩もお元気そうで」
「おうよ。で、そっちの子達が?」
剣道着の人が私と翔ちゃんの方に体を向けた。
「北山翔です」
「美波です」
「篠ノ之道場の主、篠ノ之
私達に名乗り返すと、柳韻さんはニヤリと笑いながらお父さんの肩を叩き
「ちゃんと礼儀作法がなってる、いい子達じゃないか」
「ははは、ありがとうございます」
満更でもなさそうな顔をしながら、お父さんはポリポリを頭を搔いた。
車の中で聞いた話だと、お父さんは学生時代剣道部で、柳韻さんとはその時の先輩・後輩の仲らしく、その仲が今でも続いているらしい。
「それで? 2人を連れて来たのは私に紹介するためか?」
「それもありますが、道場を見学させようと思いまして。構いませんか?」
「見学か」
柳韻さんは少し考えるように顎を触ったものの、
「構わんよ。付いてきなさい」
そう言って、道場に戻っていった。
その後ろを追うように、私達3人も付いていった。
それから道場の中で、門下生の人達の素振りや型練習、柳韻さんとの練習試合("流し"と言うらしい)を見学した。
あ、ちなみに今回は幸か不幸か、織斑一夏君や篠ノ之箒ちゃんとは会わなかったよ。
ーside美波 outー
ーside翔ー
あれから1時間ほど見学したが、正直あまりぱっとしなかった。
恐らく、今日見ていたのは『剣道』の枠内だからだろう。
あくまで精神修練が主であり、戦闘技術の向上、ましてや命の奪い合いとは縁遠いもの。
仕方ないことだ。むしろいいことだ。それだけこの世界が平和だってことなんだから。
(と、いけないな。前に行った外史に引っ張られてる)
血生臭い考えを払おうと正座した状態で頭を振ると、視界に道場を通り過ぎる何か、いや誰かが映った。
俺や美波より年上、中学生ぐらいの女の子だ。
その子はちらっとこちらを見たが、すぐに視線を戻すと、紙束を抱えながら走っていった。
「どうした翔、飽きて来たか?」
剣道着を着て、他の門下生の人達と一緒に素振りをしていた父さんが、手を止めてこちらに歩いてきた。
あぁ、頭を振ったのを見られて、退屈していると思われたか。
「ちょっと外の空気を吸ってきていいかな?」
「あ、私もー」
肯定も否定もせず、一旦頭を冷やそうと言ったんだけど、隣で同じく正座して見学していた美波が手を挙げていた。
「仕方ないなぁ。先輩、すみませんが2人を中座させます」
「ああ。むしろ小学校に入る前の子が、1時間近く正座で見学してたんだろ? 持った方だ」
父さんの声掛けに柳韻さんは一旦手を止めて頷くと、再び門下生との練習試合に戻っていった。
「それじゃあ父さんはもう少し続けるから、車の前で集合な」
「分かった」
「りょうかーい!」
返事を返して、俺と美波は立ち上がると、道場の出入口に――
「あれ? 翔ちゃん何か落ちてる」
美波が指さす方を見ると、B4ぐらいの紙が1枚、出入り口前の地面に落ちていた。
紙・・・あの時見えた女の子が落としたのだろうか。
拾ってみると、その紙には細かい図と文字がびっしり書き込まれていた。
「何かの――」
設計図か? と言おうとした俺の口は、紙の上部に書かれていた文言を見て固まった。
「翔ちゃん、これって・・・」
「ああ・・・」
美波も思ったであろう推測に頷きつつ、俺は再度文言に視線を移した。
『宇宙開発用マルチフォームスーツ 仮称:インフィニット・ストラトス』
ーside翔 outー
ーside束ー
(どこにいった!? 私の設計図!)
やらかした、そう思いながら、私は地下のラボから大慌てで外に出た。
宇宙に行きたい。そう思い、寝る間も惜しんで描いた、宇宙開発用マルチフォームスーツの設計図。
やっとうまくいきそうだと、ハイテンションだったのがいけなかった。
よもや、その大事な設計図をどこかに落とすとは――!
(部屋からラボまでの間・・・道場の前!?)
そういえば、出入り口の前で一度立ち止まった記憶がある。あそこで落としたんだとしたら――
そう思って道場まで戻ってみると、そこには箒ちゃんぐらいの子供が2人いた。
その2人は何かを見るように――ってあれは!
(私の設計図!)
「それ返してっ!」
私が上げた大声に、2人は一瞬ビクッとしたが、こちらの向くと
「この紙は貴方のですか?」
「そうだよっ!だから早く返してっ!」
ああもうっ、早く返せよっ!
