第20話 2人の転校生
GW明けの初日。誰1人欠けることなく、1組の生徒達は教室に揃っていた。そう、
GW明け、つまり織斑の謹慎(実際は懲罰房入り)が解かれた日でもあった。
「……」
周りは誰も、織斑に話しかけることをしない。
それも仕方ないことである。いくら罰が与えられたからと言って、身勝手な行動で自分達を危険に晒した事実は変わらないのだ。
しかし織斑本人は、まったく別のことを考えていた。
(どうして俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ俺はみんなを守るために助けるために戦ったんだぞそれなのになんでそんな目で見るんだよおかしいだろ)
懲罰房に入れられても、織斑は何も変わらなかった。
彼は悪意無く、むしろ善意で行動していた。
だからといって、その行動が常に正しいかは別問題であり、それが相手に求められているかもまた、別問題である。
織斑には、それが理解できない。
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ーside翔ー
「皆さん、おはようございます」
SHRの時間になり、山田先生と織斑先生が教室に入ってくる。
全員が席に着いたのを確認すると、織斑先生がこちらを再度見回した。
「まず連絡事項だ。来月から全員参加の学年別トーナメントが開催される。それに伴い、GWの前から予告していた通り、今日から本格的な実機訓練が開始される。そして、ISスーツの注文申し込みを今日から開始する。モノによっては注文しても届くのに時間が掛かる事もある、なるべく早く注文しておけ。購入し忘れたり、当日までに届かなかった者は、学園指定のスーツを使用するように。もしスーツ無しで来た奴は……学園指定の水着か下着で授業を受けて貰う」
((((うわぁ……))))
クラス全員ドン引きである。例年なら笑うところなのだろうが、今年は
「私からは以上だ。山田先生」
「はい」
連絡事項を伝えると、織斑先生は山田先生と交代した。
「今日はなんと! 転校生を紹介します! しかも一挙に2人です!」
「「「「知ってまーす!」」」」」
「ええっ!?」
タメた分、クラスからまさかの反応に驚く山田先生。
「フランスとドイツからなんですよね!?」
「ど、どうしてそれを!?」
追加情報に、山田先生はさらに慌てる。
すみません、うちの
「そ、それでは、2人共入ってください……」
どうにか気を持ち直した山田先生がそう言うと、扉が開き、噂の2人が入って来た。
「失礼します」
「……」
明るい笑顔を浮かべる金髪と、ムスッとした表情の銀髪。
情報通りなら、金髪がフランスで、銀髪がドイツの専用機持ちだったか。
そして金髪の方だが……
「え? 男……?」
クラスの誰かが呟いた。
まさか、"3人目"が来るとは誰も予想してなかっただろう。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。僕と同じ境遇の方がいると聞いて転校して来た──」
金髪の自己紹介を聞きつつ、ここからの流れを知っている俺と美波は、あらかじめ準備していた耳栓を装着。そして――
「「「「きゃああああーーーっ!」」」」
うわー……みんなの声で窓がビリビリいってるよ……
「男子!3人目の男子!!」
「しかも美形!守ってあげたくなる系の!」
「このクラスで良かったあ~~!」
自己紹介を途中で遮られたデュノアが、この状況に笑顔のまま固まっている。
それはいいんだが……
(どうしてみんな、デュノアが
見た目は中性的と言えなくもないが、体格といい声といい、どうみても男装した女でしかないんだが。ちょっとは疑うぐらいしようや。
――バンバンッ
「騒ぐな。静かにしろ」
「そうですよ。それにまだ、自己紹介が終わってませんよ~」
入学日の時のように、出席簿を教壇に叩き付けて黙らせる織斑先生。
「挨拶しろ、ラウラ」
「はい、教官」
促された銀髪の少女は、織斑先生に対して敬礼する。
「ここで敬礼はよせ。ここは軍ではないし、私ももう教官ではない。私の事は織斑先生と呼べ」
「はい、了解しました」
そしてまた敬礼する彼女に、織斑先生は諦めたかのようにため息をつくと、
「……もういい。自己紹介しろ」
「はい」
彼女はこちらを向いて休めの姿勢をする。
目を引くのは、長い銀髪と左目の眼帯、そして小柄な体格だろうか。ぱっと見、鈴と同じか低いぐらいか。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「あの……以上、ですか?」
名前だけのあっさりな自己紹介に、山田先生が確認を取るが、
「以上だ」 ガタンッ! ドン!
大半がコケたり机に頭をぶつけたりしていた。
みんなノリが良すぎやしないか。
「ムッ?」
みんながコケている間に、彼女──ボーデヴィッヒはとある1点に視線を止めると、そちらに向けて歩いていく。
織斑の方に。
「……貴様が、織斑一夏か?」
「そうだけど?」
織斑がいつものスマイルで答える。
謹慎帰りで、よくそんな顔ができるな。呆れを1周回って尊敬しそうだよ。
「……そうか」
それだけ言うと、ボーデヴィッヒは踵を返した。
おや? 美波から聞いてた話だと、ここで『私は貴様など認めない!』とか言って、織斑をひっぱたく流れなはずなんだが?
「朝のSHRを終わる。この後は2組と合同での実技授業だ。全員ISスーツに着替えて速やかに第2アリーナに集合しろ」
織斑先生の号令で、あっさり(あっさり?)SHRが終わった。
「織斑、同じ男子としてデュノアの面倒を見てやれ」
織斑先生はそう言うと、山田先生と教室を出ていった。
(ねぇねぇ翔ちゃん、どうしてデュノア君を織斑君に任せたんだろー?)
(たぶん、織斑を孤立させないためじゃないか?)
(ああ、なるほどー)
そう、織斑は今1組で孤立している。あの篠ノ之ですら、対抗戦前より接触が減ってる気がするしな。
だがデュノアは、あいつの
「さて。俺もそろそろ行かないと、授業に遅れるな」
なんか、織斑とデュノアが他クラスの女子達と追いかけっこしてるけど……俺し~らね。
ーside翔 outー
ーside美波ー
翔ちゃん達が出て行った後、私達はISスーツに着替えてアリーナに……って、あれラウラちゃんー?
「ラウラちゃん、アリーナの場所分かるのー?」
「問題無い。学園内の地理は把握済みだ……それと、私をちゃん付けで呼ぶな」
ラウラちゃんに心底不満そうな顔で言われちゃったけど、やめる気はないかなー?
教室を出て行くラウラちゃんを、後ろから追いかける。
「それとね、ラウラちゃんに1つ聞きたいことがあるんだ」
「だから、ちゃん付けはやめろと」
「1つ、聞きたいことがあるんだ」
「……はぁ、なんだ?」
よし競り勝った!
「もしかしてなんだけど、ラウラちゃん、織斑君を引っぱたこうと思ってなかった?」
「ほぅ?」
私の質問に、ラウラちゃんが興味を持ったかのように声を上げた。
「なぜそう思った?」
「なんとなくが半分。あとは、ラウラちゃんの目かなー?」
「目だと?」
「うん。色んな感情の混ざった目だったよー。羨望と、怒りと、それに……失望かなー?」
「……」
私の話を聞いたラウラちゃんは、一瞬驚いたような顔をしたけど、すぐに元に戻って
「ああ、正解だ。私は最初、織斑一夏を殴ろうと思っていた」
「やっぱりー」
「だがな、奴の目を見て、殴る気も失せた」
「どうしてー?」
するとラウラちゃんは、フンッと鼻を鳴らすと
「奴には、殴る価値すらないことが分かったからだ」
ーside美波 outー