「そうですか。はいどうぞ」
男の方が差し出した設計図をひったくると、図面を隅々まで確認。
良かった、擦れて消えたりしてない・・・
「それにしても、宇宙開発用マルチフォームスーツかー」
恐らく中身を見たんだろう、女の方がそう呟いた。
「そうだよ、文句ある?」
まただ。また言うのだろう。「そんなの出来っこない」と。
うんざりだ。
どいつもこいつも、私のことを否定する。
万一もあり得ないが、私の理論に不備があるというならまだいい。そんな奴、今まで誰もいやしなかったが。
私の理論が理解できない。だから否定する。ことの正否じゃない。自分達大人が理解できないから、「子供の戯言」と切って捨てる。
ふざけるな!
学校の連中だってそうだ。理解できないから関わろうとしない。こっちから願い下げだ! ちーちゃんだけで十分だ!
「面白そうだよねー」「いつかは必要なものだよな」
「・・・は?」
全く想定していなかった2人の返答に、私のオーバースペックな脳細胞は、確かに一瞬停止した――
ーside束 outー
ーside美波ー
ふわー、ビックリしたー。
まさか落とし主が、大声上げながら猛ダッシュしてくるとは思わなかったよー。
とりあえず返せてよかったよかったー
「ちょっと待ちなよ」
「ふぇ?」「なんですか?」
紙を返したお姉さんに睨まれてる。なんで?
「さっき言ったの、どういうこと?」
「さっきというのは?」
「面白そうだとか、いつかは必要だとか!」
そう怒鳴らなくてもー・・・目の下すっごい隈になってるし、寝不足でイライラしてるのかな?
「だって、宇宙でぷかぷか浮かぶのって、面白そうじゃないですかー」
「は?」
「それに、知らない場所に行くのって、ワクワクしませんー?」
ちょっぴり怖いなーとも感じるけど。
「・・・」
さっきまで睨んでいたお姉さんの視線が、翔ちゃんの方に向く。
「このまま人類が増え続けるなら、いつか地球だけでは支え切れなくなるのは自明です。であれば当然、宇宙進出が必須になってくる。そこでこのマルチフォームスーツがあれば、従来の宇宙服に比べて安全性や作業効率の向上が見込めますし、延いては宇宙開発を加速させる起爆剤になり得ます」
おおー、翔ちゃんかっこいー。
つらつらとISの利便性と将来性を並べていってるよ。
「貴方もそう思ったから、作ろうとしたんじゃないですか? 面白そうだから、必要だから」
「・・・」
ありゃ、お姉さん俯いて黙り込んじゃった。
(何か声かけた方がいいのかなー・・・ってええっ!?)
あまりの出来事に、私も翔ちゃんも固まってしまった。
「あれ? なんで・・・」
そこには、驚いたような顔をしながら涙を流す、お姉さんがいた。
まるで、どうして泣いているのか分からないかのように――
ーside美波 outー
ーside束ー
「だって、宇宙でぷかぷか浮かぶのって、面白そうじゃないですかー」
「それに、知らない場所に行くのって、ワクワクしませんー?」
「このまま人類が増え続けるなら、いつか地球だけでは支え切れなくなるのは自明です。であれば当然、宇宙進出が必須になってくる。そこでこのマルチフォームスーツがあれば、従来の宇宙服に比べて安全性や作業効率の向上が見込めますし、延いては宇宙開発を加速させる起爆剤になり得ます」
それを聞いた時、今まで感じたことのないものがこみ上げてきた。
私と同じように、宇宙への、未知への興味を持っている。
私と同じように、宇宙進出が必要という認識を持っている。
私と、同じように――
「貴方もそう思ったから、作ろうとしたんじゃないですか? 面白そうだから、必要だから」
(ああそうか、そうなんだ・・・)
男の子の言葉で、私は"今まで感じたことのないもの"の正体を理解した。
嬉しかったんだ。
私と同じ頭脳じゃなくてもいい。
私と同じ身体能力じゃなくてもいい。
私と同じ考えを、同じ気持ちを持てる人間に出会えたことが。
私は得られたのかもしれないんだ。
ちーちゃんですらたどり着けなかった、私を"理解"してくれる人に。
ああそうだ、私の理解者になってくれる人なら、名前をちゃんと聞いて覚えないと!
それならまずは、2人を束さん謹製秘密ラボに招待しよう!そうしよう!
そんな考えをあれこれ巡らせてる今の私は、涙をポロポロこぼしていたけど、すごくいい笑顔なんだと思う。
ーside束 outー